素直になれないその理由(わけ)は
「バカ!バカ!!バカ!!!当麻のバカ!!!!!どうして分かってくれないの!?当麻なんて大っっっっ嫌い!!!!!!」
「美琴だってオレの言うこと、全然分かってくれないじゃないか!!!その日に付き合えないのは悪いと思うけど、だから謝ってるんじゃないか!!!」
「ずっと楽しみにしてたのに!!!よりによって何でその日なの!?そっちこそ別の日にずらせばイイじゃない!!!!!!!」
「だからそれは、何度も言ってるじゃないか!!オレの都合で決まったんじゃなくって、クラスのみんなの都合がイイその日に決まったんだよ!!!!今更オレの都合だけで変えられる訳無いじゃないか!!!!!!!」
「うるさい!!うるさい!!!うるさい!!!!もう、当麻なんて……当麻なんて……絶交よ!!!!!!」
そう言い放つと美琴は上条に背を向け、駆け出してしまった。
「あ……待てよ!!!美琴!!!!!……、……ったく……勝手にしろ!!!!!」
事の発端は、上条のクラスの担任である小萌先生が出した論文が何かの賞を取った(らしい)。それを聞きつけた土御門と青髪が『お祝いするにゃー(んや~)』と言い出した。で、クラス緊急の生徒の生徒による小萌先生のためのホームルームが開かれ、次の日曜日に小萌先生を囲んでの【お祝い会】を開催する運びとなった。
ところが……この日は上条にとっては都合が悪かった。美琴のたっての頼みで【セブンスミスト】で開かれる【ケロヨンとゲコ太のイベントショー】を見に行く予定だったのだ。
ただ、クラス全員が都合が良い日というのがこの日しかなかった。何より小萌先生の予定がこの日がベストというコトもその日に決まった要因だ。こういう場合、上条当麻という男は自分の事を後回しにするクセがある。美琴には悪いと思ったが、何より(色んな意味で)大恩ある小萌先生が賞を取ったのだ。お祝い会に顔を出さない訳にはいかない。
それに土御門から『最近上やんは彼女が出来たみたいで、付き合いが悪いからにゃー』と問題(カミングアウト)発言をされ、その後ホームルームは一変。上条当麻詰問会へと姿を変えてしまい、上条はかなり“不幸”な目に遭うこととなった。別に美琴との関係を隠す必要はないのだが、何となく気恥ずかさが勝ってしまい、その事を素直に認められなかったのである。
だからこの【お祝い会】に絶対に出席しなければならない。斯くして上条は美琴に怒られるのを覚悟の上で、彼女に連絡を取るのだった。
ところが……この日は上条にとっては都合が悪かった。美琴のたっての頼みで【セブンスミスト】で開かれる【ケロヨンとゲコ太のイベントショー】を見に行く予定だったのだ。
ただ、クラス全員が都合が良い日というのがこの日しかなかった。何より小萌先生の予定がこの日がベストというコトもその日に決まった要因だ。こういう場合、上条当麻という男は自分の事を後回しにするクセがある。美琴には悪いと思ったが、何より(色んな意味で)大恩ある小萌先生が賞を取ったのだ。お祝い会に顔を出さない訳にはいかない。
それに土御門から『最近上やんは彼女が出来たみたいで、付き合いが悪いからにゃー』と問題(カミングアウト)発言をされ、その後ホームルームは一変。上条当麻詰問会へと姿を変えてしまい、上条はかなり“不幸”な目に遭うこととなった。別に美琴との関係を隠す必要はないのだが、何となく気恥ずかさが勝ってしまい、その事を素直に認められなかったのである。
だからこの【お祝い会】に絶対に出席しなければならない。斯くして上条は美琴に怒られるのを覚悟の上で、彼女に連絡を取るのだった。
上条から連絡を受けた美琴は、ウキウキしながら待ち合わせ場所へと向かった。上条から『日曜の件で話がある』とメールを貰ったからだ。美琴はそのメールを『日曜のスケジュールを一緒に決めよう』と言ってくれていると勘違いした。鈍感な上条が美琴の乙女心を分かろうとしてくれている。そう思ってしまったのだ。
ところが……。
ところが……。
いつもの自販機の前で上条からの言葉を聞いた美琴は、完全に期待を裏切られてしまった。
元々は自分の勘違いから始まった事ではあるが、頭に血が上ってしまった美琴はそれを認める事が出来なかった。しかも自分が楽しみにしていた大好きな【ゲコ太ショー】よりも、後から決まった【お祝い会】を優先させる上条をどうしても許せなかった。
