準決勝参加チームがそれぞれの試合会場に向かう中、情報屋だけは体育館へと足を運んでいた。
目的は当然ながら吹寄だが、彼女を中心に最後の調整を行っているので気軽に声をかけられずに見守るだけだったが、
目的は当然ながら吹寄だが、彼女を中心に最後の調整を行っているので気軽に声をかけられずに見守るだけだったが、
「あっ、紫木君だ~。吹寄さん、紫木君が話したそうな顔してるよ」
「そ、そう……。まったくあいつも試合があるのにあ、茜川さん?」
「そんな固いこと言わないの♪ ほら、紫木君に喝でも愛でも入れてくる!」
「そ、そう……。まったくあいつも試合があるのにあ、茜川さん?」
「そんな固いこと言わないの♪ ほら、紫木君に喝でも愛でも入れてくる!」
情報屋の存在に気付いた茜川に言われるまま押されるまま、自分の所まで来てくれた吹寄を前に緊張してしまう。
「う~ん、初々しいね~♪ ……ところで野原君は何でそんなに悔しそうな顔してるの?」
「決まってるだろ! 情報屋が妬ましい、ただそれだけだっ! いっそのこと情報屋が振られギャンッ!」
「はいはい、2人の邪魔しないの。私達は練習練習♪(頑張ってね紫木君、そして吹寄さん)」
「決まってるだろ! 情報屋が妬ましい、ただそれだけだっ! いっそのこと情報屋が振られギャンッ!」
「はいはい、2人の邪魔しないの。私達は練習練習♪(頑張ってね紫木君、そして吹寄さん)」
醜い嫉妬に塗れた野原にバレーボールを投げつけて黙らせた茜川は吹寄と情報屋の邪魔にならないように2人から離れる。
茜川と野原のやり取りに全く気付いていない吹寄、情報屋の緊張を解くという意味で喝を入れた、しかも思いっきり。
茜川と野原のやり取りに全く気付いていない吹寄、情報屋の緊張を解くという意味で喝を入れた、しかも思いっきり。
「情報屋、顔を上げなさい」
「えっ、はい」
「えっ、はい」
言われるがままに顔を上げる情報屋。
次の瞬間情報屋に向かって飛んできたのは吹寄のおでこであった。
次の瞬間情報屋に向かって飛んできたのは吹寄のおでこであった。
「いったあー!」
「これで緊張は解けたでしょ?」
「だからってこれはないだろ、吹寄!」
「あ、それともう一つ」
「…?」
「今度、遊びにいく権利の条件の変更よ。活躍したらから優勝したらに変えるわ」
「えっ、それってつまり…」
「だから、この後の試合も頑張りなさい!ほら、行った!」
「これで緊張は解けたでしょ?」
「だからってこれはないだろ、吹寄!」
「あ、それともう一つ」
「…?」
「今度、遊びにいく権利の条件の変更よ。活躍したらから優勝したらに変えるわ」
「えっ、それってつまり…」
「だから、この後の試合も頑張りなさい!ほら、行った!」
そう言い終えると吹寄はそのまま情報屋を体育館の外に押し出した。
しかし、押し出された情報屋の方は…
しかし、押し出された情報屋の方は…
(この間までは、活躍したらっていう曖昧な条件だったけど、これでようやくゴールが見えてきたぜ!)
