とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part11

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最終話『すべての真相』前編


上条「御坂を……渡せだって…?」

 薄暗い舞台裏に上条の声が少し響く。
 それに対し、答えるのは海原。

海原「そうです、時間はありません。早くしないとここが皆さんにバレてしまいますよ?」

上条「それより何を企んでる?御坂をどうしようってんだよ。」

 上条は一気に警戒を強めた。
 もしかして結標を使って美琴に酒を飲ませたのも、海原の企みだったのではないかと考えた。
 さらに海原は言う。

海原「企んでるも何もボクは御坂さんと少しばかりお話がしたいだけですよ?それ以上何もありません。」

上条「……本当か?魔術が関係してるんじゃないだろうな。お前には前科もあるし……それにその紙袋はなんだ?中に何が入ってる。」

海原「これですか?これならすぐに見せますよ。だから早く御坂さんを「やだ!!」……え?」

 真剣な表情で話す海原の台詞が大声で遮られた。
 美琴だ、美琴が赤い顔のまま海原を睨んでいる……のだが酔っているせいもあって全く怖くない。
 むしろ可愛いので海原は見惚れているようだった。

美琴「私は絶対当麻の側にいるの!!絶対離れないんだから!!」

 そう言って美琴は上条の腕に抱きつき、その瞬間海原が固まった。
 急に抱きつかれた上条は

上条「こ、コラ離れなさい!!今上条さんは真面目な話をしてるの!!」

美琴「や~だ~!!離れない~!!」

 なんとか離れさそうとするも美琴は全く離れようとせずに駄々をこねる。
 真剣な雰囲気は一気に消し飛んだ。
 すると海原が

海原「……これはどういうことですか…?」

上条「え?どういうことって?」

海原「だからなんで御坂さんが貴方に抱きついたりしているんですか!?それも下の名前で呼んだり……ま、まさか付き合ってるのですか!?」

 海原は震えておりかなり焦った様子だ。まあこの状況を見れば勘違いするのは当然だろう。
 そんな海原に上条はとりあえず聞いてみる。

上条「……もしかして御坂が酔ってること知らねーのか?」

海原「え?酔ってるんですか?なんだよかった……ってよくありませんよ!?せっかく人1人気絶させてまで御坂さんに会いに来たのに
   これじゃちゃんと話せないし意味ないじゃないですか!!」

上条「知らねーよそんなこと!!ていうか気絶させたってなんだよ!」

海原「あ、あれはしょうがなかったんですよ!ボクが準備しているところを天草式の牛深?に見られてしまったので……」

上条「見られたくらいで気絶させんな!!で、御坂に何しようとしてんだ?」

海原「な、何って……これを渡そうかと思って…」

 そう言って海原は持っていた紙袋から大きなゲコ太のぬいぐるみを取り出した。
 このぬいぐるみはビンゴ大会で海原がゲットした物だ。

上条「え?何?ほんとにそれだけのために御坂に会いにきたわけ?」

海原「だからそうやってずっと言ってるじゃないですか!!全く……なんで信じないんですかね…」

 いやまさかホントに何もないとは考えないじゃん、と上条は思ったがとりあえず今は黙っておく。
 そして海原は上条にくっついている美琴に近づき、ぬいぐるみを差し出す。

海原「えー……コホンッ!ど、どうぞ御坂さん。」 

 ただ渡すだけなのにかなり緊張しているようだ。額には若干だが汗がにじみ出ている。
 だが美琴は

美琴「………いらない。」

上&海「「え」」

 なんと美琴が受け取りを拒否、海原から身を隠すように上条の後ろに隠れる。
 海原はその場で固まってしまったし上条はものすごい気まずさを感じた。

上条「え、えーと……なんで?お前カエル好きだろ?」

美琴「だって当麻以外の人から何かもらったら浮気ってことになっちゃうから……」

上条「ああなるほど………ってならねーよ!!まず浮気とか言ってるけど俺たち付き合ってねーだろああごめんウソ上条さんが悪かったから泣かないでお願い。」

美琴「ぅー……」

 涙目でギューと腕に抱きついてくる美琴の頭を撫でて必死になだめる。
 端から見ればまさにバカップル(付き合ってないけど…)、2人の間に入り込む隙などないように思えるが今回ばかりは海原も引かない。

