とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part19-1

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見知らぬ記憶3


「……ウッ……ウウッ……ヒック……ウッ……」

「……美琴……泣いてんのか?……」

「と……ま……わ……私……私……うわああああああああ……」

「なに泣いてんだよ……みんな、無事だったろ?」

「……違う……違うの……」

「何が違うんだよ?」

「……当麻を追って、ロシアに行った時……『私も闘える』と思ってた。……そして本当に闘って、当麻に会いに行ったけど……」

「……」

「それは、本当は……間違ってたんじゃなかったのかな?……って……」

「……」

「夢の中で当麻が言ったコト……『こんなところでなにしてんだよっ』って言われンッ!!……」

 美琴の言葉を聞いていた当麻がいきなりその唇を唇で塞ぎ、美琴の身体を『ギュッ』と抱き締めた。
 その強引なキスと抱擁に身を任せる美琴。

 やがて当麻はその唇を離すと……

「オマエは正しいことをしたんだ。それは間違っちゃいない。だから泣くな」

 そう優しく耳元で呟いた。

「……うん……」

 そう言うと美琴は当麻の胸に顔を埋め、再び眠りにつくのだった。



「ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

「トーマ!トーマ!トーマ!トーマ!」

 勝利の歓声と、トーマコールがタビカケ城に響き渡る。
 トーマはその歓声の中、ゆっくりとタビカケ城に向かって歩いて行く。

 城の庭園は多くの人で溢れていた。
 その庭園の一番奥には、新たに設えられた玉座があった。
 戦闘で荒れた城内を避け、質素ではあるものの威厳を讃えた謁見の場がそこにはあった。

「【勇者】トーマ。こちらへ!!!」

 謁見の場に、よく通る声が響き渡る。
 それまで騒がしかった観衆が、水を打ったように静まりかえる。

『コツッ、コツッ、コツッ、コツッ』

 謁見の場に近づくトーマの靴音だけが、庭園内に響く。
 謁見の場の中央にまで進むと、トーマは膝をつき傅いた。

「領主、タビカケ様よりお言葉がある。心して聴くように」

 この場を取り仕切るのは、師範ミノルである。

「はっ!!!」

 静寂の中、庭園を揺るがすような声でトーマが答える。
 そして、タビカケが立ち上がり、トーマに語りかける。

「【勇者】トーマどの。本当にありがとう。君のお陰でこの地に平穏が戻った。心から礼を言う」

「はっ!!!」

「今、どれ程の言葉を紡ごうと、そなたへの感謝の想いを表せるとは思えぬ。また、いかなる褒美を与えてもそなたのはたらきに報いられるとも思えぬが……、欲するものがあれば言うが良い。この地の民を代表し、出来る限りのことをさせて欲しい」

「お褒めの言葉を戴き、恐悦至極。されど、我ら【勇者】はこの国のために働くと決意し、創造主の意志に報いんとする者にて、この国の安寧が何よりの褒美にございます」

「よくぞ言われた。だが、それでは私の気持ちが済まぬ。本当に何かないか?」

「……」

「ウーム……しかし、困った。これほどのはたらきをした【勇者】に何の褒美も与えぬままにする訳には行かぬし……、かといってトーマ殿自身が何も言わぬのでは……」

「されば……トーマに成り代わり【勇者】の里を治める長として、お願いの儀が御座りますれば、お聞き届けいただけますでしょうか?」

 とシン老師が言葉を挟む。

「おお!シン老師。今日のトーマ殿のはたらきもシン老師のお導きがあってのこと。何なりと仰って下さりませ」

「では……遠慮無く……」

「ウム」

「ご領地の西側、『ア』の国との国境近くに未開の土地があると聞き及んでおります。その土地を『勇者の里』として頂戴したい」

「なっ……なんとっ……。あの地は、人が住むには険しき土地。多くの猛獣や怪物も居ると聞いております。そのような場所を『勇者の里』にとは……」

「だからこそに御座います。我ら【勇者】の修行の地として、最適の場所と心得まする。それ故の願いにて、ぜひにもお聞き届け戴きたい」

「シン老師がそこまで仰られるのであれば……是非もないが……トーマ殿、今のシン老師のお申し出、異存有りや無きや」

「我が師の意に従うは、弟子の務めにございます。異存などあろうはずがございません!!!」

「判った。では、シン老師、トーマ殿。此度の勝利の褒美として、その地をそなた達に与えよう!!!!!」

「「ははっ!!!!!有り難き幸せ!!!!!」」

「トーマ殿」

「はっ!!!」

「そなたには、この地の領主としてではなく、一人の親として、全く別に礼を言わねばならん。……我が娘の命、救ってくだされたこと……いかなる礼を尽くそうとも、表せるものではないが……。本当に……本当に心から礼を言う。よくぞ、我が娘を救って下さった。ありがとう、本当にありがとう……」

