とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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突撃!!○○のバレンタイン



「突撃!!」
「隣のバレンタイン!!」
「はぁ……」


4人が何かするのを決めたり、お茶したりするいつものファミレス。
突然テンションを上げて叫び始めた佐天涙子と初春飾利の前に
学園都市でも7人しか居ないレベル5の1人、御坂美琴は相槌を打った。

彼女の心境を表すならこんな感じだ。
『何言ってるんだ、この二人?』

隣の常盤台の後輩、白井黒子を見てみると我関せずとばかりにお茶を飲んでいる。
だから彼女も話をスルーしようとして

「だーかーらーっ、今日は2月14日バレンタインですよ御坂さん」
「そうですっ、バレンタインなんですよ」

どうやら目の前の2人は逃がしてくれなさそうだ。

「私達も去年までは小学生、今年は中学生、この差は大きいと思うんですよ」
「ちなみに私は佐天さんや御坂さん、白井さんに作ってきましたよ」

と言いつつ初春飾利が取り出した箱は4つ。


…………4つ?


「あれ?初春ー、箱が1個多いよ?」
可愛らしいラッピングの箱が3つにやけに立派な箱が1つ。
これはアレか、本命と呼ばれるチョコなのか、と白井黒子を除く2人が考えていると
「あぁ、これはですねぇ……じゃーん、自分へのご褒美用チョコレートなのです!!」
「あら?それは確か……」
「白井さんは知ってるんですね。そうです、あのベルギー王家御用達という」
「はい、初春すとぉーっぷ」
「えー、何でですか佐天さん。ここからが重要なとこなのに」
「言いたいことは色々あるけど、私らにチョコくれるんじゃなかったの?」
「そうでしたね、はいどうぞ」
「ありがとう、初春さん」
「初春、ありがとうですわ」
「ありがとねっ、初春」
「あ、でもちゃんとあとで聞いてくださいね。このチョコ手に入れるの苦労したんですから」
「「「あははははは」」」

初春飾利、どうやらこの件については諦めることを知らないらしい。

「ではお返し、というわけでもありませんが初春と佐天さんにわたくしからの手作りチョコレートですわ」
そう言いながらカバンから取り出した2つのチョコを佐天涙子と初春飾利の2人に渡し、
「ありがとうございます、白井さん」
「白井さんありがとー。………私達には手が出せないような高そうなチョコだね」
「あれ?黒子。私にはなしなの?」
肝心のお姉様。つまり御坂美琴の分はなかった。
「お姉さまには今日の夜お渡ししますわ、なにせ本命ですし準備にも時間がかかるんですのよ」
「……どう思う、初春」
「白井さんのことですから自分にチョコ塗って、私がプレゼントですわ、ってやりかねませんね」
「聞こえてますわよ、う~い~は~る~」
「あー、お花掴むのやめてください白井さーん」

あ、裸の白井黒子にチョコ塗ってこれが「ホントの黒(い)子ですの!!」とかやりませんよ。
わっふるわっふるって書きこんでもスレチですのでご了承を。

「じゃあこれが私から3人へのチョコレートよ」
なんだかんだ言って御坂美琴も女の子、バレンタインには興味があったりあったり。
冒頭であんな態度を取ってたにも関わらず友達に上げるチョコレートは用意してたらしい。
やはりレベル5、隙はないのか。
白井さん?白井さんはほら、お姉様に渡すための口実……いえ、なんでもないです。だからこっち(楽屋裏)見るな。
「っていっても黒子や初春さんみたいに手作りじゃなくて店で買ったやつで申し訳ないんだけどね」
「いいえお姉様。わたくしはお姉様からのプレゼントというだけで黒子は…黒子は…天にも」
「ありがとうございます、御坂さん。白井さんはほっときましょう」
「何か凄い高そうなチョコですね……ありがとうございます御坂さん」
そう、日本に輸入するときの税だけではなく学園都市の内部に商品を運び、
学園都市の利益が少しでも出るよう外と比べるとこういった嗜好品は高いのだ。
学園都市内のブランドなら輸送費が掛からない分もっと安かったりするのだが、
バレンタインで買うチョコとしては外と比べてランクが下がるらしい。

閑話休題

「じゃあ最後はあたしですね、どうぞ手作りチョコですよ!!」
トリの佐天涙子が取り出したのは、クリアケースに透明のフィルムをラッピングして、中の一口チョコが可愛く見えるよう工夫された箱。
「わぁ、凝ってますね佐天さん。どうしたんですかこれ」
「へっへーん、実はこの前インターネットのサイトで見つけたんだよ。作り方見たらそんな難しい物じゃなかったし」
「ラッピングも丁寧でお店のものだって言われても違和感ないわね。ありがとう佐天さん」
「ありがとうですわ。佐天さんは本当に器用ですのね」
白井黒子が思い浮かべるのはのは盛夏祭で佐天涙子が作ったステッチ。
あれは参加者の中でも出来が良かったので常盤台1年生の手本教材となっているのだ。
「そんなことないですよ、簡単ですから誰でも作れますって」