海原「……そうですか…じゃあこれならどうです?」

上条「これなら……!!?」

 次の瞬間、上条の目に映ったのは自分だった。
 上条の顔になった海原はニヤリと笑う。



上条「お、お前……どうやって…」

海原「ビンゴのときに運良くアナタの手の甲の皮を手に入れられましたからね。ボクはなぜか御坂さんに避けられてるから
   アナタの顔を使って2人きりになって、これを渡そうと思ったんですよ。」

上条「なんて無駄に手の込んだことを…」

海原「ああそういえば牛深を気絶させたのもこの姿を見られたからなんです。彼に説明するのもめんどくさくて。さて、これなら御坂さんも受けと」

 ドゴォォォォンと上条たちの後ろで轟音が鳴った。後ろで、といってもその轟音の原因は海原が入って来た入り口から飛んで来ていた。
 魔術バリアのおかげで火災などは起きていないが明らかものすごい威力。
 そして上条にはその飛んで来たものに心当たりがものすごいくらいあった。

上条「ま、まさかこれは……」

麦野「みぃぃぃぃぃいい~つけたぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ~♪」

美琴「あーむぎのんだー。」

 やっぱり麦野だった。
 麦野はふらふらしながらゆっくりと3人に近づいてくる。まさにホラー。

上条「ん?ふらふら……ふらふら!?まさか酔ってんのか!?ていうか酔ってるのにどうやって演算を?」

麦野「こ~の電撃娘が……私より先に彼氏を作ろうなんて良い度胸してんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!」

美琴「ふえ?」

 酔っぱらって凶暴さを増す麦野は、酔っぱらって乙女チックになっている美琴目がけて『原子崩し』をぶっ放す。
 美琴目がけて、ということは美琴に抱きつかれている上条にも標準は定まっているわけで……

上条「ちょ、ま、まーっ!!!!!!!!!」

 上条はわけのわからない言葉を叫びながら腕にくっついていた美琴を即座に抱きしめ、横っ飛びで床に倒れ込み麦野の攻撃を回避する。
 それくらいヤバい状況だというのに美琴は

美琴「えへー当麻ー……もっとギューってして!」

上条「おいぃぃぃぃいいいい!!!!!この状況で抱きつく力強めるの止めてもらません!?死ぬから冗談抜きで!!」

海原「さすが第4位…恐ろしいですね…」

麦野「……ん?なんで上条が2人いるのかしら…?まあいいや。両方吹っ飛ばせば♪とりあえずこっちの上条から消し飛ばそ。」 

上条「……あれ?標的って御坂じゃなくて俺なの?さっき御坂のこと狙ったんじゃ?ていうかやっぱり俺のほうを先に狙いにくるのね!!」

 話している最中に麦野に狙い撃たれ美琴を抱えたまま必死で『原子崩し』をかわす。
 なぜか標的が美琴から上条に移ったようで麦野は何発か上条を狙うが中々当たらない。ていうか当たったら死ぬ。

麦野「おい避けんな!!当たらねーだろ!!」

上条「無茶言わないで!?避けなかったら上条さん死んじゃうから!!そ、そうだ海原!御坂を頼む!」

海原「え?」

 美琴を抱えたままこれ以上麦野の攻撃を避けるのは無理。
 上条の姿のままの海原に美琴をパスして麦野の攻撃を避けまくる。
 パスされた美琴はというと

美琴「あー……当麻が行っちゃった…ってこっちも当麻?……………えへ、とうまー♪」

海原「わわっ……こ、これは夢でしょうか……」

 美琴は少し疑問に思ったようだが結局海原を上条と思い、思い切り抱きついた。
 抱きつかれた海原は予想外だったのと嬉しさのあまり固まってしまった。
 が、

美琴「……?あれ…当麻?……当麻じゃない…抱きしめ心地も匂いも違うし王冠かぶってない。」

 上条でないことに即座に気づき、不満そうな顔で海原から離れた。
 海原はものすごく名残惜しそうだった。

 で、本物の上条はというと

上条「あ、逃げ場が……」

麦野「や~と追いつめた……」

 麦野の攻撃をうまく避けていたのはよかったが、調子に乗ったせいか不幸のせいか角に追いつめられてしまった。
 追いつめたことにご機嫌な様子の麦野はニヤニヤと笑みを浮かべながら攻撃態勢に入る―――



??「麦野ストーップッッッ!!!」

麦野「あぁ?!!」

 上条に向けて『原子崩し』を発射しようとする麦野に誰かが勢いよく飛びついた。

上条「絹旗!!」

 飛びついたのは麦野と同じ『アイテム』に所属する絹旗。
 飛びつかれた麦野はバランスを大きく崩し、『原子崩し』は全く別のところに着弾した。
 そして麦野を必死で抑えている絹旗が上条に向かって叫ぶ。

