見知らぬ記憶
「あーッ!?……居た居た。コイツ!!……って、ちょっと待ちなさいよっ!!!」
「……えっと……」
「待ちなさいって言ってんのよっ!!待ちなさいってばっ!!!」
「……コッチがこうで……」
「アンタよ、アンタ!!止まりなさいってばっ!!!」
「……アレ?……コッチが……アレ?……」
「待てッつってんだろうが!!無視すんなやゴルァ~!!!!!」
『バリバリバリッ……ズドンッ!!!』
『パキィィン』
「どわぁぁああ!!!あッ……アッブねぇなぁ……って、昨日のビリビリお姫様じゃねぇか……?」
「ビリビリ言うな!!私にはちゃんとミコトって名前があるんだからねっ!!!」
「へーへー、で、そのお姫様が何の用だよ?」
「何って……それは……勝負よ、勝負!!今日こそ決着を付けてやるんだから!!!」
「決着なら昨日着いたじゃねぇかよ……オマエの勝ちでさ」
「あんなのアンタの実力を全然出してないんでしょ?私は全力のアンタをブチのめしたいのよっ!!!」
「勇者の私闘は禁じられております」
「んなこと、聞いてんじゃないわよっ!!!」
「……ハァ……不幸だ……!!」
いつもの(?)口癖を呟いたかと思ったその瞬間、トーマはいきなりミコトを抱き抱え(お姫様ダッコ)て横っ飛びに飛んだ。
すると、トーマがそれまで居た空間にいきなり金属矢が出現し、ポトリと落ちた。
すると、トーマがそれまで居た空間にいきなり金属矢が出現し、ポトリと落ちた。
『カシャーン……』
「えっ!?えっ!?な……なにっ?」
「出て来いよ……空間転移だろ?」
トーマは金属矢を飛ばした『力』を持つ者の位置が分かっているように、後ろを振り向き、細い路地の入り口を睨み付けた。
「別に姫様を狙った訳ではありませんでしたが、姫様を守って飛ぶ辺りはさすがに勇者殿……といったところでしょうか?」
「クロコ!?」
「何だ……知り合いか?」
「ミコト姫様付の守り役。クロコにございます。以後お見知りおきを」
「へぇ……守り役なんてもんまで持ってんのか……ホントにお姫様なんだな」
「なっ、アンタねぇ……私を何だと思ってた訳!?」
「ビリビリワガママ娘」
「なんですってぇぇぇぇええええええ!!!!!!!!」
「こっ、コラッ。ダッコされたまま暴れんじゃねぇ!!!」
「ヘッ!?」
「フウ……大人しくしてりゃぁ、結構カワイイのによ……」
「えっ!?……なにっ!?……か、か、か、かかかかかか可愛いって……」
「ん?どした?」
(わ……私……こ、こ、コイツにダッコされてる……。しかも、お姫様ダッコ。そりゃ私だってお姫様だけど……されるのは初めてだし……ちょっと……嬉しい……かも……)
「何、赤くなってんだよ?熱でもあんのか?」
そう言うと、トーマはミコトをそっと降ろし、額に手を当てて自分の額と比べてみる。
「別に……熱は無さそうだけど……そんな赤い顔してんなら、サッサと城に帰って寝ちまえよ。じゃな……」
「……ない……」
「ヘッ!?」
「……けない……」
「な……なにっ?」
「……歩けない……って言ってんの!!」
「歩けないって、オマエなぁ……そんな体調で何でこんなトコに出て来てんだよ……」
「イイから……」
「ハァ?」
「お城に帰るから……」
「帰ればいいじゃねぇか?」
「歩けないのっ!!!」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよっ!?」
「……ダッコ」
「ヘッ!?」
「もっかい……ダッコ……」
「あ、あのなぁ……さっきは……」
「イイから、私をダッコしてお城まで送りなさいよっ。こっ、こっ、ここここ、コレは姫としての命令です!!!」
「……ハァ……不幸だ……」
「ひっ、姫様っ……そ、それは……なりません!!」
「控えなさいッ!クロコっ!!」
「えっ!?」
「い、いやっ……しかし……今、迎えの者を呼んで参ります故……暫しお待ちを……」
「……ヤダ……」
「「ヘッ!?」」
「……ダッコがイイ……」
「……ハァ……ったく、しゃーねーなー……、ほらよっ!」
「キャッ!?」
「だがな……先に言っておく。オレは勇者だが、お姫様付の騎士じゃねぇんだ。そこんとこ勘違いすんじゃねぇぞっ!!!」
「えっ!?」
「しっかり掴まってろよ、飛ばすぞ。オイ、守り役!!」
「ハッ、はい!?」
「ちゃんと着いて来いよ。お姫様が攫われても知らねぇぞ。ヘッ!!」
