とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part21

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 見知らぬ記憶 4


「エヘヘヘへ(ニヤニヤ)……」

 ダメだ……。顔の筋肉が言うことをきかない。
 あの夢を見てから、私の頬の筋肉は緩みっ放しだ。
 だって……だって……だって……。
 今の私は幸せ一杯。その頂点に居ると言っても過言じゃないわ。
 愛する当麻とあんなに綺麗なウェディングドレスを着て、結婚式を挙げちゃったんだもん。
 頬の筋肉が緩みっ放しになったって、仕方が無いじゃない?
 自分で言うのも何だけど、あのウェディングドレス姿はちょっとやそっとじゃ見られないわよ。(<(`^´)>エッヘン)
 当麻も『女神が舞い降りたのかと思った』って言ってくれたし。(/////テレテレ/////)

 それに、あの夜……(『夢』の中だけど……初夜って言うのよね)……当麻はスッゴく優しかった。スッゴく逞しかった。スッゴく激しかった。
 いっぱい、いっぱい、い~~~~~っぱい愛してくれた。
 だから、いっぱい、いっぱい、い~~~~~っぱい甘えちゃった。
 もう、私は当麻なしには生きられない。そう思ってしまうほど、愛されてしまった。甘えてしまった。

 御坂美琴はもう、上条当麻色に染め上げられちゃいました。上条美琴になっちゃいました。
 そう言ってしまいそうになるほど、今の私は当麻一色。
 思い出す度、顔が赤くなるのが分かる。恥ずかしいけれど、メチャクチャ嬉しい。
 だって、だって、だって……そうなることが夢だった。今、私は当麻のお嫁さんなんだもん♪

「エヘヘヘへ……」

 ほんのりと頬を染めながら、『常盤台のエース』らしからぬ笑顔(?)を晒し続けている美琴。
 美琴の取り巻き達は、そんな美琴を遠巻きにしながらヒソヒソ話を繰り返すが、幸せ一杯の美琴がそれに気付くことはない。
 白井黒子が今の美琴を見たらどう思うだろうか?
 『あんの類人猿めぇ~~……』と言って、どす黒いオーラを撒き散らすのだろうか?
 それとも『こんなお姉様の表情を撮り逃がすとは、黒子一生の不覚ッ』と叫んで、床ドラムを連発するだろうか?
 それとも無言で美琴の幸せ百面相を撮り逃すまいと24時間ストーキングフル撮影を実行に移すだろうか?
 何れにせよ、ルームメイトの黒子ですら見たことの無いような表情を、朝から百面相で繰り返す美琴であった。

 一方の当麻は……。

『ニヘラ……』

 こちらもこちらで、変わらないようである……。が……

『ドバキッ!!!』

 朝早くからの気色の悪いニヤケ顔に両側からツッコミが入る。
 全く容赦ない、腰の入ったイイパンチだ。

「にゃ……にゃにすんれふかぁ~~!?」

「「やかましいわ!!」」

「朝っぱらから気色の悪いニヤケ顔を晒しおって。どーせ昨夜の超電磁砲(レールガン)の眩しい肢体を思い浮かべてるに決まってるにゃー」

「そやそや、上やん一人のエエ想いはさせられへん。ボクらも混ぜて貰わんと……」

 といきなり自分の妄想に入りかける青ピにいつものツッコミが後方から入る。

『ドゴンッ!!!』

 無言のまま、吹寄のおでこが青ピの後頭部に向かって火を噴いた。

「また朝っぱらから、貴様らは……。静かにすると言うことを知らんようだな……」

「な……何で……ボクだけ……」

『ゲシッ!!!』

「ふ、吹寄はん……無言で踏みつける……何て……ご無体な……」

「目玉を少しでもコチラに動かしただけで、貴様の頭蓋骨を踏み砕くぞ」

『ダラダラダラダラ……(ぼ、ボクが見てるのは教室の床だけでっせぇ)……『グリグリ』……はぅッ!?……(青ピ昇天)』

「あ、相変わらず……オレたちにだけは情け容赦ないにゃー……吹寄……」

「少しは上条を見習え。コイツはお前達より努力を……して……?」

『ニヘラ……』

『ズゾゾゾゾゾゾゾゾ……(吹寄の血の気が引く音)』

 一端は吹寄に助けられたお陰で、また気味の悪い『ニヤケ顔』に戻ってしまった上条。
 『上条を見習え』と言って彼を指差し、彼の方を見た吹寄は、その顔を目撃してしまう……。