絹旗「とりあえず超逃げてください!!数秒なら抑えられますから!!」

上条「お、おう!てかなんで麦野さんは酔っぱらったんだよ…」

滝壺「それはシャケ弁ゲットできたことに浮かれてお酒大量に飲んだんだよ。」

上条「あ、滝壺いたんだ。よし、ありがとな2人とも!!御坂!早く来」

美琴「と~ま♪」

 上条が呼ぶ前に美琴は後ろから元気よく飛びついて来た。
 『とーま♪とーま♪』と言いながら後ろから首に腕を回しギュッと上条に抱きつく。
 美琴の小さいながらにしっかりと柔らかい感触がわかる胸が背中に当たり上条は顔を赤くする。

上条(胸が……それに素直な御坂……か、可愛いかも………ってそんなこと考えてる場合じゃなーい!!!)

 本当にそんなこと考えてる場合じゃない。
 美琴が後ろから抱きついてきたのでお姫様だっこではなく、おんぶで最初に入って来た入り口から飛び出した。

海原「あ!ちょっと待ってください!!ボクも行きますよ!!」

 さらに海原も続く、もちろん上条の姿のままだ。

上条「なんでついて来るんだよ!!」

海原「アナタが御坂さんを連れて行くからですよ!!!」

美琴「とーま早~い!!」

 美琴をおんぶしたまま、追ってくる海原を振り切ろうと必死に走るが海原も必死。
 まあ麦野が迫ってくるという理由でもあるのだが。

上条「くそっ!しつこいな……」

 海原はぴったり後ろにくっついて追いかけて来ている。
 海原が手を伸ばせば上条に届くが距離だが、止めないのはここで止めてしまうと麦野や会場内の連中が追いかけて来た場合美琴が怪我をする可能性があるからだ。

 で、さっき小萌先生とステイルと会ったロビーまでたどり着いたのだが、そこで待っていたのは衝撃の出来事だった。

上条「ていうかこっちに誰かいたらヤバいよな……え…なんで『魔女狩りの王(イノケンティウス)』が!?」

ステイル「あ、もう戻ってきたのかい?言われた通り止めておいたよ。」

 なんとなんとステイルの『魔女狩りの王』が出入り口を塞いでおり、小萌先生は呆然とそれを見ていた。
 確かに止めておいて、とは言ったものの止め方がえげつない。

上条「だからみんな会場内にとどまってたってわけね……ん?じゃあ麦野さん達はどうやって舞台裏に…?」

ステイル「あ、さっきそこのロビーのトイレから3人くらい舞台裏に走っていったけど?」

 つまり酔っぱらった麦野が気分を悪くしたので、介抱するために混んでいる会場内のトイレではなくロビーのトイレに来ていた。
 そして会場内に戻ろうとした時、丁度上条と美琴を目撃し追いかけた、というわけだ。

上条「あ、そういうことか。ていうかいつのまにルーンを貼ったんだ?」

ステイル「そりゃ前持って貼っておいたのさ。何か緊急事態が起こった際にいつでも『魔女狩りの王』を使えるようにね。」

美琴「わー……すごいけど暑い……汗が…」

上条「ん?大丈夫か御坂?」

 確かに熱かった。
 『魔女狩りの王』のせいで汗が吹き出る。
 それくらい暑い状況だがステイルは涼しい顔で

ステイル「そりゃ摂氏3000度だからねがふぉう!!」

海原「御坂さんが暑がってるじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 タバコをくわえたままステイルは横へ吹っ飛んだ。
 もうお分かりかと思うが、美琴の抱きつかれたことでテンションが上がりすぎた海原がステイルの脇腹に飛び蹴りを食らわせたのだ。

上条「おい何やって……あ。」

 上条がふと会場の入り口に目をやると『魔女狩りの王』がゆっくりと消滅していた。
 どうやら蹴られた+打ち所が相当悪かったせいでステイルは脳震盪を起こしてしまったらしい。



上条「海原!お前どんだけ強く蹴ったんだ!!」

海原「知りませんよ!?ていうかこの状況まずいんじゃ……」

 自分がやったのにもかかわらず焦りを見せる海原。

 だが『魔女狩りの王』はまだわずかだが燃え残っている。
 ステイルの意識がまだかすかにあるおかげだが、後数秒もしたら完全に消え失せ会場内いる人々は上条に襲いかかってくるだろう。

