見知らぬ記憶
「待ちなさいッ!!!ミコトッ!!!!!!!」
父、タビカケの声もミコトの耳には届かない。
「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
あの細い身体の何処に、この様な声を発する器官があるのだろう?
大地を揺るがすかのような雄叫びを上げ、全身に雷撃の鎧を纏い、ミコトは大地を疾駆する。
大地を揺るがすかのような雄叫びを上げ、全身に雷撃の鎧を纏い、ミコトは大地を疾駆する。
『ドンッ!!!!!!!!』
右足を地に叩き付け、その反動と磁力を利用して、地中より砂鉄を大量に地上に呼び出す。
そしてその砂鉄を一匹の龍のようにして、『最強の戦士』である白髪の少年へと叩き付ける。
そしてその砂鉄を一匹の龍のようにして、『最強の戦士』である白髪の少年へと叩き付ける。
「へェ……すげェ、すげェ……」
砂鉄の龍が襲いかかってくるのを気にも止めず、歩を進める『最強の戦士』
「がぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
美琴の叫びと共に、砂鉄の龍が少年に襲いかかり、ぶつかったかと思ったその瞬間に渦を巻き、四方八方から少年を押し潰そうとする。
……が。
……が。
「へェ……磁力を使って、砂鉄を操ってンのか……。おンもしれェワザだ……」
砂鉄の渦は、ジリジリと少年に詰め寄り、触れた瞬間に少年の肌をズタズタに切り刻む。
……はずだった。
……はずだった。
『ズバァァアアアアン!!!!』
渦を引き裂く音と共に、中の『最強の戦士』は全く無傷のまま、砂鉄の龍すら居なかったかのように渦を振り解き、その姿を現した。
「なかなか面白ェワザだったンだけどな……ネタが割れちャあ……どうしようもねェな……」
(えっ!?……そんなっ!?……アレを喰らって、全くの無傷だなんて……そんな……バカなっ!!!!!!!!!!!!!!!!)
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
十数本の雷撃の槍が、『最強の戦士』に押し寄せる。
当たった。
そう思った瞬間……。
当たった。
そう思った瞬間……。
「「「「「「グワアアアアアアァァァァァァァッ……」」」」」」
美琴の周りに居た兵士達が、雷撃の槍に灼かれていた。
(えっ!?……なに?……コイツ……今……何をしたの?……)
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
ミコトは奇声を発しながら、磁力を操り、周囲に落ちた武器や金属などを寄せ集める。
そしてそれを一斉に『最強の戦士』に向けて投げ放つ。
そしてそれを一斉に『最強の戦士』に向けて投げ放つ。
『ダンダンダンダンダン……』
それらの金属は『最強の戦士』の数メートル前から地面に突き刺さり始め、距離を確かめるように徐々に近づいていく。
そしてそのウチの一本が『最強の戦士』の身体に当たった。
……その瞬間……。
そしてそのウチの一本が『最強の戦士』の身体に当たった。
……その瞬間……。
『ガイィィィイイイイインンンン!!!!!』
と、はじき返される音と共に、一片の巨大な金属物がミコト目掛けて飛んでくる。
慌てて飛び退くミコト。
慌てて飛び退くミコト。
(なに……?……何が起こってるっていうの?……私の攻撃を、こんなに簡単にあしらうなんて……そんなコトが出来るのは……あのバカ以外に……居るはずがない……のに……)
「さすがオリジナルだなァ」
その声を聞いた時、ミコトは全身が凍るのではないか……と思った。
「オマエの『模造品』には、世話になってンぜ。オレが『ア』の国の『最強の戦士』って呼ばれてる『アクセラ』だ……ヨロシクな」
『ニイ』と口を禍々しく開き、その白い歯を見せつける。
「さすがにオリジナル。『模造品』共とは段違いのパワーだな。だがよ、こンなモンなのか?オマエの本気ってヤツぁぁぁよぉぉぉ~」
