近未来的日本昔話 「ビリビリ」
むか~しむかし、あるところにとても不幸な若者がおりました。
若者はいつものようにスーパーへ出かけると、横から大きな雷が飛んできました。
若者は咄嗟に右手で受け止めると、そこには若い娘が立っておりました。
「やっと見つけたわよアンタ!」
「げ! お前はこの前の……」
二人は顔見知りのようでした。
娘は若者の胸目掛けて、再び雷を放ちました。
しかし若者もまた、同じように右手で受け止めました。
「あーもームカつく! なんなのよアンタのその能力!!」
「だから俺は無能力者だっつったろ!」
「んなわけあるかぁ!!」
「本当だって! つーかこんな事してる間にタイムセールが……」
「こんな事だぁ…?」
若者の一言は娘を怒らせるには十分でした。
「ふっざけんなぁ!!!
アンタのその妙ちきりんな能力のせいで、私がどれだけモヤモヤしたと思ってんのよ!!!」
「んなモン知らねーよ!! もう帰れ!帰りやがれ!帰って下さいの三段活用!!」
その言葉を聞き、娘は静かになりました。
しかし怒りが消えたわけではありませんでした。
「……私の名前はね、御坂美琴っていうのよ。」
「え、えーと…急にどうしたんでせう…?」
「だって、これから殺される相手の名前くらいは知っておきたいでしょ?」
「どこの十一番隊だよテメェは!!!」
「いいから黒焦げになれやぁ!!クソボケェェー!!!」
娘は全力で雷を放ちました。
しかし、何度やっても若者は受け止めるだけでした。
娘は益々腹が立つばかり。どうしたものかと若者は頭をひねりました。
そこで若者は娘の後ろを指差し、こう言いました。
「ヤベェ!警備員来てる! ケンカなんかしてる場合じゃ無えって!」
「ウッソ! マジで!?」
娘が振り返ると、そこには誰もいませんでした。
そのときブチっと音がしました。それは娘の血管が切れる音でした。
ですが娘が再び前を向いた瞬間には、若者は遥か遠くを駆け抜けておりました。
「待ぁてやぁゴルァー!!!」
「待てと言われて待つ奴がいるか! つーか追って来んなビリビリ!!」
「ビ…何よそれ!? 名前なら名乗ったでしょーが!!」
「うるせー! お前なんかビリビリで十分だ!!」
「こ・の野郎!! 絶対にぶちのめしてやる!!!」
「だーちくしょー!! 不幸だ―――!!!」
こうして若者は毎日のように追いかけられるようになり、
娘はビリビリと呼ばれるようになったとさ。
めでたし。めでたし。