とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part20

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6日目 その1


  上条編

火曜日の朝、風呂場から起き上がりながら、上条は大きなあくびを漏らした。
昨日は考える事が多すぎて、ろくに眠れなかったのだ。
敵の目的、何故幻想殺しが効かない時があったのか、操られていた者達のその後、犯人は本当に食蜂なのか。
そして何より、御坂と特攻服男が楽しそうに話をしていた(ように見えた)時に感じた、
あの妙なイライラ感は何だったのか。
結局何一つ答えが出ないまま、彼は朝を迎えたのである。

とりあえず彼はテレビをつけ、朝食の用意をしつつ今日のスケジュールを頭の中でまとめていく。
修羅場に慣れている彼は、別の作業をしながらでも戦いの準備【シミュレート】をする事ができるようになっていた。

(結局今のとこ一番怪しいってだけで、食蜂って子が犯人って確証は無いんだよな……
 あっ、芸能ニュースやってる。
 いやでも木原加群の例もあるし、科学サイドでありながらグレムリンである可能性も……
 へぇ~、一一一って破局したんだ。相手は確かグラビアの人だったっけか?
 あれ? かつお節どこやったっけな……っとやべ!玉子が焦げそうだ! つーかトイレ行きたくなってきた!!)

わりと雑念だらけだったようだ。これも寝不足のせいかもしれない。
トイレから出ると、番組は朝の占いコーナーを始める所だった。
上条はこのコーナーが嫌いである。
不幸体質の彼は、元々こういったものは信じないのだが、
以前たまたま水瓶座が一位だった時にちょっとだけ試してみたのだ。
その日のラッキーアイテムは新品の靴、ラッキーカラーはダークブラウンだった。
しかしその日は、コンビニのトイレに入っては紙がきれており、バナナの皮で滑っては頭を強打し、
ラーメンを食べようとすればビンの中のコショウが全部入ってしまい、
川に捨てられた猫を助けてみたらただのヌイグルミだったりと、まるでマンガのような散々な一日だったのだ。
その上、新品の靴【ラッキーアイテム】でダークブラウン【ラッキーカラー】色の犬のウ○コを踏んだ事で、
止めを刺され、彼の心はポッキリと折られたのだ。
これは「ミツオ君の呪い」として語り継がれ、以後占いは一切信じないと彼は誓ったのである。

興味の無いコーナーに変わったため、上条はテレビに背を向け、再び朝食の用意を続けようと台所に立つ。
一瞬、ザザザッと未来日記の予知が書き換わったようなノイズがテレビから聞こえた気がしたが、
この部屋にある家電達は普段から上条の不幸に巻き込まれ慣れているため、半分壊れたような物も多い。
なので彼は気にせずきゅうりを切っていく。

『今日の占いカウントダウンのコーナー! だけど。』

アナウンサーの声がいつもと違う気がするが、気のせいだろう。
というより、この声とこの口調は、普段学校で聞きなれている気がするが、気のせいだろう。



『それでは本日の第一位は……水瓶座のあなただけど!
 恋愛運が急上昇! 第7学区の鉄橋で告白すれば、大成功間違いないけど!!』
「恋愛運ねぇ……俺には関係ないな。」
『ちなみにラッキー髪型は「ツンツン頭」、ラッキー口癖は「不幸だー」、
 ラッキー能力は「イマz…能力を打ち消す能力」だけど。』
「…何かピンポイントで俺の事言われてるような……んな訳ないか。」
『んな訳あるけど。』
「……? 今テレビと会話したような……気のせい…だよな?」

いや、気付けよ上条。どんだけ寝ぼけてんだ。

『おい姉よ。目玉焼きは固焼きと半熟どっちが…
 ってあれ? 何だこれ、上条当麻が映ってる。 おーい!上条ー!』
『あっ! バカ、鞠亜! ちょっと邪魔しないでほしいんだけど!?』
『何をー!? 姉の朝食をせっせと作る可愛い妹に対して、邪魔は無いだろ邪魔は!!
 ものすごくプライドに傷がついたぞ!』
『あーはいはい、悪かったけど! え、え~と、それじゃあスタジオにお返ししますけど~。
 あ、それと鞠亜、私は目玉焼きは半j』

もうグッダグダである。
再びテレビにノイズが走り、謎の電波ジャック(といっても上条自身は気付いていなかったが)から元に戻る。
にしても、これだけの事が起こったのに上条は、

「んー…何か今日の占いコーナー違和感があったな……ま、いっか。」

と、対して気にも留めず黙々と味噌汁をかき混ぜている。
ちったぁ気にしろ。

「そういえば、第7学区の鉄橋で告白すると成功するとか言ってたな……
 まぁ、あの占いはあてにならないし、そもそも俺に好きな人なんて―――」

そう呟いた瞬間、上条の脳裏には何故か御坂の顔が過ぎった。

(……今何で美琴の事思い出したんだ…?)

