とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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<第三章>


――常磐台中学
学園都市の中でも5本の指に入る名門お嬢様学校であり、全生徒がレベル3以上の超エリート校でもある。
ここで『常磐台のエース』と呼ばれ、『常盤台の女王』食蜂操祈と双璧を成していたのが
上条当麻が散々スルーし続けた少女、御坂美琴なのである。

プライドの高かった彼女の、これまでの心苦を思うと胸が痛くなる。ずっと片思いの人からの返事を待っていたのだ。
さぞかし辛かっただろう、苦しかっただろう…。
でも上条は決心したのだ。
彼女の元へ行き、今度こそこの思い、この感情の全てを伝えようと…。


同じ第7学区に位置する常磐台中学学生寮に着いた。
来る途中何度も階段から転げ落ちそうになったり、車に轢かれそうになったりもした。
だが美琴の味わった悲しみに比べれば、今の上条にとってこのくらいの苦労は何ともなかった。

「来たのはいいが……、どうやって呼ぼうか」

携帯は電池切れ。近くに公衆電話なし。
そもそも美琴の電話番号すら覚えていない。

「…仕方ねぇか」

合掌をする。
パァン、という高い音が辺りに響くのと同時に、上条の姿が次第に消えていく。
――幻想を殺す少年が、まさか幻想の世界における透明人間のようになれるとは誰が予想できただろう。

(つっても、俺の周りに存在する能力者のAIM拡散力場とかいうのに干渉しているからできるらしいがな…)

AIM拡散力場
能力者が「無自覚」に発してしまう微弱な力のフィールド。
これにより、能力者の心や『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を調べることも可能である。
またAIM拡散力場を利用して能力者の位置を探ることを可能とする能力者『能力追跡』なども存在するが、
上条の今行っている作業はその逆であり、他人の放つAIM拡散力場を逆手に取り、体内に取り込むことによって
その能力者と全く同じ『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』 を構築する。
非自己と自己の区別が付けられなくなるパラドックスの対象になることで、
能力開発を受けた者は上条を、「認識を逸らさなければ自壊させられる存在」として無自覚に認識の外に追いやってしまう…
その点で視覚阻害(ダミーチェック)や偏光能力(トリックアート)などとは一線を画す。
だが確固たるパーソナルリアリティを持つ者、――レベル5にはこの業は通用しないらしい。



(時間制限があるのは難点だが…あとは、恐い寮監と監視カメラに気を付ければ…)
美琴のいる部屋の窓が見えてきた。午後1時頃なので昼食を取りに留守している可能性も考えたが、
美琴の持つパーソナルリアリティを感じる。間違いなく美琴がそこにいる。

(白井は留守か?風紀委員(ジャッジメント)やってても、今日は流石に非番のはずだろ?)
白井の持つパーソナルリアリティが感じ取れない。それを不信に思ったが上条にとっては好都合だった。
その足で美琴の部屋の窓まで壁を垂直歩行していき、最後には窓を念動力でこじ開けようとした。

その瞬間、窓の中を覗いた光景に目を疑ってしまう。
―――誰一人住んでいる気配のしない、もぬけのからだったのである。

(あれ…、部屋…間違えたっけ?)
そんなはずはない。一度この部屋に入っているし、何より美琴のパーソナルリアリティを感じたのだ。
今日は祝日。さらに、寮全体を見てここだけ改築をしているとは考えづらい。

(さては認識操作系の能力者の仕業か)
「あの」常盤台である。そんな能力の持ち主がいても可笑しくはないが、今の上条を騙すほどの能力者はそうそういない。
第一美琴の部屋にだけこんなカモフラージュをしているとは考えられなかったが、
そう考えざるを得なかった…。

窓を乱暴にこじ開けてみてもその光景は変わらなかった。
だが感じる。美琴のパーソナルリアリティを、つい先日までここに美琴がいたことを…
上条に不吉な予感が走る。

「どこ行っちまったんだよアイツ…」


  ◆  ◆

その後は、いつも二人でだべっていた思い出のある場所
美琴がいつも蹴りを入れた自販機のある公園や何度も出くわした通学路、セブンスミスト…
全て足を運んでみたが、結局彼女は見当たらなかった。
実家に帰省していることも考えたが、海外に行っていたアイツも出席日数の関係上あまり
学園都市外に出る機会は与えられていないだろう。

