とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

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第2章 超電磁砲の恋


4. 「Crescendo of doom」


――なあ、なんでお前はいつもここに来るんだ?
――家庭教師はもう終わったんだから、別にもういいんじゃないのか?
――彼女でもないんだし、俺のことなんか構わずに……
――構わずに……
――俺のことなんか……
――また……勘違い……するじゃねぇかよ……
――なあ、御坂……
――お前はなんでいつも俺の横にいるんだよ……
――インデックス……
――俺、どうしたらいいんだ?……

「なあ、御坂。なんだってお前いつも俺なんかといるんだ?」
「――――だアンタと―――だから」

 よく聞こえなかった。

「俺みたいなどうしようもない人間といてもしょうがないだろ」

 俺の目には、美琴の顔は淋しそうに見えた。

「―――だから一緒にいたいだけなの……」

 やっぱりよく聞こえなかった。
 でも……

「お前がいいのなら、いっか……」

 胸の痛みが少し薄れた気がする。
 ただなんとなく腹立たしくなった。
 素直に『ありがとう』って言いたくなくなった。
 言ってしまえば楽になれそうな気はする。
 でも……
 間違ったら……
 反発。
 警告。
 逃げろ。
 このままだと……
 俺はまたあの苦しみを味わうのか?
 あれから少しずつ胸の奥にしまいこんできたのに……


 その時、突然美琴が上条をやさしく抱き締めてきた。

「ねえ、当麻。
私も当麻のことが大好き。
ううん、御坂美琴は、上条当麻を愛しています」

――なんだよそれ……
――からかってるのかよ……

 耳元で、甘くやさしい美琴の声がする。

「私は、当麻の居場所を守りたい。
当麻をこれ以上不幸にはさせない。
当麻の笑顔が見られるなら、私はなんだってする。
当麻は当麻のままでいい。
当麻の心の傷は、私が必ず癒してみせるから。
当麻が笑顔になれば、私はそれだけで幸せになれるの」

――なぁ、俺はお前が思っているような人間じゃない。
――お前にそんなこと言われるような人間じゃない。

 「当麻がつらいって言うのなら、私はずっと傍にいる。
ここが地獄だって言うのなら、私が引き上げてやる。
当麻を救うのは私の役目。
当麻はもう何も失うものはないのよ。
だから……だから……」

――やめろ。
――俺と一緒にいると……
――お前まで傷つくんだ……
――俺は……
――お前まで傷つけたくないんだ……

『アンタの失恋、このアタシが全部まとめてぶち壊す!!』

――!
――お前……

「いいのかよ……」

 思わず声が出た。
 抱きついている美琴の身体がビクッとした。

「勘違い……してんじゃねぇよな……」

 美琴が上条の顔を見た。

――お前の瞳に映るのは俺の顔?
――あれ?
――俺……泣いてる?
――なんで涙がでるんだ?
――なんで……?



 『警告!警告!』
 胸の奥で何かが叫ぶ。
 『――第一カラ第三マデノ全結界ノ貫通ヲ確認。再生準備――――失敗』
 あれ?
 『侵入者ノ迎撃ヲ優先サセマス』
 俺の胸の奥から出てきたものが……

 もう俺は止まれなかった。
 そのままあいつの唇を奪う。
 驚いたようにような顔をしたあいつは、すぐその目を閉じた。

――電撃、撃って来いよ!
――抵抗しろよ!
――頼むから!
――このままだと……

 俺はそのままあいつの唇を犯し続ける。
 あいつはなされるがまま、抗いもせず目を閉じて、俺のキスに応じている。

――ああ……
――お前……
――そうかよ……
――いいんだな……
――覚悟……
――しろよ……

 俺はあいつを抱き上げると、ベッドへ運ぶ。

――今ならまだ……
――間に合うぞ……
――やめるなら……
――止まるなら……
――これが最後のチャンス……
――Yes or No?

 あいつの身体をそっとベッドに横たえると、俺はその上に四つんばいになって覆い被さる。
 あいつは目を閉じたまま、緊張したように顔を赤らめている。
 胸の前で手をぎゅっと握り締め、かすかに震えている。

「――御坂……」

 そう呼びかけるとあいつはビクッとしてかすかに目を開けた。

「なあ、やめるなら今のうち……」

 いい終わるかどうかのうちに、あいつが手を伸ばし、俺を抱きこんだ。
 からだの震えと、暖かさが直に伝わってくる。
 耳元で、悪魔の囁き。

「――当麻の好きにしていいよ……」

――え……

「私の心は、ずっと前から当麻のものだったの。
――だから、私のからだも……」

 もう止められない。
 もう止めない。
 もう……

「俺、御坂のこと、好きになってもいいのか?」

『――私の全てを、あなたに捧げます』

 今度こそ確かに、俺はそう聞いた。

――ね、私の声、今度こそアンタの耳に、ううん、心に……届いたのね。
――ね、アンタの目に、私、映ってるのかな?

「いいのかよ」

 ドキリとした。
 からだに震えが……

「勘違い……してんじゃねぇよな……」

――勘違い?とんでもない。本気よ……
――あれ、アンタ、泣いてる?
――なんでアンタが泣いてるの?
――でも……
――きれいな涙ね。
――ね、泣きたかったら、泣いていいの。
――本当はもっと泣きたかったのね。
――だから泣いていいよ
――私は、そんな当麻が大好きだから。

 アイツの顔が近付いたと思ったら、唇に暖かく柔らかい感触。
 私は目を閉じて、それを味わう。
 アイツの唇。
 ちょっと涙の味がする。
 本当は、ずっとこうして欲しかった。
 私がずっと欲しかったもの。
 それはあなたの全て。
 だから、私は、あなたに……
 私の全て、今ここであげてもいいかなって。

 そう思いながら、私は当麻を味わう。

 いきなり抱き上げられ、ベッドへ運ばれた。

――来たっ!

 恥ずかしいような、期待するような、でもちょっと怖いような。
 でも、ずっと待ってた気がする。
 この時、この瞬間を。
 目を閉じたまま、アイツを待つ。
 からだが熱い。
 どきどきして、震えが止まらない。
 すぐ上にアイツの気配。
 目を開けたら、どんな風に見えるのかな。
 でも、やっぱり恥ずかしい。
 ちょこっとだけ開けてみようかな。

「――御坂……」

………………あ。

――当麻の瞳に写ってるのは、私?

「なあ、やめるなら今のうち……」

――やだ。
――せっかくここまで来て。
――あなたの心が目の前にあるのに。
――それを掴まないのは、罪。

「――当麻の好きにしていいよ……」

――言っちゃった。
――言っちゃったよう、ついに!
――もう、止められない。
――もう止まらない。
――もう……

「私の心は、ずっと前から当麻のものだったの。
だから、私のからだも……」

――もう退かない。退けない。

「俺、御坂のこと、好きになってもいいのか?」

――あああ!!!
――やばい!!!
――言っちゃう!!!
――好きになって!!!
――私は当麻のもの!!!
――私の全ては当麻のもの!!!
――行っけえええええええ!!!!

「御坂美琴は、全て、上条当麻のものです。
だから、私の全てを、あなたに捧げます」

 渾身の『超電磁砲』を撃ち放ったときのような最高の爽快感。

――もう戻らない……
――もう離さない……
――だから……

『私は、あなたを決して離さない』

『お願いだから……』

『神様……』

『上条当麻の全てを、私に下さい』

――インデックス、私、あなたとの約束、守れてるかな?

その日、御坂美琴の『超電磁砲』は、上条当麻の心を確かに撃ち抜いた。


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