などと考えていたとか。
なお、バレー組はそのあとの試合で苦戦しながらも勝ったため、決勝へとコマを進めるのだった。
なお、バレー組はそのあとの試合で苦戦しながらも勝ったため、決勝へとコマを進めるのだった。
――――――――――
一方、バスケ組
姫神達は目の前にいる準決勝の相手チームを無視して乱入者チームの対策をねるために作戦会議をしていた。
姫神達は目の前にいる準決勝の相手チームを無視して乱入者チームの対策をねるために作戦会議をしていた。
「まさか乱入者が。彼らだったとは」
「しかも麦野と絹旗までいるとは…姫神様、どうします?」
「姫神様、浜面、青ピ、俺にいい作戦がある」
「なんや、半蔵はん。詳しく教えてくれや」
「ああ、まず相手の麦野に浜面をぶつけるんだ」
「ちょっと待て、半蔵!それじゃ俺、死ぬから!」
「半蔵。流石。名案。」
「はっ!お褒めいただき光栄であります、姫神様!」
「あの、少しは俺の話を…」
「しかも麦野と絹旗までいるとは…姫神様、どうします?」
「姫神様、浜面、青ピ、俺にいい作戦がある」
「なんや、半蔵はん。詳しく教えてくれや」
「ああ、まず相手の麦野に浜面をぶつけるんだ」
「ちょっと待て、半蔵!それじゃ俺、死ぬから!」
「半蔵。流石。名案。」
「はっ!お褒めいただき光栄であります、姫神様!」
「あの、少しは俺の話を…」
自分の命のために必死に抵抗する浜面。
しかし、そのやたらと必死な行動があの方の逆鱗に触れてしまった。
しかし、そのやたらと必死な行動があの方の逆鱗に触れてしまった。
「浜町のクセに。生意気。」
「ギャー!姫神様、お許しをーーぉ!!」
「ギャー!姫神様、お許しをーーぉ!!」
そんなコントをやりながら試合が始まっているバスケ組。
しかし、完全にアウトオブ眼中の準決勝の相手チーム。
一度も見向きもされぬまま、姫神チームに完敗するのであった。
しかし、完全にアウトオブ眼中の準決勝の相手チーム。
一度も見向きもされぬまま、姫神チームに完敗するのであった。
――――――――――
その頃、サッカー組
こちらでは大変な事態が発生していた。
こちらでは大変な事態が発生していた。
「あれ、真夜。いつの間にそんなに色白に?」
「真昼さん、それは俺じゃなくて白雪さんだから」
「……真昼ちゃん、本当に大丈夫?」
「大丈夫だって、ほら」
「いや、凄くフラフラしてるからね、真昼さん!」
「真昼さん、それは俺じゃなくて白雪さんだから」
「……真昼ちゃん、本当に大丈夫?」
「大丈夫だって、ほら」
「いや、凄くフラフラしてるからね、真昼さん!」
サッカー組は真昼が風邪をこじらせてしまったため、どうすべきか悩んでいるのだった。
「大丈夫だって。花粉症ってのは目も痒くなるだろ? そのせいで視界が悪くなって月夜が真ぶわっくしょん!!」
「まだ風邪を花粉症って言い張るのかよ! 井ノ原姉ってやっぱりバぎゃんっ!」
「まだ風邪を花粉症って言い張るのかよ! 井ノ原姉ってやっぱりバぎゃんっ!」
真昼に対する暴言を雪の翼の一薙ぎで阻止した白雪、しかしそれは真夜が怒って東原も大変なことになるのを防いだに過ぎない。
現に白雪に吹っ飛ばされた東原を見て、真夜は拳を握る手から力を抜いているのだから。
現に白雪に吹っ飛ばされた東原を見て、真夜は拳を握る手から力を抜いているのだから。
「けど本当にどうするの? キャプテンとしては真昼ちゃん抜きで準決勝に臨みたいけど……嫌だよね? 真昼ちゃん」
「当ったり前だろ! こんなにみんなと頑張ってんのにここに来て俺だけのけ者は嫌だかぶえっくしょん! そもそも風邪じゃなくて花粉しょうわわっ!」
「当ったり前だろ! こんなにみんなと頑張ってんのにここに来て俺だけのけ者は嫌だかぶえっくしょん! そもそも風邪じゃなくて花粉しょうわわっ!」
まだ風邪を花粉症と言い張る真昼、しかし彼女にとってはこれが人生初の風邪なので仕方ないのかもしれない。
クシャミも激しく足元もフラフラながらも頑固な真昼を大人しくさせたのは彼女を無理やりおぶった真夜だった。
クシャミも激しく足元もフラフラながらも頑固な真昼を大人しくさせたのは彼女を無理やりおぶった真夜だった。
「前半は俺が真昼さんを背負ってディフェンスに集中するよ。もちろん東原にも見せ場は作るようにする。オフェンスで白雪さんに負担掛かるけどいいかな?」
「……分かったよ。ただし! 井ノ原くんが真昼ちゃんを背負って試合するのは前半だけだよ! 後半はゴールポストにもたれて動かないことを約束して!」
「お、おうっ……」
「……分かったよ。ただし! 井ノ原くんが真昼ちゃんを背負って試合するのは前半だけだよ! 後半はゴールポストにもたれて動かないことを約束して!」
「お、おうっ……」
条件付きとはいえ試合参加を認められた真昼、しかし白雪に怒鳴られたことと真夜に負担をかけていると思ってしゅんとなってしまう。
そんな真昼を見て変な萌え方をしてるのは白雪の応援団の一部で、彼女達が井ノ原ツインズを姉弟ではなく兄弟として見ているのが原因である。
そんな真昼を見て変な萌え方をしてるのは白雪の応援団の一部で、彼女達が井ノ原ツインズを姉弟ではなく兄弟として見ているのが原因である。
「弟さまに甘えるお兄さま、何とも仲睦まじいですわー♪」
「強気なお兄さまにしっかり者の弟さまが背中を貸す……兄弟愛を超えた素晴らしい絆を感じます」
(落ち着きのある弟さまが攻めでやんちゃなお兄さまが受けというのもいいものですわね!)
