とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part09

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4日目 御坂編


風紀委員第177支部。
ここに婚后光子は呼び出されていた。

先程彼女はガラの悪い男達【スキルアウト】に囲まれていた。(その中の一人は、モツ鍋のナントカという異名らしい。)
しかし彼女はLEVEL4の空力使い。得意の打神風で男達を吹っ飛ばしたのだ。
ちなみにモツ鍋さんは買い物帰りだったらしく、スーパーの袋を持っていた。
今頃は中に入っていたシャケの切り身が、とある不幸な少年の頭の上にでも降り注いでいる事だろう。
はたしてモツ鍋にシャケは必要なのだろうか。というか袋持ったままナンパすんなよ。

と、そんな事があったわけだ。
一応は正当防衛だが、形だけでも調書はとらなければならないためここに呼ばれたのだ。
だが婚后は別のほうに気をとられている。調書をとるはずの固法も全く手と口が動いていない。
彼女達の視線の先には三人の少女達の姿があった。
顔を真っ赤に染め上げ、なんかゴニョゴニョ言っている御坂。
鼻息を荒げながら御坂を追い詰めている初春。
そして藁人形にウニのような頭の少年の顔写真を貼り付け、釘を打ち続ける白井。
白井からは、何だか黒魔術の呪文のような物まで聞こえてくる。 やだなー怖いなー。
やめとけ白井。能力者が魔術を使うとドエライ事になるぞ。

「イイサイレージハオレンジノニオイ イイサイレージハウシガヨロコンデタベル カビタサイレージハワルイ―――」

節子…それ黒魔術の呪文やない。いいサイレージを作るための呪文や。
こんな調子なので白井は放っておこうと思う。

彼女達の話をまとめるとこうだ。
昨日、御坂はある少年とデートしたということ。
その少年は、白井の藁人形に貼ってある写真の少年だということ。
そして最後に、別れぎわ、二人は甘く切ない口づけを交わしたということだ。(多少、初春の誇張含む。)

婚后と固法の二人は、完全に御坂たちの会話に耳を傾けている。ただ風紀委員の人は働いたほうが良いと思う。
注目を浴びている事にも気が付かない三人の少女。
一人は賢く、一人は強く、一人は……素早い。ではなく、
一人は憎しみ、一人は興奮し、一人はテンパっていた。


「さあ御坂さん!白状してください!!」

初春は昔の刑事ドラマさながらに、電気スタンドを御坂に当てる。
あとはカツ丼があればカンペキだ。お袋さんも泣いていることだろう。

「だから…あれは…事故…みたいな…もにょで……」
「キィーーー!!! どんな理由であろうと! お姉様と接吻をなさるなど!!
 お姉様のファーストキスは黒子のモノと決まってましたのにーーー!!!」
「ふにゃ!!? せせせ接吻とか!! 生々しい事言わないでよ!!
 あれはホントに……ふにゃふにゃ…なんだから………」

さっきからこんな調子だ。肝心な【きになる】部分はふにゃふにゃしていて聞き取れない。 はぁ~さっぱり、さっぱりである。
ちなみに御坂がこんな状態になっても漏電しないのには理由がある。
実は初春が、小型のキャパシティダウンを使っているのだ。
効果が微弱なため、能力者が動けなくなることはないものの、能力そのものは封じる事ができるという、何とも都合のいい代物だ。
これを御坂から話を聞きだすためだけに開発したというのだから恐ろしい。
昨日、御坂が漏電しなかったのもコイツが仕掛けてあったのだろう。 初春ェ…

「もう埒があきませんね……こうなったら上条さん本人を呼んで―――」
「や! やめて初春さん!! そんなことしたらあたしアレになっちゃう!!!」

そのアレになる所が見たいのだが……ていうかアレって何?

「じゃあちゃんと説明してくださいよ! ナニをどうしてキスしたんですか!?
 どんな感触でした!? 味は!? とにかく事細かくお願いします!!」
「そ、そんなの…分かんないもん……突然だったし……」
「ダメです!! ちゃんと思い出してください!!
 ファーストキスですよ!?ファーストキス!! 人生で一度きりなんですよ!?」

今日の初春は迫力がある。今なら覇気すら引き出せそうだ。

「だっ! だから、よく覚えてないんだって!!
 アイツが急に倒れこんできて…そしたらその…あの……ぁぅ……」
「………はぁ~…じゃあ『なんでキスしたのか』はそれでいいです。
 それで? 御坂さんはどう思ったんですか?」
「えっ!!? ど、ど、どうって!?」
「感想ですよ感想!! 男の人と初めてキスして、何とも思わないわけじゃないでしょう!?」
「え、えっと………」

御坂が何かを言いかけた次の瞬間、突然電話が鳴り響いた。
一般人からの通報だ。どうやらパンツ一丁で走り回っている男がいるらしい。

「白井さん! 今すぐ現場!!」
「なぜわたくしが!!?」
「白井さんは現場担当なはずです!! 私はデスクワーク派ですからここから動けません!! あー悔しい!!」
「キィーーー白々しい!! 全く、この季節に裸になるなどどこのバカですの!?
 ここは魔界の村じゃありませんわよ!!!」