「きっ、貴様……上条当麻ッ……何だその気色の悪い『ニヤケ顔』はぁ~ッ!!!!」

 と、吹寄の叫びと共に上条はクラスメイト全員から手荒い朝の挨拶を受けることになった。

「不幸だァ~~!!!!」

 上条の叫びだけが虚しく教室にこだまする……。

 ─────◇─────◇──────◇─────◇─────◇─────

 時間は少し戻って、『ワ』の国。
 凱旋パレードを歯噛みする想いで見つめる者が居た。『ワ』の国の教皇アレイスターである。
 【勇者】達は『ワ』の国の名前を敢えて使わなかった。つまり、対外的には『ワ』の国はこの件に関して一切無関係となる。
 『ワ』の国は蚊帳の外に置かれたまま全てが終わってしまった。
 新連邦国家の設立と整備はこれからではあるが、現状では『ワ』の国に発言権はほとんど無い。
 それはアレイスターの望むところではない。
 が、事態はそのように動いてしまった。

 アレイスターとしては、『拒否権』の剥奪に対して【勇者】サイドから何らかの要求が来るものと考えていた。
 その上で【勇者】達を会談のテーブルに付かせ、その後『ワ』の中央府に取り込み、こちらの意のままに。とまでは行かなくても、それなりの条件を出しつつ、操る算段を付けていたのである。
 だが、彼の切った『拒否権剥奪』というカードを全く無視して、【勇者】達は独自に闘いに参加してきた。
 参加してきただけでなく、その主導権を自らが握ってしまったのである。
 これはアレイスターにとって、全くの想定外の出来事であった。

 その後は事態に介入する暇すらなかった。
 独自に作戦を展開させ、『ナ』の国をも使ってあっという間に大陸の統一を成し遂げてしまった。
 本来なら、アレイスター自身が一番望んでいた結末のはずだった。
 昔ならそうだったかも知れない。……だが……今はもう違ってしまっている。
 もちろん、表面上はそんなコトはおくびにも出さない。相好を崩さず、この統一を喜んでいるように見せている。
 だが……その裏側は……腸が煮えくりかえるほどの怒りを内に秘めているのだ……。

『こうなれば……アレを使うしかない。一刻も早く……アレを……。そしてこの世界を理想郷に……。……だが……その為には……奴を……奴を……始末せねば……』

 パレードが終わり、祝賀会が終わった後に自室に戻り、独りでグラスを傾けながら……呟くアレイスターの瞳に、光はなかった。

 ─────◇─────◇──────◇─────◇─────◇─────

 大陸の統一。新たな時代の幕開け。
 その時代の象徴のように、二人は結ばれ、晴れて夫婦となり、新たなスタートを切った。

 あのタビカケ城での結婚式から、1月の時が過ぎた。
 二人は蜜月の中に居た。
 トーマはこの結婚を機に里に新居を構えた。
 といっても、森から木を切り出して造ったログハウスなのだが……。
 ミコトはこの家がかなりお気に入りのようだ。

