第1章 幻想殺し
2. 「In the door back again」
「そろそろ落ち着いたか、美琴……」
「だって……今日まで……ずっと……待ってたんだから……」
「――ああ、待たせて悪かったな……」
「そうよ……。全部……当麻が悪いんだから……」
「――ちゃんと責任は取るさ……」
「だって……今日まで……ずっと……待ってたんだから……」
「――ああ、待たせて悪かったな……」
「そうよ……。全部……当麻が悪いんだから……」
「――ちゃんと責任は取るさ……」
そのまま上条は、美琴に唇を重ねた。
3. 「Turning the Tables」
――なぁ、俺ってバカみてぇだよな。
――なんかさぁ、1人で舞い上がっててさ。
――俺って本当、幸せになんてなれないんだな。
――なんかさぁ、1人で舞い上がっててさ。
――俺って本当、幸せになんてなれないんだな。
あれから上条は、家にいる間は、ただぼうっと窓から外を眺めているだけだった。
いや、大学の講義中さえぼうっとしている有様だった。
大失恋の痛手など、なかなか癒えるものではない。
1人でいると、自意識の海の奥深く潜り、抜け出すことさえままならなくなる。
いや、大学の講義中さえぼうっとしている有様だった。
大失恋の痛手など、なかなか癒えるものではない。
1人でいると、自意識の海の奥深く潜り、抜け出すことさえままならなくなる。
――俺にひと時の夢だけ見せて、全て取り上げる神様なんて信じられねぇよな。
――インデックスのためにって思ってきたけど、何もかも無駄だったってことか。
――インデックスのためにって思ってきたけど、何もかも無駄だったってことか。
部屋のドアが開いた。
何気なく上条はそちらに目をやる。
何気なく上条はそちらに目をやる。
「ああ、御坂か……」
その声に生気はなく、ただ呟くように発せられただけだった。
御坂美琴は、何も言わず、彼の横に座り、上条の顔を見ず、同じように外の景色を眺めた。
御坂美琴は、何も言わず、彼の横に座り、上条の顔を見ず、同じように外の景色を眺めた。
「アンタ……、ちゃんとご飯、食べた?」
「ん……、少しだけ……。後はあまり……」
「そう……。ちゃんと食べないと身体に悪いわよ」
「ん……、そうか……すまないな……」
「ん……、少しだけ……。後はあまり……」
「そう……。ちゃんと食べないと身体に悪いわよ」
「ん……、そうか……すまないな……」
彼女は毎日、彼のために食事を作り、洗濯など家事も一通りし、帰るまでの時間を、彼の横で何をするでもなくただ一緒に過すだけであった。
特に何を言うでもなく、他に何をするでもなく、ただ時間まで、上条の傍にいるだけの生活を続けている。
特に何を言うでもなく、他に何をするでもなく、ただ時間まで、上条の傍にいるだけの生活を続けている。
その日、上条は美琴に聞いた。
「なあ、御坂。なんだってお前いつも俺なんかといるんだ?」
「ん、私はただアンタと一緒に居たいだけだから」
「ん、私はただアンタと一緒に居たいだけだから」
――だけどさ、と上条がガシガシと頭を書きながら言葉を続ける。
「俺みたいなどうしようもない人間といてもしょうがないだろ」
美琴はちょっと辛そうな笑顔をした。
そのまま何も言わず、上条の顔を見続けた。
やがて意を決したように、真剣な面持ちになり、呟いた。
そのまま何も言わず、上条の顔を見続けた。
やがて意を決したように、真剣な面持ちになり、呟いた。
「ううん。アンタはどうしようもないことなんてない。
私にとって……アンタ……当麻は……本当に大切な人……。
だから一緒にいたいだけなの……」
私にとって……アンタ……当麻は……本当に大切な人……。
だから一緒にいたいだけなの……」
その言葉は、上条の耳には届かなかった。
でも彼の傷ついた心には、『少しだけ』染みた。
でも彼の傷ついた心には、『少しだけ』染みた。
「そっか……。お前がいいのなら、いっか……」
あの夜、美琴はインデックスと誓った。
上条の傍を離れるインデックスのために、上条のために、そして自分のために、上条当麻を支え続けると。
それは、美琴にとっての、戦いの始まり。
だがそれは、失われた勝利のための戦い。
上条の傍を離れるインデックスのために、上条のために、そして自分のために、上条当麻を支え続けると。
それは、美琴にとっての、戦いの始まり。
だがそれは、失われた勝利のための戦い。
――負け戦?敗戦処理?使い捨て?ええと、あと何だっけ……?
