とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part12

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最終話『すべての真相』後編 1


 上条がみんなに踏まれから数分後。

上条「痛てて……御坂!どこだ!?いるんだろ?」

 ここは美琴入って行ったホテルのロビー、上条は片手で腰を抑えながら美琴を探していた。
 もちろん美琴を止めるためだ。こんな高そうなホテルの部屋など借りるわけにはいかない。
 が、しかし

上条「あ!いたいた。おい御坂、早くここから出る……」

美琴「あ、当麻!もう部屋借りたわよ?ほら鍵。」

上条「うそーん…マジか…」

 見つけたのは良かったが少し遅かった。
 フロントの前では美琴がちょうど部屋の鍵を受け取ったところだった。
 酔っぱらっているはずなのに鍵は借りれたようだ。
 美琴は鍵から伸びている紐に指を通し、鍵をくるくると回しながら上条の側にやってきた。

美琴「はい、かーぎ♪」

上条「えーと…」

 上条は美琴に差し出された鍵を見つめ少し考えた後

上条「ま、まあこの際ここでもいいか!じゃ、見つからないうちに早く部屋に行くぞ!」

美琴「うん!」

 結局鍵を受け取り部屋に行くことにした。
 しかしさすがにここでおんぶやお姫様だっこをするのは恥ずかしいので、まだ少しふらふらする美琴の手を握って部屋へと急ぐ。
 ホテルの従業員からは完全にカップルと思われてしまったようで、にこやかに見送られた。
 そしてエレベーターに乗り借りた部屋がある9階へ到着。
 エレベーターを降りた上条の感想は

上条「……なんかめっちゃ豪華なんですけど…」

 外でホテルの外見を見た時やロビーにいた時にも感じていたがかなり豪華だ。
 それはこの階の廊下も同じで部屋に入るのをためらうほどだ。

美琴「とうま~早くお部屋~。」

上条「わかった、わかってるって。」

 美琴に可愛く急かされ鍵に書かれている番号の部屋を探す。

上条「え~と……ここは…違う。あ、こっちか。」

 何事もなく目的の部屋の前にたどり着いた。
 上条は鍵に書かれている部屋番号と壁にかかれている番号が合っていることを確認して鍵をさしこむ。

上条「お、開いた……」

 そりゃ番号が合っているのだから鍵が開くのは当たり前だ。
 すると隣で見ていた美琴が思いっきりドアを押し開け、勢いよく入って行く。

美琴「わ~い!」

上条「おい、そんな焦るなよ!」

 美琴は靴を脱ぎ捨てると入り口からまっすぐ伸びている通路をとてとて走って行った。
 だが酔っているので真っすぐ走れていない。

美琴「おっとっと……あたっ」

 通路の真ん中辺りで横の壁にぶつかって尻餅をついてしまった。

上条「おい御坂、お前は走るな!」

 結局上条が慌てて美琴の元に駆け寄りかかえ起こす。
 すると美琴は満面の笑みで上条に向かって

美琴「当麻ありがと!」

上条「っ!!お、おう……」

 上条はドキッとした。
 それほど美琴の笑顔が眩しかった。

上条(お、落ち着け上条当麻。これは御坂だ、性格は全然違うけど御坂なんだ。中学生にドキドキするなんてそんなこと…)

美琴「えへへ~♪」


 上条は自分自身を落ち着かせようとしたが全然無理だった。
 ドキドキしたまま美琴に肩を貸して通路を真っすぐ進む。通路の横にはいくつかのドアがあり、トイレや洗面所につながっているのだろう。
 そして10メートルほどの通路を歩ききるとベッドが置いてある広々とした部屋が現れた。

美琴「わぁ~すっごい豪華!」

上条「うお……」

 上条の予想を遥かに超えた豪華な部屋だった。
 24畳ほどの広々とした部屋には豪華なベッド、大きめのテーブル、ソファが3つ、そしてベランダもついている。
 さらにこのとき上条はまだ知らないが奥にはまだ部屋があるのだ。

上条(絶対一泊数十万する…)

