とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part59-2

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とある右手の番外編(パラレルワールドストーリー)4


「やっ……やめろよ……オレには……そんな資格……」

「ココが私の居場所なのよ……ここに居る時だけは、私は『電撃使い(エレクトロマスター)』でも『常盤台の超電磁砲(レールガン)』でも『学園都市に7人しか居ないレベル5の第3位』でもない。『御坂美琴』という一人の女の子として、アナタの前に居られるの……。そして、それが出来るのは、私の居場所を与えてくれるのは……上条当麻……アナタだけなの」

「美琴……」

「だから……アナタには私だけを見て欲しい。それが私のワガママだって言うのは分かってる。でも……自分の気持ちをもう……抑えることが出来ないくらい……私の中では当麻が大きくなっているのよ……それだけは知っていて欲しい……」

「ああ……分かった……分かったよ……。……でも……でもな……」

「えっ!?」

「そう……でも……なんだ。……オレはまだ……自分の気持ちに気が付いていない。……自分と向き合いきれていないんだ……」

「あ……」

「美琴の、オマエの気持ちは嬉しいよ。オマエを傷つけたのに……オマエをあんなに泣かせたのに……そんな男を『好きだ』と言ってくれるなんて……」

「……うん……」

「オマエのことは、守りたいと思う。オマエの笑顔を守りたいと思う。その気持ちに嘘はないよ。……だけどな……」

「……だけど……?」

「それが、オマエを『好きだ』という気持ちにはなってないんだ。ただ『守りたい』って言うだけでさ……、それは……他の誰かがオレの目の前で泣いていたら……霞んでしまう想いなのかも知れない……。……そう思えてしまうんだ……。勝手な言い分だけどな……」

「インデックスのこと?……それともお弁当の人のコト?」

「そんなんじゃないんだよ……誰かってコトじゃなく……誰かって限定出来ないんだよな……。それに……オマエの涙を見たくないって思ってたオレが、オマエを泣かせてしまった。……だから、オレはオレを許せないんだよ……。オマエを泣かせたオレを、オレが許せないんだ……」