「強気なお兄さまにしっかり者の弟さまが背中を貸す……兄弟愛を超えた素晴らしい絆を感じます」
(落ち着きのある弟さまが攻めでやんちゃなお兄さまが受けというのもいいものですわね!)
口に出したり心の中で考えてる以上に井ノ原ツインズは世間的に禁断気味な関係なのだが知ってる者や信じてる者は意外と多くない。
そんな外野の動きなど全く関係なく準決勝が開始、前半は0対0で折り返した。
相手は1年生ということもあり能力者のレベルも総じて高く、攻めの起点が白雪1人なこと、真昼に負担をかけまいと動きを制限された真夜と不利な条件が並んだが、
そんな外野の動きなど全く関係なく準決勝が開始、前半は0対0で折り返した。
相手は1年生ということもあり能力者のレベルも総じて高く、攻めの起点が白雪1人なこと、真昼に負担をかけまいと動きを制限された真夜と不利な条件が並んだが、
「ナイスだよ東原くん! シュートを10本も打たれたのに全部セーブするなんて!」
「まあな! それもこれも球技大会でファンになってくれた娘たちの熱い視線があればこそだぜ!」
「まあな! それもこれも球技大会でファンになってくれた娘たちの熱い視線があればこそだぜ!」
球技大会のきつい練習と本番の試合で本人自体の身体能力が向上し、【技術盗賊】を存分に活かしている東原の功績で互角に持っていけたのだ。
「ホントに東原には助けられたよ。けど後半はそんなに負担はかけないから。ここから俺も得点してもいいって木山先生に許可貰ってるし」
「そっか井ノ原弟も本格的にオフェンス参加……ん? 負担はかけないって相手に攻めさせないってことじゃないよな?」
「そのつもりだけど。東原のことは信じてるけど後半は真昼さんがゴールポストで休むだろ? 万が一があったら大変だからさ」
「そっか井ノ原弟も本格的にオフェンス参加……ん? 負担はかけないって相手に攻めさせないってことじゃないよな?」
「そのつもりだけど。東原のことは信じてるけど後半は真昼さんがゴールポストで休むだろ? 万が一があったら大変だからさ」
じゃあベンチで休ませろよ、東原は言いたかったが白雪が出した条件なだけに心の中で思うことに。
そして後半、真夜がボールをキープすると【瞬間超人】全箇所70で強化された状態でシュートを放つ。
その結果、シュートをカットしに行った相手チーム全員を蹴散らしてゴールネットへと突き刺さり先制点を叩き出す。
そして後半、真夜がボールをキープすると【瞬間超人】全箇所70で強化された状態でシュートを放つ。
その結果、シュートをカットしに行った相手チーム全員を蹴散らしてゴールネットへと突き刺さり先制点を叩き出す。
「よっしまずは1点…………あれ? 何だか皆、静か過ぎるんだけど」
「井ノ原くん、さっきのシュートは誰が見ても引くよ。元春も言ってたでしょ? 全力でシュートするなって。シュートも力をセーブするなら私も許可するから」
「井ノ原くん、さっきのシュートは誰が見ても引くよ。元春も言ってたでしょ? 全力でシュートするなって。シュートも力をセーブするなら私も許可するから」
あれでも8割だったんだけど、真夜はそう言おうとしたが止めた、理由は何となく。
ならばと今度は一度やってみたかった11人抜きを敢行、見事に達成して2点目をゲット。
ならばと今度は一度やってみたかった11人抜きを敢行、見事に達成して2点目をゲット。
「うーん、何だか井ノ原くん見てたら私もテンション上がってきたよーっ!」