上条「や、やば!逃げるぞ御坂!!しっかりつかまっとけ!!」

美琴「うん!!えへへ……」

 美琴はギュッと上条に抱きつく力を強め、上条はまたまた走り出そうとする。
 海原も2人の続く。

海原「あ、ちょっと!ボクも行きますよ!!で、どこに?」

上条「えーと……この階はもう無理だし…外!外だ!!えーと、エレベーターはあっちか。」

 で、エレベーターの前までやってきたのはよかったのだが

上条「エレベーター……4つもあるのになんで全部1階と最上階で止まってるんだよ……なら階段!!」

 やはり上条の不幸は健在だった。エレベーターがこの階に来るのを待っていれば確実に後ろの連中に追いつかれる。
 仕方がないので上条はエレベーターの隣にある階段を大急ぎで駆け下り始める。

海原「この後どうするんですか!?」

 走りながら上条にそう尋ねたのはもちろん海原。

上条「下に行ってから考える!てかお前いつまで俺の顔でいるんだよ!!なんかやなんだけど!?」

海原「…悔しいですけどこの顔でいればまた御坂さんが抱きついてくれる可能性があるのでずっとこのままでいます。」

上条「マジで海原の顔に戻してくれ…」

 話しながらもどんどん階段を駆け下り、現在5階と4階の間。
 だが7階では『魔女狩りの王』が消滅してしまったらしく、上からは大勢の足音と小萌先生の『みんな止まるのですよー!!』という声が聞こえる。
 ついでに『こ、小萌先生の命令ならボクは止まる!!みんなも止まるんやー!!』とかいうエセ関西弁まで聞こえてきた。

上条「青ピか……たまには、いい働き、するんだ、な。」

 青ピに感謝し、息をきらしつつ上条はそう言った。
 こうして青髪ピアスは犠牲になった。

 そんなこんなで1階に到着。
 美琴をおんぶすることに疲れた上条は、彼女をソファに座らせ自分も息を切らしながら隣に座り込んだ。
 美琴は当然すぐさま上条にくっつく。

海原「ちょ、休んでる暇なんてないんじゃ!?」

上条「だ、大丈夫だ、この、後、この、階、のどっか、に、隠れ、れ、ば……」

 息をなんとか整えようとするもなかなか回復せず、ゼェゼェと息を切らし続ける。
 そんな上条の代わりにどこに隠れようかとロビーを見渡したとき上の方から『建物内もくまなくさがせー!!』とか聞こえてきた。
 それを聞いた上条は

上条「ま、マジか……どうしよ…」

 当てが外れどうしようか悩むも

海原「じゃあこうしましょう。ボクが御坂さんと2人で逃げるのでアナタはおとりとして犠牲になってください。」

 そう言って海原は上条の頭の上の王冠を手に取った。

上条「あ、おい海原!」

海原「これがあれば御坂さんにボクが本物だとわかってもらえますからね。さて御坂さん、行きましょうか―――――」

 海原が王冠を頭にのせ美琴に手を伸ばした時だった。

海原「え?」

 その手(正確には腕)が何者かに掴まれた。
 その人物とは

神裂「追いつき、ましたよ。」

上&海「「え」」

美琴「とうみゃ~♪」

 神裂だった。どうやら上からマッハスピードで駆け下りてきたらしい。
 さらに王冠をつけているため変装した海原を上条と思っているようだ。
 神裂は海原の腕を握る力を強め、海原は青ざめ、上条は逃げるため立ち上がり、美琴は上条の名を呼びくっつき続けた。

上条(王冠を海原が盗ったせいか…なんかついてるぞ!ていうか神裂も酔ってるんじゃ……?)

 などと考えていたが階段からはさらに足音が聞こえてきたので上条は先を急ぐ。
 ちなみに神裂はやけ酒のせいでマジで酔ってます。

上条「よし!じゃあな海ば…上条!!行くぞ御坂!!」

美琴「えへー」

 上条は海原のことをわざと『上条』と呼び、美琴を再びお姫様だっこして建物を飛び出した。
 その際後ろで海原が何か言っていたが気のせいということにしておいた。

 が、上条の不幸はまだ終わらない。



上条「おおっ!?んじゃこりゃ!すっげー雪じゃねーか。」

 上条と美琴が建物から出るとそこは白銀の世界が広がっていた。
 どうやらパーティが始まってから今までの6時間の間に降り積もったらしい。
 降っている雪はまだまだ止む気配はなく、数十メートル先が見えない大雪だ。

美琴「ロマンチックだね♪」

上条「そんなこと言ってる場合か!!ていうかこれだけ降ってたらロマンチックもへったくれもねーよ!!」

 まるでコント。
 相変わらず酔いのさめない美琴を抱えながら上条は考え尽くす。ここからどうするべきかを。

上条(どうせ海原が変装解いたら俺が逃げたことはすぐわかるよな。じゃあ…駅まで走る……ダメだ。
   この大雪の中御坂抱えて走っても終電に間に合わねぇ。タクシーも見当たらない、車で誰かに送ってもらうのも無理!)