 そう言って、涙を流しながらトーマの手を取り、頭を下げるタビカケ。

「何と勿体ない。お手をお上げ下さい、タビカケ様」

「トーマ……」

「ミコト……姫様……」

「あなたには、本当に大切なことを教えて戴きました。心からお礼を申し上げます。本当にありがとう」

「勿体なきお言葉、いたみいります」

「あなたの言葉、胸に、心に、魂に、深く深く刻ませて戴きます」

「ありがとうございます」

「あなたに助けて戴いたこの命、決してムダにはいたしません。私は私の成すべき事を成して行きたいと思います。そして、その為の努力を惜しまぬよう、日々努めて参ります」

「はっ!!!」

「……(どう?トーマ)……」

「……(やるじゃねぇか、お姫様。いい顔してるぜ)……」

「……(当然よ。なんてったって私は生まれながらのお姫様なんですからね)……」

「……(ヘッ、言うねぇ)……」

 他の者には聞こえぬほどの声で、二人だけの会話をするトーマとミコト。

「父上からのご褒美がありましたが、わたくしからも【勇者】殿にご褒美を差し上げたいと思います……受け取って下さいますか?」

「はッ!!ありがたき幸せ!!!」

「では……トーマ、顔を上げて戴けます?」

「はっ?……こうですか?」

 と、傅くトーマが顔を上げミコト姫を見つめたたその瞬間……

「えっ!?」

「ミコト……」

「ミコトちゃん、やるぅ~」

「お姉様ったら、大胆……って、ラストはラストは吃驚(ビックリ)してみたり」

「お……お姫様……ウ~ン……」

「わぁ~、クロコさんが、クロコさんが……って、ルイコさん?」

「……(ポンッ!!)……」

「アララ……」

「コレはコレは、ホッホッホ」

 その周囲に居た者たちが一斉に驚きの声を上げる。
 周囲の者たちが驚いたその理由。
 それは、ミコト姫は顔を上げたトーマに抱きつくと、彼の唇に自分の唇を重ねたのだ。
 そして……その唇を離すと、トーマに向かってこう言った。

「私は貴方が好き。トーマが好き。大好きッ!!!」

 一方トーマは……。
 今起こったことが全く理解出来ず、ただただ呆然とするのみだった。
 ……と思った途端、トーマは糸が切れたマリオネットのように、その場に倒れてしまった。

「えっ!?……トーマ?……トーマ!?……ねぇ……どうしたの?……えっ!?ヒドい熱……だ、誰か早く……早く医者を……トーマ!トーマ!!しっかりして……トーマ!?……」

 ミコト姫が絶叫に近い声を上げ、トーマに呼びかけている。
 周囲の者たちは皆、その様子を見守るしかなかった。

 しばらくして、トーマが運ばれた病室の前。

「多分……【龍氣炎】の影響でしょうね……。相当に『氣』が減ってます」

「やはりの……」

「老師様も……そうだったのですか?」

「うむ……初めて【龍氣炎】を纏った後は……三日三晩寝込んだわ……ホッホッホ……もう昔のことで忘れておったがの……」

「そんな呑気な……ミコト姫様に聞かれたら、どれだけ怒られるか判りませんよ」

「そりゃイカン……ホッホッホ」

「しかし、やはり『諸刃の剣』なのですね。【龍氣炎】も……」

「当然じゃ。何より創造主の力をそのまま使えるようになる訳じゃからな。我らの器では……その全てを受けきれん」

「はい……」

「その反動は必ずくる。まあ、回を重ねる毎に慣れもするがな……」

「……ウーム」

「今日、トーマが【龍氣炎】を纏っていた時間はまだ短い方じゃろう。元々回復力もある方じゃから、そう心配せんでもイイとは思う」

「はい……」

「それに……」

「は?……それに……とは?」

「倒れたのはそれだけじゃあ無さそうじゃからの……ホッホッホ」

「?」

 シン老師の言う通り、トーマは三日三晩寝込んでしまった。
 そのトーマを甲斐甲斐しく世話するミコト姫。
 ほとんどトーマの傍を離れようとはせず、不眠不休での看病が続いた。
 そんなトーマが倒れてから四日目の朝……

