とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part04

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胸ポケットと手のひらに


あれからというもの、上条と美琴は楽しい生活を送っていた。ある日上条がついに

「今日、俺んち寄らねえか?」

と美琴にとってたまらなく嬉しい誘いが。もちろん二つ返事で応え、早速上条はスーパーで買い物を済ませ、
(なんでこんなに大量に買うんだろう?と美琴は思った)スーパーを出た。


「み、美琴、実は黙っていたことがある」
「何?どうせろくでもないことでしょうけど」
「俺の部屋に・・・インデックスも住んでいるんだ」
「は、はぁ!!!?」

当然の反応だ。でも信頼してきた仲でもあるので一応説明は求める。

「理由くらいは聞いてあげる」
「そ、そうか。あのな・・・」

上条は話した。記憶喪失になってから最初に出会ったのがインデックス。退院して部屋に戻っても
インデックスは当たり前のように上条の部屋で生活していることを。

「ということは、あの子を助けたって訳だ。記憶を失う前の当麻が」
「だと思う。でも変なことは全くないぞ?」
「わかってるわよ。私よりも長く一緒にいたって考えると少しムカつくけどさ・・・」
「ありがとう・・・あぁ~助かった・・・」


いざ部屋の前に到着。


「あの子にまずなんて言って入ればいい?」
「ん?付き合ってるってちゃんと言おう。何言われるかわかんねえけどそれも覚悟の上だ。
もし困ったら常盤台直伝の美味い料理をたらふく食わせてあげりゃ問題ねえと思う」
「だからこの買い物の量なのね・・・」

部屋に入ろうとした時、

「おんやぁ?女の子を連れてくるとはいいご身分だにゃ~カミやん?」
「げっ!土御門!」
「一応俺が恋のキューピット役ってことになるんだぜい?そういえばまだ感謝の言葉も聞いてないにゃ~」
「るせえ!お前はただあそこの部屋に俺を放り込んだだけだろ!」
「いい度胸だぜい。ここでまずカミやんを殺してクラス中にチクッてやるにゃ~!!」
「上等だこの野郎!!」

何故か玄関前で大喧嘩をやり始めた恋人と隣の住人らしき人。とりあえず恋人を傷つけるのは許せないので
軽く美琴は土御門とか言う金髪の男を焼いて済ませた。(舞夏の義兄とは露知らず)


部屋に入ると案の定インデックスはいて、美琴を見るや否や敵意を丸出しに。

「インデックス、俺と美琴は付き合ってるんだ」

事情を説明され、そのことにショックを受けるインデックス。やはりこの子も・・・と思ったが

「短髪、こんなとうまだけどよろしくね」

と祝ってくれ、上条が言うように腕を振るった料理を出すとすっかりご機嫌も戻り、

「毎日来てくれると嬉しいな」

と満面の笑顔を見せてくれた。
そんなこれからも楽しくなりそうな日々が続いていたのだが・・・


日曜日の朝、白井黒子は目覚めた。彼女が起きてまず最初にすることとは。

「おっねえっさま~!気持ちの良い朝ですわよ~」

美琴の起こすため、普段ならベッドにダイブして速攻で電撃の餌食になるのだが今日は「優しく」毛布をガバっと奪っただけ。

「ん・・・」

毛布を奪われた美琴は寒さで体をこれでもかと丸くする。がここはやはり常盤台のお嬢様。
ものの1分で体を起こし、大きなあくびをした。

「ふわぁ・・・おはよう黒子。日曜なんだしもうちょっと遅くてもいいんじゃない?」

あくびをしたからか目に涙を浮かべて白井を見るが、

「・・・・・・・・お姉さま、どうしたんですの?」
「えっ?」

白井はこれでもかと言うくらい美琴を驚いたような顔で見ていた。何か変な所があるの?
と思いパジャマの袖を見たり髪を触ったり確認したが白井が驚くようなことは発見できなかった。

「何もないけど?」
「ち、違いますの!!それですわよ!!」

ズイっと顔を近づけてくる白井。近いというより・・・大きくみえる。

「お姉さま、まだ自分でお気づきになってませんの?」
「え?うん。そりゃあ」
「ではこれでどうですの?」

白井は呆れたような様子で美琴にあるものを投げ渡す。それは美琴の夜の相棒きぐるまー。
これでどうって何が?と美琴はわからなかったが深く理解するハメになった。

「え?」

白井が投げ渡したきぐるまーはぽすんとベッドの上でバウンドした。美琴はというと・・・
きぐるまーの下に埋もれていた。

「黒子!!苦しい!!早くどけて!!」

慌てて白井はきぐるまーに埋もれていた美琴を助け出した。

「大丈夫ですの?お姉さま?」
「こ、これって・・・どういうこと?」

ぬいぐるみにしては大きい部類に入るきぐるまーだが投げ渡されてこんなにダメージを喰らうはずがない。
受け取ろうとしたら・・・ズドンと落ちてきた、とても大きな物が落下してきたと表現したほうが美琴としては理が合う。

