とんだ勘違い
御坂美琴にテスト勉強を見てもらいいざテストに挑んだ上条当麻。
試験一週間前から毎日のように教わり上条本人も自信がついてきた。
だが結果は・・・
「どういうことよ!!2教科も赤点じゃない!!」
「いや、俺にはやっぱり難しすぎたと言いますか・・・」
「はぁ!?この間違えたトコ、アンタ私が教えたら解けたじゃないの!」
「それは・・・どうしてでしょうね?」
「呆れた。人がせっかく時間作って教えてやったのに赤点取るなんて考えられない」
「グサっ!」
「この私が教えても勉強ができなかったアンタには私からの罰が必要よね~?」
「はぁ!?」
「何?口答えする気?口答えなら赤点クリアしてからじゃないと受け付けないから」
「・・・反論もございません」
「よし、ならアンタ、今度の日曜日私に付き合いなさい」
「拒否権・・・は?」
「わかったわね?」
「ですよね~・・・・」
(よし!!また罰ゲームみたいな展開になったけどこれはこれでまたアイツと・・・
今度は誰にも邪魔されないようにしてやるんだから!!)
そして美琴が練りに練った計画の「罰」デートが始まった。
練りに練ったといっても美琴が行きたいお店をどう効率よく動けるか、お昼はどこで食べるか、
緊急事態が起こったらどう動くか、上条があまり退屈しないような場所は何か、など
ひたすら考えてのデート。普通これは恋人になっての初デートで彼氏がとるような行動なのだが・・・
結果的に言うとデートは美琴が大満足する形で終了した。別れ際に上条に
「お前とこういうの、悪くないな」
と言われてから美琴の頭はお花畑状態。勢いに任せて
「明日の朝、ここで待ち合わせ!!途中まで一緒に学校行くんだからね!!」
ここまで言えた自分に拍手を送りたい程の事だった。
寮に戻りその状態を見た白井は
「まぁお姉さま!黒子を置いて桃源郷に行かれるとは!私も一緒に連れて行ってくださいまし!」
当然返り討ちに合うのだが・・・
何はともあれ、美琴にとっては最高の一日になったに違いない。
明日は今日の事を話しながら登校しよう・・・できればまた約束をこじつける事ができればな~
と思いながら眠りについた。
だが美琴はこの後不幸な出来事に巻き込まれるのであった。
数日後、美琴は佐天と初春に呼び出されファミレスにいた。呼び出しといっても怪しくはない。恒例のお喋りの時間だ。
でもそう思っていたのは美琴だけであり、開口一番に佐天は
「さあ、御坂さん!ネタはもう上がっているんですよ!」
テーブルをバン!と叩き興奮している様子。この顔、どう見ても何か尻尾を掴んだ顔をしている。
「んん~?何のことかしら~?」
「この前の日曜日、ツンツン頭の男の人といましたよね?」
「ギク!」
「いやぁ、パトロールしていた初春がたまたま2人を見かけたらしく私に連絡が来まして。
『私は今無理なので佐天さん、尾行頼みます!』と。」
「ほら、見間違いじゃない?最近私に似た人をよく見かけるって」
我ながら最低の誤魔化し方だ。しかも妹達をちょっと犠牲にした形にして。
「あれは間違いなく御坂さんでした!ビリビリしながら男の人にギャーっと怒ったかと思えば急に借りた猫のように静かになって。
地下街のゲコ太グッズが並んでる店の前とかで」
「とか?まさか・・・」
「ていうか御坂さんずっと男の人の服の裾握ってましたよね?」
「あ・・・・あわわわわわわ・・・」
嘘が下手な自分を恨むしかできなかった。
「さあ御坂さん!あの人は誰ですか!?んで、どんな関係ですか?」
もう美琴は覚悟するしかなかった。あの時の一部始終を見られていたとは・・・
『あ、あのゲコ太可愛い』
『はあ・・・お前なぁ、わざわざ俺を連れ出して言うのがそれか?』
『なっ!いいじゃないゲコ太好きなんだから!』
『あ~、悪かったよ。御坂、あれ欲しいのか?』
『ふん!アンタにはわからないゲコ太美学よ。どうしてもって言うならゲコ太について教えてあげてもいいけど?』
『何言ってんだお前?欲しいんだろあれ。買ってやるよ』
『ふぇ!?ちょっ、アンタ今何て・・・』