元々は自分の勘違いから始まった事ではあるが、頭に血が上ってしまった美琴はそれを認める事が出来なかった。しかも自分が楽しみにしていた大好きな【ゲコ太ショー】よりも、後から決まった【お祝い会】を優先させる上条をどうしても許せなかった。
……で……最初の大喧嘩……という訳である。
余談だが、コレは読者諸兄なら誰でも経験がお有りの事と思う。『私を取るの?それとも付き合いを取るの?』と彼女に詰め寄られた事が一度や二度はあるだろう。
女性の皆さんに言っておきたい。コレはどちらを選ぶというレベルの話ではないのだ。どちらも大事なのだ。男としてはどちらも選びたいのである。しかし、選べるのは一つだけ。そしてこの場合、「どっちが大事なの?」と詰め寄ってきた方を斬らねばならないのが常なのだ。
男としてはどっちも大事で、苦渋の決断を迫られている訳だ。そこにより一層のプレッシャーをかけてくればどうなるか?推して知るべしであろう。
女性の皆さんに言っておきたい。コレはどちらを選ぶというレベルの話ではないのだ。どちらも大事なのだ。男としてはどちらも選びたいのである。しかし、選べるのは一つだけ。そしてこの場合、「どっちが大事なの?」と詰め寄ってきた方を斬らねばならないのが常なのだ。
男としてはどっちも大事で、苦渋の決断を迫られている訳だ。そこにより一層のプレッシャーをかけてくればどうなるか?推して知るべしであろう。
【閑話休題(それはさておき)】
寮に戻ってきた美琴は、制服のままベッドに倒れ込み、枕を抱えたまま何かをブツブツと呟いている。
美琴は自分が我が侭を言っているコトを自覚していた。自覚していたが、その我が侭を上条に聞いて欲しかった。他の何よりも【恋人】である自分を優先して欲しかったのである。
今にして思えば、例え10分でも、5分でも良かった。一緒に【イベントショー】に行きたかった。たったそれだけの願い。だから叶えて欲しかった。美琴はそう思っている。その後で【お祝い会】に行って貰っても構わない。だから……せめて……その日は、その日だけは自分を優先させて欲しかった。当麻にとっての“一番”は自分なのだと示して欲しかったのだ。
でも、その願いを上条は聞いてくれなかった。後から決まった【お祝い会】の方を優先させると言い出した。
上条からメールが来た時は、飛び上がるほど嬉しかった。一緒に日曜日のスケジュールを決めよう。そう言ってくれてると思った。あの鈍感だった当麻が乙女心を分かってくれたんだと思ってしまった。でも、現実は違った。現実は残酷だった。だから、その現実を受け入れられず、溢れてくる怒りをそのまま、全部彼にぶつけてしまった。
我が侭だって事は自覚している。でも、自分の気持ちをどうする事も出来ない。自分の気持ちをどうすれば良いのかも分からない。
美琴は自分が我が侭を言っているコトを自覚していた。自覚していたが、その我が侭を上条に聞いて欲しかった。他の何よりも【恋人】である自分を優先して欲しかったのである。
今にして思えば、例え10分でも、5分でも良かった。一緒に【イベントショー】に行きたかった。たったそれだけの願い。だから叶えて欲しかった。美琴はそう思っている。その後で【お祝い会】に行って貰っても構わない。だから……せめて……その日は、その日だけは自分を優先させて欲しかった。当麻にとっての“一番”は自分なのだと示して欲しかったのだ。
でも、その願いを上条は聞いてくれなかった。後から決まった【お祝い会】の方を優先させると言い出した。
上条からメールが来た時は、飛び上がるほど嬉しかった。一緒に日曜日のスケジュールを決めよう。そう言ってくれてると思った。あの鈍感だった当麻が乙女心を分かってくれたんだと思ってしまった。でも、現実は違った。現実は残酷だった。だから、その現実を受け入れられず、溢れてくる怒りをそのまま、全部彼にぶつけてしまった。
我が侭だって事は自覚している。でも、自分の気持ちをどうする事も出来ない。自分の気持ちをどうすれば良いのかも分からない。
「私を守るって言ってくれたのに……」
恨みの言葉が出た。
「私と私の周りの世界を守るって言ってくれたのに……」
さっきからこの繰り返しだ。
「何で、何で、私が一番じゃないのよ!!!バカ、馬鹿、莫迦、ばか、当麻のバカッ!!!!!!」
『当麻なんて大っっっっ嫌い!!!!!!』そう言ってしまった後悔が胸を締めつける。
『当麻なんて……絶交よ!!!!!!』そんなこと、言うつもりもなかったのに……。
つい勢いで言ってしまった。そんなことこれっぽっちも思ってなど居ないのに……。