 部屋の値段を考えなんだか怖くなった。
 そんな上条から離れ美琴はベッドへダイブする。

美琴「えへーベッド~♪」

上条「やれやれ……さて、今からどうするか…まあ今戻っても袋だたきにされるに決まってるし……」

 上条は今日すでに何度もフルボッコされている。
 クラスメイトや女性陣にボコられ、電撃を浴びたり、屈強な人々に抹殺されそうにもなった。
 さらにその後追い回されてもうヘトヘト。
 流石にこれ以上動くのはキツい。
 それにもし追っ手に見つかったりすればまたボコられ病院行きになる。いや下手したら死ぬ。

上条「……よし、朝までここにいよ…」

美琴「当麻とおっとまり~♪」

 こうして1泊が決定。
 男女がホテルに泊まるということは抵抗があるように思えるが、普段インデックスと暮らしている上条にはあまり抵抗はなかった。

上条(ベッドは…ダブルベッドかよ。ま、俺はソファで寝ればいっか。)

 疲れがたまりに溜った上条はソファへ豪快に座り込んだ。

上条「さて、疲れたし少し休むか―――」

 と、『バァン!!』と入り口の方向から大きな音がし、さらにその5秒後部屋に人が飛び込んできた。

上条「ッ!?なんだ!?」

 上条は驚き、思わずソファから立ち上がり、入り口を見ると

麦野「かみじょぉぉぉぉぉお~……ビリビリ娘をこんなとこに連れ込んでな~にやってんだぁ~?」

上条「な……また麦野さん……」

 現れたのはまたしても麦野、本当に執念深いと上条は思った。
 後、麦野の後ろにはなんだか気まずそうな浜面が立っている。

上条「浜面も……っていうかどうしてここがわかったんだ?」

浜面「そりゃ半蔵お得意の情報網で、部屋番は………麦野が従業員を脅して……」

 脅したシーンを思い出したのか浜面はため息をつく。
 するとさらに

神裂「上条、当麻……」

アニェーゼ「やっと見つけやがりましたよ……」

御坂妹「さあお姉様、早くその方を渡してください、とミサカは真剣にお願いをします。」

 依然酔っぱらったままで刀を持った神裂と『蓮の杖』を持ち息を切らしたアニェーゼ、
 さらにその後ろにはネックレスをつけた御坂妹もいる。

上条「お前らまで…なんでここがわかるんだよ…」

アニェーゼ「いやですね、ちょっとした理由でアナタを追いかけ始めるのが遅れちまったんですよ。
      そしたら走っていくこちらの…麦野?の後を追う神裂さんを見つけて後を追ったらたどり着いたんですよ。」

上条「…ん?なんかややこしいな。
   つまり…半蔵の情報を頼りに俺を追いかけてる麦野さんを尾行してた神裂をさらにアニェーゼと御坂妹が追いかけて来たのか?」

御坂妹「まあそういうことです、とミサカは正直この話どうでもいいだろと思いながら返答します。」

 すると今まで話を聞いていた麦野はアニェーゼ達を睨みつけ

麦野「あぁ?なーんで他のやつがここに来てんだよ、絹旗と忍者2人(半蔵と郭)に止めとけって言ったのに……あいつらサボってんのか?」

アニェーゼ「残念でしたね、この聖人を盾に突破させてもらいましたよ。あなたの仲間は私の仲間と共に他の追っ手を食い止めてます。」



 上条と美琴は知らない。
 今ホテル入り口では絹旗、半蔵、郭、ルチア、アンジェレネ、妹達3名、総勢8人の連合軍が
 他の追っ手(上条の残りのクラスメイトとかいろいろ)がこのホテルに入ることを必死に防いでいることを。
 ちなみに止める立場のはずの絹旗は麦野に『逆らうと映画無料券を焼く』と脅されていた。地味にかわいそう。

