とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part10-1

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匿名ユーザー

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4日目 佐天+その他大勢編 その1


佐天は第7学区の公園のベンチに、ホットココア片手に一人で腰掛けていた。
初春から遊びの誘いはあったのだ。なんでも昨日の事で、面白い話が聞けるらしい。
昨日の事。つまりは上条と御坂の事だ。
そして面白いという事は、二人に何かしらの進展があったのだろう。
しかし佐天は聞きたくなかった。
何故かは分からないが、聞くのが怖かった。
昨日からモヤモヤが晴れない。胸が苦しくなり、溜息ばかりついている。

「はまづら、もっとギュッとして。」
「け、けどみんな見てるぞ? いや、むしろそれが二人を燃え上がらせるってのも分からなくはないが、
 まだビギナーカップルの俺達には、そのステージは早くないか?」
「……ぐーすかぴー……」
「ね、寝てるぅーっ!! つーかさっきまで会話してたよね!?
 なにその寝つきのよさ!! あなたの前世はのび太くん!?」

隣のベンチでいちゃついている(?)カップルが、よけいに佐天をイラッとさせる。
というか日曜の午前中から公園でいちゃつくなよ。子供達ガン見してんぞ。
佐天は持っていたココアの空き缶を捨て、公園を出た、
出る前にカップルの方をチラッと見ると、ふわふわした茶髪のお姉さんが、男になにやらビームを浴びせている最中だった。
ちょっとだけスッとした。
が、直後に再びテンションの下がるイベントに遭遇する。

「ヘイヘイ! 姉ちゃん、一人かい?」
「よかったら俺らと遊ばね?」

アレッ!? デジャヴかな?三日前も同じような事があった気がする。

「あー…えっと、そういうのはちょっと……」
「おっと! へたに断らないほうが身のためだぜ!? こちらの内臓潰しの横須賀さんは今、気が立ってんだ!
 なにしろさっきナンパに失敗した上に、買い物袋まで吹き飛ばされたんだからなぁ!!」
「よけいな事まで言うんじゃねぇ!!」

さてどうしよう。 前にも言ったが、佐天に戦う力はない。
相手は自称内蔵潰し(他称モツ鍋ナントカ)と、舎弟数名。
逃げる事はできず、従えば親に言えないことをされてしまうだろう。
しかも佐天は知る由もないが、あのとき助けてくれた王子様は、現在自分の部屋で古文と戦っている真っ最中である。
イチかバチか、「あっ! あんな所にUFOが!!」作戦を決行しようとした瞬間、

「やめなさい! その子が困ってるじゃないですか!」

助けが入る。
佐天はとっさに「あの人」かと思ったが違う。そもそも声が違う。



「誰だテメェは!!」
「人に名乗る前に自分が名乗るのが礼儀……ですがまぁいいでしょう。
 なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け。 自分は海原光貴といいます。」

爽やかさ100%な男だった。むしろ爽やかさからできてますって感じである。
王子様度は、はっきり言って上条よりもはるかに高い。
しかしその爽やかさは、どことなく胡散臭さが滲み出ており、
風早くんよりは、どちらかといえば古泉に近い。 下の名前も似ているし。

「やれやれ、困ったものです。」

まんまじゃねーか。

「そうか、だがまずい所へ首を突っ込んでしまったようだな。
 対能力者戦闘のエキスパート、この内蔵潰しの横須賀サマの前に」
「あっ、すみません。 長くなるなら攻撃してもいいですか?」
「話、最後まで聞けよ!! 何で俺と戦うやヤツはいつも聞いてくれないんだよ!!」
「えい」
「だから話をって、え~~~!!?」

海原は「えい」の掛け声とともに、手に持っていた黒い石のナイフをモツ鍋さんに向けた。
何かが光った瞬間、モツ鍋さんはパンツ一丁になっていた。 「またつまらぬものを斬ってしまった」の状態である。
覚えてやがれ!と、三流の捨て台詞を吐きながらモツ鍋さんたちは逃げていった。
このあと彼らは一般人の通報により、ツインテールの風紀委員に捕まるのだが、まぁどうでもいいことである。

「いやー、ありがとうございます! 助かりましたよ。」
「いえ、困っている女性を見たら放っておけない性分でして。それに……」
「? それに?」
「………あぁ、何でもありません。」

それに御坂さんの御友人を見捨てるわけにもいきませんから、と言いたかったのだろう。
実はこの男、ある理由で御坂の周辺を徹底的に調べ上げた経験がある。
当然、その友人である佐天の事も知っているという訳だ。
もっとも、こうして面と向かって話すのは初めてなのだが。

「それにしても今のすごかったですね!! どんな能力者なんですか!?」

海原が使ったのは能力ではない。魔術である。
金星の光を反射し、あらゆるものを解体するというものなのだが、そんなことを科学サイドで、しかも一般人である佐天に言える訳がない。
なので海原はこんな時のために用意しておいた、とっておきの言い訳【うそ】をついた。