「フンフフン、フンフフン、フンフンフ~ン♪フンフフン、フンフフン、フンフンフ~ン♪」

 今朝も鼻歌交じりに、朝食を作っているようだ。

「トーマ、そろそろ起きて~。トーマ……トーマったら……」

「ん……んあ……おはよう……ミコト……」

「おはようじゃないわよ……いつまで寝てんのよ……ほら、サッサと起きて『バサッ』って……キャッ/////」

「バッ……バカッ……いきなり、捲るんじゃねェ……。男は……こうなるんだ……朝なんだから……」

「……バカ……/////」

「しょうがねぇだろ……昨夜……そのまま、寝ちまったんだから……」

「あ……/////」

「第一……オマエが……」

「だってぇ~……三日も居なかったんだもん……反乱分子を止めるって……『ラウ』の国まで……」

「だからって……あんなに……ンムッ……」

「……んんッ……んっ……だって……寂しかったんだもん……トーマが居ないこの家に……一人で待ってたんだよ……」

「……分かった……分かったよ……悪かった……。でもなァ……」

「なによォ~……」

「疲れて帰って来て、ゆっくり飯食って、のんびり風呂に入ってたら……いきなり乱入だもんなぁ……」

「/////いっ……イイじゃないっ……わっ……私たちはもう、……ふっ……夫婦なんだからっ……//////////」

「そりゃそうだけど……」

「だって……普段からトーマったら……『修行がキツい』とか……『疲れた』とか言って……」

「オレは、ミコトがココまで積極的だとは思わなかったんだけど……なっ……」

「キャッ……あ……んっ……んむッ……んんッ……んっ……あはッ……アンッ……ヤッ……ダメッ……」

「ん……?……どうして?」

「……んっ……朝食……がッ……冷め……ああんッ……ちゃう……よぉッ……アアッ!!」

「今朝の朝食は……ミコトにする……よッ……んっ……」

「バッ……バカァ……トーマ……のエッ……ンムッ……ちゅく……チュゥ……ハムッ……ん……欲しい……の……」

「……チュッ……チュク……ンムッ……昨夜もスゴかったのに……もう、おねだりか?」

「と……トーマだって……トーマだって……もう……こんなに……なってる……」

「正直言うと……昨夜は、嬉しかったんだぜ……。……オレも寂しかったからさ……」

「じゃあ……もっと……アッ……おねだり……あうっ……するのッ……アアッ……」

「イイぜ……分かった……うっ……ンッ……」



「……もう……トーマの……えっち……」

「ミコトこそ……人のコト言えるかよ……」

「……バカ……/////」

「ミコト……カワイすぎるよ……オマエ……」

「エヘヘ……トーマ……愛してる……」

「オレもだよ……ミコト、愛してる」

「ねェ……シャワー……浴びようよ?」

「もちろん……一緒に……だろ?」

「……じゃあ……ダッコ……してね」

「ん?……ああ……分かってる……」

「エヘヘ……嬉しい……チュッ」

「ハイハイ、お姫様……仰せのままに……」

「もう……それ、やめてよ……」

「ん?……何で?」

「私はもうお姫様じゃない。……トーマのお嫁さんなの……トーマだけのなの……//////////」

「(か、カワイイ……カワイすぎる)……ミコト……オレ……暴走しそう……」

「……バカ……でも、激しいトーマも……好きだよ/////」

「ミコト……」

「キャッ!?……ダメ……んっ、アアンッ……来て……」

 ─────◇─────◇──────◇─────◇─────◇─────

「……ん……当麻……」

「……どうした……美琴……」

「ううん……なんでもない……」

「そっか……」

「……でも……」

「ん?」

「ちょっと……怖い……」

「何が?」

「こんなに幸せすぎて……イイのかな?……って」

「そうだな……それは……オレも感じるよ」

「……当麻……ずっと傍に居てね……」

「なんだよ?急に……当たり前だろ?」

「だって……急に当麻がどこかに行っちゃうような気がして……」

「美琴を置いていく訳ないじゃないか?……それに、もしそうなってしまったとしても、オレはオマエの元に必ず帰ってくるよ」

「……そうね……そうだよね。……そう約束したんだもんね……」

「ああ」

「……ゴメン……(ギュッ!)」

「謝る事ないよ……オレも、ちょっと感じてるからさ……」

「えっ!?」

「この『記憶』さ……幸せなのに、どんどん不安になる……」

「……うん……」

「理由は分からないんだけどな……」

「うん……」

「オレたち……どうなるのかな?」

「……そうだね……」

「何もなければ……イイんだけど……」

「……うん……」

『ギュッ』

「あ……当麻……」

「今は……こうしていたいから……な……」

「うん……ありがと……」

「美琴……美琴の髪、いい香りがする……」

「当麻の胸……暖かい……」

 ─────◇─────◇──────◇─────◇─────◇─────

 記憶を共有する二人の不安など、無視するかのように『夢』の中の時間は流れる。

 大陸は統一され、統括政府が発足。
 各国はそれぞれ統括政府に加盟し、各国の代表者による合議にてこの大陸の行く末を決めるようになって2年の時が過ぎた。
 統括政府の統治に反対する勢力はまだあったが、各国の努力と【勇者】達の活躍でそのほとんどが根絶されつつあった。

