とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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Chapter1 ~日常と非日常の狭間~


P.M. 3:20

御坂美琴は、第177支部へと向かっていた。
珍しく学校が早めに終わったので、親友である白井や初春、そして佐天と駄弁る為だ。

「う~~~~~ん!!初春さんや佐天さんに会うのも、久しぶりの様な気がするわ~~」

背伸びをしながら、最後に会ったのっていつだっけ?と記憶の糸をたどる美琴。
第3次世界大戦やら何やらがあったせいで、かなり記憶がごちゃ混ぜになっている様だ。

そこで唐突に携帯が鳴った。
一瞬ビクゥ!!としたものの、冷静にディスプレイを見ると『初春さん』と表示されていたので、切れないうちに慌てて通話ボタンを押す。

「あっ、もしもし初春さん?」

『あっ、はいそうです~。いきなりで何なんですが、御坂さんってもう177支部に着いてますか?』

「う~ん、まだ着いてないけど後2,3分ってところね。どうしたの?」

『いや早めに着くんでしたら、ちょっと頼みたいことがあるんですけど………』

「別に構わないけど……。どんなこと?」

『有り難うございます!!……えっとっ、支部にある私のパソコンを起動させてもらいたいんですが……』

「あれ?………初春さんのパソコンって起動にそんなに時間かかったっけ?」

『そのですね………パソコン新調したんで、色んなソフトをインストールしてたら、いつの間にかめちゃくちゃ重くなっちゃったんですよ………………。我ながら恥ずかしいです…………』

「あちゃー………それは大変ね……………」

『ちょっと調べたいことがあるので、宜しくお願いしますね!!私と佐天さんも、あと10分程で着きますので!!』

「分かったわ、それじゃまたね」

携帯を鞄の中にしまった美琴は、そこで、ふと些細な疑問が生じた。

「んっ?調べたい事って何だったんだろ?」

一応結論だけ述べておくと、その答えは彼女の想い人である上条当麻であったりする。

そうこうしている内に第177支部に到着したので、とりあえず頼まれた初春’sパソコンの起動を済ます。

「うっわー、情報量が限界を超えてるわよ………そりゃ起動に時間がかかるわ……」

パソコンに負荷をかけない様に、能力でスキャニングをした際の素直な感想である。
軽く予想しただけでも10分以上は必要とみられる。
美琴がその能力で起動をサポートすれば少しは早くなるだろうが、データを傷つける恐れもあるので、サポートの方は行わない様だった。

そこで、バ――ンと第177支部のドアが開き、

「御坂さ~ん、こんにちは~!!
あちゃー、やっぱりまだ起動してないみたいです………」

「御坂さん、ご無沙汰してます!!!」

頭の花飾りが特徴の初春飾利と、いつも通りに活気に満ちあふれる佐天涙子が飛び込んできた。
その勢いに、若干たじろぐ美琴。

「ああ………お久しぶりね2人共………アハハ……」

「「?どうかしましたか?(したんですか?)」」

2人が顔を覗き込んできたので、無駄な詮索を恐れた美琴は、何でも無い何でも無いと首を高速に横に振る。
少しの間、不思議そうな顔で美琴を見ていた初春と佐天だったが、機転を利かせた美琴の
「じゃっじゃあ私、お、お茶いれてくるね~」発言により、両名の詮索モードは解除された様だった。


P.M. 3:45

まず始めに報告が2件。

1、やっと初春’sパソコンが起動した。
  締めて18分49秒に及ぶ長丁場である。

2、美琴が不可抗力でこぼしてしまったお茶の真上に、白井黒子が空間移動してきた。
  そして、見事に盛大に完膚無きまでにすっ転んだ。

「いきなりこの仕打ちは何なんですの………………」

結果的に、ごっそり体力と気力を持って行かれた白井黒子がソファーに座っている。

美琴と佐天の2人は必死に白井への対応を考えていたが、初春はやっとの事で立ち上がったパソコンで書庫(バンク)にアクセスをしていた。
そんな彼女に、どこかしら黒いものを感じたのか白井は、