麦野「まあいいや、私は上条を消し飛ばすから大人しくしときな。」

アニェーゼ「!?な、何言っちまってるんですか!?消し飛ばすとかダメに決まってるでしょう!!ようやく決心したのに…」

上条「決心?」

アニェーゼ「あ、いや…」

 実はアニェーゼ、キスの権利に参加しなかったことに悔やんでいた。別に『実は』ってこともないけど。
 そして上条が美琴を抱えて逃げた際にも、追うべきか悩んでいた。
 だが非協力的だと思っていたルチアが『このまま何もしないで終わってもいいのですか?』の一言で追うことを決めたのだ。

 そんなアニェーゼを麦野が睨む。

麦野「ほ~う…私に楯つくとは良い度胸してんじゃねぇか。」

アニェーゼ「これだけは譲れませんからね。それにアナタ達も手を引いてくれませんかね。」

御坂妹「いやいやミサカは全『妹達』の代表なんですから絶対に引けません、とミサカは譲れない想いから臨戦態勢に入ります。」

神裂「……」

上条「ちょ、みんな落ち着いて……」

 4人はそれぞれ臨戦態勢に入り、アニェーゼと神裂は武器を構え、麦野と御坂妹は能力をいつでも使えるように身構える。
 4者の思いが交錯し、場に緊張感がはしる―――

??「にょわ!」

上条「!?今度はなんだ……って白井に番外個体!?」

 ふいに後ろから声がしたので上条が振り返ると地べたに座っている番外個体と立っている黒子の姿があった。
 今の奇妙な声は番外個体のもののようだ。

上条「……なんでお前らが?」

番外「あー…そのこちらのお方が酔っぱらったせいでミサカのことをお姉様と思ったらしくてさ、ミサカの貞操が危うくなったわけよ。」

 そう言って番外個体は隣の黒子を指差す。
 黒子はレテポートして来た際、酔っているため着地に失敗し足を強打。今はうずくまっている。

上条「貞操って…マジか。」

番外「うんマジ。で、第一位はさっきの騒動ではぐれた上位個体を探しにどこか行っちゃったし、
   酔ってるせいか全然電撃効かないし本格的にヤバくなったから、MNWでこの場所を知って、必死に説得してテレポートしてきたわけ。」

上条「なるほどな。ていうか酔ってんのによくテレポートできたな。おい白井、大丈夫―――――」

 酔ったことと足をぶつけたことを心配した上条が声をかけようとすると、顔の横を鉄の矢が飛んだ。それもものすごい勢いで。
 上条の顔はサーっと青くなる。

上条「ちょ、し、白井っ!お前何を……」

黒子「お姉様とお姉様の姉妹はわたくしが守るんですのぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!」

 黒子は急に思いっきり叫んだ。そしてふとももの鉄の矢に手を伸ばす。
 美琴と『妹達』以外を抹殺するつもりらしい。マジで。

 上条が止めるまもなく、暴走した黒子は全員に向かって鉄の矢を投げ飛ばすーーー

番外「ちょ、ちょっと待ったー!!」

 間一髪番外個体が後ろから黒子の腰当たりに抱きついた。ファインプレーだ。
 そのおかげで黒子は体勢を崩し左手の矢3本だけが飛んだ。
 1本は神裂が掴み、もう1本は壁に突き刺さり、もう1本は天井へ飛んだ。



アニェーゼ「ん……って冷た!!何事ですか!?」

浜面「うおっ!?なんだ!?水?どっから……」

上条「スプリンクラーだ!おい止めろ!!」

 なんと黒子が投げた矢の1本がスプリンクラーを直撃していた。上条、美琴、麦野、神裂、浜面、御坂妹、アニェーゼにモロかかっている。
 正規の方法で起動したわけではないので普通に比べて威力は弱いがそれでもこのままではびしょびしょになってしまう。

 上条はなんとかしようと大慌てでスプリンクラーの下へ走ったがどうにも止めようがない。
 それどころかお得意の不幸を発動させ、濡れた床で滑り頭から御坂妹の胸に突っ込んだ。