それは単純に、第7学区の鉄橋が御坂との思い出の深い場所だからなのか、
それとも―――?

その後、ボーっと考えている彼は、インデックスの「おなかすいた」の一言で我に返ったが、
味噌汁は沸騰し、玉子焼きは完全に焦げてしまっていたという。



  御坂編

朝食もとり、学校に行くための身支度を整えながら、御坂は大きなあくびを漏らした。
昨日は考える事が多すぎて、ろくに眠れなかったのだ。
どうやってあの食蜂を連れ出すか、彼女は上条に一体何をしたのか。
そして何より、突如上条からされたあの告白。
何度も何度も頭の中で、「俺の恋人になってくれ!! 俺にはお前が必要なんだ!!」
という声がリピートされたまま、彼女は朝を迎えたのである。

一方、ルームメイトの白井もまた寝不足だ。
何しろ愛しのお姉様が一晩中キグルマーを抱き締めながら、ニヤニヤゴロゴロモフモフフニャフニャしていたのだ。
絶対何かあったはずなのだが、何度尋ねても、「え~? 別に何も~♪」という答えが返ってくるだけであった。

(何ですの!? 何があったんですのお姉様!!? あのキグルマーは誰の代役でしたの!?
 ぎゅっとして痛いくらいあなたじゃなきゃダメですのぉぉぉぉ!!?)

好きだと思うほど苦しくなるから出逢いたくなかったのだろう。
世の中知らない方が幸せな事もあるぞ白井。

と、その時御坂のケータイから、

『え? えっと…これ読めばいいのか? 「おーい! 電話鳴ってるぞー!」 …これでいいか?』

と上条の声の着ボイスが鳴る。
ちなみに余談だが、これは「そげ部」でダウンロードしたものだ。
これの他にも、『その幻想をぶち殺す!』や『不幸だー』などの有名なものは勿論、
『「ほら電話だぜ? 早くお前の声を聞かせてくれよ」……これ、誰が得するんだ?』といったものから、
『「お姉ちゃん、電話だにょん」って、何言わせんだよ気色悪い!!』といった変り種まで様々だ。
台詞の前後の余分なところをカットしていないのは、あえてそうしているのか、それとも姫神の編集が雑だからなのか。
以上、余談終わり。

御坂は電話をかけてきた相手の名前を確認し、通話ボタンを押す。

「おはよう初春さん。 どうしたの?こんな朝から。」
『あっ! おはようございます御坂さん! 突然で申し訳ないんですけど、今日の放課後って空いてますか!?』
「う~ん…放課後かぁ……」

先程も説明したように、御坂には食蜂を連れ出すという任務がある。

「どうかな…今日はちょっと忙しくなるかも。でも何で?」
『実はですね…今日佐天さんが好きな人に告白するらしいんですよ!!
 だから御坂さん達も尾行…もとい、見守りに来ませんか!?』
「えっ!? 本当なのそれ!! で?で?相手は誰!?」

予想以上の食いつきっぷりだ。やはり御坂も女の子、友人の恋愛話は楽しいものなのだ。
今まで自分が弄られる側だっただけに尚更だ。



『それが…お相手は私も知らないんですよ。まぁ、どんな方であっても応援するつもりですけどね。』
「……相手が『女の子なら誰でも構わないっていう関西弁の大男』や、『義妹に手を出すアロハシャツの男』でも?」
『あはは! そんな人いませんって!』

いるんだなこれが。
御坂はその人物達を夏休み最後の日に目撃しているし、悲しい事にソイツ等は上条のクラスメイトだったりする。

『じゃあもし来られたら来て下さい。また後で電話しますので。』
「うん、分かったわ。黒子にも伝えておくわね。」
『はい! お願いしまにょわ~~~~~!!!!!』
「!? ど、どうしたの初春さん!?」
『な、な、何でもないです!! それじゃあ失礼します!!』

と、明らかに何でもなくない切られかたをされた。あっちはあっちで大変なのだ。

「…何だったのかしら……」
「お電話、どなたからでしたの?」
「あぁ、初春さんから。 何かね! 佐天さんが今日誰かに告白するんだって!!
 だから皆で茶化しに…もとい、応援しに来ないかってさ!!」
「まぁまぁ、それはまた随分と面白そ…もとい、気になりますわね。」

