とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part53

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とある右手の番外編(パラレルワールドストーリー)


『チーン』

 学生寮のオンボロエレベーターが7階に着いたことを示す音を鳴らし、扉がゴトゴトと音を立てながら開く。

「ホント、メンテしてるのかよ……」

 上条さん、毒突いてますなぁ……。

「じゃあ、オレが飯の支度するから、美琴は部屋の片付けをしてくれな」

「う……うん……」

 まだちょっと辿々しい美琴さん。
 緊張してます。
 そりゃそうですよね。ココに入るのは初めてなんですから……。

「あ……アレ?」

「どうしたの?」

「カギが……開かない……」

「えっ!?」

「なんで……?そんなバカな……?」

「どうして?」

「オレだって分かんねぇよ……朝はちゃんと……ダメだ……」

「どうする?」

「管理人のオッサンに言って……アレ?」

「どうしたの?と、当麻……?」

「空いてる?」

「ヘッ!?」

「カギが開いてる……?」

「えっ!?」

「なっ、なんだ!?中からチェーンが……?一体どうなってるんだ?」

「とうま?帰って来たの?」

「「え゛……?」」

「ちょっと待ってなんだよ。……お帰り、とうま……って、……なんで短髪まで居るの?」

「いっ、インデックス?……おっ、オマエ……いつコッチに戻って来たんだよ!?」

「何言ってるの?とうま。私はずっとここに居るんだよ?」

「ハァ?……何言ってんだよ。この前の戦争で、フィアンマに首輪の遠隔操作霊装を使われて、身体に負担がかかり過ぎたからって、イギリスで療養してたじゃねぇかよ?」

「戦争?フィアンマ?首輪?」

「まぁ、別に帰って来たんならそれでも良いけどさ、帰って来るなら帰って来るで、ちゃんと連絡入れろよな」

「何を訳の分からないことを言ってるのかな……とうまは?(ガチガチ……)」

「そりゃ、コッチのセリフだ……あ、美琴。入れよ」

「……」

「第一、なんで短髪と一緒なの!?」

「あのなぁ……この前、イギリスに連絡入れたろう。オレは美琴と付き合うことにしたって……。オマエも納得してくれたじゃねぇか……」

「だ~か~ら~、私はずっと、ここに居るって言ってるんだよ~~~ッ(ガブッ!!!)」

「ぎぃいゃぁぁぁああああああ……久々の噛み付き……これは……懐かしい痛み……じゃなくって……不幸だァ~~~!!!!!」

「……な、何よ……これ……」

「ヘッ!?……あ、美琴……」

『ガジガジガジガジ』

「一体……何なのよッ!?」

「えっ!?……痛ぇっ、はっ。離せよッ。インデックスっ……」

『ガジガジガジガジ』

「さっきまで……あんなに優しくって……笑いかけてくれてたのに……何なのよっ!?コレはっ!!!!」

「「ヘッ!?」」

「一体何がしたいのよっ……アンタはっ!?」

「美琴……?」

「さっきまであんなに優しくって、見たことのない笑顔で笑いかけてくれて……人に一杯期待させといて……。それで何ッ!?コレは一体何なのよっ!?」

「短髪?」

「アンタ、一体何様のつもりなのよっ!?この部屋に居候させて貰ってるみたいだけど……何なのよ、この散らかりようはっ!?」

「うっ……」

「少しくらい片付けたらどうなのよっ!?一緒に住んでるんでしょ?部屋を片付けるとか、掃除するとか、洗濯物を片付けるとか、それくらい出来るでしょうがッ!?」

「うぐッ……」

「どうせ全部やって貰ってるんでしょ?それくらい見たら分かるわよ。全部コイツに依存して、甘えて……それで……それで……恋人って言えると思ってる訳!?」

「あ……あの、……美琴……」

「アンタは黙ってて!!!!!」

「はっ……はヒッ……!?」

「アンタには別に言いたい事があるんだからっ!!!!!」

「ヘッ!?」