彼のことを嫌いになどなるはずがない。『絶交』なんて出来るはずがない。
そんなことをすれば、自分の方がどうにかなってしまう。
でも、その気持ちさえどうする事も出来ない。
『当麻なんて……絶交よ!!!!!!』そんなこと、言うつもりもなかったのに……。
つい勢いで言ってしまった。そんなことこれっぽっちも思ってなど居ないのに……。
彼のことを嫌いになどなるはずがない。『絶交』なんて出来るはずがない。
そんなことをすれば、自分の方がどうにかなってしまう。
でも、その気持ちさえどうする事も出来ない。
ふと、あの日の不思議な出来事を思い出していた。
『素直になればいいモノを……』
そう言われた。
あの日は素直になれた。
でも、今はなれそうにない。
あの日は素直になれた。
でも、今はなれそうにない。
「分かってるわよ……」
「素直にならなきゃいけないってのは、分かってるわよ……」
「今の私が素直じゃないってコトは、私が一番分かってるわよ……」
でも……、そう「でも……」が出て来てしまう。
「でもさ……当麻だって、当麻だってさ……」
「少しくらい、私の言うことを聴いてくれたってイイじゃない……」
結局はそこに帰結してしまう。
少女は今、意識の迷路に入り込んでいた。
少女は今、意識の迷路に入り込んでいた。
「ハァ……」
もう、何度目の溜息だろうか?
セミロングの黒髪に白梅の花を模した髪飾りをつけている佐天涙子は、窓の外に目を向けているが、外を見ている訳でもなくただただ溜息をついている。
普段なら、挨拶代わりにクラスメイトであり親友でもある初春飾利のスカートをめくるセクハラ女子中学生なのだが、ここのところ少々様子がおかしいようだ。
セミロングの黒髪に白梅の花を模した髪飾りをつけている佐天涙子は、窓の外に目を向けているが、外を見ている訳でもなくただただ溜息をついている。
普段なら、挨拶代わりにクラスメイトであり親友でもある初春飾利のスカートをめくるセクハラ女子中学生なのだが、ここのところ少々様子がおかしいようだ。
「佐天さん、ホントにどうしちゃったの?」
ここは『風紀委員(ジャッジメント)活動第一七七支部』の一室である。
風紀委員でもないのにこの詰め所のパスを持ち、他の風紀委員よりもこの部屋に入り浸り、完全にここの住人(の一人)と化している佐天涙子だが、いつもと違うその様子にこの詰め所のトップである固法美偉は、その疑問を佐天のクラスメイトに投げかける。
風紀委員でもないのにこの詰め所のパスを持ち、他の風紀委員よりもこの部屋に入り浸り、完全にここの住人(の一人)と化している佐天涙子だが、いつもと違うその様子にこの詰め所のトップである固法美偉は、その疑問を佐天のクラスメイトに投げかける。
「あの、この前雪が降った寒い日があったじゃないですか?……どうも、あの日から様子がおかしいんです」
「へぇ……そうなんだ」
「はい。それで学校でもずっとあの調子で……」
「で、初春はスカート捲りもされないので、寂しい……と言うことですわね」
「ちちちちち違いますよ!!白井さん!!!!そんなの捲られて嬉しい訳無いじゃないですか!!!!」
「まあまあ、でも、ホントにどうしちゃったのかな?」
「固法先輩でも分かりませんか?」
「無茶言わないでよ。確かに私の能力は【透視能力(クレアボイアンス)】だけど、心の中まで透視出来る訳じゃないんだから」
「す、スミマセン……」
「……『恋』……ですわね……」
「「えっ!?」」
「あの物憂げな仕草。あの表情。そして溜息……。コレは間違いなく『恋』ですわ」
「あ、あの……白井さん?」
「佐天さんのその『恋』。この白井黒子が成就させてあげますわ!!!」
「だから勝手に決めないで下さい!!!」
女が三人寄ればかしましい。とは良く言ったもので、普段はイジる側の佐天をネタにして大騒ぎする3人。
当の佐天は、そんな騒ぎなど何処吹く風で、先程と同じようにただ『ボーッ』と窓の外を眺めているだけだった。
当の佐天は、そんな騒ぎなど何処吹く風で、先程と同じようにただ『ボーッ』と窓の外を眺めているだけだった。
ところが、佐天が外の景色の中に何かを見つけたらしい。いきなり部屋を飛びだして行ったのだ。
一瞬何が起こったのか分からない3人。頭の上に“?”を並べながら互いの顔を見合わせ首を傾げる。
しばらくして……佐天はまた溜息をつきながら戻ってきた。
一瞬何が起こったのか分からない3人。頭の上に“?”を並べながら互いの顔を見合わせ首を傾げる。