「自分の能力は『等価交換【アルケミスト】』といって、
 物質の構成元素を『理解』し、物質を『分解』し、『再構築』することで別の物質に作り変える、というものです。
 先程のはその『分解』の段階で止めたという訳ですね。」
「へぇ~……(じゃあゴミを木に変えたり、手ぬぐいを鉄に変えたりとかもできるのかな?)」

佐天さん、それは天界力だ。

「それよりも気をつけてくださいね? またああいうのが来るかも分かりませんから。」
「あはは! 確かに危機感がなかったかもですね。反省してます。
 ……まぁこの前も同じような事があったもんで。」
「それは大変でしたね。大丈夫だったのですか?」
「はい! そのときも助けてくれた方がいたので……」



そう言ってほんのり赤くなる佐天。その様子を見て海原は一人の少年の顔を思い浮かべた。
いや、彼を知る人間なら誰もが頭に浮かぶだろう。
ピンチのときに現れ、助けたついでにフラグを建て去って行くあの男を。

「それはひょっとして、ウニのような髪型の人ではありませんか?」
「えっ!? 海原さんも知ってるんですか!?」
「やはり…ですか。(どうやら自分との約束は守ってくれているようですね。……しかしまぁなんと言うか、建てすぎ【やりすぎ】では?)」
「上条さんも、あっ! その人上条さんっていうんですけどね!? すごかったんですよ!!
 こう、飛んできた火の玉をパキーンって消して! なんか能力を消せる能力者みたいですよ? それで―――」

上条のことを楽しそうに話す佐天。
先程の様子も含め、ある確信をした海原は、実にシンプルでストレートな質問をした。

「好きなのですか? 彼のことが。」
「え………」

それは考えた事もないことだった。
いや、考えないようにしていたのかもしれない。
自分が上条のことをどう想っているのか、そしてどう想われたいのか。

「な、何言ってるんですか! も~、あたしが上条さんと会ったのってついこの前ですよ?
 そんなわけないじゃないですかー。」

佐天は否定する。しかし否定すればするほど苦しくなる。
海原の一言で、気付かされてしまった自分の気持ち。

「……人を好きになるのに時間は関係ありませんよ。自分もそうでしたから。」
「…海原さんも?」
「ええ…ただその人には、別の好きな人がいるんです。 まぁどこにでもある話ですよ。」
「そう…ですか……」
「しかしその上条という方には彼女がいないのでしょう?」
「どうして分かるんですか?」
「いえ、話を聞く限り、ずいぶん鈍感そうな印象を受けたもので。」
「あはは! 確かにそうかもしれませんね!」
「つまり、貴方にはチャンスがあるということです。」
「でも……あたしの友人も上条さんのことが好きなんです。
 あたしなんかよりずっと前から上条さんが好きだった人なんです。
 あたし、その人のことも大好きだし、恩人でもあるんです。だから……」
「だから自分は身を引こうと? それで貴方はいいんですか?」
「……………」
「…確かにデリケートな問題ですから、じっくり考える時間も必要でしょう。……っと、すみません。」

海原のポケットが振動する。どうやらメールのようだ。

(土御門から…? グループが解散してから初めてですね……)

そして海原はメールを開いて後悔する。
見なければよかったと顔をしかめる。

「あの、どうかしたんですか?」
「どうやら…あまり考えてる時間は無さそうですよ……?」



時間は数分前に遡る。

「どうだ舞夏、隣の様子は。」
「むー……どうやら上条のヤツ、また違う女を部屋に入れたみたいだぞー。
 全く、昨日は御坂にあんな事しておいて、とんでもない男だなー。」
「この後、帰ってきたインデックスと血みどろの争いが起こるのが目に浮かぶぜい。
 こりゃーきっついお灸をすえる必要があるにゃー。」
「何をする気だー?」
「戦争ですたい!!!」

そう言うと土御門はケータイを取り出した。
メールの件名に「緊急事態発生」と打ち、本文に昨日こっそり撮っておいた上条と御坂のキスシーンの写真を貼る。

「にゃはははは!! カミやん! 今回こそはお前さんも年貢の納め時だにゃー!!
 ブラックメ~ル、一斉送信 ズキュン!だぜい!」

土御門の放ったブラックメールは、海原以外の場所にも届いていた。



小萌のアパート内

「あれっ? あの子はもう帰ったの?」
「あっ、インデックスちゃんなら、ちょうど今かえったところなのです。
 それにしても上条ちゃんには困ったものなのですよー……」
「ずっと愚痴言ってたわね。」
「そういえば結標ちゃんはどこで上条ちゃんに会ったのです?」
「まー…色々あって、ちょっと助けられただけよ。」
「……本当に上条ちゃんは………」
「ねぇ、あの人って小萌の生徒なんでしょ? 何年?」
「上条ちゃんは一年生なのです。」
「へぇー…年下かぁー……(イケルかも。)………あっ、メールだ。」
「先生もです。」
(土御門? 珍しい…………なんだ…脈ないじゃん……)
「な、な、な、何なのですかこれは~~~~!!?」