「その上、自分の思い通りにならないからって、コイツに噛み付いて!!!アンタ、シスターなんでしょっ!?シスターがそんなコトしててイイ訳!?」

「ううっ……と、とうま……」

「み、美琴……落ち着け……落ち着けよ……なっ……」

「アンタもアンタよっ!!!どうして何にも言わないのよっ!?」

「あ……う……い、イヤ……それは……」

「ただ甘やかしてるだけじゃないっ!?恋人ごっこしてるだけじゃない!!それで一緒に住んでるところを私に見せつけるってどう言うつもりよっ!?」

「なっ……何を言ってるんだよ?」

「何って、今……ココで……アンタとこの銀髪シスターがイチャついてたじゃないっ!?」

「お……オマエには……アレがイチャついてるように見えるのかっ!?」

「だってそうじゃない!!!あんな風に普通に会話して、普通に噛み付かれて……それを受け入れて……今だって、その子を庇ってるじゃないっ!!!」

「別にそう言う訳じゃないよ……」

「さっきまで、あんなに優しかったのに……」

「えっ!?」

「あんなに優しくって、一杯笑いかけてくれて……。今までの毎日がウソのようで……。思わず期待しちゃったわよ……。アンタと一緒に過ごせたら……って……。なのに……なのに……」

「おっ、オイ……美琴ッ」

「何よ……コレは……何なのよっ!?……こんな、何にも出来ない……銀髪シスターとの恋人ごっこを見せつけて……、こんな手の込んだことして……、最初っから……私のことがキライなら……キライならキライだって言えばイイじゃないっ!!!!!」

「待てッ!!美琴ッ!!!!!」

「とうまっ!!待って!!!」

「オマエはここに居ろっ!!ドコにも勝手に行くんじゃねぇぞっ!!!」

「えっ!?」

「オレは美琴を連れ戻してくる。それまでに勝手にどっか行ってやがったら……オマエといえど、ぶっ飛ばすからなっ!!!!!」

「ヒッ……」

「イイなっ!!分かったなっ!!!!!」

「う……うん……」

 インデックスさんの返事を聞いた途端、上条さんは美琴さんを追ってダッシュしました。
 何か……ヤバイ展開だなぁ……。
 困ったなぁ……。

(エレベーターは……まだ1階までは降りてない)

(先回りするには……コレしかない……か)

「せいっ!!!」

 わ……わ……上条さん、無茶しちゃダメですって。
 樹に飛び移って、下に降りるなんて……。

「クッ……よっと……」

 え……ぅ、上手い……。
 な……何で……?

「っと……ハッ……よしっ!!!!!」

『ダンッ!!!』

 ど、どうして……こんなことが……?

「ヘッ……、夢の中の勇者様の修行ってのも、結構役に立つもんだな……」

 エエッ!?そ、そんなの……アリですかっ!?

「美琴……居たッ!!……待てよっ!!!美琴ッ!!!!!」

「こ、来ないでよっ!!!……私のことがキライだから、あんなことしたんでしょっ!?」

「何言ってんだよっ!!オマエのことをキライになる訳なんかねぇじゃねぇかっ!!!!!」

「えっ!?」

「ずっと一緒に居るって誓ったじゃねぇか!?一緒に歩いてくって誓ったじゃねぇかよ!?」

「……知らない……」

「何言ってんだよっ!?アレを忘れたって言うのか!?」

「……私……知らない……」

「オレが、オマエの電撃を受け止め損ねて……病院で、オマエがスッゴい素直になってくれて……だから、オレはオマエに『好きだ』って言って……オマエもオレのこと『好きだ』って言ってくれたじゃねぇかよっ!?……アレを……アレを忘れたって言うのかっ!!!!!!」

「し、知らない……私、……そんなこと……知らないッ!!!!!」

「……何だって……?」

「ホント……ホントに知らないの……」

「ば……バカな……そ、そんなバカなっ!?」

「アンタと私は……この数ヶ月……ケンカしかしていない……。出会ったら……『勝負よ』って私が言って……その後は……ビリビリ追いかけっこか……ケンカするか……。そんなことしか……していない……」