 正直な話ここに美琴を置いて上条だけ逃げれば万事解決する。
 追ってくる連中の狙いは上条なわけで美琴を置いて逃げても彼女に危害が加えられるということはまずない。
 自分一人ならなんとか逃げ切る自信はあった。
 だが……

上条「よし…御坂お前建物に戻れ。俺だけ逃げる。」

美琴「え……行っちゃうの?じゃあ私も!私もついてく!!」

上条「ダメだ。2人じゃ逃げれないしお前も危ないってあ、あれ?なんで泣いてるんでせう?」

美琴「ヤダもん…私も当麻と行きたいもん……」

上条「いやいやだから危ないから俺1人で行くごめんほんと泣くの止めて。建物の中から受付の人見てる……」

美琴「グスッ……泣くの止めたら、一緒に行っていい?」

上条「いやダメ……」

美琴「ふぇぇぇ…」

上条「………一緒に行こう。」

美琴「うん!ずっと、ずーっと一緒だよ?離れちゃヤダからね?」

 パァァァっと美琴の顔は明るくなった。
 泣き止んだ美琴はギューッと抱きついてきた。
 上条は顔を赤くしながらもまた考える。

上条「つーか御坂が一緒だと………て、手詰まりだ。長い距離は走れないし行く場所がない……」

 美琴を抱えながらこの大雪の中を走るのは絶対キツい。スピードも落ちるし追いつかれる可能性が高くなる。
 やっぱりなんとか説得して一人で逃げようかと考えていると

美琴「ねぇ行くところがなくて困ってるの?私近くに良い場所知ってるわよ?」

上条「え!?ほんとか!?」

 上条は目を輝かせた。
 まさに救いの手、酔っているということで若干不安はあるものの他に策も思い浮かばないし時間もないのでここはおとなしく美琴に従うことにした。

美琴「じゃーまず左!左へレッツゴー♪」

上条「よしきた……ん?」

 上条が大雪の中を走り出そうとしたところ暗闇の中に人影が見えた。
 その人は明らかにこちらへむかってきている。
 瞬時に上条は警戒心を強めて

上条「誰だ……!!…って、お前は……」

 上条は知っていた。その近づいてくる人の名を。

上条「バードウェイ!?」

バードウェイ「上条……ってことはやっと着いたのか…?」

 なんと『新たなる結社』のボス、バードウェイだった。
 彼女は自分に積もった雪を払いのけ上条の前までやってきた。

上条「な、なんで今更……?」



 バードウェイが来たことがあまりに予想外だったため上条は思わず尋ねた。
 するとバードウェイは上条を睨みながら

バードウェイ「今更ってお前が『お願いしますきてください。』って言わないで勝手に電話切るから遅くなったんだろうが!!
       あの後むかついてすぐ出発したのはよかったけど、この建物建ってる場所が複雑なんだよ!!迷っただろうが!!」

上条「怒る理由が理不尽だなおい!!……そういえばオルソラやシェリー達も迷ったって言ってたっけ(半分はオルソラのせいらしいけど……)
   で、なんで徒歩で来たんだ?それにマークやパトリシアは?」

バードウェイ「あー……実は迷ってるうちにこの大雪で車が動かなくなってな……降りて歩いてたら吹雪のせいでマーク達とはぐれたんだ。」

 簡単に言うと迷子ということだ。歩いた距離は結構長かったようでバードウェイは少し疲れているように見える。
 しかしこの極寒の中、長距離を歩いてきたのにもかかわらず完全防寒服のおかげで全く凍えていない。