「まだ気づきませんの?では失礼して・・・」

え?え?とまだ驚きを隠せない美琴に無礼を承知して黒子は一番わかりやすい行動をとった。
美琴のパジャマの襟をつまんで美琴は白井にされるがままの状態に。

「あれ?黒子ってこんなに力持ちだったっけ?」
「パニックになるのもわかりますがお姉さま・・・」

白井はつままれてプラ~ンとしていた状態の美琴をもう片方の手に乗せた。

「体が小さくなっていますわよ」
「うぇえ!?」
「小さくなったって・・・私が!?」
「はい、女性でも小さいほうに入る私ですがその私の手のひらサイズに見事に・・・」
「そんな・・・どうして!?」

小さくなった美琴はあわわと焦り白井の手のひらでちょこちょこ動く。その動きが白井にはたまらないのだが
ここはグッと堪えた。

「能力者の仕業という可能性もありますわね?お姉さまに恨みを持った人とか」
「そんな!私最近何もしてない・・・」
「こうしてはいられませんわね。至急風紀委員に行って能力者を調べてきますわ」
「あ、なら私も一緒に連れて行って!!」
「ですがお姉さま、着替えるにもそのサイズになられてしまっては着るものがないのでは?」
「うぅ・・・ならこのままでいい!!」

美琴はパジャマ姿のまま制服に着替えた白井の胸ポケットに入り風紀委員支部へ足を運ぶ。

(ぐっへっへ・・・小さくなったお姉さまが私の胸ポケットの中に・・・走る度にお姉さまの
重みが私のポッチにいい刺激を与えてくれますの!)

「黒子?変なこと考えたら怒るからね!」
「な、何も変なことなんて考えてませんの」


風紀委員177支部。
非番だった固法先輩、美琴の情報を聞きつけてやってきた佐天まで巻き込み、支部の中は大賑わいだった。


「うわ~!御坂さん本当にちっちゃ~い!パジャマ姿って所にグッと来る属性の人には危険ね。はい佐天さん」
「ほ、本当に御坂さんですか?いつも可愛いのにこんなに小さくなると可愛さとキュート2倍増しですね!」
「初春、それよりも該当する能力者を今すぐ探してくださいな」
「ふえ~ん、私も御坂さん触りたかったです~」
「動物園の触れ合い広場にいる動物たちってこんな気持ちなのかしら・・・」


着くやいなや、白井は「今朝起きたらお姉さまがこうなっていましたの」とみんなの前で美琴を制服の胸ポケットから出し、
テーブルに置かれた美琴はちょこんと座って一同にぺこりと挨拶をする。
その仕草を見た途端、白井以外のみんなは「可愛い!!」と一斉に歓声を上げ、固法が美琴を手に乗せ十分に堪能したあと
佐天に渡し、初春は白井に釘を刺されパソコンの前で作業中という状況。
触られまくっている美琴からすればあまりいい気分はしなかった。

小さい頃母親に撫でられた感触とは違い、このサイズになってしまったからなのか、何故か人差し指だけで頭を撫でてくるし、
やたらとほっぺをツンツンしてくる。
白井と初春は能力者捜索に没頭していたが固法と佐天は美琴に夢中。


「御坂さんのほっぺってこんなに柔らかいのね~。御坂さんに悪いけどペットにしたいかも」
「固法先輩・・・やめてくださいよ」
「あ~固法先輩だけずるい!私ももっと触りたいです」
「はい、優しく持ってあげるのよ?」
「は~い、御坂さんを手玉に取るってこういうことを言うんですかね?」
「佐天さん、アンタね~・・・」
「・・・へ?」