「な……何だよ……それ……?」

「なのに……今日のアンタは……、あのメールはまるで、恋人に送ってくるような優しいメールで……。会ったら、優しくって……温かくって……楽しくって……私……私……あんなに嬉しいの……知らない……」

「どうなってんだよ……一体……」

「今日のアンタは、いつものアンタとはまるで別人……。全然違う人みたいだった。でも、それでも……最後は……あのシスターと……」

「あっ……アレは違うッ!!!!!」

「えっ!?」

「オレの部屋にインデックスは居ない。居ないはずだった。確かに以前は一緒に住んでたこともあった。だけどそれは、恋人とかそんな関係じゃなくって……ほとんど家族みたいな関係で……」

「……ウソ……」

「ウソじゃねぇよっ!!!……オマエも見たろう、あの部屋の中を。アレが一緒に歩いて行こうって決めた恋人同士の部屋かよっ!?」

「……あ……」

「アイツは、インデックスはオレにとっちゃ、妹って言うか……娘みたいな存在なんだ。家族みたいなモンだったんだよ」

「えっ……だった?」

「そうだよっ!!!分かってないようだから言うけどさ……今のオレにとっては、オマエと一緒に居ること以上に大事なことなんて無いんだよっ!!!!!」

「……えっ……//////////」

「オマエと……御坂美琴と一緒に歩む。御坂美琴とその周りの世界を御坂美琴と一緒に守る。そして二人で幸せになる。オレは、オレたちはそう誓ったんだよ」

「……そんなこと……(は……恥ずかしい……でも、スッゴい嬉しい……)」

「でも……何で……あの誓いを忘れるなんて……美琴が、あの誓いを忘れるなんて……絶対にあり得ない……」

「……当麻……」

「一体……何が起こってるっていうんだ?」

「ご、ゴメンナサイ……私……私……」

「美琴は悪くないよ……でも……ホントにあの誓いを覚えてないのか?」

「うん……知らない……というより、そんな風に出会ってないの……」

「そ、そんな……じゃあ……一体……ココは……」

 どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……

「ん……アレ?」

「どうしたの?」

「右手がさ……何か……震えてるんだよ……?」

「えっ!?……ホントだ……」

 どうしよう……どうしよう……どうしよう……どうしよう……
 ヤバい……マズい……ヤバい……マズい……

「……まさか……」

「どうかしたの?」

「ん?……ああ、まあな……ちょっと心当たりがあってさ……」

 ギクッ!!!

「美琴……頼みがあるんだけど……」

「えっ!?……何?」

「超電磁砲(レールガン)を2~3発……この右手にぶち込んでくれないか……それも、とびきり出力(パワー)のあるヤツで……」

 ギクッ!!!ギクッ!!!

「エエッ!?何言ってるのよっ……そんなことしたらッ……」

「オレにじゃないよ……この『右手』にぶち込んでくれって言ってるんだよ」

 ギクッ!!!ギクッ!!!ギクッ!!!

「それなら……でも……幻想殺し(イマジンブレーカー)がはたらいて……」

「その幻想殺し(イマジンブレーカー)にお仕置きしたいんだよ……多分、今回の事件の張本人だからな……」

 ドキィッ!!!!!!!!

「幻想殺し(イマジンブレーカー)が張本人?……何それ?」

「説明は後でするからさ……とにかくやってくれよ」

「イイけど……右手の震えが……すごいよ……ほら」

「……やっぱりな……」

 うわぁぁぁぁああああああ……バレた……バレちゃった……どうしよ……どうしよ……どうしよう……。

「……オイ、右手……」

 ドキィッ!!!!