『罪滅ぼしじゃないけど赤点取ってしまったし・・・欲しいなら俺が買ってやろうかな~って』
『じゃ、じゃああれよりこっちが欲しい!!』
『ん?これ俺でも無理しないで帰る値段のストラップじゃねえか。こんなモンでいいのか?』
『それを二つ・・・欲しい』
『??わかった。買ってくるよ』
『おまたせ。ほら、ストラップ2個』
『・・・こっちの1個、アンタにあげる』
『え?お前が欲しいんじゃなかったのかよ』
『欲しかったからアンタにあげるって言ったの!ほら、さっさと携帯につけなさい!』
『わかったよ』
『いい?勝手に外したら承知しないから。私がよし!と言うまでつけておくのよ?』
『じゃあ御坂も早くつけろよ。そんでお前も外したらダメだからな』
『っっっ///////』
『どうした御坂?』
『・・・・・ばか』
こんなやりとりを見られてた!?しかもそれからずっと?!確かに裾も握った。歩いているときはほとんど。
アイツは引っ張るなと言ってめんどくさそうな顔をしていたがそれだけだったし。
「御坂さん!どういう関係なんですか?彼氏!?」
ていうかここはもう逃げ場がない。腹をくくった。
「アイツは・・・彼氏じゃないけど・・・私の好きな人・・・・かもしれない」
その夕方
「じゃあね初春~」
ファミレスで美琴と別れ、途中で初春と別れ残りの道を一人で帰る佐天。今日の晩御飯は何作ろう?
そう考えながら最近知った激安スーパーへ足を運んでいた。
「いや~あの御坂さんがあそこまで乙女だったとは」
独り言だが誰か反応する勢いの口調だった。それくらいの収穫なのだ。
「上条当麻っていうのか~」
美琴の口からは「好きだけど素直になれない自分がいて罰とかそういうのを口実にデートに誘っている」とのこと。
そもそも中学生に罰を与えられる高校生ってどんなだよとつっこみたかったが美琴を思ってそこはスルーした。
でもあの美琴が好きになる少年。これは一度会ってみたいと思う。だが運命とはわからないものでその願いは突然叶ったりするものだった。
佐天の前を歩いている少年にふと視線がいった。制服を着崩して学生鞄を肩にかつぎトボトボと歩いていた。そしてなによりツンツン頭が印象的でその後頭部を見た瞬間に
「御坂さんの思い人!」
と叫んでしまったが相変わらずのスルースキルを行使する少年の耳には入っていない。
急いで少年にかけよる佐天。
「あの!上条さん?ですよね!?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
少年は返事もしなければ振り向きもしない。
「あの~。もしも~し。か~みじょ~さ~ん」
少年に気づいてもらおうと真後ろで声をかけても反応もない。そこで佐天は気づいた。
(この人、さっきから何かブツブツ言ってる・・・)と。
「・・・・・・・・・・・は・・・・・・・・・・・だし・・・・・・・・・・も・・・・」
耳をすませてもよく聞こえない。しかし最後の言葉だけはアリのような小さい声でもはっきりと聞こえた。
「・・・・・・ヌく・・・・・・か」
(・・・今この人なんて言った?ヌく?何を?・・・ハッ!!もしかして健全な高校生だから脳内再生の御坂さんで・・・!!!)
あらぬ予想をする中学一年生佐天涙子だった。
補習が終わり部屋に帰る前にスーパーで買い物を済ませようとスーパーへ足を運ぶツンツン頭の少年、上条当麻。
今の上条には最大に悩めることがある。
それは上条家の経済面。ただでさえ苦しいのにインデックスという爆食シスターの胃袋を満足させることがいよいよ大変になってきた。
ここから上条の独り言が始まる。
「はぁ、この前御坂と出かけたのも大きかったな~。俺も意地になって金払ったし。
このままの食生活だともってあと5日。次の支給は10日後だし・・・パンの耳と水だけで耐えられるか?
いや、あの底なし胃袋シスターが耐えられる訳がない。もしそうなったら・・・
『ごめんねスフィンクス。とうまがお肉を食べさせてくれないから仕方ないことなんだよ。
恨むならとうまを恨んでね』ジュルリ・・・
「まさかと思うが本当にこんな事にならないよな?