『ドンッ!!!』
『最強の戦士・アクセラ』が、大地を軽く蹴った。
……と思った瞬間、大地は裂け、その地割れが一直線にミコトに向かってくる。
その光景に呆然としているミコトは動こうとしない。
……と思った瞬間、大地は裂け、その地割れが一直線にミコトに向かってくる。
その光景に呆然としているミコトは動こうとしない。
「姫様ッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
一人の戦士がそう叫んで、ミコトに体当たりをした。
突き飛ばされたミコトはそのまま大地を転がる。
フラフラになりながら、何とか身体を支え、自分を突き飛ばしてくれた戦士を捜す。
そして……その戦士は……地割れの衝撃波で吹き飛んだ岩に飛ばされ……壁に叩き付けられていた。
突き飛ばされたミコトはそのまま大地を転がる。
フラフラになりながら、何とか身体を支え、自分を突き飛ばしてくれた戦士を捜す。
そして……その戦士は……地割れの衝撃波で吹き飛んだ岩に飛ばされ……壁に叩き付けられていた。
「ヒッ……!!!!!!!!!!!!!!!!」
その光景を見た瞬間、生まれて初めて『死』の恐怖がミコトを圧し包む。
「『模造品』の相手には、飽き飽きしてたところなンだよな。かッたりィつーかよォ……いくら脳波でネットワークが出来てて、記憶が共有されるッてもよォ、『力』が弱けりャどうにもならねェもンなァ~」
(えっ!?……なにっ!?)
「だからよォ、オリジナルさンよォ……ここらで一発、オリジナルの本気ッてヤツを見せてくンねェかなァ~……ヒャハハハハハハハハハハ」
(こ、コイツ……一体……なに?)
「何だ、何だよ、何ですかァ~。オリジナルも所詮はお姫様か。この『最強の戦士』を目の前にして、初めて自分の愚かさに気づいたってトコロかァ~……?」
(……わ、私……死ぬの?……コイツに殺されて……あの『妹達』と同じように……死ぬの?)
「オイ、オイ。さっきの勢いはどうしたンだよッ!?もう、かかって来ねェのかァ~?」
(イヤ……死ぬのはイヤ……アイツに……アイツに会って……アイツと一緒に……もう一回空を飛ぶ!!!……だから絶対……死ぬのはイヤッ!!!)
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ミコトは雄叫びと共に大地を転がり、傍にあった金属片を拾って【超電磁砲(レールガン)】を撃つ。
『ドオォォン!!!』
だが……。
その金属片は、『アクセラ』の身体に触れた途端……まるで鏡に反射された光のように、自分に向かって飛んでくるのが……見えた。
その金属片は、『アクセラ』の身体に触れた途端……まるで鏡に反射された光のように、自分に向かって飛んでくるのが……見えた。
(ああ、もう……ダメなんだ……。死んじゃうんだな……私……。……最後に……最後にアイツの顔が……見たかったな……)
『パキィィン!!!』
『もうダメだ』そう思ったミコトの耳に、聞いたことのある音が響いた。
そして、『もう一度見たかったな』と思った男の声が、その耳に届く。
そして、『もう一度見たかったな』と思った男の声が、その耳に届く。
「なにやってんだよ、オマエ!!!」
「えっ!?」
「なにやってんだって聞いてんだよォっ!!!!!!!!!」
「!!!」
「オマエは、お姫様だろう!!!そのお姫様が、戦場のど真ん中で何してんだよっ!!!!!!!」
「あ……」
「オマエの役目は、それじゃあねぇだろうがっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「と……」
「オマエの役目は、オレたちが闘って帰って来た時に、笑顔で迎えるのが役目だろうがよっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「……ま」
「その役目をおっぽり出して、こんなところでなにやってやがる!!!!!!!!!!!!!!!!」
