小ネタ 鉄橋は「変」の合図
あっ、アイツから着信だ。 全く、今忙しいのに何なのよ。
仕方ない、面倒だけど出てやるか。 私は慌てず騒がず通話ボタンを押した。
「ななな何よ急に!!! 私に何の用なのよ!! いや、別に用がなくてもいいんだけどね!?」
『おう御坂、今時間大丈夫か?』
「大丈夫に決まってんでしょ!! めちゃくちゃ暇してたとこなんだから!!」
『そ、そうか。 いや、あのさぁ、この前バレンタインのチョコ貰っただろ?』
「あ、あー、そそ、そうねぇ…そんな事もあったようななかったような…?」
『いやあったよ。俺チョコ食ったもん。でさー、今日ホワイトデーだろ?』
「う、うん……」
『お返ししたいんだけど、今から会えるか?』
「し、仕方ないわね。どどどどうしてもって言うなら貰ってあげない事もないけど!?」
『じゃあどうしても』
「わ、分かったわ。い、い、今から行くから」
『えっ? いや、来てもらうのも悪いからこっちから行くよ。
………あれ? もしもし? もしもーし! ………もういない…のか?』
私は決して慌てず騒がず、全くウキウキせずに外へ出た。
――――――――――
御坂のヤツ、ケータイの電源も切らずに出たのかな。俺ももう外に出ちまってるし、行き違いにならなきゃいいけど……
っと、この鉄橋は…懐かしいな。 俺はここで御坂と………
ってあれ? あの人影は御坂じゃね? 何か全力で走ってっけど……
「ゼィ…ゼィ…お、おまたせ……」
「あ、あぁ…お疲れさん……あっ、これ。クッキーなんだけど……」
「へ、へぇー……ホワイトデーにクッキーなんて、なかなかオシャレじゃない?」
「いや…普通だろ……」
「!!! ね、ねぇ…このクッキー、なんていうか個性的な形してるけど…ももも、もしかして…?」
「あー…悪い。自分で作った方が安上がりだったからつい……」
「てててて手作りぃぃぃぃぃ!!!?」
「やっぱりそんなのより、市販のヤツのが良かったよな。ごめん」
「こ、こ、これでいいわよ!!! せ、せ、せっかく作ったんだから、勿体無いじゃない!!!」
「そうか? そう言ってくれるとありがたいかな」
「こ、これ……これ!一生大事にするから!!!」
「…いや、防腐剤とか入ってねぇし、できれば今日中に食ってほしいんだが…って、もう行っちゃったよ……
それにしてもあんなに喜んでもらえるとは思ってなかったな。
…御坂…そんなに好きだったのか………
クッキーが」