佐天の手の上で少し我慢ならなかったのか頭からバチバチ聞こえてきた。

「み、御坂さん?私はレベル0ですよ?」
「黒子よりは優しくしてあげるから黒子みたいに一回なりなさい!」
「ひいぃ!!・・・ってあれ?」

確かに美琴は佐天の手の上で放電をしたが佐天にダメージは全くと言っていいほどない。
ピリッと静電気が来たかな~と思うかそれ以下。

「うそ?体が小さくなって能力までも落ちてるなんて・・・」
「え、あの、御坂さん?」
「そんな、私もうずっとこのまま・・・」
「大丈夫よ御坂さん!白井さんと初春さんが今原因を探してくれているし、ほら、初春さんどうなの?」

佐天の手のひらでシュンとなった美琴を見て慌てて先輩である固法はフォローと話を逸らそうとする。
だが初春は誰もが求めていない返答をした。

「う~ん、該当する能力者は見つかりませんね。前回あった
キャパシティダウンのような能力に影響を及ぼすような機械があるという
情報もありませんし」
「今のとこ手がかりナシですわ。お姉さまには申し訳ないですが
しばらくこのままの姿で生活してもらうしかありませんの」
「そう・・・」


最初のテンションが嘘のように177支部の空気が静まり返った。が、
その空気を引き裂くように緊急招集のサイレンが鳴り響いた。

「こんな時に召集なんて。固法先輩、厄介な事件のようなので私たちとご一緒に出動してもらっても?」
「ええ、構わないわよ?」

白井の呼びかけに快く応える固法。腕には既に風紀委員の腕章が付けられていた。

「佐天さん、私も出動しないといけないのでここを閉めないといけません」
「えぇ初春も!?お留守番はダメなの?」
「風紀委員の一人でもここにいれば問題ないんですけどそれができないのでここを出てもらわないと・・・」
「じゃあ御坂さんは?」
「申し訳ないですが佐天さん、お姉さまを頼みますわ」
「え?」


佐天と佐天の手のひらに乗った美琴は突然外に放り出されてしまった。


「ええっと、御坂さんどうします?」
「こうなったら仕方ないじゃない。どこか落ち着く場所に行かない?」
「は、はい!」

気持ちを切り替えたのか美琴の顔はさばさばしていた。今は佐天の胸ポケットに入り、
「今の私は佐天さんにおんぶにだっこされてる状態って言うんじゃない?」
と冗談も飛ばしてくる。

「じゃあ、ずっとパジャマ姿だと辛いでしょ?セブンスミストに行ってサイズが会う服でも探しましょう!」
「あるのかな?こんな大きさの人ってどこ探してもいないわよ?」
「その時はシルバニアファ○リーの服で我慢してくださいね?」
「パジャマのままでいい気がしてきた・・・」


こうして2人はセブンスミストに着いて美琴に会う服のサイズを探すが・・・

なんと奇跡的にあった。有名ブランドの超ミニサイズというモデルが売ってあり、
しかも種類も結構な数が揃っており、美琴と佐天は意外な形でショッピングを楽しめた。

「み、御坂さん!!これ!」
「なんて都合がいいのかしら・・・」

2人が目にしたのは超ミニサイズ常盤台中学制服。小さいサイズなのに常盤台中学の制服は
結構な値段を張っていた。当然美琴はこれを買う。「やっぱり小さくなってもこれがしっくりする」らしい。
だが佐天は「せっかくだしこれも!」と柵川中学の超ミニサイズの制服を見つけて買った。
そしてセブンスミストを後にし、美琴はミニ常盤台中学の制服に着替え、再び佐天の胸ポケットに収まった。


「まあ、持つのは私なんですけどね?」

佐天の持つ袋は小さいのでそんな大きな荷物になっているわけでもないのだが。

「その辺は・・・申し訳ないです」
「いやいや、たまには私も御坂さんの役に立てたと考えればいいですよ」
「あはは・・・ってん?」
「どうしました御坂さん?」

佐天の胸ポケットに入りながら目を細めて遠くを見る美琴。その瞬間美琴の顔が緩んだのを佐天は見逃さない。

「佐天さん、荷物持たなくていいかもしれないわよ?」
「え?」
「あのツンツン頭の男に声をかけてくれない?」

美琴が指した相手は金髪の男と青い髪の男と歩いていたツンツン頭の男。
佐天はもちろんえぇ~という顔をする。いきなり知らない男に声をかけるのも・・・

「誰ですかあの人?御坂さんの知り合いですか?」
「ふふん、みんなには黙っていたけどアイツ、私のか、かかかっか、彼氏なの」


「え、ええええええええええええええええええ???????」



佐天の驚きっぷりに美琴は胸ポケットの中でどや!と腕を組む。今まで内緒にしていてこんなに驚かれるのも
悪くないかも。でも内心ぶっちゃけた自分も動揺はしている。彼氏という単語を人前で口にするなんて
考えていなかったお姫様だったもので・・・