 何より、平和の時代の到来を民衆が待ち望んでいたのだ。
 時代の逆戻りなど、誰も望んでは居なかった。
 本当の平和が訪れようとしていた。
 そんなある日……。

「うん、間違いないね。おめでとう。二ヶ月目だよ」

「ほ……ホントですか!?」

「ああ、本当だとも。良かったね」

「はい……はい……やっと……あの人の……」

「早く帰って知らせておあげ。彼も喜ぶだろう」

「はいッ!……ありがとうございました」

「はい。お大事にね」

「ありがとうございます。失礼します」

「うん……」

「ああ……じゃあ、次の方」

「……ドクトル。今のは確か……?」

「カオリ……聞いていたのかい?」

「あ……はい。確かミコトさん……トーマの……」

「そうだよ。トーマの奧さんだ」

「そうですか。お子さんが……」

「ああ、待ちに待った……と言ってイイだろうね。特に彼女にとってはね……」

「そうですか……」

「どうしたんだい?」

「あ……いえ。ただ……」

「ただ……?」

「女として、羨ましいな……って……」

「好きな人の子供を産める。……女性にとってこれ以上の幸せはない……か……」

「……はい……」

「君も早く、相手を見つける事だね」

「わっ……私など、誰も……」

「好きな人は居ないのかね?」

「えっ!?」

「そんなに驚く事はないだろう?……いくら【勇者】の一員だとは言え、君も一人の女性だ。好きな男の一人や二人……」

「そっ、そんなのは必要ありませんっ!!!!!」

『バンッ!!!!!』

「おおコワ……うーん、そんなに気に障る事を言ったかなぁ……アレッ!?……オイ、カオリ……帰っちゃダメだよ……ハァ、定期検診なのに……」



「トーマ……トーマったら……もう、こんなところで寝ちゃって……」

「ん……、ああ……。ミコトか?……お帰り」

「疲れてるのなら、寝室に行けばいいのに……」

「ミコトの居ない寝室なんて、行っても寒いだけだろう?」

「もう、またそんなことを……でも、しばらくはおあずけ……だからね……」

「えっ!?」

「二ヶ月……だって……」

「ホントかっ!?ホントにオレたちの子どもがッ!?」

「うんッ」

「お、オレが……父親に……」

「トーマ……トーマ……やっと……やっと……」

「ミコト……」

「嬉しい……嬉しいの。やっと……アナタの子どもが……」

「ミコト……良かった……」

「……トーマ……私、幸せ。……やっとトーマの子どもが産めるんだね……」

「ミコト……ありがとう」

「私こそ……トーマ、私、嬉しい……」

 ─────◇─────◇──────◇─────◇─────◇─────

「あ……」

「ん……あ……美琴……んっ……チュッ……」

「……んっ!?……ダメッ!!!」

「えっ!?」

「……ダメッ!!!……赤ちゃんが居るんだからっ!!!」

「えっ!?……エエッ!!!」

「……あ……」

「お……オイ……美琴……今……なんて……」

「……あ……ご、ゴメン……『夢』……だったんだ……」

「あ~……ビックリさせないでくれよ……。ホントに出来ちゃったのかと……」

「……それは……ちゃんと……してるじゃない……」

「あ……それは……そうだけどさ……」

「何よ?……もし、本当だったらどうするつもりだったのよッ!?」

「バッ、バカ……。ちょっと驚いただけだよ。ちゃんと責任は取る……うん」

「ゴメン……当麻……」

「何で美琴が謝るんだよ?」

「何か……試したような言い方したから……」

「そ、それは……まあ……」

「ホントはっ……ホントは、今すぐにでも欲しいんだよ……当麻の赤ちゃん……」

「美琴……」

「でも……私たちはまだ……」

「ああ……オレたちは……まだ子どもだもんな。なのに……オレは、美琴と……美琴は中学生なのに……」

「それは私が望んだ事だから……後悔はしていないわ」

「うっ……強いな、美琴は……」

「でも、だからこそ……この『記憶』を大切にしたいの……」

「あ……ああ、分かったよ……」

「ありがと、当麻……」

「オレの方こそ、ゴメンな……美琴」

「何で、当麻が謝るの?」

「さっき……正直、焦ったから……覚悟はしてるつもりだったけど、……いざとなると……揺らいじまった。ダメだな、オレって……」

「ううん、当然だと思う……それより……ねぇ、当麻……」

「ん?……何だ?美琴」

「いつか……本当に産ませてね。……当麻の赤ちゃん……」

(ボッ!!!//////////)

「あ……ああたあたたあた当たり前……だろ?……おっおおおオレの子供を産んで貰うのは美琴だけだって……きっきめっきき決めてんだから……(ああああ……マジで……暴走しちまう……)」