「私が許すと言っても……?」

「ダメだよ……それじゃあ、また甘えてしまうことになる。オマエに甘えてしまうことになるんだ……」

「……当麻……」

「もう少しだけ……もう少しだけ、待ってて欲しい。必ず『答え』を見つけるから。自分の中の『本当の気持ち』を見つけるから……それまで、待ってて欲しいんだ……」

「うん……イイよ……」

「ありがとう……美琴……」

「……だけど……ちょっと怖いな……」

「ん?……何がだよ?」

「当麻がもし……私のことを『好きじゃない』って答えが出ちゃったら……」

「……さすがに……ココまで来て……それはないと……思うぞ……」

「えっ!?」

「オマエのことを想う時に一番最初に出るのは、『好き』とか『嫌い』とかじゃなくてさ……『守ってやりたい』って想いなんだよな」

「そっ……そうなのッ!?」

「ああ……美琴のことを想う時って、必ずそうなんだよな……。誰が泣いててもオレは守ってやりたいと、救ってやりたいと想うけど……」

「……当麻らしいな……」

「でもさ、その中でも……オマエが泣いてるのが一番イヤなんだよな……。それだけは間違いないんだよ……。そこまでは分かってるんだけどなぁ……」

「ヘッ!?」

「なっ……なんだよッ!……その反応は!?」

「(もう、バカ……鈍感……)……(ギュッ!!)……」

「おっ……オイッ……美琴!?」

「当麻……好き」

「あっ……コラッ……まっ、待てッ!?……えっ!?」

「言ったでしょ?……もう、自分を抑えられないって……」

「ちょっ……美琴……オイッ……んっ!!」

「そんなコト言われたら……抑えられる訳ないじゃない……んっ……」

 そう言うと美琴はいきなり、唇を重ねてきた。
 しばらくして唇を離すと、こう言った。

「……んっ……エヘッ……コレが私の気持ちだよ……当麻」

「おっ……オマエッ……きっ、ききっ……キスッ!?……ッてぇ~!?」

「前に言ったでしょ?……女の子にとってのファーストキスは本当に神聖なものだって。本当に大切な人にしか捧げられないんだって……」

「あっ……イヤ……でも……そのッ……エエッ!?」

「当麻がどう思っても構わない。私は私の気持ちを素直にアナタに伝えただけ……。だってそれが『御坂美琴』の真実なんだもん」

「美琴……分かった……分かったよ」

「ねぇ……今は、こうしていたいの……イイでしょ?」

 そう言って、再びギュッと抱きついてくる美琴。

「ホント……最近の美琴は甘えん坊だな……」

「当麻の前だけ……ね♪……エヘッ」

 オレはそう言って微笑む美琴の頭を愛おしく撫でるのだった。
 美琴の頭を撫でながら……オレは考え続けていた。

(コイツはいつから、こんなに強くなれたのだろう?)

(あんなにオレに突っかかってきていたワガママだったコイツからは、今の美琴は想像出来ないほど本当に強くなった)

(オレにキス(ポンッ!!!//////////)して来たのにも驚いたけど、それ以上に自分の気持ちをあんなに素直に出せるなんて……)

(人は自分に向き合った時、本当に変われるんだな……)

(オレもこんなふうになれるのだろうか?こんなふうに変われるのだろうか?)

(イヤ……変われるんだよ。それをコイツが、美琴が示してくれたんじゃないか!!!)

(オレも変わりたい。美琴のようにもう一段強くなりたいんだ。だったら、本当に自分と向き合うしかないよな……)

(この可愛くて今のオレが『本当に守ってやりたい』と想うこの人を、傷つけてしまったオレとちゃんと向き合わないといけないんだ)

(オレを許せないオレと向き合わなきゃいけないんだ……。そうしなければ、オレは変われない)

(そうでなきゃ、オレにこのことを教えてくれた向こうの世界の御坂にも申し訳が立たないしな……)

(折れた自分と向き合わなきゃいけない。あの時に折れた自分と……美琴を、この『大切な人』を傷つけたオレと……)

(この『世界で一番最初に守ってあげたい』この人を傷つけた自分と……。……え?……あ……)

(そうか……だから……だから……許せなかったんだよ……この人を傷つけた自分を……『世界で一番大切なこの人』を傷つけたから……オレは……オレは……)

「えっ?……当麻?……泣いてるの?」

「ああ……そうか……そうだったのか……そう……だったんだ……」

 オレは溢れる涙をどうする事も出来なかった。
 ただただ、涙を流し続けるしかなかった。
 まるでその涙が、許せなかった自分を許せるようになる、懺悔の涙のように……。

「どうしたの?……当麻?……当麻ったら?」

 泣き続けるオレを心配して、美琴が必死に訊いてくる。

「美琴……分かったんだ……分かったんだよ……オマエが側に居てくれたから、本当に分かったんだ……」

「えっ……じゃ、じゃあ……」

「ああ、……ちゃんと話させてくれ。オレがオマエのことを、美琴のことをどう思っているかを……」

「う……うん……」

「今やっと気がつけたこと。それは、オレにとってのオマエは『好き』とか『嫌い』とかで片付けられない存在なんだってコトなんだ」

「えっ?……それって、どういう意味?」

「オレは、オマエのことを好きでも嫌いでもないんだ。そんな風に思ったことないんだよ……」

「えっ……そっ、そんな……そんなの……」

「そんな『好き』とか『嫌い』とかいう簡単な言葉で片付けられない存在なんだよ。オマエは」

「えっ!?……それって……私を何とも思ってないってコトじゃ……」

「違う!違うよ!!オマエは、美琴はオレにとって『世界で一番最初に守りたい人』であり『世界で一番大切にしたい人』なんだって分かったんだよ」

「えッ!!!……そんなっ……それって……」

「オレがオマエを傷つけて折れてしまったのは、オマエを『世界で一番大切にしたい人』だと心の何処かで想っていたからなんだ。その『大切な人』を傷つけてしまった自分のことを、オレは許せなくなったんだよ。折れたオレを許せなくなったんだ」