全員本音がだだ漏れである。
要は尾行して茶化して面白がりたいのだろう。

「いや~、それにしてもどこでも春が来てるのね……まだ冬なのに。」
「(『どこでも』ってどういう意味ですのお姉様!!? 黒子の心は季節通り凍えきっておりますのに!!!)
 ……ん? 佐天さんのお好きな人って確か………」

白井は思い出した。
そう、佐天の好きな人は上条なのである。
白井は内から湧き出そうになる邪悪な笑みを必死に抑え、御坂にある確認を取る。

「お姉様…佐天さんの恋、勿論応援いたしますわよね…?」
「ん…まぁそうね。 初春さんにも言ったけど、相手がよっぽどアレじゃない限りはね。」
「何を仰いますか! 佐天さんがお選びになった方ですわよ!? きっといいお人に決まっていますの!」
「そう、ね。 うん! きっとそうよね!!」

それを聞き、再び白井は笑いを堪える。

(だ…駄目だ まだ笑うな… こらえるんだ…ですの)
「ねぇ黒子……佐天さん、きっとうまくいくわよね!!」

純粋な笑顔でそう言った御坂に対して、白井は心の中でほくそ笑みながらこう思った。

(お姉様【ニア】わたくし【ぼく】の勝ちですの!)

その台詞はどちらかといえば失敗フラグなのだが。
白井は、『佐天さんと類人猿をくっつけて、わたくしはお姉様と…ウヒヒヒヒ!』作戦を再開させたのだった。



  佐天編

いつもより少し早めに寮を出て、通学路を歩きながら、佐天は大きなあくびを……漏らしていなかった。
昨日は考える事が多すぎたはずなのだが、
「明日の事は明日考えればいいか」と思い、彼女はぐっすりと眠ったのだ。
ショチトルのおかげで吹っ切れたからなのだろうか、のんきに鼻唄なんぞを口ずさんでいる。

「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー! (」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!
 Let’s\(・ω・)/にゃー!」

それにしてもこの少女、ノリノリである。朝っぱらから混沌を這いよらせるなよ。
単純に元から性格が楽観的なだけかもしれない。

学校に向かっている途中、佐天は電話中の初春を発見する。
佐天は当たり前のように、初春のスカートを持ち上げた。
ほほう、白と水色の縞パンか。分かっているじゃないか初春さん。

「はい! おねがいしまにょわ~~~~~!!!!!」
『!? ど、どうしたの初春さん!?』
「な、な、何でもないです!! それじゃあ失礼します!!」

電話を切り、初春は後ろにいる人物をキッ!と睨む。

「ダメだよ初春~。『にょわ~~~~~!!!!!』じゃなくて、
 正しいリアクションは『いや~ん、まいっちんぐ!』だよ?」
「古っ【ぶぶっ】!? 一世代は昔でしょ!それが流行ったの!!
 ていうか何度も言ってますが! スカート捲るのやめて下さいよ!!」
「え~? あたしじゃないよ。 今日風が強いからそのせいじゃない?
 今日は……風が騒がしいな…」
「でも少し…この風…泣いています……じゃないですよ!
 そんなので誤魔化されませんし、ポテトも半額じゃないですからね!!」
「人を疑うのはよくないな。ちゃんと証拠が無いと。
 『裁判でモノを言うのは証拠品だけだ! その他のものは全て沈黙すべし!』
 ってヒラヒラした検事が言ってたよ?」
「知らないですよ! いい加減罪を認めて下さいよ! 有罪ですよ有罪!!」
「ふっ…ばれちゃあしょうがねぇ……
 よくぞ見破った! そう! 初春のスカートを捲ったのはこのあたしだったのだぁぁ!!」
「でしょうね!!!」
「これがあたしの能力、腰布捲り【パンツハイテルカー】なのだ!! ちなみにこの技は百八式まであるよ?」
「波動球!? そもそも佐天さんの能力って空力使いですよね!!?」

絶好調だな佐天さん。
いくらなんでも、テンション高すぎやしないだろうか。
まぁ今日告白するにあたって、気合でも入れた結果、おかしな方向に行ってしまったのかもしれない。



三者三様の朝を迎え、それぞれ行動を起こし始める。
だが彼等以外にも、今日という日を動き始めていた。
ある者は上条に協力し、ある者は復習を誓い、ある者は普段通りに行動し、
ある者は高みの見物を決め込み、ある者は全く関係ない事件に巻き込まれていた。

上条、御坂、佐天。
今日という日、彼等にとって、ついに『決着』がつこうとしている。
これはたった一人の『少年』と。たった二人の『少女』。
それだけでは済まない、ある意味最悪の騒乱。






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