「うんッ……絶対……だよッ……チュッ」

「美琴ッ!!!」

「うん……優しくしてね……」

 前回、『夢』の中の自分が妊娠したと知った時、美琴はとんでもない騒ぎを起こしてしまった訳だが……。
 今回はその比ではない騒動が起こってしまった。

『御坂様が妊娠されたかも知れない』

 そんな噂がまことしやかに常盤台中学を駆け巡ったのは、あの『夢』を見てからしばらく後の事である。
 実はあの『夢』の後、美琴と当麻は褥を共にせずとも『夢』を共有出来るほどになっていた。
 結果、美琴は毎晩のように、少しずつ成長していく我が子を慈しみ育むミコトの『夢』を見る事となる。
 そうなってしまった時、美琴はもう止まる事が出来なくなってしまった。

 『夢』とは言え、自分のお腹の中で育っていく命の感覚が、何とも愛おしくそこから抜け出せなくなってしまったのである。
 何より、自分のお腹を擦り『ほう……』とため息をつきながらその感覚を反芻する時の彼女の表情は、正に『聖母』と呼べるほどのものであった。
 元々『超』が付くほどの美少女である彼女が、上条との恋で更に美しくなっていた。そこに今回のコレである。
 タダでさえ人を惹き付ける美しさがあるのに、そこに『聖母』のような慈愛に満ちた優しさが加わったのだ。コレが見る人を魅了しない訳がない。

 ルームメイトの黒子などは、その表情を見ただけで『ハウッ』と声を漏らして気絶してしまったほどで、その表情を撮った写真に向かって朝晩祈りを捧げるほどの崇拝ぶりである。
 美琴の取り巻き達もその表情に魅せられ、黒子と同じように気絶する者。身悶えする者が後を絶たず、とうとう黒子を中心とした『御坂美琴教』なる怪しい宗教のようなモノまで起こるという騒動に発展してしまった。
 これが騒ぎにならない訳がない。
 特に、常盤台中学の教師達にとっては、大問題が勃発したコトになる。

 『御坂美琴』こと『常盤台の超電磁砲(レールガン)』と言えば、学園都市でもっとも有名なレベル5であり、常盤台のエースである。
 その彼女があろう事か、妊娠してしまった。などという事になれば、これはタダでは済まない。
 常磐大中学始まって以来の大問題であり、学校の信用にも関わる。
 この問題を放置する訳にはいかない。

 だが、この問題は非常にデリケートな問題でもある。
 事が事だけに表立って動ける訳はない。
 かといって、秘密裏に有耶無耶に出来る訳もないし、放置できる訳もない。
 特に、今回の問題の責任をどうするのか?という点において、常盤台中学の教師達は一斉に尻込みをしてしまったのである。
 これでは問題を解決するどころではなくなる。
 そこで常盤台中学は、御坂美琴の母親である御坂美鈴に連絡を入れ、事態の真相解明に一役買って貰う事にした訳である。



「それにしても……ホントにそういう関係になっているとは……さすがに驚かされちゃったわ」

「美鈴さん、本当に申し訳ありません。大切な娘さんを……。オレが全て悪いんです。本当に申し訳ありません!!!」

「ううん、悪いのは当麻だけじゃない。私だって……。何より、当麻とそういう関係になりたいって一番望んでたのは私なのッ!!!……だから、お母さん……当麻を怒らないであげて……。それに……本当に迷惑をかけてゴメンなさい!!!」