「ま、そ、そそそそう思うわよね!で、でででもアイツなら何か解決策を見つけてくれるかもしれないと思う!!」
「み、御坂さんに彼氏がいたなんて・・・信じられない」
「ま、まあ話せば長くなるけどアイツ、彼氏だけど鈍い所結構あるし、
私のこの姿じゃ気づいてくれそうにないから。お願い佐天さん!」
「・・・わかりました。お二人の馴れ初めを後でじっくり教えてくれたらいいですよ」
「う・・・それ以外はダメ?」
「今は他にいい案が浮かばないのでダメです」
「わ、わかったわよ。後で話すからアイツに声かけて!!」
「了解!」

これは逆に面白いおもちゃをゲットしたぞといわんばかりに顔をニヤつかせる佐天。金髪でもなく青髪でもない
あの人だっけ?ス~っと背後から近づきこっちに気づくのを待とうとしたが・・・
三人の会話が聞こえた。


「なあ青髪、もう帰ろうぜ?」
「ここは珍しくカミやんと同意するぜい」
「ダメや!カミやんは既に彼女がいて幸せを堪能し、ツッチーは義妹と仲良くご奉仕三昧!なのに何で僕だけ
素敵イベントが起こらへんのや!?せやから2人の匂いに釣られて逆ナンしてくる女の子をガバ!っとお持ち帰りする
ご予定なんやで?ええか?もしこの3人の誰かに声をかけてきた女の子がいたら君たち2人はまず僕に譲るんやぞ?
そこんとこわかった?お返事は!?」
「・・・にゃ~」
「・・・不幸だ」


結構近い場所でその話を聞いてしまった。美琴と佐天は・・・

「み、御坂さん。彼氏さんに声をかけた所で私があの青髪の人にお持ち帰りされそうなんですが・・・」
「それはさすがに困るわね・・・ならこうしよう!ヒソヒソ・・・」
「えぇ!?それは私が恥ずかしい目に合うじゃないですか!!」
「私も今これ以外にいい案が浮かばないの!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・ダメ?」
「う・・・ダメじゃないです・・・」

小さくなった美琴の胸ポケットからの上目使い攻撃は佐天の心までもKOしてしまった。
美琴の作戦とは、まず距離を3人との距離をさっきより大きくとり、できるだけ人が少ない時を狙う。


そして、


「御坂さんの彼氏さーーーん!!大事なお話があるのでちょっとこっちに来てもらってもいいですかぁぁぁ!!?」


と、とても大きな声でツンツン頭の少年に叫んだ。青髪の変態を警戒しての最善の行動だが周りからは
「やだ、あれって三角関係?」
「昼間からやるわね~」
等と聞こえてくる。佐天は既に「あはは」と笑顔で涙を流していた。
(これって風評被害っていうんだよね初春?この前の社会の授業にあった単語だよね?)

そんなことを考えていたが、あちらの3人の空気がどうもおかしい。金髪と青髪の男の表情がクワ!っとまるで
超ニッコリスマイルしている鬼のように変化していた。

「カミやん、お前はどうしてそういつも女の子が話しかけてくるのかにゃ?」
「せやな。いきなり声をかけてくる相手が彼女やったら100歩譲って許せるがあんなカワイ子ちゃんにまで
フラグ立てたっちゅうんかいな?」
「は?ちょ、俺はあの子知らない!!」
「でもあの子はカミやんを知っている訳ぜよ。この浮気現場を彼女と吹寄に報告する前に・・・」
「ここで息の根を止める必要があるみたいやなツッチー?」
「珍しく青ピに同意するぜい」
「・・・・・・・・・・・・・・」

金髪と青髪の男が黒いオーラを出したと同時にカミやんと言われていた少年は一目散に走った。

「待たんかいカミやん!」
「今回ばかりは俺も許さんぜよ!」

2人も少年を追いかける。

「え?え?きゃっ!」
「こっちだ!」

カミやんと呼ばれた少年は佐天の腕を取り二人から逃れるためにひたすら走った。

「ちょっと!当麻!!佐天さんの手握るなぁ!!」

佐天の胸ポケットから嫉妬心を露にしてピーピー叫んでいた美琴だが必死に走る二人には聞こえない。


「はあ、はあ、巻いたか?」
「もう追いかけて来てないみたいですよ?ぜえ、ぜえ・・・」

なんとかあの2人を巻いて逃げることに成功したツンツン頭の少年と佐天。少年は「巻き込んで悪かった」
とさっそく佐天にこれ以上ない綺麗な土下座をする。

「え?何をしてるんですか?」
「俺のことなのに巻き込んで悪かった。この通りです。でも上条さんはお詫びをしようにも
お金も知恵もないのでこうやって精魂込めて謝ることしかできないんです!!」
「いえ、巻き込んだのは私というか、御坂さんというか・・・」