「トーマッ!!!!!!!!!!!!!!」
「バカ野郎!!!!!!!!!!!!!!!!」
『パンッ!!』
乾いた音が戦場に響く。
叩かれた頬を抑え、ミコトがトーマを見つめる。
トーマの目に溜まった涙を見て、ミコトは初めて自分が何をしていたのかを悟った。
叩かれた頬を抑え、ミコトがトーマを見つめる。
トーマの目に溜まった涙を見て、ミコトは初めて自分が何をしていたのかを悟った。
「……ゴメン」
「ああ……分かったんなら、城に戻れ」
「えっ!?」
「分かったんなら、城に戻れって言ってんだ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「あ……」
「こっから先は、オレたちの役目だ。オマエが手を出してイイ場所じゃあねぇ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うん……」
「……」
「……」
「ミコト」
「え……」
「必ず帰る」
「えっ!?」
「必ず、勝って帰る」
「……」
「必ず、勝って帰るから……」
「あ……」
「最ッ高の笑顔で迎えてくれよっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うんっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「姫様ッ!!!」
「ミコトッ!!!!!」
「ミコトちゃんッ!!!!!」
「お姉様ッ!!!!!」
たった、数分間の出来事だった。
なのに……とてつもなく長い時間、家族と、懐かしい人々と、離れてしまっていたような感じがした。
そして、自分がしてしまったことの意味を、イヤと言うほど教えられた。
それを教えてくれた、頬の痛みが温かい。
なのに……とてつもなく長い時間、家族と、懐かしい人々と、離れてしまっていたような感じがした。
そして、自分がしてしまったことの意味を、イヤと言うほど教えられた。
それを教えてくれた、頬の痛みが温かい。
「みんな……ゴメンナサイ……」
ミコト姫は素直に全てを詫びた。
そして、今闘ってくれている【勇者】の方を向いて
そして、今闘ってくれている【勇者】の方を向いて
「トーマは必ず、勝って帰ってきます。だから、ちゃんと笑顔で迎えられるようにならなければ……」
その目に一杯の涙を溜めて、でもその目はトーマの勝利を確信していた。
「ミノル!!」
「おおっ!老師様。お待ち申しておりました」
「トーマのヤツが飛んできたじゃと!?」
「ええ、あそこに……」
「……」
「さっき、私に【念氣波】で『最強の戦士の情報を寄こせ』と言って来まして……」
「フム……」
「アイツには全ての情報を伝えましたが……それでも闘うとは……」
「あの『最強の戦士』には我らの《龍氣》すら通用せん……ということじゃったな……」
「は……ハイ……」
「……フッ……」
「ろ、老師様?」
「心配なさそうじゃな……」
「えっ!?」
「見てみよ、ミノル。トーマの姿を」
「あっ……アレは!?……一体……」
ミノル師範がトーマを見た瞬間だった。
『ドンッ!!!!!』
大地を揺るがす地響きと共に、それまで放出されていた『氣』が変化し、トーマの身体が炎に包まれる。
その炎は様々に色を変え、形を変え、やがてゆっくりと黄金色の炎へと変わり、その中から黄金の龍が姿を現した。
その炎は様々に色を変え、形を変え、やがてゆっくりと黄金色の炎へと変わり、その中から黄金の龍が姿を現した。
「【龍氣炎】……ワシの師匠が2度。ワシでもまだ数えるほどしか纏ったことのない【龍氣炎】を、あの若さで纏うとは!!!」
「【龍氣炎】?」
「そうじゃ。【勇者】の最強の戦闘状態と言って良いじゃろう。己が身の内に《龍氣》が充満し、その『力』を使うに当たっての『構築』すら必要としない状態。《龍氣》と一体化した状態になった時、始めて現れるのがあの【龍氣炎】じゃ」
「なっ……何とっ!!!」