黄泉川のマンション内

「ねぇ見て見てー、ってミサカはミサカはおニューの服を着てあなたを誘惑してみたり!」
「うるせェな……そもそもさっき一緒に風呂入って裸見てンのに、今更誘惑もクソも無ェだろォが………」
「えっ!!? あなたはミサカの産まれたままの姿を見て、欲情しちゃってたの!?
 ってミサカはミサカはあなたの社会的抹殺を心配するとともに、これからの展開にwktkしてみたり!」
「ぶっ潰すぞクソガキィ!! 色気づくには10年…いや5年くらいかァ? 早ェンだよ!!
 ………あン? メールか…ちっ!土御門かよ……って、その前に三下から着信あったンじゃねェか!!誰だよ勝手に出たヤツ!!!
 …クソッ! まァいい。 で、メールの内容は……………」
「どうしたの?ってミサカはミサカは興味津々!」
「…見るか?」
「なになに………って!ミサカはミサカはくぁwせdrftgyふじこlp!!!」
「バグってンじゃねェ!! 三下とオリジナルがどォなろォと関係無ェだろォがァ!!
 (どォすりゃいいンだ!? やっぱここは、おめでとうメール的なモン送ったほうがいいンじゃねェか!?
 友達として、そう友・達・として!!)」



某パン屋内

「嘘や! こんなん嘘にきまっとる!! 嘘って言うてくれーーー!!!」



吹寄の寮内

「か~み~じょ~~~!!!」



上条の寮近く

「………これは。さすがにショック……………」



第8学区のマンション

『…どうかしたのかね?』
「…別に。ただ不愉快なメールが届いただけだけど。」
『不愉快?』
「……………」



そして土御門のメールは、海を越えイギリスの地にまで届いていた。



イギリス清教 女子寮

「こ、これはきっと何か訳があるはずです!! あの少年がこんなことをするとは思えません!!」
「諦めろよ神裂。あいつだって高一だろ? 普通するだろこれくらい。」
「し、しかし!」
「まぁまぁ、シェリーさんも神裂さんも、お茶でも飲んで落ち着くのでございますよ。」
「熱っつう!!? これ煮えたぎってるぞ!!」
「あらあらまぁまぁ…」
(オルソラも相当動揺しているようですね……)



イギリス清教 女子寮 アニェーゼ部隊

「このままでいいのですか? シスター・アニェーゼ。」
「な、何のことですか?」
「分かっているでしょう。あの少年ですよ。」
「あ、あぁ…例の事ですか。 けど私には全く関係無え話ってな訳ですよ。」
「そ、そんな事無いはずです!! シスター・アニェーゼはあの人の事………」
「シスター・アンジェレネまで何言っちまってるんですか!! 私は彼の事なんざこれっぽっちも! …これっぽっちも………」



日本人街 天草式 隠れ家

「ぅおらーーー!!! もっと酒持ってこんかいコンチクショーーーーー!!!!!」
「俺の菊姫が! 黒龍が!! 十四代がーーー!!!」
「た、建宮さん! 早く五和を止めてください! 牛深さんのお酒が無くなる前に!!」
「無茶言わんでほしいのよ!! 今の五和は、女教皇様と後方のアックアと範馬勇次郎が束になっても敵わないのよ!!!」
「そんなの人間じゃねー!!」



王室派

「おやキャーリサ。清教派からあのことを聞いてからずいぶん大人しくなったじゃないか。
 そんなにあの少年の事が気になるのかい?」
「……気にして無いし、いつも通りだし。」



騎士派

「件の少年に好い人ができたらしい。
 …ふむ。 これは神裂火織嬢を振り向かせるチャンスかもしれないな。 お前はどう思う?」
「………色恋の話は苦手である。」



新たなる光 レッサーの隠れ家

「あーもー!! 人がさんざん誘惑したってのに!!!」
「……もう諦めたほうがいいのでは?」
「いーや! あの少年にはイギリスの為に馬車馬のように働いてもらいます!! こうなったら…」
「こうなったら?」
「ふっふっふ……」



そしてこの話題はミサカネットワーク内でも騒ぎになっていた。

『上位個体の情報などアテになるのですか、とミサカ10404号は間違いであってほしいという願いを込めて確認を取ります。』
『番外個体からも同様の情報が得られました。どうやら真実のようです、とミサカ11122号は残酷な事実を告げます。』
『しかし彼にもお姉様にもそんな度胸はありません、とミサカ10050号は断言します。』
『いや、彼のフラグ能力を侮ってはいけません、とミサカ12399号は冷静に判断します。』
『今、問題視するべきは、なぜそうなったかではなくこれからどうするべきか、ではないでしょうか、
 とミサカ18000号はあえて客観的立場で意見を言います。』
『それは確かに、とミサカ13131号は同意します。』
『ではこれからの事について話し合いましょう、とミサカ16677号はおもむろに仕切りだします。』



世界のあらゆる場所でこのことは物議を醸していた。
それだけフラグを乱立させたという事だろう。
はたして無意味にフラグを建てられた彼女達は、この後どう動くのだろうか。
土御門の言った「戦争」とは何を意味しているのか。そして佐天の出した答えとは?

騒動の中心である上条と御坂を置いてけぼりにしたまま、物語は大きく動きだした。




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