何はともあれ4人の友チョコ交換は終わったらしい。
「そしてここからが本番です!!」
この時の佐天涙子のテンションはさきほどまでの「やったーえへへ」ではなく、
「よっしゃぁ、いくぜぇぇぇぇ」みたいな感じである。
「そう、女の子がバレンタインといえばチョコレートと共に思いを伝える日!!皆さんも意中の人が居るでしょう、つまり!!」
「つまり皆本命の人に告白してきて明日報告会をやろうと言うことですか、佐天さん」
「そうだよ初春、初春だって中学生になったんだし本命の1人や2人ぐらいいるよね!!」
「本命が2人って時点でおかしいとは思いますけども……それより好きな男の人とかいないですよぉ。
 …………佐天さんがスカートめくるせいで変な評判ついちゃってますし」
哀しいかな、ところ構わず佐天涙子にスカートをめくられパンツを公衆の面前で晒してしまう初春飾利は、
都市伝説の『脱ぎ女』とまではいかなくても、『パンツ晒し女』という新たな都市伝説の元にまでなっていた。

「そ、そういう佐天さんはどうなんですか、本命あげる相手いるんですかっ」
初春飾利はいきたえだえだ、初春飾利のはんげき!!
「いるよ、しかも高校生の人」
だが佐天涙子にはこうかがなかった。
「へー高校生なんだぁ。そんな知り合いがいるなんて初めて聞いた気がするわ」
「わたくしもですわ。初春、アナタは何か知っていて?」
「いいえ、私も初耳です」
どうやら3人の知らない交友関係のようだ。
だがそれを言ってしまえば、各学校の知り合いや風紀委員の各支部同士での付き合いなどがあるため
知らない交友関係があるのも当然といえよう。
「以前に受けた特別講習で担当だった先生の教え子に同じ無能力者の人がいてですね、
 あたしも無能力者なんで何かと話が合うかもしれないって紹介してもらったんですよ」
「なるほど、わたくし達は講習を受けてないから知らないわけですわね」
「実はこの後、会ってチョコ渡してくる予定なんだ、えへへ」
「頑張ってください、佐天さん。御坂さんは男の人にあげないんですか?」
「へ、わ、私?いないわよそんなの。いるわけないじゃない」
顔を赤くしながら目を泳がせて言い訳をするが、当然そんな態度では誤魔化しきれるはずもなく
「あやしいーんだー。御坂さんそんなに慌ててると怪しいですよ」
「白井さんは何か知らないんですか」
「そうですわね、わたくしから言えるのはお姉様も高校生の殿方にチョコをあげる予定がある、ということですわ」
「くっ、黒子!!あんた何言っちゃってくりるれろ」
「呂律が回ってませんわよお姉様。あれだけチョコをあげた時の反応を想像する姿を見せつけられると、嫌がらせの1つも言いたくなりますわ」
「さすが御坂さん、木山先生からツンデレって評価されるだけはありますね」
「さ、佐天さん、どうしてそれを」
なぜそれを知っているのか、御坂美琴の秘めておきたいことランキングにランクインする出来事を佐天涙子が知っていることに
彼女は冷や汗を流しつつも戦慄した。

「この前に初春と春上さんと一緒に遊びに行ったときにちょっと」
「でも、チョコを用意したってことは御坂さんもこの後渡しに行くんですよね」
「……行かない」
「え?でも御坂さんあげるためにチョコ用意してたんじゃないんですか」
「お姉様、へたれるのも程々にしないと上条さんも他の方に取られてしまいますわよ」
「「え!?」」
白井黒子の発言に反応したのは2人。
御坂美琴だけでは足りないと思って白井黒子と初春飾利が周りを見てみると
「えぇぇぇ!?御坂さんの相手って上条さん?上条当麻さんなんですか!!」
やけに慌てた佐天涙子がそこにいた。