「でも……どうしてそれが……そんな風に思ったことがないって……」

「向こうの御坂と話してる時に出て来たことなんだけどな……さっきも言ったけど、オレって『目の前で誰かが泣いてたら助けてやりたい』って思うって良く言うだろ?」

「うん……」

「アレって、オレの中にもう一人のオレが棲んでてさ……そいつが誰かの涙を見た途端、今のオレを押し退けて出て来るんだよな。そしてその泣いている誰かを助けようとするんだよ。オレじゃないもう一人のオレが今のオレを突き動かすんだ……」

「えっ?……でも……それじゃあ……」

「ああ……オマエの時も……そうだった……」

「あ……」

「でもな……」

「えっ!?……でも……?」

「その後が違ったんだよな。美琴の時ってさ……。最初は確かにオレの中に棲んでる『もう一人のオレ』に突き動かされていたんだけど……途中から、そう。あの鉄橋の辺りから……オレが自分で選び始めてたんだよな……」

「あ……」

「鉄橋の上で、美琴の『誰か、助けてよ』って言う悲鳴を聞いた時に、本当にオレは『コイツを助けたい』と思ったし、美琴の涙を見た時にオレの心の底から『コイツを守りたい』っていう想いが湧き出てきたんだ。そして、それは間違いなくオレの意志であり、オレの願いだったんだよ」

「……と、当麻……」

「あの時……『闘わない』って言っただろ……オレ」

「うん……あれ……ショックだった……」

「アレさ……もう一人のオレは、右手を出そうとしてたんだよな……。『闘う』とか『闘わない』とかそんなんじゃなくって、自分を守るために。でも、オレが無理矢理それを止めて……右手も使わないで『闘わない』って言い続けてさ……」

「うん……」

「今だから言えるけど、あの時……オレはオレの中で、もう一人のオレと闘ってたんだよな……。『オレはコイツとだけは闘いたくない』ってもう一人のオレに言い続けてたんだ……」

「……そんなことまでして……私を……」

「だから言っただろ?オレにとって美琴は『世界で一番大切な人』なんだってさ……」

「……当麻……嬉しい……(ギュッ!)」

「そして美琴と御坂妹を助けた後に、ある奴とある約束をすることがあってさ……」

「約束って……?」

「あ……ああ。『御坂美琴とその周りの世界を守る』っていう約束を、全く知らない奴とすることになったんだ……。オマエに……美琴に何の断りもなしに……だったんだけどな……」

「あ……(ポッ!//////////)」

「その約束をしたのも確かにオレ自身だったんだ。もう一人のオレじゃなくってさ。でも……ある時……オレはオマエを傷つけてしまった……」

「あっ、アレはっ……私も……怒られて……当然のことをしてたから……」

「それはそうかも知れない。でもさ……オレの中のもう一人のオレが、オマエを傷つけてしまったオレを責めるような感じになっちまって……オレの中で、どんどん収拾がつかなくなっちまったんだよな……」

「そう……なんだ……」

「ああ……」

「あっ……あのねっ……」

「うん?……どうした?」

「あの……向こうの世界の私からのメッセージでね……その事を……言われたんだ……」

「えっ!?」

「当麻から……当麻から……『そんなに嫌いなら、関わるな!!!』って言われた時はもう……本当にショックだった……『ああ、本当に嫌われてしまったんだ』って。……『とうとうやっちゃったんだ』って……」

「美琴……ゴメン……」

「ううん……当麻だけが悪いんじゃないよ……私の方がもっと悪い。……本当に素直になれなかったから……アナタに……当麻に……ワガママばかり……」

「あっ……泣くなよッ!!……泣かないでくれ!!!」

 その時オレは、思わず美琴を抱き締めていた。

「あっ……当麻……」

「オレは……コレが一番怖いんだ。オマエの涙を見るのが一番怖い……あの、目に涙をいっぱい溜めて、逃げるように走っていくオマエの背中を、何度夢に見て……苦しんだか、分からないんだ……」

