Chapter2 ~個々の一端覧祭準備事情~
翌日、11月15日。
当然の事ながら、上条が美琴を誘ったのには理由がある。
そう、別に他にも女子はいるし、何ならインデックスでも良いわけだ。
そう、別に他にも女子はいるし、何ならインデックスでも良いわけだ。
ただ、何事にも事情というものがある訳で…………。
まず一つ、基本的にクラスのみんなが忙しいのだ。
本来なら休日である今日も、実行委員 吹寄制理の呼びかけによってその殆どが通学している。
いわゆる猫の手も借りたい状態のクラスメイトに、無理を言う事は出来ない。
本来なら休日である今日も、実行委員 吹寄制理の呼びかけによってその殆どが通学している。
いわゆる猫の手も借りたい状態のクラスメイトに、無理を言う事は出来ない。
この定義によって、解は「インデックス」、「御坂美琴」のいずれかになる事は確定。
では、何故前者が解から外れるのだろうか。
その訳を知る為には、時間を昨日の夕方まで遡らなければならない。
では、何故前者が解から外れるのだろうか。
その訳を知る為には、時間を昨日の夕方まで遡らなければならない。
―――――――昨日 P.M.4:45
上条は学生寮のエレベーターで、腕を組んで唸っていた。
「『以下の要求を全て満たす様に、買い出しに行ってくる事を命ずる byクラス一同』……………………はあ……。
これ、何かの嫌がらせ何じゃないのか…………?」
これ、何かの嫌がらせ何じゃないのか…………?」
上条が手にしているのは、クラスメイト各々の(個人的且つ理不尽な)要求の束である。
まぁ、上条は毛頭から全ての要求を通すつもりはないが。
そう、はっきり言って内容が内容だ。
まぁ、上条は毛頭から全ての要求を通すつもりはないが。
そう、はっきり言って内容が内容だ。
「『メイド姿で接客しているところが見たいにゃー』……………却下。
『食材に世界三大珍味を入れたい』……………却下。
『あらゆる女の子が引き込まれる様な、魔性のクラスにせえへん?』……………却下。
『大丈夫だ青ピ、このクラスには上条がいるじゃないか!!』……………何だこれ?」
『食材に世界三大珍味を入れたい』……………却下。
『あらゆる女の子が引き込まれる様な、魔性のクラスにせえへん?』……………却下。
『大丈夫だ青ピ、このクラスには上条がいるじゃないか!!』……………何だこれ?」
よって、まともなのが無い男子諸君の要求は容赦なく切り捨てられる為、必然的に女子の意見・要求が多く取り入れられる訳である。
しかし、上条には分からない。
『かわいい』とか『女の子らしい』とか『大人っぽい』とかの定義がさっぱり。
ということで、自らの同居人に助けを求めようとした時に、上条は驚愕の事実を真に受ける事になるのだ。
しかし、上条には分からない。
『かわいい』とか『女の子らしい』とか『大人っぽい』とかの定義がさっぱり。
ということで、自らの同居人に助けを求めようとした時に、上条は驚愕の事実を真に受ける事になるのだ。
上条が自室のドアを開ける。
「ただいまー、インデックス」
「あっ、おかえり!とうま!!