「初春?さっきからカタカタ何を調べているんですの?」

「……………いやちょっとですね、ある人を探しているんですよ」

「……………本当の理由を教えて欲しいものですわね」

「ホントですって!!!決して、今の白井さんを見ちゃうと笑っちゃいそうになるからパソコンの作業に移っ……………………………………あっ」

「……………う~い~は~~~るぅ~~~~~?」

本来、治安の塊であるはずの風紀委員第177支部に、殺気の念とやっちゃったオーラが渦を巻く。

「…………………………今度、初春の枕元に『口は災いの元』って書いた紙を置いておこう」

佐天はと言うと、親友の今後を本気で心配していたりする。
一方の美琴は、白井と初春が冷戦状態になってしまったので、質問対象を佐天1人に絞る事を決定していた。

「ねえ佐天さん、ちょっといい?」

「やっぱり『口が軽すぎる』の方が…………あっ、何ですか御坂さん?」

標語の変更まで考えている佐天だが、美琴に話しかけられたので一旦その思考を止める。

「質問なんだけど、初春さんが何調べてたか分かる?」

「ああ、その事ですか。実はですね………昨日帰りが遅くなって、暗い夜道を初春と歩いてたらスキルアウトの方々に絡まれましてね………………」

「えっ、大丈夫だったの?!」

「はい、この通りです!!………と言っても、見知らぬ男の人が助けてくれたからなんですけどね…………。
初春が調べて探しているのはその人ですよ」

「中々、度胸のあるやつね………単身でスキルアウトに飛び込んで行くなんて」

「そうなんですよ。それも出てきたと思ったら、直後にスキルアウトを引きつけて追いかけっこを始めちゃうんですもん………お礼言う暇も無かったんです」

「そっか、見つかるといいわね……………………………………………………って、ん?」

この時、美琴は気づいてしまった。
こんなシチュエーション、前に見たことがあるぞ~?と。

「…………………………………………スキルアウト………女の子………助ける…………」

「御坂さん……?いきなり何を呟いてるんですか………?」

この時点で、確信度60%。

「…………佐天さん、聞きたいんだけどその人髪型はどんな感じだった?」

「えっと~、結構特徴的な髪型でしたね。何て言うか、こうツンツンとした………」

確信度99%。

「………もう一つだけ良い?そいつ『不幸だあ――!!』みたいなこと言ってなかった?」

「あれ?御坂さん何で知ってるんですか?確かに、遙か彼方の方から叫んでるのが聞こえましたけど………」

ダメ押しの佐天の解答により、美琴の確信度メーターが振り切れた。

「………………やっぱりアイツかああぁぁぁあああああ――――――!!!???」

「御坂さん!?いきなり絶叫したりビリビリしたりどうしたんですか―――!!!???」

いきなり叫んだかと思ったら、髪の毛の方も帯電している美琴。
自己防衛本能的に「マズくない?この状況?」と感じた佐天は、白井と初春に助けを求めようとするが、既に彼女達はそこにいなかった。
代わりに聞こえるバタンッ!!という、慌ててドアを閉める音。
どうやら、2人共凄まじい勢いで逃げている模様。

(……………………あれ?私見捨てられちゃったパターン??)

しばし唖然としていた佐天だったが、刻一刻とタイムリミットは近づいてきている。
ということで、本日の教訓。
自分の命は自分で守るべし。

「……………………佐天涙子、脱出します!!!」

佐天が猛然とドアを捉え、転がる様にして部屋から脱出した瞬間、内部から凄まじい雷鳴が轟いたのは言うまでもない。


「…………………どうしよう………少しだけ、初春さんと佐天さんに嫉妬したなんて言えない…………」

美琴は美琴で悩んでいた。
漏電の理由が『嫉妬』なので尚更である。


P.M.4:20

「おねがいおねがい、ってミサカはミサカは必死に駄々をこねてみるうぅぅ…………」

「……………しつけェ……」

「あなたもいいかげんに諦めたら?ってミサカは思うんだけどねえ」

とあるマンションにて、打ち止めが、番外個体と一方通行に交渉を行っていた。
といっても番外個体は始めから打ち止めに賛成なのだが。

「……………そこまでして何が見てえンだ?所詮、ただのバカ騒ぎだろォが」

「あなたは何にも分かってないね!!ってミサカはミサカは憤慨してみる!!!
とりあえずミサカは一端覧祭というものに興味津々なのだ!!ってミサカはミサカは本音をぶっちゃけてみたり!!!」