しばらくして……佐天はまた溜息をつきながら戻ってきた。
「さ、佐天さん。あのどうして急に飛び出して行ったりしたんですか?」
「あ、初春?ううん、何でもないよ。ちょっと人違いだっただけ」
「へっ!?人違い?」
「あ、イヤ、その、気にしなくてもイイから……」
「『恋』ですわね!(シャキーン)」
「擬音付で自分の意見を強調しないで下さい。白井さん!!」
「そ、そそ、そそそそそ、そんなんじゃないです!!!」
「「「ビクッ!!!」」」
「……そんなんじゃ……ただ……ただ、会ってお礼が言いたいだけなんです……」
「何があったのか話してくれる?」
美偉が優しく問いかけると、佐天は小さく『コクン』と頷き、ポツリポツリと話し始めた。
「先週、雪の降った寒い日があったじゃないですか。あの日に本当は友達と遊びに行く予定だったんですけど、あんまりにも寒いから「やめよう」ってコトになって、で、手持ち無沙汰だったこともあって、部屋の片付けをしたんです」
「うん、うん」
初春はもう乙女モード全開である。
その後ろで白井が『先程はわたくしの意見を無視したクセに……』と、どす黒いオーラを纏いながら睨み付けていることさえ目に入っていない。
多分、金属矢が刺さっても平気だろう。
そんな二人を無視して美偉が聞く。
その後ろで白井が『先程はわたくしの意見を無視したクセに……』と、どす黒いオーラを纏いながら睨み付けていることさえ目に入っていない。
多分、金属矢が刺さっても平気だろう。
そんな二人を無視して美偉が聞く。
「それで?」
「それで、片付けしたまでは良かったんですけど……気が付いたら……お母さんに貰った大事なお守りが見当たらなくって……カバンに付けてたはずなのにって思って、慌てて外に捨てに行ったゴミをもう一度探しに行ったんですけど……既に回収された後で……」
「「「……」」」
「で、どうしようかオロオロしてたら、個性的な髪型の男の人がやってきて、私に「どうしたんだ?」って声をかけてくれて……」
「「「ふん、ふん」」」
「事情を説明したら、回収された基地に行こうって言われて、そのまま引っぱって行かれて……そこで係の人に事情を説明して、私の居る地域から回収したゴミをその人と全部探し始めたんです……」
「「「ええっ!?」」」
「……確かに、スゴい量で……私なんて初めっから『ダメだ』って諦めちゃってて……、でもその人が私に言ったんです」
「『それはお前の大切なものなんだろ?お前が命の次に大事にしていたモノなんだろ?だったら、諦めずに探すんだ!!探して、探して、探し抜いて、それでも見つからなかった時は諦めたらいい。でも途中で諦めたら、お前は絶対に後悔するぞ!!!』って言ってくれて……」
「で、それは見つかったの?」
「そこでは見つからなかったんですけど……その人は寒いのに汗ビッショリになって探してくれて……でも、時間も来てしまって諦めるしかなくなって……仕方無いので戻ってきたんですけど……そしたら……」
「そしたら?」
「カバンの中にそのお守りが落ちてるのを見つけたんです。紐がハズれてカバンの中に入ってたみたいで……」
「良かったじゃない」
「ええ、……でも、その人に申し訳なくって……で、謝ろうと思ったらその人が……」
「その人が?」
「『良かったな』って言ってくれて……スゴいそのあっけらかんとした笑顔で……私が迷惑かけたコトなんて全然怒ってないって言うか、気にしてない感じで……見つかったことを本当に喜んでくれて……」
「そうなの……」
「『お前が諦めなかったから、そのお守りは出て来たんだぞ』って言って貰って、もう嬉しくって、嬉しくって……」
「胸が一杯になっちゃって、何も言えなくなって……。そしたらその人、私がお礼も言ってないのに、そのまま帰ってしまって……」
「だから、だから、どうしてもその時のお礼が言いたくて、でも、どうやって探したらいいのかも分からなくて……。いつもからかってるから恥ずかしいのもあって、初春や白井さんにも相談出来なくって」
「ホントは、御坂さんに相談に乗って欲しかったんだけど……最近御坂さん、忙しいみたいで……」
「佐天さん、その男の人の特徴は?」
「ヘッ!?ぅ、初春?」
「『個性的な髪型』って言ってたじゃないですか?どんなヘアスタイルなんですか?」
「あっ、あの……だから、全体に短めだけどツンツンしてて、何というか……ウニ?みたいな……」
(えっ!?それって、まさか……あの類人猿のコトじゃありませんの?)