帰ってきてすぐで悪いんだけど、ちょっと話を聞いてくれないかな?」
帰ってきてすぐで悪いんだけど、ちょっと話を聞いてくれないかな?」
「ん、どうした?また魔術関連か?」
「ううん、それよりも重要な事なんだよ!!」
「魔術よりも重要な事?何だそれ?」
とても嬉しそうなインデックスとは対照的に、どんどん顔が曇っていく上条。
上条はこれまでの経験から、肌で感じていた。
何か雲行きが怪しくなってきたぞ~?と。
そんな上条はお構いなしに、やっぱり嬉しそうな表情のインデックス。
上条はこれまでの経験から、肌で感じていた。
何か雲行きが怪しくなってきたぞ~?と。
そんな上条はお構いなしに、やっぱり嬉しそうな表情のインデックス。
「ふっふ~ん、これを聞いたら流石のとうまでも驚いちゃうかも」
「何だよ………勿体ぶってないでさっさと言ってくれ」
「じゃあ言うけど心の準備は大丈夫かな、とうま?」
「ちょっとやそっとで驚く様な上条さんじゃありません」
表向きはこう言っているものの、内心は『心の準備が必要な話って何だよ………』としっかり冷や汗をかいている。
しばらくして、インデックスが(上条の心の準備が全く出来ていないのにも関わらず)口を開いた。
しばらくして、インデックスが(上条の心の準備が全く出来ていないのにも関わらず)口を開いた。
「わたしね、とうまのクラスのウェイトレスをする事になったんだよ!!」
「ああ、何だそんな事かインデッ……………………………………Please say that again?」
「……………何でいきなり英語でしゃべるのかな?」
驚きの余り、言語中枢および発音機能を損傷した様だ。
しかし、いつまでも壊れている訳にはいかないのがこのご時世。
しかし、いつまでも壊れている訳にはいかないのがこのご時世。
「っておい、どういう成り行きでそういう事になるんだよ!!」
「んーとね、まずお昼頃にあいさから電話がかかってきてね――――――――」
インデックスの話をまとめると、電話で姫神秋沙とおしゃべりをしていたら、一端覧祭の話題が出てきてしまい、結局はインデックスが『人手が足りないんだったらわたしもお手伝いするかも!!』と半ば強引に要求(=興味がある事はとことんやってみたい症候群)を通してしまったらしい。
それで、明日は挨拶をするために高校まで行くそうだ。
それで、明日は挨拶をするために高校まで行くそうだ。
「何でこういう問題が我がクラスには次々と起こるんだ……………」
「むー、わたしだってちゃんと出来るもん!!」
「…………インデックス、こうなったからには言っておくがウェイトレスは運んでる料理の誘惑に負けちゃいけないんだぞ…………」
「そ、そんなことは知ってるんだよ!!バ、バカにしないで欲しいかも!!!」
「………………本当は?」
「…………………………………………………負けちゃうかも…………」
「大丈夫なのかよ………………あぁ、不幸だ………………」
溜息をついた上条は、自分の携帯を取り出した。
これから迷惑をかけるであろう月詠先生に謝る為と、あのお嬢様に助けを求める為に。
これから迷惑をかけるであろう月詠先生に謝る為と、あのお嬢様に助けを求める為に。
詰まるところ、
現在、インデックスは姫神秋沙と月詠小萌大先生による引率のもと、上条の高校に突撃している次第である。
はっきり言って、インデックスの方が気が気でないのだがそうも言っていられない。
何せ、自分が呼び出しているのはあの御坂美琴なのだから。
何せ、自分が呼び出しているのはあの御坂美琴なのだから。
「御坂、遅れたら怒るだろうな……………」
美琴との約束を守る為に、上条はセブンスミストへ走る。
一方の美琴は、既にセブンスミスト前で待ちぼうけの状態だった。
別に集合時刻を間違えたという訳ではなく、単に女子寮で待っているのが億劫になって、約束の1時間前に着いてしまっただけ(?)の様だ。
現在の時刻は、午前10時50分であるため小一時間はずっとこんな調子なのだが………。
別に集合時刻を間違えたという訳ではなく、単に女子寮で待っているのが億劫になって、約束の1時間前に着いてしまっただけ(?)の様だ。
現在の時刻は、午前10時50分であるため小一時間はずっとこんな調子なのだが………。
言い忘れていたが、晩秋の今日この頃は気温が急激に下がる事もある訳で。
色々と気持ちが上り調子だった美琴が、朝の気象予報に耳を傾けるはずもなく。
結果、
色々と気持ちが上り調子だった美琴が、朝の気象予報に耳を傾けるはずもなく。
結果、
「………さっ寒いし、アイツは来る気配がないし、不幸だわ…………………」
現状、御坂美琴はガタガタブルブル震えながら健気にアイツを待っている。
ここで、暖房の効いた屋内で待てばいいじゃないか、と言う声もあるだろう。
しかし、
しかし、
「………何で集合場所をセブンスミスト前にすんのよ……………あの馬鹿……」
御覧の通り、現状の彼女に『臨機応変』の文字はなく、代わりに『上条当麻』という文字が脳内を覆い尽くしてしまっている。
つまり、集合場所を忠実に守るやっぱり健気な美琴チャンなのであった。
つまり、集合場所を忠実に守るやっぱり健気な美琴チャンなのであった。
「うぅぅぅ………………流石に凍え死ぬかも………………………」
だったら尚更屋内で待てよ、とツッコみたいところである。
が、繰り返し言うが彼女にその思考は無い。
が、繰り返し言うが彼女にその思考は無い。
「………しょうがない……マフラーでも買っていこうかな………」
だからマフラー買うぐらいなら屋内で待てやコラ、とツッコむどころか命令したくもなってくる。
が、しつこい様だが彼女にその思考は無い。
が、しつこい様だが彼女にその思考は無い。
そんな常盤台のエース様を物陰から見守る(監視すると同義)人影が3つ。
「……………あんな寒々しい格好で何をなさってますの………。
……………怪しい、怪しすぎますわ!!!」
……………怪しい、怪しすぎますわ!!!」
「御坂さんがとてもかわいいですぅ…………」
風紀委員の自覚が完全に消えている、白井黒子と初春飾利に、
「…………あのー………パトロールはいいんですかー」
まだ、少しは良心が残っている佐天涙子だ。
どうやら、佐天同行で風紀委員のパトロールをしている最中に、美琴が見つかってしまったらしい。
よりにもよって、昨日の今日で………。
よりにもよって、昨日の今日で………。
「やっぱり昨日の電話と関係あるんですかね…………白井さんはどう思いますか?」
「ぐぬぬ……………何ですの、あの幸福に満ちあふれたお姉様の表情は?