「なっ!!」
「行くぞっ!!!」
『ズドンッ!!!』
言うが早いか、トーマは一気に城までをジャンプするように地を蹴る。
「えっ!?……なにコレ?」
「コイツは《龍氣》による跳躍、オレたちは【舞空】って呼んでる。結構気持ちイイだろ?」
「す、スゴい……スゴい!!スゴいよ、コレ!!!」
「オレはまだ完璧にこなせてないけど、飛べるヤツはホントに空を飛べるんだぜ」
「そんなコト無いよ。……飛んでる……トーマ……コレ飛んでるもんっ!!!」
「どうだ!?気に入ったか?」
「うんっ!!」
「気が向いたら、またやってやるよ。ミコト姫様っ!!」
「うんっ!絶対!!約束だよっ!!!トーマ!!!!」
「ああ、約束だっ。……おっと……せいっ!」
『ドンッ!!!』
(クッ……何てスピードですの?……連続の空間転移ですら、追うのがやっとですわ……)
空間転移者(テレポーター)を置き去りにしかねないほどのスピードで、空を疾駆するトーマ。
そして、そのトーマに抱き抱えられ、未知の体験をして興奮気味のミコト姫。
それにしても……トーマ君、少々カッコ良すぎやしませんか?
そして、そのトーマに抱き抱えられ、未知の体験をして興奮気味のミコト姫。
それにしても……トーマ君、少々カッコ良すぎやしませんか?
「ホイっと……とうちゃーく……って、何してんだよ?」
「えっ!?」
「着いたって言ってんだろ?降りろよ」
「あ……うん……」
トーマはミコト姫を優しく降ろすと、そのまま振り返り……
「じゃあな……えっ!?」
帰ろうとしたのだが……、そのトーマの袖をミコト姫が掴んでいた。
「……ねぇ……もう一回……」
「ハァ?」
「……もう一回……」
「あのなぁ……オレもそれなりに忙しいんだよ。お姫様のワガママに付き合ってる時間はねぇんだ」
「もう一回!!!」
「ッたく……ガキじゃあるまいし……」
「む~~~~~~~~~~~っ!」
「むくれてんじゃねぇよっ!!!」
「む~~~~~~~~~~~っ!!」
「あのなぁ……お姫様……」
「む~~~~~~~~~~~っ!!!」
「……ハァ……」
「む~~~~~~~~~~~っ!!!!」
「……しょうがねぇなぁ……」
「えっ!?」
「もう一回だけだぞ」
「ほっ、ホントにっ!?」
「ホントにもう一回だけだぞっ!」
「うんっ!!!」
「お待ち下さい!!」
「よう、守り役。早かったな?」
「く、クロコ?」
「(……嫌味ですの?……まったく……)さすが勇者様。わたくしの『力』を持ってしても、追い付くのがやっとでしたわ」
「そりゃ、どうも……」
「姫様!!」
「ひゃっ……ひゃいっ!!」
「先程は、お城までの帰路と言うことで大目に見させていただきましたが、今度はそう言う訳には参りません!!!」
「……なっ……何でよっ……」
「先程のことを誰かに見られたとしても、緊急時故に勇者殿にお城まで送っていただいたと言い訳が立ちます。ですが!!!」
『ビクッ!!』
「姫様のワガママで遊覧飛行に洒落込んだ。などと噂を立てられたら如何なされますっ!?」
「……うう……」
「それでなくても姫様のお転婆ぶりは、町民達の噂に上りやすいのですよ!?ですから、努めて目立たぬようにと、わたくし口を酸っぱくして……」
「……う、う……うるさい……」
「……プッ……クッ……ハハッ……ハハハハハ……」
「なっ、何よっ!?……そんなに笑わなくたってイイじゃない!!!」
「イヤ、悪い……でもさ、オマエらしいなって思ってさ……」
「えっ!?」
「お姫様のクセして、お姫様らしくねぇっつーか……」
「えっ!?……えっ!?」
「負けん気強ぇし、すぐビリビリして来やがるし……」
「うっ……うるさいわよっ!!」
「ま……守り役のヤツが言ってることも尤もだし、オレも色々しなきゃならないことがあるから、『もう一回』はまた今度な」
「……む~~~~~~~~~~~」
「むくれるなって……」
「だって……だって……」
トーマはむくれるミコト姫の耳元にそっと近寄り
「(飛んでる時のお前の笑ってる顔、可愛かったぜ。また見せてくれよな)」
と囁いた。
「えっ!?……(かっ……かわっ……可愛いっ!?……それに……また……って……?)」
「んじゃ。またな、ミコト」
(ヘッ!?……名前……呼び捨て……えっ!?……)
名前を呼び捨てにされ、混乱しているミコト姫を尻目にトーマは城のテラスを飛び立ち【舞空】に移る。