「テメエ……何しやがった……オレを何に巻き込ンだンだァ!?」

 上条さん、アクセラさんが入ってる……一方通行さんが入ってるぅ~~~~。ガクガク(((( ;゚Д゚)))ブルブル

「今出て来たら許してやってもイイ……だがよ……隠し通そうってンなら、コッチにも考えがあるンだよなァ……」

 ヒッ……ひぇぇぇぇえええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!

「美琴にさ、至近距離からレールガン2~3発ぶっ放して貰っちゃおうかなァ……」

 イッ……イヤぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!

「それとも……雷雲でも呼び出して貰おうか?」

 ダラダラダラダラダラダラダラダラ……

「当麻……右手……汗が……」

「オイッ!!いつまでも隠せると思ったら大間違いだぞっ!!!!!オマエが今回の犯人だってのはネタが割れてんだよっ!!!!!!!」

『ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!!ゴメンナサイ!!!!』

「エエッ!?……み、右手が……喋ってるぅ~!?」

「やっと出て来やがったな……コノ野郎……」

『ヒェェェエエ……。お、お願いですから……お願いですから……レールガンの連発だけは……それだけは勘弁して下さいィィ~~~~』

「ンじゃあ、洗い浚い……全部吐くってんだな……」

『はっ……ハイッ!!……全部お話しさせて戴きますんで……どうか……どうか……』

「分かった……だが……ちょっとでも変なウソでごまかそうとしたら……」

『分かってます……分かってますから……ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!!ゴメンナサイ~!!!!……』

 ああ……とうとうバレちゃったよォ~……。
 許して貰えるかなぁ……。
 困ったなぁ……。
 ああ……不幸だ……。

『……で、かくかくしかじか……という訳でして……』

「信じられない……幻想殺し(イマジンブレーカー)が喋るなんて……」

「そこかよ……突っ込むところが違うだろ?」

「えっ?……ああ、そうね……エヘッ……」

「『エヘッ』じゃねぇだろ……何か……美琴のイメージが……」

「私も聞きたいことがあるんだよ?」

『ハイ、インデックスさん……何でしょう?』

「幻想殺し(イマジンブレーカー)は一体どの魔術に属するのかな?」

『申し訳ないんですが……魔術には属しません。というより、魔術と一緒にされるのは心外です』

「えっ!?」

『魔術は本来、神の理から外れた力です。私は『神様の力の一部』ですから、根本的に違います。一緒にしないで戴きたいです』

「魔術が神様の理から外れてる?……そんなコトはあり得ないんだよっ!!!」

『そう思っているのはあなた方魔術師だけです。我々から見たら、とんでもない思い違いなのですよ。多分、どれだけ言っても理解はされないでしょうけれど……』

「だって、魔術は神様の力を使っているんだよ?それが神様の理から外れてる訳がないんだよっ!!!」

『あなた方魔術師がその理を自分たちの都合の良いように歪めて……ですよね。自分たちの都合で神様の理を歪めている。それが神様の理から外れていないとどうして言えるのですか?』

「ううっ……」

「じゃあさ、どうして魔術が存在できるわけ?」

『そんなの簡単ですよ、美琴さん』

「えっ!?」

『それが神様の懐の深さ、慈愛の大きさの現れなのです。それに神様の理から外れているのは、別に魔術だけに限ったことではありません。他にも沢山あるんですよ。それらを全て除外してしまったら……この世は存在出来なくなってしまいます』