――いつだったか、黒子が言ってたわね。
――「女には、負けるとわかっていても、ドロップキックしなくてはならない時がある」だっけ。
――だけど……
――学園都市第三位『超電磁砲』、いや御坂美琴が名にかけて、こんなことで負けるわけにはいかない。
――いつだったか、黒子が言ってたわね。
――「女には、負けるとわかっていても、ドロップキックしなくてはならない時がある」だっけ。
――だけど……
――学園都市第三位『超電磁砲』、いや御坂美琴が名にかけて、こんなことで負けるわけにはいかない。
インデックスの気持ちに報い、上条当麻の心を救う。
上条当麻の心を救い、御坂美琴の夢を叶える。
御坂美琴の夢を叶え、インデックスの気持ちに報いる。
上条当麻の心を救い、御坂美琴の夢を叶える。
御坂美琴の夢を叶え、インデックスの気持ちに報いる。
――そのためなら、私は全てを投げ打つ覚悟がある。
――それが御坂美琴としての矜持。
――あの日、インデックスと2人、手を取り合って結んだ涙の誓い。
――ならばもう迷うことは無い。
――最後まであきらめずに、あの子を信じ、当麻を信じ、自分を信じてみようと。
――ああ、そうね。
――当麻がいつも言っていた。
――なら私だって、負けられない!
――当麻と一緒に並び立つために!
――乙女の決意を舐めるんじゃねえ!
――アンタが地獄の底にいるっていうのなら!
――アタシがアンタを地獄の底から引き上げてやろうじゃないの!
――あの子の想いも一緒に、地獄丸ごと引き上げてやるから覚悟しなさい!!
――それが御坂美琴としての矜持。
――あの日、インデックスと2人、手を取り合って結んだ涙の誓い。
――ならばもう迷うことは無い。
――最後まであきらめずに、あの子を信じ、当麻を信じ、自分を信じてみようと。
――ああ、そうね。
――当麻がいつも言っていた。
――なら私だって、負けられない!
――当麻と一緒に並び立つために!
――乙女の決意を舐めるんじゃねえ!
――アンタが地獄の底にいるっていうのなら!
――アタシがアンタを地獄の底から引き上げてやろうじゃないの!
――あの子の想いも一緒に、地獄丸ごと引き上げてやるから覚悟しなさい!!
「ねえ、当麻。
私も当麻のことが大好き。
ううん、御坂美琴は、上条当麻を愛しています」
私も当麻のことが大好き。
ううん、御坂美琴は、上条当麻を愛しています」
美琴は、傷ついた上条の心を、包み暖めるかのように、そっと抱きしめた。
――当麻はそのままでいいから……、そっと耳元で囁く。
「私は、当麻の居場所を守りたい。
当麻をこれ以上不幸にはさせない。
当麻の笑顔が見られるなら、私はなんだってする。
当麻は当麻のままでいい。
当麻の心の傷は、私が必ず癒してみせるから。
当麻が笑顔になれば、私はそれだけで幸せになれるの」
当麻をこれ以上不幸にはさせない。
当麻の笑顔が見られるなら、私はなんだってする。
当麻は当麻のままでいい。
当麻の心の傷は、私が必ず癒してみせるから。
当麻が笑顔になれば、私はそれだけで幸せになれるの」
その時、上条当麻の『傷』は、また少し消えた。
「当麻がつらいって言うのなら、私はずっと傍にいる。
ここが地獄だって言うのなら、私が引き上げてやる。
当麻を救うのは私の役目。
当麻はもう何も失うものはないのよ。
だから……だから……」
ここが地獄だって言うのなら、私が引き上げてやる。
当麻を救うのは私の役目。
当麻はもう何も失うものはないのよ。
だから……だから……」
『アンタの失恋、このアタシが全部まとめてぶち壊す!!』
――ね、今度こそ、私の声は、アンタの耳に届いた……かな?