『ドンッ!!!』
「あっ……(それに……『またな』……って……)」
その飛翔は先程ミコト姫を抱えて飛んだ時の数倍の速度だった。
「……な……何とっ!?」
思わずクロコが驚嘆の声を上げる……。
(アイツ……さっきは……私が居るから……速度を抑えてくれてた……の?……)
飛び去るトーマの背中を見ながら、ミコト姫はそんなコトを考えていたが……
「~~~~~~~~~~~~~~~カッコ付けてんじゃないわよ……あのバカ……」
強がってそう言い放った美琴姫の顔は、真っ赤になっていた。
一方、そのミコト姫にしっかりフラグを立てたトーマは……
「……ったく、あのお姫様のワガママにも困ったもんだ……サッサと用事をすまさねぇと、またジッちゃんにどやされるぞ……」
と、自分がフラグを立てたことに全く無自覚だった。
オートフラグメイカー体質とその鈍感さは、今も昔も変わらないらしい。
天然スケこまし……女の敵だな……コイツ……。
オートフラグメイカー体質とその鈍感さは、今も昔も変わらないらしい。
天然スケこまし……女の敵だな……コイツ……。
「よう、トーマ。お楽しみだったようだな?」
空を疾駆するトーマの横に、一人の男が並び駆けてきた。
「ヘッ!?……あっ!ミノル師範!?」
「全部見てたぜ……この天然スケこましが……ミコト姫様にフラグ立てるって……どう言うつもりだ?」
「ハァ?……何すか?フラグって……」
「……(もしかして……コイツ……自覚なし?)……オマエなぁ……」
「それより、ミノル師範が見つかって良かったですよ。ジッちゃんが……老師様がお待ちです」
「ああ、昨日この町に入られたそうだな」
「ええ」
「ご報告しときたいコトがあるからな……急ごう」
「ハイッ!!」
二人はシン老師の待つ宿に向かって《加速》した。
「そうか……『ア』の国が動き出しておるのか……」
「ええ、それも何かの実験をしているようで……」
「実験?」
「何でも、我ら【勇者】に匹敵する戦士を育てる実験だとか……詳細はまだ調査中なので、その内容までは分かりかねますが……」
「我ら【勇者】と同等の戦士とな?」
「はい。どのような経緯でそのような者を開発するに至ったのかは皆目分かりませんが……その意図は簡単に推察出来ますから……」
「フム……」
「……」
「多分、『力』の強大化で対抗しようとしておるのだろうが……それでは『闇』に呑まれてしまうぞ」
「だけど、ヤツらにはそれが分からない……『闇』に呑まれた結末を知らない……」
「今しばらく様子を見てくれんか……人手が足らんとは思うが……」
「いえ……グンハとハマヅラが成長してきましたからね。当面は行けるでしょう」
「しかし……北の『ラウ』の国に続いて、東の『ア』の国までが……」
「わが国の進める合議制の共和国家建設……最初は賛成していた国々が、この頃は……」
「確かに『あの男』のやり方には強引な面もある。だが……それも『あの男』なりの理想があってのこと。決して間違ってはいない……と思っておるのじゃがな……」
「ですが……『あの男』が教皇になってからですよ。各国の離反が始まったのは……それまでは……」
「我らにも見えぬ動きが何処かにある……と考えるべきなのかも知れん……だが、ワシは『あの男』を信じたい……。同じ師に学んだ『あの男』を……」
「老師のお気持ちは一同皆理解しております。しかし……」
「ミノル……お主の言いたいことは分かっておる。……じゃが……もう少し時間が欲しい。『あの男』はワシにとって掛け替えのない友じゃ」
「……はい……」
「……すまぬ……」
「そんなっ……老師様……老師様がお気になさることではありません!!!」
「我ら【勇者】は、本来政に関わってはならん。本来ならばどの勢力にも属さず、創造主の導きに従うことを第一とすべき者……。それをねじ曲げたのは……ワシじゃ……」
「そんなコトはありません!!老師様が『新しき国家の建設』の呼びかけに応えられ、立ち上がられたこと。我らは本当に誇りに思っております!!!」
「ミノル……」
「老師様が創造主の意に従われるように、我らは老師様の意に従いまする。その決意だけは決して、決して……」
「すまぬ……すまぬ……」
師と弟子は共に涙しながら、己の決意を今一度確かめ、共に目指す道を歩むのだと誓っていた。
(全く、何なのよ。アイツは!!!)