上条「あ」

御坂妹「ッッッ!?」

上条「と、わ、わりぃ御坂いも―――――」

 言葉途中で上条の体は大きく横(黒子と番外個体がいる方向)へ吹っ飛んだ。

美琴「とーま!?大丈夫!?」

 吹っ飛んだ上条の元にすかさず美琴が駆け寄る。
 するとここでスプリンクラーが止まった。どうやら停止装置か何かが作動したらしい。
 しかし黒子と番外個体以外はずぶ濡れだ。

 濡れたままの上条は痛みを我慢して上半身を起こす。

上条「ぐぉ……大丈夫……のはずだ…それよりお前ら何すんだ…」

アニェーゼ「何すんだってあなたが何しやがってるんですか!!」

神裂「斬る。」

 アニェーゼが『蓮の杖』で物理的に殴り飛ばし、神裂が上条を蹴り飛ばしていた。
 神裂は酔っているため聖人の力をあまり使えていないがそれでもかなりすごい蹴りだった。
 上条が立ち上がろうとしたところで

御坂妹「ふ、ふにゃー、とミサカは気絶し、ま……」

上条「え」

 御坂妹が気絶、壁に背中をぶつけそのままずるずると座りこんだ。
 原因はもちろん上条が胸につっこんだからだ。
 さらに気絶と同時に漏電、御坂妹からパチパチっという音がしたかと思うと

アニ&神&麦&浜「「「「「ッッッッッ!!??!??」」」」」

 アニェーゼ、神裂、麦野、浜面が4人ともその場にバタリと倒れた。

上条「え!?な、何が……あ!感電か!!」

 4人はスプリンクラーの水によって全身ずぶ練れになっており、そこで御坂妹が盛大に漏電したためだ。
 神裂、麦野は普通なら耐えることができたかもしれないが、2人は泥酔していたため感電してしまった。
 上条はアニェーゼと神裂によって吹っ飛ばされていたため、美琴も少し離れた場所にいたため感電はを免れていた。
 倒れた4人は完璧に感電したようで動かない。

上条「お、おい大丈夫か!?」

 上条が感電した4人に急いで駆け寄ろうとすると

黒子「お、おにぇー様!!ようやく黒子の愛をうけとめてくれるのですね!?」

番外「ち、ちがーう!!ミサカにそっちの趣味はないって!ヘルプ!そこの世界的ヒーロー様ミサカも助けて!!リアルにお願い!!!」

 今度は上条の後ろで黒子が番外個体に襲いかかろうとしていた。
 どうやら先ほど黒子が矢を投げるのを止めようと腰に飛びついたことで勘違いされたらしい。しかも黒子は番外個体を美琴と思っている。
 今の黒子にはなぜか電撃が効かないので、番外個体は逃げることしかできない。

上条「おい白井落ち着け!!」

 上条は黒子を止めようと肩に手をかけたが…

黒子「はぁ!?黙らんかいこんの猿!!」

上条「うぉう!?」

 黒子は上条の胸ぐらを掴み上条を投げ飛ばした。さすがは風紀委員、上条を投げ飛ばすくらい易々とやってのけた。
 投げられた上条は背中を打ちつけ、その間に黒子は番外個体に迫っていく。

黒子「それよりおね~さま~ん♪黒子と愛を深めましょ~よ~♪」

番外「ちょ、こっちくんなってば!!マジで!」

 酔って暴走する黒子に冗談抜きで焦る番外個体、黒子から逃げるため入り口の方向(感電した4人が倒れているほう)に急いで移動する。
 しかし黒子はレベル4のテレポーター、次の瞬間には番外個体の前にテレポートしていた。

黒子「どこに行こうというのですの……?」

番外「な、な……」

 黒子は不気味な笑みを浮かべたままゆっくりと番外個体に手を伸ばす。
 しかし番外個体も貞操を守るため必死、すぐ横に倒れている浜面を持ち上げ盾にした。

黒子「ん~……?邪魔じゃこの茶髪猿がぁ!!!!!!!」

番外「!!?」


 黒子が浜面の頭を右手で掴んだ次の瞬間には浜面仕上の姿はもう部屋の中にはなかった。
 ベランダへテレポートさせたのだ。

 ちなみになぜずぶ濡れの浜面が極寒の中一晩外で干されていて無事だったのかというと、
 ものすごく運良く干した洗濯物を乾かすための温風機が作動して一晩中暖められ続けたからである。