「…………だったら1人で行けばいいじゃねェか」

「1人で行ったらつまんないじゃない、ってミサカはミサカは少し気分的な理由を述べてみたり!!」

「……………上位個体さん?そもそも、その容姿で1人で歩いてたらコワ~イお兄さんが出てくるとは思わない?」

要するに打ち止めは、一方通行と番外個体に一端覧祭を一緒に回って欲しい様だ。
既に番外個体は了承しているので、後は一方通行だけである。
しかし問題なのは、会話が会話なので話がかみ合う様子が無いということだ。

「………………てか番外個体の野郎だけじゃダメなのかァ?」

「あなたも一緒に来ないとダメなの!!ってミサカはミサカはもう理屈なんか無視して精神論で攻めてみる!!!みんなで行けば、きっと楽しくなると思うよ?」

「……………………………………だりィ………」

「…………………ここらで折れてあげるのも、保護者には必要だとミサカは思うぞ☆」

「そうだよそうだよ、ってミサカはミサカは番外個体に便乗してみたり!!」

「……………………………………めんどくせェ……………」

「…………………うわあああぁぁぁぁあああああああああん!!!!!!!」

「あ~あ、泣いちゃった~」

とうとう打ち止めが泣き出してしまったが、ひどくローテンションな一方通行は完全に無視している。
そんな上位個体を見かねた番外個体は、ちょいと一方通行に耳打ちすることにした。

「ねえ、上位個体もあんなんだから、そろそろオーケー出してくんない?」

「あァ?そォいえば何でテメエまであのクソガキの肩を持つンだ?」

「さっきから負の感情が渦巻いて、ミサカの頭がガンガンする………」

「テメエがそォいうってことは、かなり酷いんだろォな………………」

勿論の事だが、これは彼女自身の特性を生かした嘘である。
ただ、一方通行が意外にもあっさり信用してくれたのには拍子抜けしたが。

「って事だから、上位個体の機嫌を良くして、ネットワーク内の負の感情を抑えてくれると有り難いんだけど」

「…………ったく、面倒な体質しやがって…………」

「ほらほらミサカなんかに構ってないで、さっさとあちらに行ってあげなさい。ヒロインがお待ちかねですよ、ヒーローさん?」

「…………ヒーローなんかはあのクソ無能力者で十分だ」

そう言いつつ打ち止めのもとに向かう一方通行。
離れて見ている限り、打ち止めの表情にも笑顔が浮かんでいる様なので問題は無さそうだ。
そんな状況を観察していた番外個体は、

「………………………こんな気持ち、ミサカにはぜ~んぜん分かんないや!!」

彼女らしくない行動によって得られた正の感情。
その感情を理解する事は、番外個体にとっては難しかったが、一つだけ理解する事があった。
それは

「まっ、ミサカも結局はお姉様のクローンなのかね」


P.M.5:00

そのお姉様は現在、尋問を食らっているところだった。

「なるほど……御坂さんが、私達の事を助けてくれた人とお知り合いなのは分かりました…………」

「ついでに、以前に御坂さんも助けてもらった人だって事も理解しました…………」

「そっそういう訳なのよ…………てかもうこの話終わりにし―――――――「「ません」」……………まだ聞く事あるの?………」

初春と佐天のコンビには、超能力者(レベル5)をもってしても、全く歯が立たない美琴。
支部の部屋を大急ぎで復旧させた後に、かれこれ30分近く質問攻めにあっているので、精神的にダウン寸前でもある。
この調子だと、いつ口が滑ってしまうかも分からない状況になっている。
とこんな局面で、情報詮索能力者(プライバシーオープナー)初春飾利、佐天涙子はジョーカーを出してきた。