そう言い残し、白井はテレポートして行った。


白井が消えるのを確認し、初春は再びキャパシティダウンのスイッチを入れる。
その直後に初春は話を戻した。お前も風紀委員なんだから働けよ。

「さあ、感想をどうぞ!!」

しかし、さっきは流れで余計なことを言いそうになっていた御坂も、ゴタゴタしている間に落ち着きを取り戻しつつあった。

「か、感想もなにも……何とも、な、な、ないわよ!!」

御坂はまたツンデレモードに突入してしまった。
これはこれでカワイイのだが、めんどくさいったらありゃしない。
初春は少し大声を張って詰め寄ろうとする。

「いい加減にしてくださいな!!」

だが声を荒げたのは初春ではなく、先程から黙って聞いていた婚后だった。

「わたくしの知る御坂さんはもっと堂々としてますわよ!!」
「そうよ御坂さん! 自分の気持ちに正直になって!!」

婚后に続いて固法も参戦した。
いや、何度か言ってるけど仕事しろ。風紀委員。
強力な味方をつけニヤリとする初春。

「もう逃げられませんよ!! キスされてどう思ったのか、聞かせてもらいます!!」
「そ……そのことは…もう、ね?」
「いーえ諦めません! 諦めたらそこで試合終了ですから!!」

流石の御坂も根負けしたようだ。
ポツポツと自分の気持ちを語りだした。

「バスケが……したいです………」

そうじゃねーよ。お前はどこぞの3Pシューターか。

「そ、そりゃね? あたしだってアイツの事、す…嫌いってわけじゃないし……
 突然だったからびっくりしたけど、うれ…イヤなわけじゃなかったっていうか……」

初春たちはニマニマしながら聞いている。
世の中こんなにオモシロカワイイ生き物がいたのか。
だが御坂は少しずつ冷静になっていた。おかげで疑問がよぎるほどの余裕ができていたのだ。

「…あれっ? そういえばどうして初春さんは昨日の事知ってたの?」

思わぬ反撃に初春は固まった。辺りに不穏な空気が流れる。

「……初春さん…?」
「な、なんでしょう?」
「説明、してくれるわよね?」

いつのまにか立場が逆転していた。
助け舟を期待し、初春はチラリと後ろを見るが、婚后も固法もあさっての方向を見ている。
どうやら見捨てられたらしい。
説明を求められても困る。
正直に「盗聴していた」などと言おうものなら、今より立場が危うくなるだろう。
なので、とりあえず誤魔化すことにした。

「き、禁則事項です!」

誤魔化しきれてねーよ。お前はどこぞの未来人か。





御坂は一人で街をブラブラしている。
結局あの後、初春からは情報を聞き出せなかった。
だがまぁ、こちらとしても上条への想いがバレなかっただけ良しとしよう。
……バレなかったと思っているのは御坂本人だけなのだが。

(これからどうしよう……暇つぶしに本屋でも―――!!?)

本屋に行こうとした瞬間、御坂は「あきらかに行き倒れてます」と言わんばかりの少女を発見する。

「ちょ、ちょっと!! 大丈夫ですか!!? …ってあなたは!!!」

近づいて見ると、その少女に見覚えがあった。
日本人らしい長い黒髪と、薄幸そうだが端正な顔立ち。
四魂のかけらを集めていてもおかしくないほど巫女装束の似合いそうなその少女は、
以前、酔っ払った上条にくっついていた少女の一人だ。

「怪我はないみたいだけど…とにかく病院に電話を!!」

御坂がケータイを手に取ると、少女は声を出した。

「お…おなかすいた………がくっ。」

がくっ、はこちらである。

(たしかあのシスターもしょっちゅうお腹空かせてたわよね……
 なんでアイツの周りはハラペコキャラが多いわけ!? いつから学園都市はグルメ時代に突入したのよ!!!)



「ありがとう。お礼を言う。」
「……別にいいですよ。」

街によくあるハンバーガーショップ。
彼女達のテーブルには大量のハンバーガーが置かれていた。I'm lovin'it.