「子どもだ、子どもだ。と思ってたんだけどなぁ……。もうこんなに成長しちゃってるんだ……。ねぇ、詩菜さん?」

「あらあら、そうですね。こんな風に互いをかばい合いながら、でもキチンと親に説明出来るなんてねぇ。……当麻さんを見くびっていたのかしら~」

「「(ポッ……//////////)」」

「ねぇねぇ、それよりもさぁ~、その『夢』で美琴ちゃんはドコまで経験してるのかな?」

「け……経験って?」

「その『夢』の中で美琴ちゃんは妊娠してる訳でしょ?今何ヶ月目なのかなって」

「……えっと……あの、8ヶ月くらい……」

「えっ……じゃあ……」

「うん……動くよ。それが分かるの……」

「「あー……」」

「ヘッ!?……二人とも……どうしたんですか?」

「男の人には分からないだろうけど……」

「あらあら……アレを経験しちゃったんですね。それは、もう……」

「うん、何て言うのかな。……スッゴい幸せな感じ……」

「女としての幸せで……あれ以上のモノはないわ」

「そうですよ、当麻さん。それを美琴さんに経験させてしまったんですから……これはもう、キチンとしないといけませんよ」

「ヘッ!?」

「『ヘッ!?』じゃありません!これはもう、婚約するしかありませんね!!」

「「こっ婚約ゥ~ッ!?」」

「あらあら、当麻さん。何をそんなに驚いているのかしら~。まさか、今更……」

「そっ、そんなんじゃないって……。ただ……ちょっと事態の展開が急すぎるって言うか……唐突だったから……」

「とは言え、今回の騒動を治めるには、この方法しかないんじゃないの~(ニヤニヤ)」

「こっ……ここっ……婚約……当麻と私が……婚約……ふにゃあああぁぁぁぁぁぁぁ(バチバチッ)」

「わっわわわわわわ……美琴ォッ!?」

『パキィィィンッ』

「オイッ……美琴!?しっかりしろっ!!!」

「うーん、こんな風にちゃんと守ってくれてるのね……コレは認めない訳にはいかないわ。決まりね♪」

「エエッ!?そっ、そんな簡単に……」

「簡単に決めた訳じゃないわ……。美琴ちゃんが気絶しちゃったから言えるんだけど……夏休み頃かな?この子、すごく落ち込んでいたでしょ?」

「あ……」

「離れているからどうしようも無かった。でも、親としては歯痒かったのよ……。だから取り戻そうともした。でも、そこにアナタが現れて……その後は……ね」

「あ……はい……」

「詳しい事は分からないし、今ココで話して貰おうとも思わない。でもあの後、この子は変わったわ。本当に。それまでとは何かが違ってた。人を好きになるって事がどういうコトか、それが分かり始めてた」

「……」

「そして、それをこの子に教えてくれたのは……当麻君でしょ?……だったらもう、君に任せるしかないじゃない。この子がこの子で居られる居場所を創ってあげられるのは、世界中を探したって、君しか居ないんだから……」

「美鈴さん……」

「ん~……『お義母さん』って呼んで欲しかったりしてぇ~♪」

「~~~(こ……この人はぁ……)~~~」

「あらあら、当麻さんったら……じゃあ、私も美琴さんに『お義母さん』って呼んで貰わないといけないかしら~」

「かっ……母さんまで……。それにしても、どうしてここに母さんが居るんだよ!?確かにオレが関係しているって事は想像つくだろうけど……」

「ある方から連絡があったのよ。美鈴さんやご主人の旅掛さん。それに刀夜さんや私も知っている方でね。『大丈夫ですよ。だからちゃんと話を聞いてあげて下さい』って言って下さったの」

「ある方って?」

「私や旦那の古い友人ってトコかしら。旦那や刀夜さんの先輩に当たる人らしいわ」

「へェ……そんな人がどうしてオレたちの事を……」

「何でも、今はこの学園都市に居るらしいわよ。以前はちょっと離れてたらしいけど、また戻ってきたんだって。そしたら……今回のあなたたちの騒動を耳にしたらしくってね」

「あ……/////」

「その内、会う事があるかも知れないわね。クセがあるけど、面白い人よん」

「あらあら……クセがある。は言い過ぎじゃないかしら~……。確かにちょっと変わった方ではあるけど……」

「……それ、どっちもどっちだぞ……」

「あらあら、そうかしら~」

「……母さん……あのなぁ……」

「まぁ、どちらにしてもそういうコトだから」

「なッ、何がそういう事なんですかっ!?」

「あなたたちが婚約するって話よ。……文句あるの?」

「アッ!?……えっと……その……ありません……」

「美琴ちゃん、美琴ちゃんってば……ほら、起きなさいよ」

「ふえ……ふにゅ……にゃぁ……」

「もう……いい加減に起きないと、私が当麻君を貰っちゃおうかなァ~……」

「ヘッ!?……ダメッ……ダメダメダメダメダメったらダメなのッ!!!当麻は私のなのッ!!!当麻は私のなんだからっ!!!!!」

「おっ、オイ……美琴……」

「あ……//////////」

「アハハハハ、やっと起きたわね。じゃあ、婚約の話進めていいわよね……美琴ちゃん♪」

「あ……ぅ、うん……」

「学校にも、そう報告するわ。妊娠はないってね。でも、婚約させて、当面はちゃんとするように言ったってコトで……何とか収まるでしょう」

「美鈴さん、本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「うん……じゃあ、詩菜さん、行きましょうか?」