「分かりました。任せて下さい。私の処理能力でその人を絶対に見つけ出してあげますから。そして佐天さんの初恋を絶対に叶えて差し上げます!!!」
「ちょっちょっと、初春ッ!?さっきからそんなんじゃないって言ってるでしょ!!!」
「……フフッ、アレ?白井さん、どうかしたの?」
「あ、いえ……何でもありませんの……」
黒子は美偉にそう返事したモノの、頭の中では別のことを考えていた。
今ここに居る4人の中で、美琴と上条が恋人としてつき合いだしたことを知るのは唯一黒子のみ。
美琴からその事実を聞かされた時、黒子はショックで寝込んでしまったほどなのだが、今の美琴は自分が何を言おうが、上条を中心に回っているその生活を変えることはないだろうし、また美琴が美琴で居られる場所を与えられる上条を信頼してもいた。
かつて『お姉様のために』と思い、自分と同じテレポーターと対決し、その闘いに敗れ、死の寸前まで追い詰められた。その状況の中、自らの死を厭わず、美琴に全幅の信頼を寄せられ、自分を助けるために相手のテレポーターが放った最後の切り札を、右拳一つで消し飛ばし、『オレはそいつとの約束を守れているか?』と自分に聞いてきたその男。
『お姉様は輪の中心に立つことは出来ても、輪に混ざることはできない』とは自分の美琴評である。その美琴に居場所を与えられるほどの人物。それは上条当麻をおいて他に居ない。だからこそ信頼もし、逆に嫉妬にその身を焦がせてもいる訳だが……。
今ここに居る4人の中で、美琴と上条が恋人としてつき合いだしたことを知るのは唯一黒子のみ。
美琴からその事実を聞かされた時、黒子はショックで寝込んでしまったほどなのだが、今の美琴は自分が何を言おうが、上条を中心に回っているその生活を変えることはないだろうし、また美琴が美琴で居られる場所を与えられる上条を信頼してもいた。
かつて『お姉様のために』と思い、自分と同じテレポーターと対決し、その闘いに敗れ、死の寸前まで追い詰められた。その状況の中、自らの死を厭わず、美琴に全幅の信頼を寄せられ、自分を助けるために相手のテレポーターが放った最後の切り札を、右拳一つで消し飛ばし、『オレはそいつとの約束を守れているか?』と自分に聞いてきたその男。
『お姉様は輪の中心に立つことは出来ても、輪に混ざることはできない』とは自分の美琴評である。その美琴に居場所を与えられるほどの人物。それは上条当麻をおいて他に居ない。だからこそ信頼もし、逆に嫉妬にその身を焦がせてもいる訳だが……。
その上条が、いつものように誰かを助け、いつものようにフラグを立ててしまった。今回はその『誰か』が自分たちの親友である佐天涙子だった訳だ。
だが……そこまで考えて、黒子はそれ以上の考えを捨ててしまった。イヤ、捨てざるを得なかった。
佐天には申し訳ないが、あの二人の間に佐天が入り込む余地はない。それだけの絆をもうあの二人は築いてしまっている。美琴のルームメイトである自分ですら、その中に入り込めないのだ。佐天にそれが有ろうハズがない。
それに佐天が言う通り、ただお礼が言いたいだけなのかも知れない。初春は突っ走っているが、それは後で締めれば済むコトだ。
まだ、最後の一線は超えていない(と信じたい)だろうが、そうなる、ならない以前の問題のような気がする。だからと言って、美琴にも佐天にも付く気にはなれない。今は傍観者を決め込むしかない。そう考え、黒子は自らの演算をやめてしまうのだった。
佐天には申し訳ないが、あの二人の間に佐天が入り込む余地はない。それだけの絆をもうあの二人は築いてしまっている。美琴のルームメイトである自分ですら、その中に入り込めないのだ。佐天にそれが有ろうハズがない。