バードウェイト「そういうわけで一人歩いてきたんだが……その女の子はなんなんだ?」

上条「え……まあいろいろあって……って今ちょっとヤバいんだ!そこの建物にみんないるから休んでてくれ!それじゃ!!」

バードウェイ「な!?お、おい待て!!せっかく来てやったんだぞ!?」

 バードウェイが別に凍えたりしてないことがわかったので無視して先を急ぐことにした。
 そして上条は美琴を抱えたまま大雪の中を走り出す。

 と、走り出して10秒も経っていないのに後ろから大きな音が聞こえた。
 上条が必死で走りながら後ろを振り返ってみるとなんとそこにはどでかいゴーレムが。

上条「おぉ……マジデスカ…」

シェリー「エリス!!上条当麻を捕まえな!!」

 なんとなんとシェリーがエリスを形成していた。
 エリスの上にはシェリーの他にオルソラも乗っており、どうやら協力を依頼されたようだ。

 しかし―――――

上条「へ?」

 エリスに乗ったシェリーとオルソラは上条とは全く反対の方向へ進んで行った。
 さらにそのエリスの後ろには

建宮「追えー!!追うのよなー!!絶対に逃がしちゃならんのよ!!既成事実を作られたらもう勝ち目は無くなってしまうのよ!!!」

五和「か、上条さーん!待ってくださーい!!」

対馬「ていうか牛深は?」

香焼「さっきからずっといないっすよ、それより追わないと!!」

 天草式十字淒教の面々が続いて走って行くのも見えた。かなり必死の形相だ。

上条「……どういうこと…あ、海原か。よく逃げられたな。」

 走って行く人々の先頭には上条の姿のままの海原が必死で走っているのが見えた。

上条「つーかなんでアイツ変装解かないんだ?まさかまだ御坂に抱きついてもらいたいからなのか?」

 まさにその通りだった。
 反対方向に走っていったのはどっちに走って行ったのかわからない上条を追いかけようとしてただ単に勘がはずれただけだ。

 そんなわけでとりあえずは助かった、今のところ他の追っ手は見あたらない。
 しかしまだ追っ手が他にいることは間違いないので上条は美琴の道案内に従い雪の中足を進めていく。

上条「御坂っ!こっちであってるのか?」

美琴「うん!ほらここよ♪」

上条「え?もう?」

 走り出してわずか3分。
 上条は美琴の言葉を聞き急ブレーキをかけ停止し、そのせいで雪ですべってこけかけた。
 美琴が上条に教えた建物、それはホテル。外見からものすんごい高級感が漂っている。

上条「………さて、他の隠れがを探すか。って、おい!こら御坂!」

美琴「よーし!!早速入ろ!!」

 上条が諦めて立ち去ろうとしているのにもかかわらず、美琴は上条の腕から地面にうまいこと降りてホテルへと入ろうとする。
 当然のごとく上条は美琴を引き止める。

上条「待て待て待て!!俺にこんなとこ入る金なんてねーよ!!」

美琴「そんなの気にしない気にしない~、ぜ~んぶ私が払ってあげるから♪」

上条「そんなのダメに決まってるだろ!?だから別の―――」



 そこまで言って上条の視界は真っ暗になった。
 何も見えない、そしてものすごく冷たい。

上条「なんでこう不幸なんだろうか……」

 上条は持ち前の不幸を発揮して思いっきりすべってこけていた、しかも顔面から。
 雪が積もっているためけがはないが、寒い。

 美琴はそんな上条を見てけらけら笑い、ふらふらとホテルへ入って行ってしまった。

上条「御坂!待て―――――」

 上半身を起こしていたはずなのにまた視界が真っ暗になる。顔は冷たいし背中が痛い。

インデックス「とうまー!どこ行ったんだよー!!」

レッサー「ちょっと本当にこっちで合ってるんですか!?」

バードウェイ「合ってるに決まってるだろ!私はアイツが御坂美琴とかいう女を抱えて走って行くのを見たんだからな!!」

姫神「絶対。追いつく。」

フロリス「上条当麻ぁー!!私を置いて行くなんて良い度胸じゃない!!」

吹寄「あのバカ!!女の子と2人きりで何をしようと考えてるわけ!?見つけたらただじゃおかないわ!!」

風斬「み、みなさん怖いです……」

 上条はインデックスや自分のクラスメイト達(書いてないけどクラスの女子全員)、さらにその他数名に踏まれていた。

 彼女達はシェリーやオルソラ天草式の面々よりもスタートが遅れたため建物入り口でバードウェイと鉢合わせた。
 そのため正確に上条を追いかけてくることができたのだ。
 だが転けて倒れている上条には全く気づかず、全員がそのまま通過していった。
 当然踏まれた上条へのダメージはでかい。

上条「……もうやだ…上条さん死んじゃう……」

 上条は倒れたまま泣いた。


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