「「……へェ……」」

「何となく……」

「分かったような……分からないような……」

『宗教的な話になってしまいますが……神の子は、何と説かれたのですか?』

「「「えっ!?」」」

「『神の子』って……イエス・キリストのコトよね?」

「だろうな……この場合……」

「『神の子』が説いたこと……」

『『汝の敵を愛せよ』ですよね』

「「「あっ……」」」

『汝の敵を愛するのに、魔術が必要ですか?相手を傷つけるだけの魔術が必要なのですか?』

「だけど、魔術は神の奇跡を……」

『だから、それを歪めていると言っているのです』

「何か……スゲえこと聞いた気がする……」

「そうよね……」

「うう……」

「でもさ、それと今回のこととは……」

『ギクッ!!!』

「別だよねェ~……」

『ギクッ!!!ギクッ!!!』

 インデックスさんが来た時は『しめたッ』と思ったんだけどなぁ……。

「そういうコトだな」

『(ふ、不幸だ……)』

「「「オマエが言うなっ!!!」」」

『(す、スミマセ~ン……)』



「……つまり、この世界は並行世界(パラレルワールド)で、オレにとってはココは別世界って訳か……」

『そうなります……ハイ』

「ココでは、第3次世界大戦も起こっていない。イギリスのクーデターもない。だからオレが学園都市から姿を消した訳でもない……」

「うん……そう……」

「インデックスや、妹達(シスターズ)の事件は起こってるらしいけど……『神の右席』の事件そのものが起こっていない……ということか……」

『多分……この世界の上条さんは、アナタよりもまだ成長していないのでしょうね』

「えっ!?……どういうコトだよ?」

『神様は超えられない試練をお与えになることはありません。今のこの世界の上条さんでは、『神の右席』や『第3次世界大戦』を超えられないと判断されているのだと思います』

「だから、そう言った事件は起きない……ってコトなのか?」

『ハイ、そうなります……』

「たった一人のために、世界の出来事が変わっちゃうなんて……」

『でも、それが世界の成り立ちでもあるんですよ。だから、この世界に必要ない人なんて存在しないんです。皆さんがどう思われるかは別ですけど……』

「「「へェ……」」」

「だったら、今回のことも『神様が与えた試練』ってコトになるのかよ?」

『コトを起こしたのは私たちですけど……、神様がそれを容認なさっているということは……そういうコトになります』

「うーん……」

『ただ、神様が容認なさったということは……アナタなら超えられる試練だと判断されたということになります』

「……へェ……そういう風に考えればいいのか?」

『そうですね。そう考えた方がイイというか……、そう考えることが大事だと思います』

「なるほどなァ……」

「……そうだよね……」

「えっ……美琴……じゃなくって……御坂……だよな……」

「えっ?……ううっ……」

「そんなに寂しそうな顔するなよ……でも、やっぱりオマエはオレにとっちゃ『美琴』じゃないんだよな……」

「ううっ……グスッ……」

「泣くなよ……オイ、右手……どうすんだよ?」

『私に言われましても……』

「……グスッ……ご、ゴメンね……。でも……それだけアナタとの出会いが素晴らしかったんだ……私にとっては……」

「えっ!?」

「それに……コレは私にとっても『試練』なんだよね?」

『ハイ、そうなりますね』

「だったら、私もこの『試練』を超えられるようにならなきゃイケないって事よね?」

『そういうコトですね』

「うん、分かった……」

「……御坂……」

「それに……スゴく素晴らしい想い出を貰えたんだもん……。自分が何をしたかったを教えて貰えた。自分が何を忘れていたかを思い出させて貰えた。大切な『願い』を思い出せた。だったら……それに向かって歩んでいくことが大事……ってコトだよね」