「今のトーマは、創造主が如き存在になったに等しい。ワシも幾度か経験したから分かるが……あの《龍氣》との一体感は……創造主の意が我が身の内に流れ込み……その意に従い、我が身を揮う……得も言われぬ創造主との一体感……それをあの若さで経験出来るとは……」
恍惚とした表情で【龍氣炎】を語る老師を、ミノルは羨望の眼差しで見つめる。
「じゃが……アレは、あの【龍氣炎】は出そうと思って出せるものではない。己を研ぎ澄ませ、真っ直ぐのせねばならん。トーマはミコト姫があの場にいることに対する怒りで【龍氣炎】を発動させることが出来たようじゃな」
「えっ!?【龍氣炎】は『怒り』発動するのですか?」
「イヤ、違う。『怒り』は『闇』につながる。それが普通じゃ。だが、トーマは戦場にミコト姫が居たことを怒っておった。じゃがな、同時にミコト姫をそんな状況に追い込んでしまった自分に対する怒りもあったのじゃろう。自他を区切った『怒り』ではなく、自他を一如とした『怒り』だったのじゃろうな。稀有なることじゃが……だからこそ、《龍氣》はそのトーマの意志に応え、【龍氣炎】を発動させたのじゃ」
「自他を一如とした『怒り』……」
「良く見ておけよ、ミノル!!!アレぞ【勇者】のあり得べき姿ぞ!!!!!」
「はいッ!!!!!!!」
シン老師。そしてミノル師範も、二人の闘いに目をこらす。
その一挙手、一頭足を見逃すまいと。
そして、二人の目にはトーマの勝利を確信する光が宿っていた。
その一挙手、一頭足を見逃すまいと。
そして、二人の目にはトーマの勝利を確信する光が宿っていた。
「待たせたな『最強の戦士』さんよ」
「オマエが【勇者】ってヤツか?」
「そうなるかな?」
「なンだよ、その曖昧な言い方は?」
「別に……三下相手にわざわざ気張るほどのこともないと思ってな」
「その割にはご大層な格好じャねェかよ」
「そうか?……気が付いたらこうなってただけなんでな……」
「ヘッ……気が付いただけで、そんな格好になれるンだな。【勇者】ってェのは……」
「別に……そんなつもりもないんだが……『三下』相手にゃ、こういう派手な格好のほうが似合うだろうからな」
「何だとぉ~……このオレを二度も『三下』呼ばわりしたのは……」
「……もしかして……オレが初めてか?……オマエ、大したヤツとやってねぇな」
「てンめぇ~~~~~~~~このオレを怒らせるとどうなるか、分かってンだろうな」
「そりゃ、コッチのセリフだ。オマエがアイツと、アイツの『妹達』にしたことを考えるとな……」
「『妹達』だァ~?そういやあのお姫様もそんなコト言ってやがったよなァ」
「……」
「アレは必要な機材と薬品があればボタン一つで量産出来るンだぜ。作り物の身体に、借り物の心。知識は洗脳装置を使って強制入力すれば、アソコに居る『模造品』の出来上がりって訳だ。どうだ、おンもしれぇだろう?ギャハハハハハハハ」
「何が……何が、そんなに面白ぇんだ?」
「だって、面白いじャねェか。ボタン一つで人間様の『模造品』が作れるンだぜ。しかも、それを2万体ぶっ殺したら、オレは『絶対無敵』『世界最強』になれるってンだから、コリャやらねェ訳にはいかねェよなァ」
「……そんなことのために……そんなことのために……こんなことをしたって言うのか!!!!!!!!!!!!!!!!」
「オレが『絶対無敵』『世界最強』になるためだ。他人がどうなろうと知ったことじャあねェよ。第一アレは『人間』じャねェ。『模造品』だ」
「……」
「オット、オレに手を出さねェ方が身のタメだぜェ。オレはこの世界の『ベクトル』ってヤツを全部操れるンだ。どンな攻撃だろうが、どンな『力』だろうが、物理的にオレに及ぶ『ベクトル』をオレは操れる。それはオマエら【勇者】が使う《龍氣》ってヤツでも一緒なンだよ」
「それがどうした?」
「ハァ?」
「それがどうした?って言ってんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「オマエ……バカか?」
「……」