「はい……あ、美鈴さん……」

「あ~、暗いのはナシナシ。私はこうなる事を望んでたんだし……、何より美琴ちゃんにとっては一番イイ結果じゃないのかな?」

「ふぇ……?……あ、うん……(ギュッ)」

「美琴……?」

「アララァ~、親の前でこれだけラブラブだと、もうなんにも言えないわん♪」

「「~~~~~//////////~~~~~~」」

「アハハ、じゃあね。今夜は一緒に食事でもしましょう。聴きたいことがた~っぷりあるしぃ~~(ニヤニヤ)」

「……か、母しゃん……//////////」

「み、美鈴さん……お、お手柔らかに……」

「それじゃあ、また後でね……当麻さん、美琴さん」

「あ……はい……」

「お母さん。ありがとう……」

「うん。良かったね、美琴ちゃん……」

「うんッ!!!」

「母さんも……ありがとう」

「当麻さん、頑張りなさいね」

「ああ、絶対に母さん達の期待を裏切らないようにする。必ず美琴を幸せにしてみせるよ」

「うわぁ~、当麻君、カッコいい~」

「……み、美鈴さん……」

「アハハハハ、じゃあねぇ~、また後でねぇ~」

「はい。それじゃあ、二人とも、また後ほど……ね」

「「はい。ありがとうございました」」

 こうして、上条当麻と御坂美琴の婚約が晴れて成立した。
 このことが公になる事はなかったが、4月の桜が満開のある日に、とあるホテルで上条家と御坂家の婚約式が行われ、二人は正式に婚約者として新学期を迎えることとなった。