「……ぅ……ん……」

「……あ、……トーマ?……大丈夫?……気が付いたの?トーマ……」

「う……あ……うん……、……えっ!?……えっ!?……み、みっ……みこっ……ミコトッ!?……あっ……姫様……」

「トーマッ!!」

 そう叫んでトーマの胸に飛び込むミコト姫。

「……良かった……急に倒れるから、心配で心配で……」

 一方、抱きつかれたトーマは……

(ヘッ!?……な、何が起きてるんだ?……ミコトのヤツがオレに抱きついてて……何か、柔らかいモノまで当たってて……そう言えば……オレが倒れたって……あの謁見の場で、急に意識が遠のいて……その前に……ミコトがオレに……き、き、き、き、ききききききキスゥ~~~~!!!!!!)

「(ボムッ!!!!!)……ウーン……」

『バタッ!』

「えっ!?えっ!?トーマ!?どうしちゃったの?急に顔を真っ赤にしたと思ったら、また倒れちゃって……。……トーマ!?トーマ!?ねぇ、トーマったら……?……えっ!?イヤッ……トーマ、しっかりしてっ!!……ドクトル!!ドクトル!?……誰か!?誰か……ドクトルを呼んで!!!」

 再び倒れてしまった。
 今度は別の理由で倒れたようだが……。

「うん……まあ……心配はないようだね。脈拍も血圧も正常だし……」

 とドクトルが言う。

「そうですね、『氣』の状態も正常に戻ってます。もう大丈夫ですね」

 とイツワが応える。

「……良かった……グスッ……ホントに……一時は……ウッ……ヒクッ……どうなるかと……ウウッ……」

 半分泣きベソをかきながら、それでも寝ているトーマから目を離そうとしないミコト姫。
 そのミコト姫を後ろから見つめている……というより睨んでいるイツワ。

「じゃあ、ボクはコレで……。姫様もあまり根を詰めると、お体に障りますからね。お気をつけ下さい。では……イツワ、行くよ。……イツワ?」

「……えっ!?……あっ、はい。……ドクトル……」

 ドクトルに呼びかけられていることにやっと気づいたイツワは、慌てて一緒に病室を出て行くのだった。
 二人が出て行った病室で、ミコト姫はトーマの手を握り、愛おしそうにその手に頬を寄せるのだった。
 看病の疲れもあって、トーマの手に頬を当てたミコト姫が眠りに墜ちるまで、時間はほとんどかからなかった。

「ん……ぅ……うん……」

(何か……右手が……重いな……アレ?)

(えっ!?……ええっ!?……みっ、みっ……ミコトッ!?……おっ、おまっ……オマエッ……!?)

 再び倒れたトーマがやっと目を覚ました。
 だが、ミコト姫が自分の右手を握って頬を当てて寝ている姿を見て、慌ててしまう。
 が……その寝顔を見つめて……

(コイツもこうしてると普通の女の子なんだよな。……でも、……コイツは……お姫様で……綺麗で……凛々しくて……輝いてて……)

(オレのことを「好きだ」って言ってくれたけど……オレは……オレは……)

「……ん……ムニャ……トーマ……好き……だよ……ふにゃぁ~……」

「ミコト……」

(そう言ってくれるのは……ホントに嬉しいよ。でもな……オレにとって、オマエは素敵すぎる……眩しすぎるんだ……)

(コイツには……オマエには、オレより……オレなんかよりもっと相応しいヤツが居る……オレなんか……オレなんか……)

(でも……そう思うのに……何でオレは……こんなにイライラするんだろう?)

(オマエのことは……守ってやりたい……と思う。……オレの命を賭けてもイイ。それだけの価値がある……と思う。……でも、……オマエの気持ちに応えることは……オレには……オレには……できそうにないよ……)

(オマエはお姫様で……ホントに眩しくって……でも……オレはタダの……ただの【勇者】でしかない……)

(オレなんか……オマエの足元にも及ばない……でも、……何でオレは……この胸の中のモヤモヤは……オレの胸が……こんなに締めつけられるように苦しいのは……何でだろう?)