「私だって……何度アナタから怒鳴られてる夢を見たか分からない……その度に、自分がしたことを思い知って……泣いて……泣いて……」

「ゴメン……美琴……ゴメンな……本当にゴメン。……オマエを守らなきゃいけないオレが……オマエを、美琴を傷つけるなんて……オレはなんてコトをしてしまったんだろう……」

「当麻……泣かないで……泣かないで……泣いちゃヤダ……ヤダよォ……んっ……」

 『泣かないで』と懇願する美琴の唇を、オレは思わず奪ってしまっていた。
 強引に……貪るように……。
 でも、美琴はそれを受け入れてくれた。
 優しく包み込むように……。
 オレたちの二度目のキスは……涙の味がした。

「ごっ……ゴメン……オレ……つい……」

「ううん……イイよ……私は、嬉しかったから……」

「あ……(ボンッ!!!)//////////」

「……(ポンッ!!!)//////////」

「……だから、……あの……」

「うん……」

「もう一人のオレと、今のオレが離れ離れになってしまった時から……オレの芯が折れちまって……美琴との関わりも……」

「うん……その事を、向こうの世界の私から言われたの……『甘えるな』って、怒られちゃった……」

「えっ!?……怒られたって?」

「うん……『アンタ、甘えてるでしょ!?』って……『当麻の優しさに甘えてるでしょ!?』って……言われちゃった……」

「オレは優しくなんかないよ……」

「ううん……優しいよ、当麻は……。だって、あの怒鳴られてしまった後に、偶然アナタと出会った時、アナタと会うことを避けていたのに、偶然出会ってしまったあの時に……当麻は……」

「あ……ああ……」

「『何だ、ビリビリ中学生?もう勝負はオマエの負け続けでイイのか?』って……私が食って掛かりやすいような台詞を……言ってくれて……」

「……そう言わなきゃ居られなかったんだよ。何でもイイから、オマエとつながっていたかったから……。どんな関わりでも良かったんだ……。まだ、美琴とつながっているんだって、何処かで思っていたかったから……あんな言い方したんだ……」

「そして……私はそれに甘えてしまった。向こうの私に言われるまで、全然気付かなかったんだ……。なぜ当麻がそんな風に言ってくれたのかってコトに……」

「やっぱりそれは……オレの優しさじゃないよ……。何処かで美琴とつながっていたいっていう……オレのワガママだったのに……」

「それでも当麻は、私を気遣ってくれてたんだよ……私が食って掛かりやすいように言ってくれた……。私が甘えやすいように……言ってくれた……」

「そんなコトねえよ……」

「でも、結局……一度捩れた関係は元に戻らなくて……」

「ああ、そうだったな……」

「ケンカ三昧の毎日が続いてて……本当に抜け出られなくなっちゃって……」

「オレたちだけじゃ……どうしようも無くなってた、そんな時に……」

「……『あの人』が来てくれて……」

「オレは向こうの世界に飛ばされて……向こうの御坂と出会った……」

「そして『あの人』とその右手は……『神様は超えられない試練をお与えになる事はない』ってコトと、『超えないと分からないことがある』って教えてくれた……」

「向こうの御坂は……『いつもと同じループ』から抜け出さない限り、自分の本当の気持ちには辿り着けないってコトを教えてくれた……」

「……『あの人』が来なかったら……」

「向こうの御坂との出会わなかったら……」

「「今のオレ(私)達は……無いんだ……」」

 オレたちがその結論に達したその時だった。
 急にオレの右手が輝きだして……右手から『声』が聞こえだした。

『やっと……やっと……此処まで来て下さったのですね……』

「なっ……何だっ!?……オレの右手から『声』が聞こえるぞっ!?」

「あ……『あの人』の時と同じ……?」

『はい。その通りです。私は上条さんの右手に棲んでいる者です』

「オレの右手に棲んでいる……だって!?」

『ハイ。神様からの伝言役とでも言いましょうか?アナタの右手に宿っている特別な力の一部と言うべきなのかも知れません』

「……オレの右手に宿っている『特別な力』だって?」

「それって……『あの人』と同じ力ってコトなの?」

『ハイ。そうなりますね』

「それって一体、どんな『力』なんだよ?」

『残念ながら、それを今のお二人にお伝えすることは出来ません。お伝えするためには揃っていないピースがあるものですから……』

「揃っていないピースって?……何なの?」

『それを今ココで明かすこともできません。それが何かを見つけるのも、お二人の今後の課題ですので』

「えっ?……それって……もしかして……」

『そうです。もう一人の上条さんの右手がお伝えした『神様は超えられない試練をお与えになる事はない』ということと同義です。今度はお二人で超えなければならない『試練』であるということです』