 ─────◇─────◇──────◇─────◇─────◇─────

「……ハア……うう、ああ……ハア、ああ……ぅ~~~~……(ウロウロウロウロ)」

「ちょっとは落ち着けよ、トーマ……。心配なのは分かるけどよォ……」

「コレが落ち着いていられるかよッ……。ああ、本当に大丈夫だろうな……(ウロウロウロウロ)」

「ドクトルの腕は確かだ。それは分かってンだろう?」

「母子共に順調に来てるんでしょ?だったら大丈夫だよ。ってラストはラストは経験から言ってみる」

「へーへー、経験者は強いよなぁ……。ッたく、オマエらなァ。結婚する前に子供作って……お義父さん達がどれだけ慌ててたか、分かってんのか?」

「~~~~~//////////(プイッ)」

「ああっ!?……また照れて、横向いてる。いい加減そういうトコロを直しなさいっていつも言ってるのに。ってラストはラストはココでもお小言を言ってみる」

「うっ、うるせェンだよ……」

「ラストはまだ16歳なんだぞ。それを……」

「仕方ねぇだろ。出来ちまったもンは、しょうがねェし……」

「でも、私が元居た世界なら、そんなに珍しいコトじゃないんだよ。ってラストはラストはさりげなく夫をフォローしたりして」

「あ……それは、そうだろうけどさ……」

「実際、トーマとミコトお姉様が初めて会った頃、ミコトお姉様にはもう縁談の話が来ていたんだよ。ってラストはラストはちょっとショックな話を暴露してみたり」

「エエッ!?本当なのか?」

「うん、本当だよ。でもお姉様は『私より弱いヤツなんて興味ないわ』って断ってたけどね。ってラストはラストはトーマを安心させてあげる」

「ううん……うん……」

「あらあら、クロスちゃんがぐずり出しちゃった。ってラストはラストは愛おしげにあやしてみたり……よしよし……」

「……何だかんだ言って、もうすっかりお母さんしてるんだな……ラストも……」

「ウチの人も家に帰ったら、もうデレデレなんだから。ってラストはラストはウチの人が一番バラされたくない秘密をバラしてみる」

「ばっ、そっ……それは言うなって……」

「へェ~……あの『最強の戦士様』がねぇ~(ニヤニヤ)」

「ほぎゃあ……おぎゃあ……」

「「「えっ!?」」」

「う、産まれた?……産まれたのか?」

「……ふう」

「あっ、ドクトルッ!?」

「ああ……トーマ。大丈夫だよ。母子共に健康だ。可愛い女の子だよ」

「女の子……産まれた……オレの子が……ああ……ドクトル、ありがとう……」

「その言葉は彼女に言うべきだね。本当によく頑張ったからね。もうしばらくしたら病室に移すから、3人でゆっくりするとイイ」

「はい、ありがとうございます。ああ……産まれた、産まれたんだ……」

「おめでとう、トーマ。コレでオマエも親父だな」

「アクセラ……ああ、そうだな……」

「良かったね、トーマ。おめでとう。ってラストはラストはお祝いを言うの」

「ありがとうな、ラスト……」

「トーマ、トーマ」

「あ……イツワ?」

「ほら、こっちこっち。ミコトさんと赤ちゃんが待ってるわよ」

「あ、ああ……」

「おめでとう、トーマ。……良かったね」

「ああ、ありがとう、イツワ……」

「どうしたのよ?……何か、嬉しく無さそう?」

「あ、そうじゃない……そうじゃないんだけど……何か、すごい緊張しちゃって……」

「アンタが緊張してどうするのよ?……ちゃんとミコトさんを労ってあげないとダメなんだから……分かってる?」

「あ、ああ……」

「ミコトさん、本当に頑張ったんだよ。私じゃあんなふうには……とても……。だから、ちゃんと労わないと私が許さないからね!!!」

「お、オイ。どうしたんだよ……」

「良かった……ホントに、良かったね……」

「な、泣くなよ、イツワ……どうしてオマエが泣くんだよ……?」

「……バカ……鈍感……」

「ヘッ!?」

「……もう……ほら、ココよ。感動の対面をしてきなさい。オジャマ虫は退散するわ」

『カチャ』

「あ……オイ……」

「あ……トーマ……」

「……ミコト……」

「見て見て、赤ちゃん。ホントに可愛いのよ」

「あ、ああ……」

「どうしたの?トーマ」

「あ、イヤ……その……本当にご苦労様……ミコト。そして、ありがとう。オレの子供を産んでくれて……」

「ううん、私こそありがとう……。アナタの子どもが産めるなんて……私、本当に幸せよ……」

「……ああ……」

「ほら……赤ちゃんよ。抱っこしてあげて」

「あ……ああ……」

「どうしたの?……何か変よ、今日のトーマ」

「あ、イヤ……そう言う訳じゃないんだけど……何か……その、緊張しちゃってるみたいで……」

「もう、困ったパパですねぇ……ねぇ、赤ちゃん」

「ミコト……本当に綺麗だ……」

「えっ!?……なっ、何よ、急にっ!?……いきなり何を言い出すのよ……/////……もう。それより、ほら……赤ちゃんを抱いてあげなきゃ……ね」

「あ、……そ、そうだな……」

「そう、そうやって首の後ろに腕を回して……ちゃんと支えて……そう」

「え?……か、軽い。……でも、コレが新しい命の重さなのか……」

「トーマ、ありがとう……」

「何言ってんだよ。お礼を言わなきゃならないのはオレのほうだよ。ミコト……本当にありがとう……ありがとう……」

「え……トーマ……泣いてるの?」

「何か……すごい……嬉しくって……。でも、ムチャクチャ緊張してて……感動しててさ……」

「トーマ……うん……」

「それにしてもさ、さっきまで一緒に居たラストもそうだけど……母親ってすごいんだな。オレなんか……こうやって抱いてても、何か実感がわかないって言うか……まだ夢のような気分だよ……」

「そりゃそうよ。だってこの8ヶ月以上、一緒に過ごしてきたんだもん。私の中で育ってきたんだよ。トーマは産まれてからしかパパになれないけど、私はこの子が宿った時からママなの。分かる?」

「あ、ああ……そうだな……。じゃあ、ミコトママ、色々ご教授下さいませ」

「フフッ……宜しい。ちゃんと私の言うこと聴かないとダメだからね」

「はいッ!!……プッ……アハハハハハ」

「アハハハハハ……でも、ホントにこんな日が来たんだ……夢に見たこんな日が……」

「ミコト……」

「トーマ、私幸せよ。本当に幸せ……」

「ミコト……オレのほうこそ……本当にありがとう……オマエのお陰で、オレも幸せになれたよ……」

「うん……トーマ、愛してるわ」

「オレもだよ。ミコト、愛してる」

「あー」

「あ、アナタもね……赤ちゃん。産まれてきてくれてありがとう」

「ああ、そうだな。本当にありがとう。……早く名前、考えないとな」

「そうね。どんな名前がイイかな……」

「うーん……お義父さんに決めて貰うとか?」

「あ、喜ぶよ。それ……」

 新しく産まれた命を慈しむ二人。
 トーマとミコト、二人は今、本当に幸せだった。


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