 そんなわけで盾を失った番外個体に黒子は微笑みかける。

黒子「それでは邪魔者は消えましたし……わたくしたちは別のお部屋で楽しみましょうか。」

番外「待った待った待った!!話せばわか―――――」

上条「あ!おい!!」

 2人の姿が部屋の中からきれいさっぱり消えた。
 ど、ほぼ同時に風呂場のほうから『ゴゴン!!』と音がした。

上条「な、なんだ!?今音がしたけどあっちにテレポートしたのか!?」

 実際には何が起こっていたのかというと、最後の最後でテレポートをミスった黒子が風呂場にテレポートしたのだ。
 そして2人ともうまいこと後頭部を強打し気絶したのだがそのことは上条も知らない。

上条「嵐が去った……」

 全身ずぶ濡れの上条は呆然と立ち尽くしたままそうつぶやいた。

 『嵐が去った』後には普通いろいろな爪痕が残されるわけであってこの場も例外ではない。
 壊れたスプリンクラー、ずぶ濡れのこの状況、感電して倒れている3人と気絶した御坂妹、もうどうしようもない感が漂っている。

上条「あーあ……びちょびちょだしみんな倒れるし……不幸だ……どーすんだよこれ…」

美琴「ほんと濡れちゃった……脱がなきゃね。」

上条「はい?」

 上条が後ろの美琴に目をやると美琴は濡れた制服の上を脱ぎだしていた。

上条「ちょ、お、おい!何脱いでんだよ!!」

美琴「だって濡れちゃったんだもん!」

上条「だもん、じゃねぇよ!!服を着なさい!!」

美琴「やだ。」

上条「やだじゃありません!!ほら早く……ってまた新たに脱いでんじゃねーよ!!」

 美琴はシャツまで脱ぎだした。
 上から順番にはずされていくボタン、シャツのむこうには美琴のきれいな肌と白い下着が見え、このままでは確実に理性が崩壊する。

上条「お、おま、おい!早く制服着ろ!!それが無理にならせめてこれ羽織れっ!!」

 大急ぎで自分のYシャツを脱ぎ美琴に投げつける。
 上条の手から放たれたYシャツはふわっと宙を舞い美琴の手元に落ちた。

美琴「わっ!これって当麻の……えへへ…ちょっと着替えてくるね♪」

上条「へ?着替え?」

 美琴は脱いだ自分の制服を持ち、倒れている3人(御坂妹は壁に寄りかかっている)をまたいで通路へと消えて行った。
 多分洗面所に向かったのだろう、と上条は考えた。

上条「着替えるってここで着るだけなんだからここで着ればいいのに……ていうかこの4人どうしよう…」

 感電した3人と気絶した御坂妹は起きる気配がない。 
 どこに飛ばされたのか知らない浜面は正直どうでもいいとしてこの4人は介抱したほうがいいはずだ。
 どうしようか考えていると通路のほうから足音が聞こえてきた。

上条「ん?もう戻ってきたのか、早いな。」

 まだ1分も経っていないはずだが、着替えを終えた美琴が勢い良く部屋に入って来た。

美琴「ただいま当麻ー!」

上条「おおおかえり……ッッ!!?!?」

 上条の目には衝撃が飛び込んできた。五和の大精霊チラメイドを見た時と同じくらい、いやそれ以上の衝撃かもしれない。

美琴「ねぇねぇ!どう…?この格好?」

上条「ど、どうって……なんで制服着てないんだよ!!」

 そう、美琴は制服を着ていなかった。上はもちろんのごとく下もだ。
 上条のYシャツを羽織り、下着をつけているだけ、スカートも履いていないということだ。

美琴「なんでって当麻がYシャツ着ろって言ったからよ?えへへ~……当麻のYシャツ~♪」

上条「ち、違う……そういう意味じゃない……」

 なぜか自分の起こす行動すべてがまずい状況に進んでいっている気がする。
 これ以上何かあると理性が本気でヤバい。

上条「さ、さて、コイツら早くなんとかして休もうぜ!
   えーと、ソファとベッドに寝かして……ていうか浜面はどこに飛ばされたんだ?壁とかに埋まってないだろうな…」