「そうなんだ……」

『ハイ。……それにしても、お二人とも本当によく頑張られましたね。この『試練』をお与えになられた神様も、大変に喜んで居られると思いますよ』

「しかしなぁ……エラく回りくどいやり方をされた気がするぞ……」

『そのように感じられるかも知れませんね。でも……この『試練』がなかったら、お二人はあの状況から抜け出すことが出来ましたか?』

「「あ……」」

「それは……確かに……」

「無理……よね……」

「だけどさ神様なんだから、優しいやり方って言うか……もっと分かり易いやり方っていうのがあったんじゃないのか?」

「それはそうよね。こんなに苦しませること無かったんじゃないの?」

『果たしてそうでしょうか?今お二人が感じておられるお二人の絆は、ココまでの経験があったからこそ築く事が出来た。と言えるのではないでしょうか?』

「あ……う……」

「それは……そう、だけど……」

『神様はお二人を信じておられるからこそ、この『試練』をお与えになられたのです。信じておられなければ、この様な苦しみだけをお与えになるはずがありません』

「オレたちを信じてるからこそ……?」

「『試練』を与えられる……?」

『喩えが悪いかも知れませんが『ライオンは我が子を千尋の谷に突き落とす』と言われます。それは、我が子だからこそ千尋の谷から這い上がってくると信じているから出来る行為だと言うことです。信じることが出来なければ、そんなコトは出来はしません。手元に置いて、優しく育てるしかないでしょう』

「そう言われれば……」

「うん……そうだよね……」

『神様はあなたたちを、いえ、この世界に生まれている全ての人々に対して、全く同じように接しておられるのです。超えられると信じてその『試練』をお与えになっているのです』

「「あ……」」

『つまり……『試練』こそ、神様からの呼びかけなのだ。と言うことです』

「「『試練』は……神様からの『呼びかけ』……」」

『その事をお二人にお伝えするのが、私の役目でした。だから、今回この様なことを起こさせていただいたのです』

「そんなっ!?……だったら、最初っからこうやって話してくれたら……」

『向こうの世界の上条さんが言われたはずです。『超えなければ分からないことがある』と……』

「あっ……でも……でも……」

『お二人は今、私がお伝えした『『試練』は神様からの呼びかけ』という言葉に対して、実感を持って受け止めておられると思います。……ですが、お二人が今回の『試練』を経験する前に、同じ言葉だけを伝えられたらどうでしょうか?今のように実感を持って受けとめることが出来ますか?』

「……無理だな……」

「当麻……?」

「分かるだろ?……美琴」

「あ……それは……うん……」

「本当は神様だってやりたくてやってる訳じゃない。……と思うんだ。でも、こうしないとオレたちは気付けないんだよ。『試練』が来て、それに向かい合わないと、オレたちは分からないんだ」

「向こうの世界の私たちは、その『試練』を幾つも超えて来ていたから……色んなコトが教えられた……」

『その通りです。そしてその言葉を聞いたあなたたちは、その言葉を信じて行動された。そして今、与えられた『試練』を超えることが出来、お二人の絆を深めることが出来た……という訳です』

「コレを、最初に言葉だけで伝えられたって、何のことだか分からないよな。うん……本当に『超えなきゃ分からないことがある』っていう意味が、今なら良く分かるよ」

「そうね……当麻。私も『あの人』に出会って、憧れて、突っ走っちゃって……でも、前に進めなくなって……自分のしたことを後悔して……。当麻に助けて貰って……向こうの私に励まして貰って……アナタに素直に自分の気持ちを伝えることが出来た……」