『その通りです』

「私は、この世界の上条当麻と一緒に歩めるようにならなきゃいけないって事なんだ……。コレはそういう事に気付くための『試練』なんだな……」

『美琴さん、多分それが正解だと思いますよ。……ただ、それだけじゃない……とも思います』

「えっ!?……それだけじゃない?」

『アナタだけじゃないってコトですよ。この世界の上条さんにとっても同じく『試練』な訳ですからね』

「そういや、コッチの世界のオレって……ドコに行ってるんだ?」

『もちろん……上条さんが元居た世界ですが……』

「えっ!?……あ……そ、そうか……」

「あの……上条さん……」

「何か……変な感じがするけど……オレのことだよな?」

「ぅ、うん……私も変な感じがするけど……」

「ハハハ……で、何だ?」

「アナタの世界にいるアナタの世界の私のこと、心配じゃないの?」

「そりゃあ、心配だけど……多分、大丈夫だと思う……アイツなら『美琴』なら気が付いてると思うよ」

「何でッ!?……何でそんな風に信じられるの?どうやったらそんな絆が結べるのっ!?」

「一緒に歩むって決めたからな。一緒に幸せになるって誓ったから」

「あ……」

「信じてるって言うと、軽いかも知れないけど……。でもそう、やっぱり信じられるんだよな……大丈夫だって……オレが大丈夫だったようにさ」

「そ、そんな……でも……スゴい……スゴいな……私も……そんな風になりたい……」

「なれるよ。オレがなれたんだからさ」

「そんな……そんなの……無理だよ……」

「今のオレがずっと前から居た訳じゃない。今のオレは『美琴』と一緒に歩いてきたから、そのお陰で成長出来てるんだよ」

「えっ!?」

「その一緒に歩いてきた経験がなかったら、今のオレは無かったんだ。今のオレは居ないんだよな。だからこそ、一緒に歩いてきたからこそ、信じられるんだ」

「一緒に歩いたからこそ……信じられる……」

「御坂美琴に相応しい男になる。って決めたからな。だから、そうなれるようにオレはオレが出来ることをやってるだけだ」

「簡単に言うけど……そんなに簡単に言うけど……」

「やる前に悩んでたって、どうにもならないぜ」

「えっ!?」

「やらなきゃ分からないことがあるんだよ。前に進まなきゃ分からないことがあるんだ」

「……」

「超えたヤツには分かるんだけどな。超えられないヤツには絶対に分からないんだ。超えないと分からないことがあるってコトはさ」

「超えないと……分からない?」

「ああ、そして超えられないヤツに限って、そう言うと『イジメ』だとか、『出来たから言える』とか言うんだよ。でも、ホントは違うんだよな」

「違うって?」

「本当は誰にでも超えられるのさ。そして、後は『やる』か、『やらない』かのどちらかを選択するだけなんだけどな。大体が『やらない』を選んで、その言い訳を並べ立てるのさ」

「でも……超えられるかどうかなんて……」

「さっき、右手が言ったはずだぜ。『神様は超えられない試練を与えられることはない』ってな」

「あっ!!!」

「だから、超えられるんだよ。後は『やる』か『やらない』かだけだ。そのどちらを選ぶかは、全部自分次第なんだよ」

「あ……そうか……」

「目の前にハードルがあったら飛び越えないと気が済まない誰かさんが、何でこんなことに尻込みしているのかは知らないけどな……レベル5になった経験からも分かるはずだぜ」