頭をかきながら佐天は少し言いづらそうな表情で言葉を選ぶ。

「御坂?あぁ、そういえば何で俺が美琴の彼氏って知ってんだ?」
「(うわぁ、下の名前で呼んでる)そ、その、御坂さんに聞きまして・・・ついさっき」
「ついさっきってアイツどこか近くにいるのか?そういえば連絡しても珍しく電話もメールも来ないけど」
「いえ、ここに・・・」

佐天が自分の胸ポケットに指差すと、美琴がムスっとふくれた顔を赤くしてこっちを見ている姿があった。

「えっと、え~っと君は・・・」
「佐天涙子です」
「佐天さん?君はこの小さくて可愛らしいこの生き物が美琴であると言いますのでしょうか?」
「はい、学園都市レベル5第3位、常盤台中学のエース、通称、超電磁砲の御坂美琴さんです」
「あの、電波的な会話は上条さん着いていけませんので・・・」
「電波じゃない!!だったら自分の手で確かめてみてください!!はい!」

いきなり電波扱いされてご機嫌斜めになった佐天は美琴をむんずとつかみ上条に渡す。
渡された上条は手のひらに乗り、正座をしている美琴らしき生き物をマジマジと見つめる。

「じー・・・・・・・・・・・・・・・」
「にゃ、にゃによ!そんな顔で見にゃいでよ!////」

ふむ。確かに反応は美琴にそっくりだ。じゃあこれはどうだ?

「ビリビリ?」
「がぶっ!」
「痛てっ!指を噛むな!なら・・・御坂?」
「ふん!」
「美琴?」
「なぁに?当麻。えへへ」

うむ、これでほぼわかった。最後にこれを・・・

「今の上条さんの待ち受け画面は?」
「昨日勝手にプリクラの写真に変えちゃったけどもしもしその後変えたならわからないわ」
「・・・・佐天さん・・・・・・コイツは美琴だ」
「だから最初から言ってるじゃないですか。ていうか土下座は今のタイミングでしてほしい所なんですけどね」


目の前でこんな赤裸々にいちゃいちゃされてもなぁ・・・突っ込めないじゃん。と佐天はやれやれとため息を吐いた。



「・・・ということらしいです。御坂さんは上条さんなら何とかしてくれると思って」
「そうだったのか・・・」

場所を変えて一通りの少ないカフェのラウンジ。席の場所も奥でこれなら聞き耳を立てられることもないだろうし
まず小さくなった美琴も目立たない。と言っても美琴は上条の手のひらで嬉しそうに「えへへ」と笑っているだけだが。

一通り事情を聞いた上条。だがない頭で考えても解決策が浮かばないのは仕方ない。

「でも俺の右手で美琴を触っても何も起きないし・・・」
「右手?」
「あぁ、俺の右手は異能の力ならどんなものでも打ち消す不思議な能力なんだ。美琴の超電磁砲もな。
でもレベルは0。お世話になるけど俺にもよくわからない能力なんだよ」
「レベル0?御坂さんの彼氏が?」
「お高いレベルじゃなくて悪かったですよ・・・」
「いえ、そんなつもりじゃなくて。ならその右手で触っても何も起きないなら一体どうしたんでしょう・・・」


確かに上条は今、美琴を右手で触っている。左手に乗せ、右手で頭をなでなで、ほっぺをぷにぷにと手癖のように美琴を扱う。
上条が頼んだホットドッグを美琴サイズに切ってあげたものをむしゃむしゃ食べながらも嫌がる様子は全く見せない。
先ほどの風紀委員の時に触られまくった時とは反対でとても嬉しそうな顔をしている美琴を見て佐天は
なんとなくだが腑に落ちない。