「オレだって、向こうの御坂に色んなコトを教わって、でもやっぱり分からないことが多過ぎて、どんどん先延ばしにしてしまって……美琴とだって、ズルい関係にするしかなくって……オマエが目覚めてくれなかったら、ずっとあのままでズルズル行ってたよ。美琴のお陰で、美琴のことをどう思っているかが分かって……今、美琴を傷つけてしまったことを、本当に償いたいと思えるようになったんだ」

『……もう……もう……何も言うことはありません。コレで私は役目を終えることが出来ます。思い残すことなく、『力』に戻ることが出来ます』

「えっ!?……どっ、どういうことだよッ!?」

『こうやってお二人の前に出られるのは、コレが最後になります。私は与えられた役目を果たすことが出来ましたので、『力』に戻るのです』

「どうして!?……どうしてなのッ!?」

『上条さんが仰っていた『もう一人の自分』というのは、私なのです。上条さんの芯が折れたことで『力』の制御が難しくなり、やむを得ずこの様な形を取らせていただいていました。でも、もう心配ありません。上条さんの中に新しい『芯』が立ち上がりましたから、もう私は必要ないのです』

「そんな……そんなことねぇよッ!!……オレはまだ……」

『一つの身体に二つの意識は危険が大きすぎるのです。それ以上に上条さんは『力』を宿しておられる。コレでは肉体が長く保ちません。それに、こうなる事はずっと前から決まっていたことですので、気になさることはありません』

「まさか……もしかして……コレも新たな『試練』なの?」

『ハイ……その通りです。今後はお二人で解決していって戴くために、どうしても必要な『試練』なのです。だから、どうかお気になさらずに、シッカリとお引き受け戴きたいのです』

「そんな……そんなこと……」

『コレからも、様々な『試練』がお二人に訪れることでしょう。でも、信じて戴きたい。『神様は超えられない試練を与えられることはない』ということを。そして、『試練は神様からの呼びかけ』であるということを……』

「……ああ、分かった……分かったよ。……ありがとう……本当にありがとう。……オレを鍛えてくれて……本当にありがとう」

「私も……私も……ありがとう。アナタが居てくれたから、こうして当麻と結ばれることが出来ました。……本当にありがとう」

『いえ……いえ……本当にお二人には……大変なコトをしてしまったと思っています。本当に申し訳ないことをしてしまったと、思っています。……ですが、あなたたちはこの『試練』を乗り越え、絆を結び直し、人間としても一段成長されました。今、私は本当に嬉しいのです。あなたたちを信じて良かったと……本当にそう言えるのですから……』

「そんな……オレたちはまだ……」

「そうよ……まだ始まったばかりなのに……」

『でも、お二人の中には確りと、神様からのメッセージが刻まれているはずです。大丈夫ですよ、あなたたちならどんな『試練』が来ても超えることが出来ますよ。確信を持ってそう言えます』

「「ありがとう」」

『では……お別れです。……私は消えることになりますが、無くなる訳ではありません。上条さんに宿る『力』の中で生き続けることが出来るのです。ですから悲しまないで下さいね』

「そ……そうなんだ……分かったよ」

「本当にありがとう……アナタのお陰よ。今の私たちがあるのは……」

『ありがとうございます。そう言って戴けるだけで、もう私は……胸を張って神様にご報告出来ます……ありがとう……本当にありがとう……』

『パキィィィンッ!!!』

 幻想殺し(イマジンブレーカー)の音と共に、右手の声は聞こえなくなった。
 オレの右手から放たれていた輝きも、消えて無くなっていた。

「行っちゃったのかな?」

「ああ……神様に報告に行ったんだよ……」

「うん……そう言ってたもんね……」

「ああ……」

「ねぇ……当麻?」

「ん?……何だ?」

「私……アナタに出会えて……本当に良かった。……アナタと出会わなかったら、こんな体験出来なかったわ……」

「オレもだよ。美琴が居たから、オレは超えられたんだ……。オマエが居なかったら、超えることなんて出来なかったよ……」

「当麻……好きよ……」

「ありがとう、美琴……オレも美琴が好きだ」

「エヘッ……(ギュッ!!!)やっと言ってくれたね……嬉しい……」


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