「オレが言ってることが理解出来てねェようだな?」
「……」
「しょうがねェなァ……まぁ、この『最強の戦士』様を目の前にして、呼吸していられるだけでも贅沢ってもンだ」
「……」
「だから……いい加減楽になれっ!!!」
『ダンッ!!!!!!!』
アクセラが軽く地を蹴る。だが……ベクトル変換されたそれは、トーマとの距離を一気に詰める。
そして、アクセラはその右拳を突き出し、トーマの顔面を殴り付ける。
そして、アクセラはその右拳を突き出し、トーマの顔面を殴り付ける。
『ゴキンッ!!!!!!!!!』
鈍い音がした。
アクセラは笑っていた。トーマはもうその場には居らず、自分が突き出した一撃に吹き飛ばされ、無様にその屍を晒しているはずだ。
だが……。
右拳に……感じたことがない感覚があった。
脳が『痛い』と言っている。右拳が『痛い』と言っている。
その痛みを感じながら、正面を見据えた時、アクセラは信じられない光景を目にする。
表情一つ変えず、アクセラの放った悪魔の一撃を避けもせずに真正面から受けとめ、何もなかったかのように平然として、アクセラを見下ろすトーマの眼を。
アクセラは笑っていた。トーマはもうその場には居らず、自分が突き出した一撃に吹き飛ばされ、無様にその屍を晒しているはずだ。
だが……。
右拳に……感じたことがない感覚があった。
脳が『痛い』と言っている。右拳が『痛い』と言っている。
その痛みを感じながら、正面を見据えた時、アクセラは信じられない光景を目にする。
表情一つ変えず、アクセラの放った悪魔の一撃を避けもせずに真正面から受けとめ、何もなかったかのように平然として、アクセラを見下ろすトーマの眼を。
「この程度か……」
「グッ……」
「オマエの必殺の一撃ってのはこの程度なのか?」
「何だとォ~~~!!!!!!」
『ダンッ!!!!!!!!』
アクセラが地面に足を叩き付ける。
大地は一瞬で裂け、土の中から大量の土砂が吹き出し、石は飛礫となってトーマに襲いかかる。
だが……アクセラが地面に足を叩き付けた時には、トーマは既にそこに居なかった。
大地は一瞬で裂け、土の中から大量の土砂が吹き出し、石は飛礫となってトーマに襲いかかる。
だが……アクセラが地面に足を叩き付けた時には、トーマは既にそこに居なかった。
「どうした。それが『最強の戦士』さんの攻撃かい?」
その声がしたのと同時に『最強の戦士』の頭に『ズシッ!』とした重みが加わる。
「なッ!?」
「どうした?その程度か?」
自分の頭の上から、さっきまで目の前にいた【勇者】の声が聞こえる。
「~~~~~こ、コノ野郎ォ~~~~~」
両手を振り上げ、頭上の敵を掴まえようとする『最強の戦士』……。
……そのがら空きになった鳩尾にトーマは右拳をめり込ませる。
……そのがら空きになった鳩尾にトーマは右拳をめり込ませる。
『ズドンッ!!!!』
「ガッ……」
「ココに来る途中に、師範から聞いたよ。オマエが『ベクトル』ってヤツを操るってコトはな」
「ガハッ……ゴフッ……」
「だが……オレたち【勇者】の攻撃も、跳ね返せるように見せられる『ベクトル変換』にも穴はある!!!」
「なっ!?」
「分かってんだろ!?」
「グッ……」
「オマエが跳ね返せる『ベクトル』ってヤツは、物理的な衝撃を伴った『ベクトル』に限られるってコトをよっ!!!」
「クゥゥゥウウウウウウ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」
「《龍氣》や『力』を使って起こした物理現象は跳ね返せるが、直接《龍氣》を叩き付けられる攻撃は避けられない」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「さっき俺がオマエの頭の上に乗っただろ?アレは【舞空】って言ってな。《龍氣》を使ったワザだ」
「クッ……」
「オマエは《龍氣》を理解していない。《龍氣》が何だか分からない。だから、その分からない理解出来ていない『未知のベクトル』を反射することは出来ないんだ!!!!!」
「うぅぅぅぅぅガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア~~~~~~~~~~~~~~~~」
「『最強の戦士』が聞いて呆れるぜ」
「なッ、何をッ!?」
「オマエさん、ずっとその『ベクトル変換』で勝ち続けてきたらしいじゃないか?」
「……」
「そりゃそうだよな。どんな『力』を持っていたって、相手にそれが当たらなきゃ、どうにもならねぇ。全ての『力』のベクトルを変換して、常に相手の力を利用して、相手を一撃で倒す。そんな闘い方しかしたことがないヤツが、本当の闘い方を知っている訳ねェよなァ……」
「何だとォ~~~~~~~~~~~~~~~」
「教えておいてやるよ、三下。本当の【勇者】の闘い方ってヤツをなァ!!!!!!!!」
『ドンッ!!!』
「なるほどな……だから【龍氣炎】という訳か……」
「はい……そうですね……」
「物理的な攻撃の『ベクトル』は全て跳ね返されてしまう。それは元が『力』であろうが《龍氣》であろうが関係がない。現れが同じなのだから、そこに違いはない」
「はい……」
「じゃが……《龍氣》を纏う【龍氣炎】ならば話は別じゃ。【龍氣炎】の炎が相手の『ベクトル変換』に穴を開け、そこに物理的な攻撃を叩き込めば……」
「はい……」
「多分、トーマは考えてやっている訳ではあるまい……」
「でしょうね……おそらく……【勇者】としてのカン……って奴でしょう」
「ホッホッホ……末恐ろしい奴じゃワイ……ホッホッホ」
瞬時にアクセラの懐に飛び込むトーマ。
飛び込んでくるトーマを掴まえようと手を出すアクセラ。
身体を小さくたたみ、その手を避けた次の瞬間……一気に身体を伸び切らせて、再びアクセラの鳩尾に右拳の一撃をめり込ませる。
そしてその拳を突き上げ、アクセラを空中に放り出す。
飛び込んでくるトーマを掴まえようと手を出すアクセラ。
身体を小さくたたみ、その手を避けた次の瞬間……一気に身体を伸び切らせて、再びアクセラの鳩尾に右拳の一撃をめり込ませる。
そしてその拳を突き上げ、アクセラを空中に放り出す。
「ガハァッ……」
その強烈な一撃に、呼吸困難に陥るアクセラ。
身体は『く』の字に折れ曲がりながら、空へと上昇して行く。
呼吸困難に陥り、余りの苦しさに見開かれた眼で地上を見た時、そこにトーマの姿は見えなかった。
身体は『く』の字に折れ曲がりながら、空へと上昇して行く。
呼吸困難に陥り、余りの苦しさに見開かれた眼で地上を見た時、そこにトーマの姿は見えなかった。
(や……ヤツが……居ない?)
そう思った瞬間……
『ゴキッ!!!』
後頭部に味わったことのない『痛み』が走った。
トーマは、空中に放り出したアクセラを【舞空】で追い越し、後頭部に踵落としを浴びせる。
上昇する数倍の速度で、落下に移らされた自らの身体を守るため、アクセラは地上に叩き付けられる瞬間に『ベクトル変換』を行おうとする。
が……
トーマは、空中に放り出したアクセラを【舞空】で追い越し、後頭部に踵落としを浴びせる。
上昇する数倍の速度で、落下に移らされた自らの身体を守るため、アクセラは地上に叩き付けられる瞬間に『ベクトル変換』を行おうとする。
が……
「歯を食い縛れよ『最強(さいじゃく)』オレの『最弱(さいきょう)』は、ちっとばっかし響くぜっ!!!!!!!」
そう叫びながら、トーマはアクセラの顔面に、渾身の右ストレートを叩き込む!!!
『バキッ!!!!!!!!!!』
『ドンッ!ゴンッ!!グシャッ!!!ゴキッ!!!!ズザザザザザザザザアアアァァァァァァ~~~~~~~~~~~~~~~』
その一撃に完全にのされ、数百メートルもの距離を吹き飛ばされ、地を舐め転がり這いつくばる『最強の戦士』アクセラ。
その光景を目の当たりにした『ア』の国の兵士達は、我先に逃げ出すのであった。
その光景を目の当たりにした『ア』の国の兵士達は、我先に逃げ出すのであった。