「うっ……」

「そしてコレは……、そこでイジけてるシスターにも言えることだよな?」

「……何で、そこで私に振るのかな?」

「今日、御坂から結構キツいことを言われたみたいだけどな……アレって、ほとんどその通りだと思うぜ」

「エエッ!?」

「オマエはその頭の中に10万3千冊の魔道書を蓄えてる訳だけど……じゃあ、それをどうするってコトを考えたことがあるのか?」

「えっ!?」

「闇坂のオッサンの時にオマエ言ったよな。『こんな薄汚れた魔道書に頼っちゃいけないんだよっ』ってさ」

「あ……うん……」

「その薄汚れた魔道書をお前自身がどうするのかを、お前自身が考えなきゃいけないんじゃないのか?」

「ううっ……」

「その事から目を逸らしてる毎日を送ってちゃ、ダメなんじゃないのか?」

「そ、そんなコト言われたって……どうしたらいいか……分からないんだよ……」

「だから、それを探すことを『やる』しかないんじゃねぇの?それがインデックスに与えられた『試練』なんじゃねぇの?」

「私に与えられた……『試練』?」

「そうだよ。それをオマエはオマエ自身で考えなきゃいけないんだよ。だって『完全記憶能力』を持っているオマエでなきゃ、それは解決出来ないことなんだと思うからさ」

『上条さんの仰る通りですね。アナタが『完全記憶能力』を宿している意味をアナタは考える必要があるのだと思いますね』

「『完全記憶能力』を持っている意味……?」

『そうです。そして……それはアナタでなければ見つけられない。アナタ自身が解決しなければならない、アナタ自身の問題なのですから』

「私自身の問題……」

「それにしてもさ……オイ、右手……」

『あ……ハイ……』

「何となくだけど……上手く誤魔化そうとしてねぇか……オマエ?」

『えっ!?……イヤ……そ、そんなことは……』

「まあ、こうやってみんなでこの事態がどうしてこうなったかも分かったし、コレから進むべき道もボンヤリと見えてきたんだから……イイんだけどな……」

『あ……ハイ……』

「オレにとっての一番の問題は……オレはちゃんと元の世界に戻れるんだろうな?」

『あ……その件に関しては……大丈夫です』

「えっ!?そうなの?」

『今日、入れ替わった時間から24時間後に、またもう一度入れ替わりが起こります。それ以前には無理ですけど……』

「じゃあ、明日の9時頃には俺は元の世界に戻れるって訳だな?」

『ハイ……そうなります……』

「ハァ……良かったァ~……もしかしたら、ずっとコッチで過ごさなきゃならないのかと思っててさぁ……それだけが不安だったんだよな……」

『申し訳ありません。私たちの勝手で、こんなことをしてしまって……』

「その件に関しちゃあキッチリ落とし前付けて貰わないとな……」

『あ……あのう……一体、どうすれば……?』

「それはオマエに与えられた『試練』なんだろう?」

『あ……』

「「「プッ……、アハハハハハハ」」」

『う~~~~~~~~~~~ッ……』

「それじゃあ、私は帰ります」

「んじゃ、送っていくよ。インデックスは留守番な」

「分かったんだよ。とうま」

「え……でも……」

「遠慮すんなって。それに……変なことに巻き込んじまったお詫びも兼ねてるんだしさ……」

「ハイ……じゃあ、遠慮なく……」

「じゃあな、インデックス。帰ったらメシ作ってやるからな」

「うん、待ってるから早く帰ってきて欲しいんだよ……お腹減った……」

「んじゃ……行くか?……御坂」

「あ……ハイ……」

「スルーしないで欲しいかもっ!!!(やっぱり後で噛み付いてやる……ガチガチ)」

『あ、あのう……私ちょっと、神様から呼び出されたみたいで……しばらく外しますんで……一応力は残しておきますから……大丈夫だとは思うのですが……』

「へェ……神様からの呼び出し……ねぇ……。怒られんじゃねぇの?」

『ヒッ!?……おっ、脅かさないで下さいよォ~……』

「まぁ、それだけのことをしたってコトだろう?」

『あ……ハイ……本当に申し訳ありませんでした……じゃあ、ちょっと行って来ます……』

「ああ……ハァ……しかしなぁ……ホントに散々だったなぁ……」

「フフッ……そうですね……あ、あの……上条さん?」

「ん?……どうした?」

「お願いがあるんですけど……」

「なんだ?言ってみろよ」

「(モジモジ)」

「???」

「あ、……あの……」

「ああ……」

「あの……」

「うん?」

「あっ!……あのッ!!」

「ああ」

「いっ、今だけでイイんですっ!!……もう一度だけ……『美琴』って……呼んで貰えませんか……?」

「……」

「今だけで、一度だけでもイイから……お願い……『美琴』って……呼んで……欲しいの……アナタに……」

「……」

「上条さん……?」

「……ゴメン……それは出来ないよ。……というか、しちゃいけないことだと思う……」

「えっ!?……あ……」

「御坂はこの世界のオレと、そういう関係を結んでいかなきゃいけないんだと思う……。……だから、ココでオレが御坂をそう呼ぶのは……やっちゃいけないコトだよ。確証はないけど……そんな気がする」