(あの後、『老師様のお使いがあるから』とか何とか言っちゃってさ、結局私との約束を果たさないまま、都に帰っちゃって……)
(せっかく見送りに行ってやったっていうのに、お別れの時に『またな~、ビリビリ姫』ですってぇ~~~~(ムカムカ……))
(あの後、半年近くも経つのにさ……約束果たしてくれる気配なんてまるでないし……)
(でも……アイツに抱っこされて、空を一緒に飛んで……スゴく気持ち良かったなぁ……)
(空を飛べたのもそうだけど……、アイツがしっかり私のことを抱き抱えてくれてて……スッゴい安心感があって……)
(その上……ちゃんと私が怖くないように、速度も抑えててくれてさ……キャッ♪)
(また飛びたい……アイツに抱っこされて飛んでみたいな……『約束』守ってくれたら、お返しにキスしてやろうかな……(ポンッ!)……えっ!?……ええっ!?……あ、あ、あ、アイツに『キス』!?……私ったら、なに考えてんのよっ!!!)
(あの後……聞き間違いじゃなかったら……ううん、間違いじゃないわ。絶対に『名前』で呼んでくれた……『ミコト』って……。なぜか分からないけど……スッゴいドキドキしちゃった……)
(でも……都に帰ってからの、アイツの活躍を幾つか知ったけど……全部女絡みじゃない!!!)
(都のインデックス姫の救出に、アイサ姫だっけ?確か黒髪のロングヘアがスッゴい似合う美人だったな……)
(それにヒョウカ姫だっけ?インデックス姫の友だちとらしいけどさ……胸が大きくって、メガネッ子で……可愛らしい娘だったな)
(それにアイツと良く一緒に映ってるロングヘアの【勇者】も……胸が大っきいし……スッゴい美人だし……)
(他にも二重まぶたの巨乳のことか……アイツってまさか『巨乳好き』なの?)
(わ、私だって……今はまだ、そんなに大っきくないけど……ママ……じゃない、『お母様』は抜群のプロポーションなんだから……。私もそれに似るはずなんだ……だから、あの子達には負けない……はずなんだけどな……)
(北の『ラウ』の国との戦闘でも、あいつ一人で勝っちゃったみたいなモノらしいし……でも、褒美はいらないって。褒美のために闘ってるんじゃないってカッコ付けちゃってさ……すごいよね……カッコいい……な)
(……って、どうして私ったら、ずっとあのバカのことばっかり考えてんのよッ!!!)
(私は、一度アイツと勝負して勝ってるんだからねっ!!!……例え【手合わせ】の特別ルールだったとしても……勝ってるんだもん……)
(ホントは気にする事ないんだ……ないはずなのに……何でアイツがこんなに気になるんだろう?)