「お、落ち着いてください佐天さん。何でそんなに慌ててるんですか」
「まさか佐天さん、先程おっしゃっていた高校生というのは………」
「え、もしかしてアイツなの?」
「うぅ……、まさか御坂さんのお相手と同じ人だったなんて。どうしよう、勝ち目が薄くなってきたよ」
顔を真赤にさせながら佐天涙子はうめいた。
まさか同じ相手にチョコをあげるなんて想像もしていなかったのだろう。
だが彼女の冷静な部分はこう告げていた「御坂さんはチョコを渡さないから今なら勝てる」と。
「ってあああぁぁぁ!!??もうこんな時間だ。すみません、あたしもう行きますね」
3人が引き止める間もなくお金を置いてダッシュしていく佐天涙子。
勢い的にはダッシュの前にBがつくかもしれない、そう思わせるほど素晴らしい加速だった。
何故運動部に入ってないんだろう?
佐天涙子がいなくなったため本日は解散ということになり、白井黒子と初春飾利は風紀委員のお仕事に。
1人になった御坂美琴は悶々としながら街を歩いていた。

(アイツ、女の子にフラグ立て過ぎなのよ。鈍感だし馬鹿だし気障だしだらしないし)
どうやらご立腹の様子。
(人をいつもスルーするし……肝心な時に助けてくれるしカッコイイしアイツがこっちのこと考えてくれてるって凄く伝わってくるし)
途中からベクトルが変わってるのには気づいてない模様。
「あれ?御坂じゃないか」
「へぁっ!?ああああんた何でここに!?」
「何でって言われましても、ここ上条さんの通学ルートですよ?」
落ち着いて回りを見渡してみると、いつも御坂美琴がキックを入れて飲み物を手に入れる自販機前。
どうやら気づかないうちにここに移動していたらしい。
そして彼女の目についたのは、右手に持った紙袋の一番上に鎮座しているチョコレート。
クリアケースに入ったハート型のチョコレート。

「へえ、アンタモテるのねぇ」
「モテ……?いえいえ、不幸で可哀想な上条さんに皆義理でくれるだけですよ」
上条当麻にチョコレートをあげた女性のうち、1名の気持ちを知ってる御坂美琴は頭が痛くなった。
「アンタ、いつか刺されるわよ」
(言えねえ、既に今日そんな目に遭わされかけたとか言えねえ……)
「しかし、この流れだとひょっとして御坂も俺に義理チョコくれたりしてな、なーんつって……」
「ないわよ」
「即答ですか」
ばっさりと斬り捨てられ心のなかで落ち込む上条当麻。
だがそれも仕方ないだろう、御坂美琴は贔屓目で見てるとはいえ十分人目をひく美少女。
恋人ごっこや携帯のペア契約をして、果ては戦争中にロシアにまで助けに来てくれたような相手だ。
本命とまでは行かずともひょっとしたら義理ぐらいはくれるんじゃないか?と思ってもしょうがあるまい。
上条当麻だって青春真っ盛りの高校生なのだ。

一方、御坂美琴は憤慨していた。
(馬鹿!何で義理って決め付けるのよ。アンタに渡すんだったら本命しかないじゃない!!)
恋する乙女としては最初から本命が無いと決めつけているような上条当麻の発言は許せなかったらしい。
しかし彼女は素直になれないビリビリ中学生。
そんな気持ちを伝えられるぐらいなら普段から電撃を放ち追いかけたりなぞしない。
「でも、どうしてもっていうなら……チョコあげようか?」
「へ?」
先程義理チョコは無いと言われた以上、まさかチョコをくれる発言がでるとは思わなかった上条当麻。
これは何か新手のいじめなのか?と御坂美琴の顔を覗き込んでみると
「ちょっ、アンタ、ち、近っ…………ふにゃー」
「み、御坂、電撃漏れてる漏れてる!?」
漏電しながら気を失う御坂美琴、結構刺激が強かったらしい。
「……んっ」
「お、気がついたか。急に気を失うから驚いたじゃねーか」
「あ、ごめ……ん」
気がつけばベンチに座らされていた御坂美琴。
声をした方を見ると肩が触れ合うほどの距離に座っている上条当麻。
御坂美琴の頭が高速で弾きだした答えは
(えっ、アイツの肩にもたれ掛かって隣に近くてってかひょっとしてこの状態で支えていてくれた?ってことは何、ずっと密着したまま)
凄く嬉しい状況だったってこと以外はロクに頭が回らず分からないってことだけであった。

「疲れてたのか、今日バレンタインだもんな。お前妙に男前なところがあるから後輩とかから凄く渡されたりしたのか?」
「な、何よ男前って。女の子に言う台詞じゃないでしょ!!」
「何言ってるんですか。それだけ気が強くて行動力があって、並の男より男らしいですよ?」
「う、うるさいうるさーい」
御坂美琴はやはり上条当麻の言葉が受け入れられなかった。
何が悲しくて好きな男に「お前、男っぽいよな」って言われなければならないのだ。
彼女の女の子らしい一面もそれなりに見せているはずなのだが、
普段が憎まれ口叩いたり電撃浴びせたり、困った人を上条当麻と一緒に助けたりとイメージを上書きしていることに彼女は気づいていない。
例えば普段から彼の食事を手作りしてあげている、とか普段の会話も女の子らしいお淑やかな口調で行う、とか
そういった女の子らしさを前面に押し出して接していれば評価も変わっただろう。
もっとも、食事の手作りはともかく口調を変えて接した場合、それが彼女らしいか?と言われれば話は別なのだが。