「……ハイ……」

「ホントは呼んでやりたい……んだけどな……。それをしたら、元の世界に戻った時に、アイツに『美琴』に怒られそうでさ……」

「……上条さん……それって……惚気……ですか?」

「そっ、そんなんじゃねぇよっ!!!」

「プッ……フフフッ……」

「……プッ……アハハハハハハ……」

「……じゃぁ……ココで……イイです……」

「そうか?……もうちょっとあるけど……」

「大丈夫ですから……。……本当にありがとうございました。とても楽しかったです」

「そうか?お礼を言われるようなことは何にもしてないんだけどな……」

「ううん。大切なものをいっぱい、いっぱい……教えて……貰った……から……」

「そっか……」

「あ……あの……」

「何だ?」

「最後に……もう一つだけ……お願いがあるんですけど……」

「ん~……名前呼び以外なら……」

「あの……アイツが……この世界の上条当麻が帰って来た時の……予行演習を……させて……欲しいな……って」

「ヘッ!?」

「アイツに……と、当麻に……素直に想いを伝える……予行演習が出来たら……って……」

「それくらいなら……イイかな?」

「ホントにっ!?」

「……ああ、イイぜ……」

「じゃ……じゃあ……」

「ああ……」

「ゎ……私……私は……私はっ!!……私は、アナタが好きッ!!!アナタが好きですッ!!!!……上条当麻さんが大好きですっ!!!!!」

「ああ……オレも御坂が好きだぜ」

「う……ううっ……うっ……。……あっ……ありがとうございましたっ!!!」

「あっ……御坂……」

 オレが御坂を呼び止めようと思った時には、アイツは寮の方に向かって駆け出していった後だった。
 オレはその背中に向かって……

「ガンバレよ、御坂……美琴……」

 と言って、インデックスの待つ寮に足を向けた。

「学校も休みだし、帰るとしたら……ココだよな……」

 そう言ってオレは、いつもの自販機のある公園に立っていた。
 インデックスは見送りに来ると行ったが、丁重にお断りをした。
 昨夜、御坂を送った後インデックスとも話をしたが、どうやらイギリスに帰って、もう一度一から魔術の勉強をするつもりらしい。
 コッチの世界の上条当麻はどう思うかな?
 そんなコトがふと頭を過ぎったが……すぐに消えていった。

『ココを選ぶなんて……上条さんらしいと言うか……』

「まあな……トコロで、オマエ。昨夜はどうだったんだよ?」

『あ……アハハ……ハア……、神様からは……かなり……ハイ……』

「でさ、コレからもこんな風に出てこれる訳?」

『そ、それは……さすがに……』

「そりゃそうだろうな……何処かの魔術師と対戦してる時に喋られたんじゃぁ……コッチがおかしくなっちまう」

『わ、私としては、そういうのは出来るだけ避けて戴きたいんですけど……』

「だけど、オマエの本来の役目は……」

『それを昨夜、神様からこっぴどく言われまして……アハハ……だから、しばらくはこうやってお話しすることも禁止になりましたし……今の意識も少しの間、休眠して『力』のみの存在に……』

「そっか……ま、しゃーねーな……ちょっと可哀相な気もするけど……」

『そんな……あ……そろそろ時間ですよ……』

「おっ……来た来た……」

(二度目だけど……何度やられても……あんまり気持ちの良いもんじゃねぇな……)

「ん?……元に戻れたのか?」

「お帰り……当麻」

「あ……アレッ!?……美琴?」

「そっちも大変だったんじゃない?」

「ああ、ソコソコな……オマエこそ、どうだったんだよ?」

「うん……、それなりにね……」

「そっか……しかし……お騒がせな右手だぜ……まったく」

「ホントよ……お泊まり……一日損しちゃった……」

「あ……そうか……そうなるのか……」

「ね……今夜は……イイでしょ?」

「ああ、オレも一緒に居たい気分なんだよな……」

「エヘッ……嬉しい……」

「ただいま……美琴」

「うんっ!!!!!お帰りッ!!!!!……チュッ♪」


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