それに佐天が言う通り、ただお礼が言いたいだけなのかも知れない。初春は突っ走っているが、それは後で締めれば済むコトだ。
まだ、最後の一線は超えていない(と信じたい)だろうが、そうなる、ならない以前の問題のような気がする。だからと言って、美琴にも佐天にも付く気にはなれない。今は傍観者を決め込むしかない。そう考え、黒子は自らの演算をやめてしまうのだった。
「出ましたッ!!!」
初春の声が部屋に響く。佐天が思わず画面に飛びついている。
「こっ、この人よっ、この人!!!」
「ええっと、上条……当麻さん、ですね。住所は……」
「あ……この人の高校……前に私が“特別講習”に行った学校だ……」
「ウ~ン、……でもこの人……ドコかで……」
「どしたの?初春」
「い、いえ、ただこの人ドコかで見たような気が……」
「『大覇星祭』……だったのでは?」
黒子は敢えて助け船を出す。
「えっ!?……そう、そうですよ、白井さん。確か御坂さんが飲んでたスポーツドリンクを貰ってた人です!!」
「御坂さんから……飲んでたスポーツドリンク?……って」
佐天の中の不安が増大する。だが……
「でも、でも、私はこの人に会わなきゃ絶対に後悔する。『好き』とかそんなんじゃない!!会ってお礼が言いたいだけ!!み、御坂さんとか関係ないんだ!!!」
そう叫んで、自分の頬を『パンッ!』と叩くと
「行くよ、初春!!!!!」
と言って、一緒に部屋を飛び出してしまった。
それを見ていた黒子は『叶いませんわね』といった笑顔を浮かべるしかない。
隣にいる美偉も『らしいわね』といった感じで微笑んでる。
と、その時。
それを見ていた黒子は『叶いませんわね』といった笑顔を浮かべるしかない。
隣にいる美偉も『らしいわね』といった感じで微笑んでる。
と、その時。
『ピリリリリ、ピリリリリ』
と黒子の携帯が鳴った。
画面を見るとそこには『お姉様』との表記が……。
画面を見るとそこには『お姉様』との表記が……。
『何故、今頃……?』
と疑問に思いつつ、黒子は携帯の通話ボタンを押すのだった。
詰め所を飛び出した二人は、書庫(バンク)に載っていた上条の学生寮を目指す。
『あの人に会える』
たったそれだけのことなのに、佐天の胸は高鳴った。
鼓動が早くなる。でも走っているからじゃない。
顔が熱くなる。でも熱がある訳じゃない。
『ただ会いたい。会ってお礼が言いたい。本当にそれだけなのに、何故こんなに胸が高鳴るんだろう?』
そう思いながら、でも足は止まらない。
このセクハラ女子中学生は、自分の欲求に忠実だった。
自分の中に疑問があっても、それ以上に自分が『こうしたい』と思うことを素直に行動に移してしまう。
ある意味で、美琴とは対極に居ると言える。
そう。佐天涙子は自分の感情に素直なのだ。それは背負っている看板の有無からではない。それが彼女の『根』なのだから。
『あの人に会える』
たったそれだけのことなのに、佐天の胸は高鳴った。
鼓動が早くなる。でも走っているからじゃない。
顔が熱くなる。でも熱がある訳じゃない。
『ただ会いたい。会ってお礼が言いたい。本当にそれだけなのに、何故こんなに胸が高鳴るんだろう?』
そう思いながら、でも足は止まらない。
このセクハラ女子中学生は、自分の欲求に忠実だった。
自分の中に疑問があっても、それ以上に自分が『こうしたい』と思うことを素直に行動に移してしまう。
ある意味で、美琴とは対極に居ると言える。
そう。佐天涙子は自分の感情に素直なのだ。それは背負っている看板の有無からではない。それが彼女の『根』なのだから。
「もしもし、お姉様?珍しいですわね、こんな時間にお電話していただけるなんて。もしかして……あの殿方とケンカでもなさったんですの?」