「…」

美琴がどこにもいない。絶望感だけが彼を支配している。



  ・
  ・
  ・

セブンスミストから帰る途中
花の刺繍がされたハンカチを落とした人がいた。
頭に花を乗せた少女で、お気に入りの品物なのだろうと思い、そっと声をかけた。

「あの、ハンカチ落ちましたよ」
「あっ!すいません。ありがとうござぃ……あれ、あなたは…」

どこで会ったか知らないが、彼女は俺に見覚えがあるらしい。
そしてうんうん唸っている内に思い出してくれたようだ。

「…あぁ~!御坂さんと一緒に借り物競争に参加していたツンツン頭の人!」
「えっ…」

思い出したのがツンツン頭という事は余計だったが、彼女はどうやら美琴を知っているらしい。

「あの、ひょっとして御坂と知り合いだったりする?」
「知り合いも何も…御坂さんとは立派な友達です!(あれ、でも友達ってお呼びしていいのかな…)」
「友達……、決して怪しい者じゃないから俺の話にちっと付き合ってくれないか?」
「う~~ん、風紀委員の立場で困った人がいたら助けてあげたいのは山々なのですが…
 ひとまず支部の方に来てもらえませんか?念のため確認を取らせてください」

彼女の言うことにも一理ある。彼女に連れられて俺は風紀委員第一七七支部に行くことにした。

  ◇  

「どうもお待たせしました。改めて自己紹介させていただきます。
 柵川中学1年の初春飾利と言います。初めまして、上条さん」
「ああ、一応確認取れたと思うが念のため…ゴホン、
 とある高校1年の上条当麻だ。よろしく」



第一七七支部へと来てみたが、出迎えてくれた者はいなかった。
彼女によると今日は白井は怪我のため休み、他の風紀委員は巡回に出ているらしく、情報処理専門の彼女は番をしていたと言う。

「あれ、でも君セブンスミストの周辺にいたんじゃなk「何のことですか?」…いや何でもありません」

それはさておき、

「俺、御坂を探してるんだ。でもアイツがどこにも見当たらないんだよな…
 アンタ何か知ってたら教えてくれないか?」
「御坂さんですか?…うーん、先日お会いしましたが今日はまだ見てませんね」
「そうか…今御坂がどこにいるか調べることはできないのか?」
「う~ん、個人情報の漏洩は固く禁じられているのですが…条件付きでならば調べてあげられますよ」

 (…さっきのといい、風紀委員もこんな奴しかいねえのかよ…俺が学園都市第一位倒したっつう情報も
 ここから漏れたんじゃないのか?)
「……分かった」

その条件とは、御坂との出会いやその後・現在の関係について包み隠さず喋ってもらうというものだった。
「何でそんなこと話さなならんのだ?」と聞いてみたが、相手は溜息を付いて「これは御坂さん、駄目でしたか…」
と俺にわざと聞こえる声で独り言を漏らすと、小一時間パソコンの前に座ってアイツの行きそうなところの
監視カメラをチェックしてくれた。

  ・  
  ・
  ・

しばらくして初春は上条にモニターを見ながら質問し始めた。

「上条さん、もしかして御坂さんに告白されたんじゃないですか?」
「…もう何が来ても上条さんは驚きませんのことよ?ちなみにどうして知ってるのかな?」
「ほ、本当なんですか!御坂さん何にも教えてくれないから分からなかったんですよ~」
「しまったあぁぁぁ!!!嵌められたぁぁぁ~~~!!!」

上条!…墓穴を掘る!……痛恨のミス!


  ◇  ◇  


その後根ぼり歯ぼり聞かれて、げっそりしている上条に朗報が入った。

「いました!いましたよ!上条さん!」
「本当か、場所はどこだ!」
「これは…第七学区の公園でしょうかね?多分上条さんすれ違ったんだと思いますよ」
「ありがとう、世話になったな…また連絡する!」
「はい!どういたしまして~」


 ――俺は走った。そこに、俺の知っている『美琴』はもういないのに…






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