「私ったら、一体どうしちゃったっていうのよぉ~~~~~!!!????」
「お姉様ったら一体何を悩んでるの?って、ラストはラストは聞いてみる」
「ヘッ!?」
「ん?」
「……あ、あの……ラストちゃん?」
「なに?なに?お姉様?って、ラストはラストは答えてみる」
「……一体……何時から、……そこに居たのかな?」
全身にイヤな汗をかきながら、ミコト姫は妹のラスト姫に問いかける。
「お姉様がこの部屋に入ってきて……ウロウロし出して……その後急にお顔を真っ赤にさせて……で、何か怒ったような感じで、身体から電気が出て来たので……ラストはラストは部屋の隅に避難したんだけど……」
(……それって……ほとんど最初っからってコト……よね……)
「その後また、ほっぺたを赤くして『ポーッ』となってて……そしたら急に頭を抱えて『私ったら、一体どうしちゃったっていうのよぉ~~~~~!!!????』って叫んだところまでしっかり見てたよって、ラストはラストは報告してみる」
「……(ポンッ!!!)……」
「どうせ、トーマお兄ちゃんのことを考えてたんじゃないかな~って、ラストはラストは推察してみたり」
「……(ポポンッ!!!)……」
「あー、お姉様ったら赤くなった。赤くなったぁ~。って、ラストはラストはお姉様をからかってみたり」
「(ピクッ!)……ラ・ス・ト・ォ~……」
「(ビクッ!?)し、しまった。調子に乗りすぎてしまったって、ラストはラストは反省してみたり……」
「イイから、そこ動いちゃダメよ。今日という今日は、その生意気な口を……」
「こっ、この口をどうするっていうのかな?って、ラストはラストは答えを聞きたくないけど、余りの恐怖に聞いてみるしかなかったり……」
「その生意気な口をぉ~~~~~……」
「それより、お姉様はトーマお兄ちゃんのことが好きなんでしょ?って、ラストはラストはこの事態を回避するために問題の本質に迫ってみたり」
「ヘッ……ゎ、ゎ、わたっ、わたっ……私が……あ、あ、あ、あ、アイツの事……す、す、すすすすすす『好きッ!?』……?……」
「そうじゃないの?お姉様?って、ラストはラストはトドメを刺してみる」
「好きッ!?……す、す、すすすすす好きッてコトは……き、き、き、きききキスしたり……、こっ、こっ、ここここここ恋人になっちゃったりして……で……けっけっけけけけけ結婚しちゃったり……で、……結ばれて……あ、あか、あか、あああ赤ちゃん何かまで出来ちゃったり……って……」
「お姉様の思考の飛躍が余りに激しすぎるって、ラストはラストは突っ込んでみたり……」
「ふ……」
「ヤバいっ!!、こっ、コレは……ま、まさか……って、緊急待避のため、ラストはラストはこの部屋から脱出してみたり!!!」
「ふ……ふ……ふ……ふ……ふにゃぁぁぁぁあああああ~~~~~~~~~(バリバリバリバリバリバリ)」
ラストのイタズラによるミコト姫の漏電で、この後、クロコ、カザリ、ルイコの3人のメイド達はマイカメイド長の指導の下、ミコト姫の部屋の模様替えをするハメになった。
その後、カザリとルイコに問い詰められ、マイカにはからかわれて、一緒に部屋の模様替えをしながら、真っ赤になっているミコト姫を目撃した者は少なくなかったという。
その後、カザリとルイコに問い詰められ、マイカにはからかわれて、一緒に部屋の模様替えをしながら、真っ赤になっているミコト姫を目撃した者は少なくなかったという。
一方、ミコト姫がそんなコトになっているなど、露ほども知らない【勇者】トーマは……。
この半年の間続いた闘いの疲れを癒すべく、『勇者の里』に戻り定期検診を受けていた。
この半年の間続いた闘いの疲れを癒すべく、『勇者の里』に戻り定期検診を受けていた。
「うん、別にドコも異常はないね」
「ホントにっ!?ドクトルゲコタ……じゃあ、しばらくはここでゆっくりしていってもイイんだな」
「構わないよ。しかしキミは【勇者】の中でも、とびきり回復力がすごいね」
「老師様が言ってたんだけど、『浄化』の《龍氣》を構築する際に、必ず『再生』の《龍氣》も構築されるらしいんだ。でも、それは闘いに使わないから、その闘いの後に、肉体再生に回ってるんじゃないか?って」
「なるほどね。面白い考え方だけど、理に適っているね。老師様が仰るのなら、多分そうなんだろうな」
「まあ、オレにしてみりゃ、そんな理屈はどうでもイイんだけどな。はやく治ってくれるに越したことはないしさ」
「それはそうだね……時にトーマ……最近老師様のご様子はどうだい?」
「別に変わったトコロはなかったぜ。いつも通り元気だったし……」
「そうか……ならイイんだ。でも、老師様もお年だしね。医者の立場のボクからすると、もう少しご自分のお身体を労って欲しいんだけど……お忙しいしからね……」
「そうだよなぁ……オレたちはこうやって、闘いが終わった後に休ませて貰えるけど……老師様は何かある度に、そこに出掛けて行かれるから、休む間なんてないよな……」
「ああ……でも、トーマ。最近は老師様のことを『ジッちゃん』って言わなくなったね。ナゼだい?」