そして白雪の闘志にも火が付いて雪の竜巻シュートとか吹雪のシュートとか雪の翼シュートをガンガン決める。
試合は終わってみれば白雪が7得点、真夜が4得点を挙げて11対0の圧勝で白雪たちが決勝へと駒を進めた。
ちなみに相手チームの被害は白雪の必殺シュートで齎したものが大きかったりする。
試合は終わってみれば白雪が7得点、真夜が4得点を挙げて11対0の圧勝で白雪たちが決勝へと駒を進めた。
ちなみに相手チームの被害は白雪の必殺シュートで齎したものが大きかったりする。
――――――――――
そして舞台は上条たちの野球組、吹寄の喝でテンション大幅アップした情報屋が仕切っていた。
「いくぞ、野郎ども!目指すは優勝じゃあーぁーーー!」
「「「「「「「「おおっーー!」」」」」」」」
「掛け声が小さい!もう一回じゃああーー!!」
「「「「「「「「おおっー!!」」」」」」」」
「もういっぺんじゃあー!!!!!」
「「「「「「「「おおっー!!!!!」」」」」」」」
「「「「「「「「おおっーー!」」」」」」」」
「掛け声が小さい!もう一回じゃああーー!!」
「「「「「「「「おおっー!!」」」」」」」」
「もういっぺんじゃあー!!!!!」
「「「「「「「「おおっー!!!!!」」」」」」」」
ようやく目標が完全に決まった情報屋。
その異常に高いテンションは野球組内に伝染しており凄まじいモチベーションとなっていた。
なお、その異常なテンションを見た相手チームは
その異常に高いテンションは野球組内に伝染しており凄まじいモチベーションとなっていた。
なお、その異常なテンションを見た相手チームは
(な……何だあの異常な熱気は……?)×相手チーム全員
となっていた。
「プ、プレイボール!」
審判の掛け声で試合が開始。
上条チームの攻撃の時には…
上条チームの攻撃の時には…
「チョロいんだにゃー」
「甘いよ」
「チョロ甘なンだよォ!」
「甘いよ」
「チョロ甘なンだよォ!」
と3人に連続で打たれ、そして…
「…ここだぁ!」
情報屋が満塁ホームランを打ち上げた。
そして上条チームの守備の時には…
そして上条チームの守備の時には…
「おらよっ!」
「君ってさーもしかしてあの子の事が好きなの?」
「え、あ、はい……って、うわっ!」
「君ってさーもしかしてあの子の事が好きなの?」
「え、あ、はい……って、うわっ!」
上条の豪速球と情報屋の【思考漏洩】のコンボに手も足も出なかった。
かくして、上条率いる野球組は異常なテンションのまま、決勝へとコマを進めた。
しかし、この時の彼らは知らない。
上条達のクラスの全チームが決勝に勝ち進んだため、決勝戦が某次世代ゲームのサッカーゲームよろしくのサッカーへとなる事に…
かくして、上条率いる野球組は異常なテンションのまま、決勝へとコマを進めた。
しかし、この時の彼らは知らない。
上条達のクラスの全チームが決勝に勝ち進んだため、決勝戦が某次世代ゲームのサッカーゲームよろしくのサッカーへとなる事に…
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すべての準決勝が終わり、決勝まで勝ち進んだチームすべてが再びグラウンドに集められた。
しかし、そこにいる猛者たちは知らない。
この先にどんな不幸が待ち受けているかを…
しかし、そこにいる猛者たちは知らない。
この先にどんな不幸が待ち受けているかを…