あの様なお顔は私にもお見せにならないですのに…………」
あの様なお顔は私にもお見せにならないですのに…………」
「う~んそうですか…………となると電話の相手は一体誰なんでしょうか?…………」
「………………もうこれは間違いなくあの類人猿が原因ですの……。
今度見かけたら洗いざらい吐かせてやりますわ………………」
今度見かけたら洗いざらい吐かせてやりますわ………………」
「おーい、初春に白井さん?会話が絶妙に噛み合ってませんよ~?」
会話をしている様で、実は独り言をしているという高度なテクニックを白井と初春が披露している頃、佐天は思い出してしまっていた。
あの粉まみれになっていた美琴の姿を。
そして、つい呟いてしまった。
あの夏休みの出来事を。
あの粉まみれになっていた美琴の姿を。
そして、つい呟いてしまった。
あの夏休みの出来事を。
「あっそういえば、御坂さんが誰かにクッキーを作ってた事あった様な「「………………………………………」」―――――――――マズったな……」
無言だった。
静寂だった。
世界から音が失われていた。
静寂だった。
世界から音が失われていた。
しかし、それは直後に大嵐が来る予兆でもある。
「……………………ちょっと御坂さんに詳しい話を聞いてきます」
「……………………お姉様?それは何かの間違いですわよね?」
「ちょ、ちょっとおぉぉおお―――――!!??
初春に白井さん、ストォォォ――――――プ!!!
私が悪かったから、これ以上話をややこしくしないで―――――――!!!!」
初春に白井さん、ストォォォ――――――プ!!!
私が悪かったから、これ以上話をややこしくしないで―――――――!!!!」
美琴の方にユラユラ近づいていこうとする白井と初春を、必死で止めようとする佐天。
だが、彼女の願いも虚しく事態は悪化する事になった。
それこそ、火にガソリンをぶっかけるが如く。
だが、彼女の願いも虚しく事態は悪化する事になった。
それこそ、火にガソリンをぶっかけるが如く。
状況を整理する。
まず、佐天が白井と初春を止める為に、2人の肩を掴む。
が、2人の勢いに負けてしまい、思いっきりバランスを前に崩す。
当然、前には白井と初春がいるので、どうあがいても彼女達に倒れ込む事になる佐天。
まず、佐天が白井と初春を止める為に、2人の肩を掴む。
が、2人の勢いに負けてしまい、思いっきりバランスを前に崩す。
当然、前には白井と初春がいるので、どうあがいても彼女達に倒れ込む事になる佐天。
結局、
「「「ひゃあ!!!」」」
「うわっ!!」
3人まとめてクラッシュを起こす事になった。
……………前方を走っていた通行人を巻き添えにして。
……………前方を走っていた通行人を巻き添えにして。
「いてて……………すいません、大丈夫で――――――――あれ?」
佐天が巻き込んだ通行人の方を見ると、ある事に気づいた。
その通行人は、ツンツン頭で黒い学生服を身に付けている。
見覚えがある様な……………というかつい先日見たぞこんな人、と佐天が記憶を引っ張り出していると
その通行人は、ツンツン頭で黒い学生服を身に付けている。
見覚えがある様な……………というかつい先日見たぞこんな人、と佐天が記憶を引っ張り出していると
「ってて……………いつもの事だが不幸――――――――って確か君は一昨日の……?」
不幸な通行人―――――――上条当麻が顔を上げた。
「あー、一昨日助けてくれた人じゃないですか!!あの時は有り難うございました!!!」
「ああ、やっぱりそうか。大丈夫だったか?」
「お陰様でこのとおりですよ!!ねっ、初春――――――っていない?」
「………………もしかすると、君の下敷きになってる子か?―――――――というか何故白井までいる……?」
「………………えっ?」
上条に指摘され、佐天が自分が乗っかっているものを見ると、そこにはすっかり伸びてしまった白井と初春がいる。