「わ、私のことはいいのよ。それで……確かチョコがどうしてもっていうならあげるって話だったわよね」
「え?あ、ああそうだな。でも上条さんはこれだけチョコレート貰ってますので、ムリに用意してくれなくても」
プッツン、彼女の中でそう音がした。
この鈍感に仕返ししてやろう。そう決めた彼女の中ではある1つの方法が浮かび上がった。
普段の彼女からすれば顔を真赤にして悶絶するような行為なのだが、怒りで心を埋め尽くしている彼女は止まらなかった。
「えぇ、チョコあげるわ。だからアンタは軽く口を開けて目を瞑りなさい」
顔からも声からも怒りは感じない。それどころか目ですら微笑んでいる。
しかし上条当麻の中では「危険!危険!」と何かが警鐘を鳴らしていた。
「早く、しなさい………」
「はい、はいぃ」
だが彼女の見えない圧力に逆らうことは出来ず、要求通り目を瞑って口を開く事になった。
彼の耳に聞こえたのはカバンから何かを取り出す音。次に包装を破りチョコを割る音。
(あー、これは口の中にチョコを詰められて許可するまで食べるなって言う新手のいじめか?)
「いい、動くんじゃないわよ」
「は、はひ」
上条当麻が覚悟を決めて静かにすると……不意に口が柔らかいもので埋め尽くされたと思いきや口の中に甘いモノが満たされた。
「うっ……あっ…ふぅん」
「…………(え、柔け…え?なんだこれ、甘くていい匂い)」
「ぷぁっ……もういいわよ、目開けて」
目を開いた上条当麻が目にしたのは顔を真赤にした御坂美琴。
彼女の口元から垂れる涎と、自分の口元から垂れる涎。
そして口の中には甘いとしか味が分からなくなったチョコレート。

「こっ、こんなこと!!……アンタにしかしないんだから、勘違い…しないでよね」
視線を逸らしながらか細い声で呟く御坂美琴。
「へ……?勘違いって、俺だけって?」
「お、女の子に全部言わすな、バカァッ!!」
上条当麻の質問で我に帰ったのか、手に持っていたチョコを彼に投げつけ走って逃げていく御坂美琴。
残された上条当麻は口の中のチョコを噛みつつ
「本命、なのかな…………甘い、な」
残されたチョコレートなのか自らの考えなのか、何が甘いかもまともに考えずしばらくベンチでチョコを食べていた。
「はぁっはぁっはぁっ!!やっちゃった……とうとうやっちゃった」
公園から常盤台の寮まで走って帰ってきた御坂美琴はベッドに倒れこんで悶絶していた。
元々上条当麻にチョコなど渡すつもりはなかった。
彼女だって分かっているのだ、普段の自分の上条当麻に対する態度など。
一歩間違えば大怪我、大事故が起きてもおかしく無いような電撃を事あるごとに彼にぶつけ、
彼の好意の行動すら素直になりきれず、または嫉妬から糾弾を行い、
極めつけは2人は彼氏彼女の関係ではない、という。

行動に隠された気持ちに気付ける人が相手ならそれでもいいだろう。行動することで思いが伝わるのだから。
友人である佐天涙子のように自らの感情に正直に行動できるのもいいだろう。今ある自分が全てだと伝えて行動するのだから。
だが自分はどうだ?後ろめたい想像しかできなかった。
事あるごとに気に入らない相手に突っかかてくる相手。上条当麻にはそう認識されていると御坂美琴は思い込んでいる。
だから彼女はこう思うのだ。さっきの行動で完全に嫌われた。
命令で動けなくしてチョコ食べさせるために無理やりキスして事情説明はしないまま逃げ出してくるという。
これはもう完全に嫌われたに違いない

そんな彼女のもとに1通のメールと1本の電話が届いた。
友人からも電話を受けたあとにメールを見た彼女の顔は喜色満面の笑顔であった。

『御坂へ、夕方のチョコとても美味しかった。嬉しかったよありがとう。
 明日の夕方、いつもの自販機前でいいかな。俺から話したいことがあるんだ』

「ばーか……期待してるんだからね、と、当麻ぁ……ふみゃーー!!?!」
「ただいまですわお姉様って何何ですのこれー!?」

御坂美琴、及び白井黒子の能力使用による寮監の折檻と部屋の損害のため就寝時間AM4時
果たして御坂美琴の運命は?如何に?


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