「オマエがお姫様じゃなかったら……な……」

 自分の手を握り、安心しきった顔で気持ちよさそうに眠るミコト姫に向かって、トーマは手を握り替えし、そんな独り言を呟くことしかできなかった。

「タビカケ殿、此度の褒美。誠にありがとうございます。……ただ……」

「はい、中央には必ず報告を入れます。でなければ色々と難癖を付けてくるでしょうし……」

「ワシからも報告しておきます故……。特にワシらから願い出たと言うことを強調して下され。しかし……中央にも困ったものじゃて……」

「皆さんは『この国を守る』事を第一としておられるのに……、奴らは『自分たちを守る』事を優先させようとする……」

「その通りです。ワシがこの『ワ』の国に居を移したのも、そして『新しい国作り』に協力すると決めたのも、先帝の志に呼応したからこそ……。じゃが……今中央に居るのは……」

「仰る通りです。……先帝が急逝され、跡目争いが起こり……、今はもう……」

「幼きインデックス姫を押し立てる一派が幅をきかせておりますな……。しかも……その中心には『あの男』が……」

「教皇・アレイスター……ですな。老師様とは旧知の仲とお聞きしていますが……」

「同じ師に学んだ同志にござります。先帝の志に呼応し、アレイスターの呼びかけがあったからこそ……我らは……。……ですが……今は……」

「老師様はあの男をどう見ておられますか?」

「変わった……とは思いたくない……というのが本音ではあるのですが……今のやり方を見ていると、師の教えを忘れてしまっているように見えます」

「今でもまだあの男のことを……」

「信じたい。……そう思ってはおります。……長年『友』として過ごしてきた訳ですし……それに、同じ師に学んだとは言え、ワシは『武』であり、ヤツは『文』であった。本来なら国の両輪であらねばならぬ間柄なのですが……、どうも……最近は疎遠になっておりましてな……」

「実は……同盟国である『ナ』の国から、幾つかの情報が寄せられておりまして……」

「おお……『ナ』の国と言えば、女王ながら名君と誉れ高きエリザード女王が治めておられる国ですな」

「はい。……でその中でも気になるのが、『ナ』の国の古文書が最近かなり盗難に遭っていると……」

「ほう……」

「しかもその古文書は、どうやら『術』に関する資料が大半のようで……」

「何ですとっ!?」

「やはり『術』のことはご存知でしたか……」

「それほど詳しく知っている訳ではありませぬが……『術』はとうの昔に廃れた『邪法』であると、師から聞かされております」

「『ナ』の国にはその『術』を記した古文書が残されて居るようでして、その『術』を専門とした勢力も未だにあるそうです」

「むう……」

「この国では『邪法』として伝えられておりますが、『ナ』の国では『力』では成せないところを補うために、長く伝えられてきたようです」

「ウーム……」

「ですが、あくまでも脇役としての位置付けであり、本来主役にはなれない影の存在……。だったのですが……」

「それを前面に押し出そうとする者たちが居る……と?」

「はい……。しかも、その盗難事件の裏側にあの男、教皇・アレイスターの影が見え隠れしていると……そのような連絡が……」

「如何にあの男が変わったとは言え、『術』にまで手を伸ばすとは考えられぬ。師より『忌むべきモノ』として教えられたモノに手を出すなぞ……」

「まだ確証が掴めた訳ではありません。ですが『火のない所に煙は立たぬ』と申しますから……」

「ウーム。……我らも独自で動いてみましょう。もし事実ならば……」

「……事実ならば……どう為されるおつもりですか?」

「あの男との縁を……考え直さねばならんでしょうな……。……そうならなければ……良いのですが……」

「……」

 遠い目をして、昔のことを懐かしむように物思いに耽るシン老師を見守るタビカケの眼には、寂しさと共に厳しい光が秘められていた。

「トコロで老師様、話は変わりますが……『里』の件ですが……」

「おお、その件については早速取り掛からせていただこうと思っております」

「私どもも協力出来ることがありましたら……」

「いやいや、ご心配には及びませぬ。それに中央に要らぬ気遣いをさせたくありませぬからな。お気持ちだけ戴いておきまする。ホッホッホ」

「なるほど……では、そのように……」

「タビカケ殿……ワシも一つ、お聞きしたいことがあるのですが……」

「はい、何なりと……」

「実は……ミコト姫様のことなのですが……」

「あ……はい……」

「ミコト姫様のトーマに対するお気持ち……ワシには本気に見えるのですが……」

「父親の眼から見ても、アレは本気でしょう。いざとなれば『姫』という地位を捨てることも厭わぬ気で居ると思っています」

「ウーム……そこまでのお覚悟があると……」

「はい。父親としては少々寂しいのですが、いつかは嫁にやらねばならぬのですから……それに……娘の幸せを願うのは、どの親も変わりはありません。ミコトにとっては彼の傍に居るのが一番の幸せだと……私は思っております」

