とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 検索件数ゼロな理由(わけ)



俺、上条当麻は記憶喪失だ。
聞いた話だと同居人のインデックスというシスターを救う際に記憶を失うような出来事にあったらしい。
それからと言うもの、俺は上条当麻として生きてきた。
不安ではあったが、誰にも直接気付かれるようなこともなかった。
本当の自分が何なのかはわからない。
だからこそ、以前のまま上条当麻として生きていく事に縋っていた。

記憶を失ってしばらくして、一人の少女に出会った。
御坂美琴。
名門の常盤台中学に通うお嬢様。
レベル5の超電磁砲。
どうやら知り合いだったらしい。
しかし、知識にあるお嬢様とはかけ離れた存在だった。
自販機に蹴り入れてジュースを取り出すわ、ぎゃーぎゃーうるさいわ、俺の中のお嬢様像は跡形もなく粉砕された。

後日、その少女が過酷な運命を背負っていたことを知った。
誰かを救うために自ら命を絶とうとしていた。
それを実行しようとしていた、まだ年端も行かない少女がだ。
そのときの少女の絶望に満ちた顔は今でも忘れられない。
衝動的に、彼女を救いたいと思った。
上条当麻としてではなく、あくまで俺自身の意思で。
彼女に笑顔を取り戻してやりたいと。

結果から言えば、救い出すことに成功した。
彼女に笑顔を取り戻してやることにもだ。
彼女の笑顔を見た時、俺の中で何かが暴れた気がした。
それからと言うもの、たびたび彼女と会うようになった。
偶然ではあるが。
そのたびに、俺の中で何かが暴れる。
そして俺の上条当麻としての仮面を剥がしていく。
少しずつ、少しずつ。
俺の中の何かが仮面を破って外に出ようとする。
彼女を、自分だけのものにしたい。
彼女をめちゃくちゃにしたい。
やめてくれ、やめてくれ。
俺は上条当麻なんだ。
上条当麻として生きていくんだ。
俺は上条当麻でいたいんだ。
上条当麻でいるしかないんだ。
だから、やめてくれ。
俺が上条当麻でなかったら、一体なんだと言うのだ。
みんな俺を上条当麻として認識している、それでいいじゃないか。
彼女の笑顔が上条当麻に向けられているならばいいじゃないか。
例え、それが俺でなく、以前の上条当麻に向けられているとしても……
イヤだ、イヤだ、イヤだッ!
なぜ、その笑顔は俺を向いていない。
なぜ、俺だけに向いていない。
上条当麻がいなければ俺に向けられたかもしれないのに。
何を言っている?
俺は上条当麻だ。
上条当麻のはずだ。
ならばその笑顔は俺に向けられているんじゃないか?
だが、俺は上条当麻を演じているだけなのかもしれない。
ならば、本当の俺はなんだ。
俺は一体誰なんだ?
わからない、わからない。
俺が俺に否定される。
怖い、怖い……
自分が何者なのか分からない。
上条当麻でよかったはずなのに。
彼女に出会うたびに、彼女と話すたびに俺の上条当麻としての仮面が剥がされていく。
だから、俺に構わないでくれ。
だから、俺を見ないでくれ。
俺の上条当麻という仮面を剥がさないでくれ。
彼女だけには嫌われたくない。
彼女だけには笑顔を向けていてほしい。
だから俺を引きずり出さないでくれ。
彼女を独占したい、めちゃくちゃにしたいなんて最低なことを考える俺を表に出さないでくれ。
上条当麻でいつづければ、彼女にひどいことをせずに済むのだから。

俺を呼ぶ声がする。
間違いなく、彼女だろう。
だからこそ、俺は無視を決め込む。
彼女に出会えば、仮面が剥がされてしまうから。
彼女に出会えば、俺の中の何かが暴れだしてしまうから。
彼女に嫌われようとも、彼女を穢してしまうよりはマシだ。
だから、もう俺に関わらないでくれ。
彼女に二度とあの絶望した表情をさせたくないんだ。
それなのに、なぜ彼女はいつも関わって来るんだ。
それなのに、なぜ俺も最後には関わってしまうんだ。
背後からバチバチと音がする。
きっと彼女がこの後、電撃を放つからだろう。
よかった、これで関われる。
よかった?
毎回思う疑問。
彼女と会いたくないはずなのに。
彼女と話したくないはずなのに。
彼女と会いたいと思う俺がいる。
彼女と話したいと思う俺がいる。
なぜ、俺はいつもそう思うのか……


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