「「御坂さん、何で漏電する必要があったんでしょうか?(あったんですか?)」」

「……………………………………ごめんなさい…………」

美琴にはこのジョーカーに対しての打開策が見当たらなかった。
というかそもそも、この世に無いのかもしれない。
助けを求めて、白井の方をちらっと見る美琴だが、

「ほほう…………………。あの類人猿め……お姉様だけでは飽きたらず、初春や佐天さんまでにも手を出すとは…………。
……………………はっ!!ということは、次は私の番ですの?!…………これは今後警戒を最大まで引き上げる必要がありますわね……………いっそ、これを機会に消してしまうと言うのは…………………」

どこかアブナイ世界へとテレポートしている様だった。

よって、ライフラインは途絶えた。
恐る恐る前方を確認すると、4つの瞳が優しく、且つ鋭く自分を見ている。
しかも、何故だか金縛りに遭っているかの様にその場から動けない。
以上の事項を踏まえ、結論を弾き出すのにはそう時間は掛からなかったが、

「憲法にのっとり、黙秘権を行使し―――――――「「ダメです」」――――ですよね………」

誤算は、ここが最終兵器『日本国憲法――基本的人権の尊重』も意味をなさない空間であるという事だった。

さて、美琴は美琴で追い詰められているのだが、初春と佐天の方も若干疲れてきた。
何せ、30分以上ずっとにらめっこ状態なのだ。
これで精神が削り取られない訳がない。
当の美琴は口を閉ざしたままだし、これはもう諦めた方が得策なのではないかと、流石の初春と佐天も思う。
そう、その時だった。
幸も不幸も、美琴の携帯が鳴ってしまったのは。

「あれ?電話か…………………」

美琴が、一時的に解放された事で少しばかり安堵するものの、ディスプレイを見た瞬間にその表情は固まった。

なぜなら、着信相手が上条当麻であったりするからである。

「……………………………………………………………………………ふぇ?」

「「??」」

予想外の着信相手である。
美琴の方からは幾度となく連絡をしようと試みた相手ではあるが、あちらから連絡が来るのは非常に珍しい、というか無に等しい。
以前、上条から連絡が来た際には、彼はイギリスにいるわキーロックの解除方法を聞かれるわで、全くもって日常的な会話が出来なかったりしたのだが………。
そんな美琴は心の動揺を抑えつつ、携帯の通話ボタンを押した。

「も、もしもし?」

『………………声裏返ってるぞ、御坂?』

初手から失敗した様だった。
しかし、そんな事でへこたれるレベル5では無い。

「い、いいでしょそんなこと。早く用件言いなさいよ」

『?まあいいや、それで用件なんだが、御坂って明日暇だったりするか?』

「何だそんなこ………………………………………………………………は?」

『いや、一端覧祭の買い出しに上条さんは行く羽目になりまして………。
ちょっと御坂に付き合ってもらえないかと思った次第なんですよ…………』

「(ふぅ………落ち着け落ち着け………)ねえ、何で私じゃないといけないのよ?」

『野郎のセンスよりかは、お嬢様のセンスをお借りした方がよろしいと思ったんだが…………ダメか?』

「べっ別に私は構わないわよ!明日は予定も何にも一切ないから!!」

『ん、大丈夫なのか?それは有り難い限りですよ』

「それで、時間と場所はどうなってるの……………かな?」

『う~ん……時間は11時位で、場所はセブンスミストあたりが妥当か………
それでいいか、御坂?』

「そっそれでいいと思うわよ?というかそれにすること!いいわね!!」

『はいはい分かりましたよ、御坂センセー。じゃあ明日な』

「前みたいに遅れたら、承知しないわよ!!」

機械的な電子音が流れ通話が終わった事を示す携帯だが、美琴は携帯を持ったまま、えへへとにやけている。
まぁ当然と言えば当然かもしれないが。

因みに、

「「「………………………………………後で詳しく話を聞かせてもらおうっと(もらいますの)…………」」」

美琴の一連の動作に対して、白井も含めた3人が(本当に)温かい視線を送っている事を本人はまだ知らない。
というか、この状況ならば知り得た方がおかしい気がする。


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