「そうですか……ならば、お話しさせて戴きまする」

「はい」

「我ら【勇者】は、本来『無縁』の者にて、住むべき土地を持たず、諸国往来勝手を許された『道々の輩』にございます。故に、我ら一族の中に入る。ということは、俗世との『縁』を切り『無縁』にならねばならぬ。と言うことでもあるのです」

「ム……」

「我らには、創造主の意に倣う。という絶対の目的がございます。その為、血縁の『血』に縛られず、土地の『地』に縛られず、そして時代の『知』に縛られぬよう、全てから『自由』であることが大事とそのような生き方を続けて参りました」

「……」

「今はこの『ワ』の国に居を構えてはおりまするが、いつ何時、ここを離れるやも判りません」

「むう……」

「もし、ミコト姫様がトーマと共に居たいと仰るのであれば……タビカケ様達との『縁』を切らねばならぬコトになること、お伝え願えますでしょうか?」

「また……厳しいことを……」

「はい……確かに厳しゅうございます。また、今の時代にそぐわぬ習わしであるのも事実です。ですが……もし、タビカケ殿が何らかの形で立たれたとしても、それが創造主の意に沿わぬモノであると見た時には……」

「協力はできぬ……と?」

「はい。例え大事な姫様が我ら一族にお入りになられたとしても、それだけは変える訳には参りません。我らは創造主の意を第一とする者。その事を姫様にも、そしてタビカケ殿にも知っておいて戴きたいと思い、お話しさせて戴いた次第です」

「判りました。その事、私よりミコトに伝えておきましょう。……ですが……ミコトはそれを受け入れるでしょう……」

「ほう……」

「あの子の目を見た時、私はそれを直感しました。あの子は全てを捨ててでも彼を選ぶだろうと。それだけの覚悟があると、私は思っております」

「タビカケ殿……」

「ハハハ……父親としては寂しい限りですが……。実は、ミスズをもらい受ける時に、アレの父親から言われましてな」

「ほうほう……」

「『お前にもいつかワシの気持ちが分かる時が来るだろう』と……。それはこう言うことなのですなぁ……」

「なるほど……なるほど……ワシには子が居りませぬので……判りかねる想いでもありますが……」

「……老師様……今宵は一献、お付き合い願えますかな?」

「ホッホッホ、この様な老人が相手で宜しいのですかな?せいぜい愚痴を聴くくらいの役しかできませんぞ」

「構いません。老師様の武勇伝もお聞かせ戴ければ、気も紛れましょう」

「判りました。是非ともお付き合いをさせていただきましょう。ですが、年寄りの話は長くなりますぞ。ホッホッホ」

「ハハハハハ、お手柔らかにお願いいたしまする。ハハハハハ……」

 二人の笑い声が王宮に響き、長い酒宴が始まろうとしていた。



「……ん?……起きたのか?……美琴」

「……当麻……おはよう……」

「もう……昼近いけどな……おはよう」

「……ねぇ……キス……して……」

「ん?……ああ……ン……」

「ン……んん……うん……んんッ……ん……好きよ……当麻……」

「何か、改まって言われると……恥ずかしいな……」

「……バカ……」

「……アハハ……ゴメン……」

「フフッ……でも……」

「ん?……どうしたんだ?」

「また、当麻に助けられちゃった」

「オイオイ……」

「ホントに……当麻が助けてくれなかったら……どうなっていたんだろう?って……」

「オレが美琴を助けない訳がないだろ?……そんなの考える必要なんて無いよ……まぁ、助けたのは昔のオレであって、今のオレじゃないけどな」

「もう……ムードが台無しじゃない……」

「そうか?」

「む~~~~~~~~~~~~~~~ッ」

「……美琴は、怒った顔も可愛いな……チュッ」

「ふにゃぁ~~~~~~~~~~~~~~~……エヘヘ~」

「それにしても……あの『夢』……アレって本当に記憶なのかな?」

「うん……」

「どう考えてもおかしいよな……」

「うん……そう……。何処か現実と混同しちゃってるのかしら?」

「あの『妹達(シスターズ)』の件だろ?」

「そう……過去にあんな同じようなことがあったって言うのもショックだけど……。軍用クローンなんて技術、今でもほとんどトップテクノロジーよ。過去にある技術じゃない……」