「あらららら……………………………」
「おーい大丈夫かー、白井~」
上条が、白井の頬をペチペチと叩くと反応が見られた。
うっすらと目を開けて、きょろきょろと辺りを見回した後、真正面を向き―――――――
うっすらと目を開けて、きょろきょろと辺りを見回した後、真正面を向き―――――――
「…………………………………あら?幻覚らしきものが…………最近、疲れているかもしれませんわね……」
「白井、俺は幻覚じゃないからな?」
「……………なら、尚更疲れてますの………」
「うんうん、間違いなく白井だな」
「あれ?白井さんの事知ってるんですか?」
「んっ?まぁ、色々とございまして………」
「へえ~、世の中って結構狭いんですね」
「そうかもな」
そんな他愛のない会話をしていると、初春も目を覚ました。
「いたたたた…………もう、佐天さんったら痛いじゃないですか……………。
……………あっ、そちらの男性の方ってもしかして!?」
……………あっ、そちらの男性の方ってもしかして!?」
「おっ、初春も復活した?そうそうこの人が例の人でーす!!」
「やっぱりそうですか~!!本当に有り難うございます、――えっと――――お名前は?」
「名前か?俺は上条当麻、不幸だらけの平凡な高校生ですよ。
そういえば、そっちの名前も聞いてなかったな…………」
そういえば、そっちの名前も聞いてなかったな…………」
「私ですか?初春飾利って言います。一応、これでも風紀委員やってるんですよ~。
それで、こちらが―――――――」
それで、こちらが―――――――」
「はいは~い、佐天涙子で~す!!初春とはクラスメイトで、基本的に性格は明るい方です!!!」
「初春さんに佐天さんか、よろしくな」
これだけ見ていればただの自己紹介なのだが、話は徐々にややこしい事になっていく。
なぜなら、
なぜなら、
時計塔から、鐘の音に似せた電子音が鳴り響いたからだ。
つまり、午前11時になったという事。
そしてこの時間は、上条当麻と言う人物にとって一種のタイムリミットを指す。
そしてこの時間は、上条当麻と言う人物にとって一種のタイムリミットを指す。
「げっ………………もうこんな時間かよ……………」
「誰かと待ち合わせでもしてるんですか?」
「そうなんだけど、怒らすとマズいんだよな……………」
「それなら、早く行ってあげて下さい!!私達は大丈夫なんで!!!」
「………それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいますか。じゃあ、またな」
「せいぜい、お気を付けて下さいな―――――――――って待ち合わせ?お姉様?昨日の携帯?……………まさか…………」
「「白井さ~ん?どうしたんですか~」」
結論から言ってしまおう。
その『まさか』である。
その『まさか』である。
去る上条は思いっきりセブンスミストの方へ走っていくし、それに答える様に電撃の音が聞こえる。
ついでに、遠くの方から『悪い、御坂!!』『アンタが誘ってんだから、もうちょっと早く来てくれても良いんじゃないの!?』とどこかで聞いた様な声が文句を言っている。
ついでに、遠くの方から『悪い、御坂!!』『アンタが誘ってんだから、もうちょっと早く来てくれても良いんじゃないの!?』とどこかで聞いた様な声が文句を言っている。
当然、白井に初春、そして佐天がこれに食いつかないはずがなく。
「………………佐天さん、今の間違いなく御坂さんの声ですよね………」
「というか、上条さんと御坂さんが話してるところ見えるんだけど……………」
「…………………………そうそう、初春?佐天さん?この後はどう致しますの?」
「「勿論、セブンスミストに寄るに決まってるじゃないですか~」」
「……………激しく同意致しますわ」
……………………………………今現在、この3人を制止する術はない。
というか、元々は止めに入っていた佐天までもがニヤニヤしている時点で諦めろ、と言う話だ。