 上条は強引に話題を変えた。
 一応浜面のことも気にかけ、倒れている4人をちゃんとしたところに寝かせようとしていると

美琴「あ、ベッドはダメよ。」

 そう言って美琴はベッドに再び飛び込んだ。


上条「え?なんで?ベッドで寝たいのか?…ってまてよ…例え御坂ともう一人をベッドで寝かせて、
   残りの倒れてるやつらでソファがうまるから……ひょっとして上条さんホテルでも風呂で寝なきゃダメなの…?」

 ソファは3つしかなく、今のままだと確実に浴槽で寝ることになる。
 上条がどこで寝るか考え始めようとしていると美琴が超笑顔でベッドから立ち上がった。
 なんでそんな笑顔なんだ?、と上条が思っていると

美琴「このベッドで一緒に寝るに決まってるじゃない♪なんのためにダブルベッドの部屋を借りたと思ってるの?」

上条「なっ!!?」

 美琴の衝撃発言に驚く上条、思わず後ずさりし後ろの壁にぶつかった。
 そんな上条の前に美琴が歩み寄ってきて

美琴「やっと……静かな場所で2人きりになれたわね…」

上条「へ?え?」

 動揺する上条に美琴はさらに近づく、2人の距離はわずか30センチ。
 このシュチュエーションはまずい、いくら鈍感な上条でもわかる。まあ2人きりといっても気絶した人がそこらへんに倒れているのだが。

上条「み、御坂、近い、近いって……」

 美琴から離れようにも後ろは壁、逃げ道はない。
 ついに上条は美琴に抱きつかれた。上条の背中に美琴の腕がまわされギュっと抱きつく力が強くなる。

美琴「えへへ……当麻大好き…」

上条「う、お…」

 上条は美琴が酔っていることを知っている。
 そして酔っているせいで自分に対して好きと言ってきたり抱きつくといった行動をしてくるのだと思っている。
 だがそう思っていても、今この状況はまずい。

 美琴の発育途中の胸が当たり、上条の理性を少しずつ削っていく。

上条「御坂、まずい、マジで離れてくれ。」

美琴「や~だ♪」

 離れる気ゼロ、むしろ強く抱きついてくる。

上条(こ、これ以上は冗談抜きでいろいろとヤバい!!)

 そう考えた上条は美琴の肩を掴むと少し強めの力で引き離した。

美琴「わっ!ちょっと何すんのよ……」

上条「御坂!お前は酔ってるんだからおとなしくベッドで寝とけ!それに好きでもない相手に抱きついたりするもんじゃない。」

 やはり上条は上条、美琴の気持ちなんてみじんも気づいていなかった。

上条(い、今のはヤバかった…普段とのギャップがハンパないし……気持ち落ち着かせるためにトイレでも行って―――――)

 上条が美琴を背にし部屋のトイレに向かおうとすると後ろからすすり泣くような声が聞こえてきた。
 何事かと思い後ろを振り返ると

上条「御坂!?」

美琴「うぅ…当麻…ひどいよ……」

 なんと美琴がぽろぽろと涙をこぼしていた。
 それを見た上条は慌てて美琴の元へ駆け寄る。

上条「どうした!?なんで泣いてるんだ!?俺がなんかしたか!?」

 わけがわからない上条は半分パニック、おろおろと戸惑う。
 すると美琴は泣きながら

美琴「だって……だって私はこんなに当麻のことが好きなのに……当麻は私に見向きもしてくれない…
…ねぇ……私のこと…嫌い?」

上条「ッッッ!!??!?」



 ここでまさかの泣き落とし、うるうるとした目でこちら見てくる美琴に上条のハートは射止められた。
 これまでの上条なら鈍感が発動して耐えることができたかもしれないが、
 今日1日手を握ったり抱きしめたりといろいろあったせいで、上条の鈍感さが緩和されたのだ。