彼女の名前は姫神秋沙。聞けば上条のクラスメイトだという。
お腹が空いたがお金を持っていなかったため、どうしようかと考えていたところ、
見覚えのある顔【みさか】が通ったので、イチかバチか倒れてみたのだとか。

「まさか。本当に引っかかるとは思わなかった。」
「…奢ってもらって他に言う事はないんですか……っていうかそんなに食べられるの!!?」
「お礼ならさっき言った。 それに残ればテイクアウトすればいい。友達に大食らいがいるから。」
「それってあのちっこいシスターですよね?」
「知ってるの?……そうか。あなたも上条君にくっついてたっけ。」
「くっつい!!? あ、あたしは別にあれですよ!? アイツとはただの…知り合いで……」
「……ひょっとしてあなたも。上条君に命懸けで助けられたクチ?」
「……じゃあやっぱりあなたも………」
「上条君のアレはもう病気みたいなもの。仕方がない。」
「その度に女の子の仲良くなるのはどうかと思いますけど……」
「確かにそれは腹立つ。けどそれも仕方がない。上条君かっこいいから。」
「!!! ひ、姫神さんはその、ア、ア、アイツのことが、すすす好き、なんですか!!?」
「好き。もちろん異性として。」

御坂は衝撃を受けた。それは正に、つうこんのいちげきだ。
姫神は上条への想いをあっさり認めたのだ。
それは自分にはできないことだった。

「も、もしかして、告白とかって………?」
「それはまだ。今言ったところで上条君は冗談にしか受け取らないから。」

つまり、タイミングが来ればいつでも勝負する覚悟があるということだ。

「怖く…ないんですか? その、フラレたりとか……」
「もちろん怖い。上条君。とにかくモテるから。」

本人はその自覚がゼロなのだが。

「私よりも魅力的な女性が沢山いるのは分かってる。それでも私は……
 誰にも負けるつもりはない。 もちろん。あなたにも。」
「んなっ!!!?」
「隠してるつもりかもしれないけど。見てれば分かる。」
「あああああたしは!!!! アイツの事なんでナントモ!!!!」
「…そう。それならそれでいい。
 自分の気持ちもロクに言えないような臆病な人は。ハナから相手じゃないから。」


姫神の言葉が御坂の胸に突き刺さる。
昨日、妹にも同じようなことを言われたからだ。

   ―――あたしは―――

―身体検査では“無能力者”って判定なんだけど―
―相手になってやるよ―
―誰が助けたかなんてどうでもいい事だろ―
―心配したに決まってんだろ―
―きっとお前は誇るべきなんだと思う―
―御坂美琴と彼女の周りの世界を守る―
―お前に怪我なんてして欲しくないんだよ―
―だからテメェも死ぬんじゃねぇぞ―
―そういうことを言うために、記憶がなくなるまで体を張ったんじゃないと思うんだよ―

フラッシュバックするように、次々と思い出していく上条との記憶。
そしてあのとき気付いた自分の気持ち。

「あ、あた、し、も……す………き……ア、アイ、ツのこと、が…………

 アイツのことが!!! 好き!!!!!」

真っ赤になりながらも、自分の気持ちを曝け出した御坂。
姫神は新たな強力なライバルの出現に、うっすら笑みを浮かべた。



御坂の告白から十数分。
姫神はテーブルの上にあった、カエル型のケータイを手に取る。

「えっ、ちょっ、何してるんですか!? それ、あたしのケータイなんですけど……」
「アドレス交換。こうしないとメールが送れない。」
「メ、メール?」
「お礼。ちゃんとしたのはまだだったから。
 上条君のことが好きな人なら。これはきっと喜ぶ。」

そう言われながら御坂はケータイを返してもらった。
その直後に、さっそく写メールが送られてきた。
それは弁当を食べている上条や、机に突っ伏して昼寝する上条。
友人と取っ組み合いをする上条等、上条の日常生活を写し撮った写真であった。

「えっ! な、なにこれ!!?」
「クラスメイトの特権。近くにいないとこういう写真は撮れない。
 会員になれば。もっとすごいのも見れる。」
「か、会員って!!?」
「私。上条当麻ファンクラブ。『そげ部』の会長。もちろん本人非公式。」
「ぇぇええ~~~!!!?」

なかなかの衝撃の事実である。
けどそんな「ヒゲ部」みたいな名前でいいのか?

「これでも。会員は一万人以上いる。」
「いちまんにん……」

聞き覚えのある数字だ。おそらく大半はあの子達だろう。
それを差し引いても、31人以上はいる計算だが。

「……それじゃあ。そろそろ帰ろうと思う。 結局。ハンバーガー食べきれなかった。」
「それが普通ですよ。あのちっこいのが異常なんです。」
「まぁ。そのちっこいのにお土産持って行くおかげで。上条君にも会いに行けるわけだけど。」
「…それが狙いですか………」
「さっきも言ったはず。あなたにも負けないって。」

そう言うと、姫神は自分の財布を取り出し、奢ってもらった分の料金を御坂に渡した。

「お、お金持ってるんじゃないですか!!」
「あれは嘘。あなたがどんな人か。確かめるために騙してみた。ドッキリ大成功。」
「ドグラ星の王子みたいなことしないでくださいよ!!」

そんなことを言いながら二人はハンバーガーショップを後にした。
御坂はいつもより晴れやかな表情をしていた。
開き直って、気持ちをぶちまけたことで吹っ切れたのだろう。
ちなみにこの日、上条当麻ファンクラブ「そげ部」(本人非公式)に、会員が一人増えたのは言うまでもないだろう。



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