「それ以外にも、今の学園都市よりも進んだ科学水準な気がするモノが……」

「あの小さな小箱から通信出来るディスプレイが投影されるなんて……SFやアニメなら良くあるけど……」

「そうだよな……」

「『能力』に関しても……闘いの中で、普通に使っていたのを見たわ」

「レベル3から4ってトコロだったよな?」

「それも……多分……開発されたものじゃない……もっと自然な……」

「『持って生まれた能力』……って感じだったな……」

「うん……」

「過去にあったことと言うには、余りに変だし……」

「つじつまが合わないところが多過ぎるわよね……」

「……」

「……」

「でも、オレたちが見ている内容な同じ……だよな?……何でだ?」

「そこはやっぱり『記憶』なのかな?」

「……無理です。上条さんのおバカな頭では、何が何やら分かりません……ふにゃー……」

「キャッ……当麻ったら……どこ触ってんのよっ!?……ダメッ!……そこはっ……ああんっ……みみみ……み……んっ……んんッ……」

「んんッ……んあっ……トコロで、……美琴姫様は、本気でこの当麻に嫁ぐおつもりですか?」

「えっ!?……なっ、なによ、いきなり!?……それに、ビリビリした状態でキスするなんて……当麻の意地悪……(おかしくなっちゃうじゃない……)」

「オレもそろそろ限界なんだ……マジで、こんな状況が続いたら……。それに『夢』の中の美琴がスゴく綺麗で……素直で、『好き』って言ってくれたから……」

「そっ、そんな急に……言われたって……確かに当麻のことは……大好きだし……もう、プロポーズもした仲だし……」

「美琴の答えが聞きたい。怖いって言うなら……我慢する……から……」

「(えっ!?なにッ!?当麻……スゴい真剣な表情……。もしかして……そんなっ……でも……こんなに明るいのに……そりゃあ……イヤじゃないけど……やっぱり恥ずかしいじゃない……全部見られちゃう訳だし……、胸も……そんなに自信ないし……。でも……当麻が望むなら……)……優しくしてね……当麻……」

「……イイのか?……それが美琴の答えなのか?」

「うん……そうだよ。……当麻が望むなら……イイよ……///」

「美琴……好きだ……」

「うん……私も……当麻のことが……す『どっばーーーーーん』……キャアッ!!!なに!?なにッ!?」

「オジャマするぞ~上条当麻。御坂、御坂~、すまないけどオリーブオイルが切れたので、少し貸して貰えないか……って……あ……。ホントにオジャマしちゃったみたいだな~……」

「「~~~~~~~~~~~~~~~舞夏ァ~!!!!!!」」

「気にするな~。私はすぐに退散するから、気兼ねなく続きをやってくれたらいいぞ~。じゃあ、コレは借りてくからな~」

「「~~~~~~~~~~~~~~~」」

(舞夏のヤロウ……せっかく良い雰囲気だったのに……後、もうちょっとだったのに……)

(どうやってやり直せって言うのよ。続きなんて出来る訳無いじゃない!!!)

(美琴は……どうするんだ?)

(当麻は……もしかして、まだ……)

(美琴もまだ……期待してる?)

(当麻も……止まれないの?……それなら……まだ……)

「……美琴……あの……さ……」

「ぅ……うん……なに?」

「もう少しだけ……イイかな?」

「えっ!?……当麻が……そう言うなら……私は……その……イイ『ガチャッ!!』……よ?」

「フッフッフ……それにしてもお二人さん、昼間っから……お盛んですな~」

「「~~~~~~~~~~~~~~~」」

「じゃあなぁ~」

「「~~~~~~~~~~~~~~~二度と来るなぁッ!!!舞夏のバカァ~~~~ッ!!!!!!!!!」」

 ……不幸だ……。


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