『!!!!!!◎※▲§#☆Φ∀√◆』
半分は嫌味、半分は冗談のつもりだった。だが、どうやらいきなり核心を突いてしまったらしいことは美琴の反応ですぐに分かった。
普段ならフォローに入るのだが、今日の黒子はなぜかそうする気にならなかった。
それよりも、毎日毎日上条との惚気話を聞かされている仕返しを、今ここでしてやっても良いのではないか?というイタズラ心が芽生え始めていた。
普段ならフォローに入るのだが、今日の黒子はなぜかそうする気にならなかった。
それよりも、毎日毎日上条との惚気話を聞かされている仕返しを、今ここでしてやっても良いのではないか?というイタズラ心が芽生え始めていた。
「あらあら、そのご様子ですと……『図星』でしたかしら~。ですが、『夫婦げんかは犬も食わぬ』と申しますし……今少々立て込んでおりまして……」
『だっ誰が夫婦よ!!わっ私たちは……まだ、そこまでは……(ゴニョゴニョ)……!!じゃなくって……ったく、まぁいいわ。それより『立て込んでる』って何か事件なの?』
「いえ、事件と言う程のことではないのですが……少々困ったことに……」
『困ったこと?』
「ええ、まあ。大したことではないのですけど……。どうも佐天さんがとある殿方に助けられたそうで……」
『えっ?佐天さんが?』
「どうやらその殿方というのが、上条さんのようでして……、今初春と二人でそれを調べて、詰め所を飛びだして行ったんですの」
『なっなんでアイツが出てくんのよ!?』
「お姉様がいつもボヤいてらっしゃったではありませんか?『アイツはいつもいつも私という“彼女”がありながら、どうして『フラグ』ばっかり立てる訳?』……と。どうやら今回は佐天さんにその『フラグ』を立ててしまわれたようですね」
「……」
「あ、あの……お姉様?」
『……あ、あの……』
「はい?」
『……あンのォ、クソ馬鹿鈍感彼氏ィ~……私のお願いは聞いてくれないクセに、佐天さんにフラグ立てるってどういう了見よぉぉおおおお~~~~~~~~~!!!!!!』
『ズバァァァアアアアン!!!!ピッ』
電話からけたたましい音が聞こえたかと思うと、美琴との通話は切れてしまっていた。
今夜、寮に戻った後、美琴から喰らうであろう『お仕置き』に背筋が一瞬寒くなったが……黒子はそれ以上考えないことにした。
今夜、寮に戻った後、美琴から喰らうであろう『お仕置き』に背筋が一瞬寒くなったが……黒子はそれ以上考えないことにした。
「電話、誰から?御坂さん?」
と美偉が聞いてきた。
「ええ、まあ」
と黒子は曖昧に答えるだけだった。
「そう言えば、最近御坂さんをあんまり見た記憶がないわね。“彼氏”でも出来ちゃったのかな?フフッ」
完全に他人事のように美偉が笑う。
黒子は思わず、『イヤ、今その事で大騒ぎになってるんですの』と言いそうになったが、やめた。
美偉にとっては本当に他人事だし、自分も今は傍観者を決め込んでいる。
その割にはかなり美琴を弄ってしまったが……それはそれで面白かったので良しとしよう。
黒子は思わず、『イヤ、今その事で大騒ぎになってるんですの』と言いそうになったが、やめた。
美偉にとっては本当に他人事だし、自分も今は傍観者を決め込んでいる。
その割にはかなり美琴を弄ってしまったが……それはそれで面白かったので良しとしよう。
「どうやらそのようでして……だから、わたくしも最近構って頂けなくて、少々寂しい思いをしておりますの……」
と少々甘えた声で言った瞬間……美偉が頬をひくつかせて2,3歩引いた。
その様子を見て黒子は頭の上に“?”を並べるだけだった。
その様子を見て黒子は頭の上に“?”を並べるだけだった。