上条「き、嫌いじゃないです!」

美琴「ほんと!?よかった……」

 美琴は安心したのか再び上条に抱きついた。
 先ほどと違い腕を上条の首に回している。

上条「ちょ、おい、お前また……」

美琴「いーの!だって好きな人になら抱きついていいんでしょ?ほらしょーこ♪」

 しょーこ=証拠、ってなんだ?と上条が考える暇もなく目の前に美琴の顔が広がり、口に何か柔らかいものが触れた。
 その『もの』は数秒間上条の唇に触れていたあとゆっくりと離れていった。
 それと同時に目の前の美琴の顔も遠ざかっていく。

上条「……御坂………今何を……」

美琴「何って…証拠の……キス…えへへへ…」

 上条の中で何かが爆発した。
 理性崩壊10秒前、薄暗い部屋で男女2人っきり、さらにキスをされた上すぐ側にはダブルベッド、もう限界だ。
 理性崩壊のカウントダウンは進む、残りは5秒。

 5

上条「み、さか……」

 4

美琴「どうしたの……?」

 3

上条「もう上条さんはいろいろと限界です…」

 2

美琴「え…それって……」

 1

上条「だからすまん御坂、ちゃんと責任は取る。」

 0

美琴「わっ……」

 上条の理性、崩壊。

 美琴の肩を掴むと今度は引き離さずにベッドへと押し倒す。
 スプリンクラーのせいでベッドは少し濡れているがそんなことは関係ない。
 今自分がしていることは人としていけないことだとはわかっている。だが上条には押し寄せる感情を止めることができない。
 さらにとどめとばかりに美琴が

美琴「あ……あのね、えとね……は、初めてだから……優しくして…ね…?」

上条「……お、おう…」

 ものすごく可愛かった。
 もはや全く自分自身を止められない上条は一度上半身を起こして、Tシャツを脱ぎ捨てる。
 そして美琴とベッドの真ん中に移動したその時だった。

??「止めないと…」

??「ちょ、聞こえる……」

上条「!?」

 入り口のほうで何やら声が聞こえ、上条は今度は一体誰だと思い思わず振り返った。

上条「え」

美琴「あ…」

 ムニッ、と上条の左手は柔らかいものに触れていた。
 振り返った際に上条はつい左手をついたのだが、ベッドの上ではなく思いっきり美琴の胸の上だった。
 そう、不運にも『左手』だったのだ。

美琴「も、もうがっつきすぎよ……」

 アルコールのせいなのか恥ずかしいのわからないが美琴の顔は真っ赤、しかし全く嫌そうなかんじではない。

上条「あ、いや、違ッがっっがががッ!!?」

 話している途中で上条の視界は一瞬真っ白になったかと思うと、美琴の横に倒れ込んだ。
 意識が薄れ全身がしびれる。

美琴「?どーしたの?」

上条「お、おま、で、電、電……漏、電、し、してる…」

美琴「?」

 なんと美琴は胸を触られたことで無意識に漏電してしまっていた。
 上条の右手は美琴に一切触れておらず、『幻想殺し』は発動しなかった。
 だが酔っている美琴には何がなんだかわかっていない。

美琴「えー……当麻もう寝ちゃうの?じゃー私も寝るー!」

 漏電が治まった美琴は上条の胴に手を回し、胸に顔をうずめる。
 こんなことをされても上条は全然動けないので、理性が崩壊していてもどうしようもない。

美琴「おやすみー当麻♪」

 そう言って美琴は上条の胸で寝息を立て始める。
 酔っていたせいか眠りにつくのに30秒とかからなかった。

上条(ね、寝た…のか?……まあ俺が痺れたのは自業自得か…それに御坂を傷つけずにすんでよかったってもんだな。
   それにしても、さっきの声は一体、誰の、声……)

 ここで上条の意識は途切れた―――――



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