「そうだ御坂さん、先ほどの約束果たしてください!二人の成り初めを教えるって約束」
「んにゅ・・・あと5時間待って・・・」
「御坂さぁぁん!上条さんも撫でてあげるのやめてください!!」
「だって手の上にいるからつい・・・俺からでいいなら簡単に話すけど?」
「いいんですか?御坂さん、どうやら白井さんにも教えてないみたいですけど私がバラしちゃっても?」
「その時は俺が白井に殺されるだけだ。そうだなぁ・・・」


上条は全てを話した。美琴が自分の影響で「自分だけの現実」を失いかけたこと、それがきっかけで
共同生活を学園都市から強いられたこと、生活していく中で自分が美琴をどう思っているのか気づいたこと、
美琴が自分をどう思ってくれていたのかわかって美琴の「自分だけの現実」を取り戻せたこと・・・
と二人が付き合うまでのきっかけとなった全てを佐天に話した。


「だ、大恋愛じゃないですか・・・」
「えへへ~。誉めても何も出ないわよ佐天さん?」

上条の手の上で偉そうにいばる美琴。このバカップル、そう簡単に弄れない。

「いいなぁ、私も彼氏欲しい!大恋愛したい!」

佐天は何も突っ込める所が見つからずあぁ~と思わず言葉に出てしまった。


「それなら俺という素敵な王子様がおりますぜい?」
「「「!?」」」

その言葉の先に上条当麻のことなら「何でも」知っている土御門元春がいた。



「つ、土御門?」
「焦るなカミやん、たまたま見かけただけぜよ。それに俺はお前の手の上にいる子に用事があるぜよ」
「?」

美琴はこの男を知っていた。先ほどいたのを見かけたからではない。上条と寮の前で大喧嘩した金髪。
そしてサングラス越しに見える怪しい眼。美琴はあまり信用してはいけない人だと思った。

「その様子だとまだやってないみたいだにゃ~」
「やってないって?」
「いんや、それはカミやんと超電磁砲が気づかないといけないぜよ」
「何よ、突然現れて何か知ってそうなのに教えてくれないってどういうこと?」
「口に出すだけじゃいけないってことだぜい?」
「は?」
「おっと、もうこんな時間だぜい。行かないといけないにゃ~」
「何だったんですかね?あの人・・・」

さっさと消えてしまった土御門の背中を見て佐天は一番意味がわからなかっただろう。

「カミやん、ちょっといいかにゃ?外で話をしたいんだが」

カフェの入り口付近で突然土御門は振り返り上条を呼ぶ。

「ちょっと行ってくる。佐天さん、美琴をちょっと頼む」
「は、はい」

上条は手のひらに乗っていた美琴を佐天に渡す。体全体で上条の手の感触に包まれていた美琴は残念そうな顔をした。
それに気づいた上条は

「美琴、ほれ」
「きゃっ、何これ?」
「口についたマスタード、ちゃんと拭いておけよ?」
「!!!!!」

慌てて美琴は上条が渡してきた物で顔を隠す。それは・・・・・・上条が持っていたハンカチ。


「あ、ありがとう」
「おう、お安い御用だ」
「当麻、早く戻ってきてよ。あの人なんか・・・信用できない」
「その通りだ。アイツは良くも悪くも嘘つきだから。でもアイツは俺を何度も助けてくれた友達だ」

んじゃ、と手を振って上条は土御門に促されて店を出た。

「相思相愛ですね~御坂さん?」
「や、やめてよ!恥ずかしいんだから!!戻ってきたら怒ってやるんだから、もう////」

佐天の手の上でギャースと反論するが顔が赤くて可愛いだけの生き物だ。今ではレベル5の威厳というものは
上条の前と、この小さい体になってしまってからなくなってしまったのかもしれない。

「ではでは、上条さんが戻ってくるまで御坂さんからお話を聞きましょうかね?いちゃいちゃっぷりを」
「やだ!当麻がさっき教えてくれたでしょ!?」
「でも御坂さんの口からも聞いてみたいな~と後輩である私は思うのですが?」
「じゃあ、少しだけだからね?」


そうして美琴は佐天の手の上で上条が佐天に話した内容とほとんど変わらなかったがあの時の感情も含めて
話した。佐天はその話に笑い、驚き、そして悲しみを乗り越えたハッピーエンドを迎えた今の2人があることに祝福した。


話しているとようやく風紀委員から開放された白井と初春も合流してきた。だが美琴は
「まだこの状態だしみんなには言えないから付き合っていることは内緒にしてて?」
と佐天にお願いし、佐天も了承した。


だがその日、上条当麻は美琴の元に帰って来なかった。


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