しかし飢えたシスターは何をしでかすやら。仕方ない、スフィンクスの身の安全のためだ。
家に帰ったらヌく以外の選択はないか」
大変な所だけしっかり佐天に聞かれ盛大に勘違いされている上条。だがそんなこととは全く知らない。
(これは私の力で上条さんと御坂さんをくっつけるしかない!くっつく前にピンクイベントが起こるのを期待して・・・)
本当に悪い子佐天涙子。普通なら引くはずだが勢いよく上条に再び声をかけた。
「あの!上条さん・・・ですよね?」
やっと後ろで声をかけてくる女の子の存在に気づいた。
「んあ?・・・君は?」
「申し送れました、私佐天涙子と言います。御坂美琴さんの友達と言えばわかりますか?」
「あぁ・・・御坂の友達」
「今上条さんが抱えている悩み、解決してあげますよ!」
「ゲッ!今の独り言まさか聞いていたんですか!?」
「何回声かけてもスルーされてたから・・・その・・・少し」
「何故そこで顔を赤くされているんでせうか?」
「あっ・・・いや、私だとあまり力になれないので・・・というかできないし」
「・・・???」
「私じゃ役不足なので御坂さんを呼び出せば・・・」
「!!!それはまずい!!御坂だと色々めんどくさいと言いますか!」
「何言っているんですか!今ここに呼びますから!!」
「聞いちゃいねえ・・・」
いきなり現れた御坂の友人と名乗る少女は携帯を取り出し耳に当てる。多分御坂美琴に電話をかけているのだろう。
まあその通りなのだが。
『もしもし?』
「あ、御坂さん?今お暇ですか?」
『え?さっき別れたばっかじゃん。今日はあと帰るだけだけど』
「今ですね、上条さんを捕まえたんです」
『え・・・・えええええええええええええええええええええええ!!!!!???』
「独り言を言っているのを聞いたらどうやら上条さん、悩みを抱えているみたいです」
『そ、そう。アイツも人間だから悩みの一つや二つあるわよ!?』
「ですがその悩み、どうやら御坂さんしか解決できない悩み『すぐ行くわ』みたいです」
即答!突っ込みたいとこだが堪える佐天。上条も律儀に電話が終わるまで待ってくれている。
「スーパーの場所わかりますか?そこで上条さんを食い止めておきますから・・・って、切れてる」
困ったな、という表情をして携帯を見る佐天。その様子を???をいっぱいに出しながら見ている上条。
「上条さん、御坂さんもうすぐここに来ると思います」
「・・・不幸だ・・・ん?」
いや待てよ?これはもしかして御坂にお金を貸してもらえるチャンスかもしれない。
ましてや常盤台直伝の低コストで美味い料理の作り方も教えてもらえるかもしれない。
ここは佐天という女の子に感謝すべきなのかもしれない。いや、感謝すべきだ。
「ありがとう!佐天さん!わざわざ俺のためだけに御坂を呼んでくれるなんて!今日の上条さんは不幸じゃない!」
「えぇ!?そこまで!?ていうかひと時の楽しみじゃ・・・」
「もしかしたら10日持つかもしれないという嬉しさをどう表現すればいいか!」
「あはは・・・それは御坂さんに表現してください。・・・色んなやり方で・・・」
「だから何故顔を赤くしてるんです?」
「そりゃああの悩み聞いたら誰だって・・・」
「・・・・・??????」
数分後、御坂美琴が現れる。その様子はどこか浮かれている。
「佐天さん、どういうことなの?」
「どうやら上条さん、ヌきたいらしいです・・・御坂さんで」
とんでもない所まで話を作ってしまった佐天。だが本人は悪い気持ちはさらさらない。
「・・・・・・・・・・へ?/////」
いきなり言われれば誰もが同じ反応をするだろう。美琴の頭は真っ白になった。
「ほら御坂さん!上条さんの悩み、解決してあげないんですか?」
「ふぇ!?あ・・・いや、したいのは山々なんだけど早すぎるというか・・・」
「何言ってるんです!保健の授業で習ったでしょ?もしそういう空気になったら避妊すれば大丈夫です!」
「そういう問題じゃ・・・」
そこに女2人でヒソヒソ話す様子を見ていた上条が美琴に声をかける。
「いやぁ御坂、本当にありがたい!こんなことお前に頼むのもなんだけどさ」
「・・・・・・・・・・・///////////」
「何故お前もそこで顔を赤くする!!」
「あ、ああああ、アンタのせいでしょこのバカ!!」
「そうか。まあそうだよな。迷惑かけることだし。じゃあ悪いけど、早速俺の部屋来てくれるか?」
「へっ!!??い、今から!?」
「だから来てくれたんだろ?」
「・・・・・・・・・・あう/////」