「別に……周りがウルサいってのもあったんだけどさ……それだけじゃなくって、ホントに老師様ってスゴいんだなって……思えることがあってさ……」
「ほう……」
「それ見てから……「ジッちゃん」なんて気安く呼べなくなっちまった……」
「何があったんだい?」
「……言いたくねぇ……」
「えっ!?」
「言ったら、泣いちまうから……言いたくねぇ……」
「……そうか……」
「えっ!?」
「だったら、それを自分の一番大事なところに仕舞っておくことだね。そして、決して忘れないことだ」
「ドクトル……」
「私と老師様の間にもね、そういう想い出があるから……少し、分かるんだよ……」
「ありがと……ドクトル……」
「なに……礼を言われるようなことはしていないよ」
『ドタドタドタドタ……』
「な、何だね。騒がしいなぁ……ここは病院だよ。もう少し静かに出来ないのかい?」
「トーマ!……トーマは!?」
「オレならここだぜ、イツワ」
「あっ!トーマ……大変!!大変なのっ!!!」
「大変って……何かあったのか!?」
「タビカケ城が……タビカケ城が……」
「なっ……なにっ!?」
「タビカケ城が……『ア』の国の襲撃を受けて……何とか持ち堪えてはいるそうだけど……もう、落城寸前だって……」
「……う、ウソだ……ろ?」
「ウソじゃないわよ。ついさっき、ミノル師範から連絡が入ったのよ!!!」
「……ミコト……アイツ……無事だろうな……」
「何でも、普通じゃ考えられない『力』を持った戦士が居るらしくって……通常攻撃や『力』による攻撃はおろか……《龍氣》の攻撃さえ跳ね返すんだって……」
「そっ、そんなバカなっ!?」
「ミノル師範からの連絡だから間違いないよっ!!……それに……」
「何だよっ!まだ何かあるのかっ!?」
「ミコト姫様の……」
「なっ、何だって!?」
「ミコト姫様の『複製人間』が多数連れられてて……それを、その最強の兵士が殺しまくってるらしいのよ。そんな実験を重ねて……その兵士を育てて来たんだって……」
「何でそんなもんが……アイツの『複製人間』なんてモノが敵の手にあるんだよ!?」
「数年前に我が国で、秘密裏にそういう実験を繰り返していた組織があったらしいんだけど、その組織の科学者の一人が……『ア』の国に逃げ延びたらしくって……その時に、ミコト姫様の遺伝子情報を一緒に持っていったらしいって……」
「何でアイツの遺伝子情報なんてモノがそこにあったんだよ!?」
「姫様は体内電気を扱える『力』をお持ちだから、身体の不自由な人のためにそれが役立つのならってコトで、提供されたんだって……。それが今……悪用されてて……」
「……冗談じゃねぇぞ!!!……アイツは、……アイツは……普通のお姫様で……普通の女の子なんだ……」
「トーマ?」
「ちょっとだけ気が強くって……ワガママで……だけど……笑うとスゴく可愛くって……ホントに……ホントに普通の……ただの女の子なのに……」
「……トーマ?……」
「アイツ……今頃……絶対に泣いてるはずだ……こんなことされて、泣かないヤツなんて居る訳がない……」
「アイツ、ホントはスゴい泣き虫だからな……泣いて、泣いて、泣いて……」
「……まさか、アイツ……頭に血が上って……その戦士とやらに向かって行ってんじゃねぇだろうな!?」
「ゆ・る・さ・ね・え……」
「あいつを泣かせるヤツは、絶対に許さねぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『ズッドォォオオオンンン!!!!!』
「トーマッ!!!!!」
一方、その時のタビカケ城では……
(……ウソ……ウソでしょ?……なによ……何なのよ……アレは?)
(……私の……私の『複製人間』……って……何でそんなモノが……)
(あ……あそこにいるのは……私……私なの?……ううん……違う……私は……私だけ……でもっ!!!)
(あの子達は……あの子達は……私の細胞情報から生まれた……言わば……私の『妹達』……)
(それを実験に使って……殺しまくって……『最強の戦士』を……作る?……)
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「冗談じゃないわ!!!」
「許せる訳がないでしょう!!!!!」
「何の権利があって、アンタは私の『妹達』を殺し続けているのよっ!!!!!!!」
「『最強の戦士』を作る?たった……たった……たったそれだけのために……何で私の「妹達」が殺されなきゃならないのよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ひっ、姫様ッ……落ち着いて、落ち着いて下さいましっ」
「どきなさい、クロコ!!!コレが落ち着いていられる訳がないでしょう!!!!!!!!!!!!!」
「はっ、早くッ……早くッ、姫様を奥にっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
『バリバリバリバリバリバリッ』
「キャアッ!!!!!」
「殺す……ころす……コロス……『妹達』が味わった痛みを、全部アンタに返して……そしてアンタを……私が殺す!!!!!!!!」