―12月、某日、とある駅構内にて。
昔、黒子が言った。
「お姉様は輪の中心に立つことは出来ても、輪に混ざることはできない」
と。
私はこう訂正したい。
「私が『人の群れ』に加わろうとしても、『人の群れ』は『人の輪』に変わってしまう」
と。
「お姉様は輪の中心に立つことは出来ても、輪に混ざることはできない」
と。
私はこう訂正したい。
「私が『人の群れ』に加わろうとしても、『人の群れ』は『人の輪』に変わってしまう」
と。
『人の輪』とは『好奇』と『畏怖』2つの感情の現れだと私は考える。
「少しでも近づいて見てみたい」
「少しでも離れて逃げていたい」
この2つの感情がせめぎ合い、付かず離れずの微妙な距離感を生む。
その微妙な距離感を保った人々が、ずらずらと取り囲み、『人の輪」を形作るのだ。
先ほどの暴れ回る男を取り巻く環境が、その最たる例である。
「少しでも近づいて見てみたい」
「少しでも離れて逃げていたい」
この2つの感情がせめぎ合い、付かず離れずの微妙な距離感を生む。
その微妙な距離感を保った人々が、ずらずらと取り囲み、『人の輪」を形作るのだ。
先ほどの暴れ回る男を取り巻く環境が、その最たる例である。
そして、私は『人の輪』の中心に立っている。
まるで戦場を蹂躙せしめる呂布奉先のように。
まるで周囲に嵐を巻き散らす台風の目のように。
まるで学園都市での私のように。
まるで周囲に嵐を巻き散らす台風の目のように。
まるで学園都市での私のように。
『人の輪』は男が暴れていた時とは打って変わって、水を打ったように静まり返っている。
半径10メートル以内にある『音』という概念が、全て失われてしまったかのようだった。
半径10メートル以内にある『音』という概念が、全て失われてしまったかのようだった。
「おい!そこをどいてくれ!早く!」
遠くの方で飛んでいる怒号が耳につく。
野次馬か、警察か、救急隊か。
別に誰でも、何でも、どうでもよい。
今の私にとっては、歯牙にもかけない存在だ。
遠くの方で飛んでいる怒号が耳につく。
野次馬か、警察か、救急隊か。
別に誰でも、何でも、どうでもよい。
今の私にとっては、歯牙にもかけない存在だ。
とにかく今優先すべきことはさくらを助けること。
その為には、この男にとどめを刺さなければ。
その為には、この男にとどめを刺さなければ。
男は先ほど浴びせた電撃によって、地面に倒れていた。
この状態では、ただ単に倒れているだけなのか、気絶しているのか、死んでいるのか判断できない。
この状態では、ただ単に倒れているだけなのか、気絶しているのか、死んでいるのか判断できない。
だが、うめき声をあげながら、地面を這って逃げようとしているところから察するに、
死んでいることも、気絶していることもないらしい。
「さくらに危害を加えないようにする」
という最優先事項を達成する為には、確実に「動かなく」する他あるまい。
死んでいることも、気絶していることもないらしい。
「さくらに危害を加えないようにする」
という最優先事項を達成する為には、確実に「動かなく」する他あるまい。
頭から電撃の槍を取り出す。
目も眩む程の青白い光を放ち、バチバチとけたたましい轟音を立てている。
『人の輪』はいよいよ身の危険を感じ始めたのか、一斉にあとずさって『輪』の直径を広げた。
目も眩む程の青白い光を放ち、バチバチとけたたましい轟音を立てている。
『人の輪』はいよいよ身の危険を感じ始めたのか、一斉にあとずさって『輪』の直径を広げた。
「ひいっ!や、やめてくれ!たすけてくれよぉ!」
地面を這いつくばっている男は、豚のような鳴き声をあげて命乞いをする。
その姿はあまりにも惨めで滑稽で。
こんな男がさくらの命を狙おうとしていたなど、考えただけではらわたが煮えくり返りそうだ。
地面を這いつくばっている男は、豚のような鳴き声をあげて命乞いをする。
その姿はあまりにも惨めで滑稽で。
こんな男がさくらの命を狙おうとしていたなど、考えただけではらわたが煮えくり返りそうだ。
「アンタ、私の娘に手出そうとして、生きて帰れると思ってんの?」
男を見下しながら、唾を吐き捨てるように言う。
ついでにバチン!と、大げさに電撃の音を立てる。
男は電撃の音に怯えながらも、ふてぶてしく反論してくる。
「あ、あのガキが出てきやがっただけだろ!?オレぁ知ら……ッ……!」
男を見下しながら、唾を吐き捨てるように言う。
ついでにバチン!と、大げさに電撃の音を立てる。
男は電撃の音に怯えながらも、ふてぶてしく反論してくる。
「あ、あのガキが出てきやがっただけだろ!?オレぁ知ら……ッ……!」
言い終わる前に電撃を浴びせる。
10億ボルトには到底満たないが、それでも普通の人間が浴びて平然としていられるわけがない。
10億ボルトには到底満たないが、それでも普通の人間が浴びて平然としていられるわけがない。
電流が流れた独特の臭いが、あたり一面に立ちこめた。
男は再び地面に横たわり、苦しそうにうめき声をあげている。
「反省のチャンスを与えたけど、駄目みたいね」
歩み寄りながら、告げる。
死刑執行を宣告する刑務官のように。
男は再び地面に横たわり、苦しそうにうめき声をあげている。
「反省のチャンスを与えたけど、駄目みたいね」
歩み寄りながら、告げる。
死刑執行を宣告する刑務官のように。
「死んで詫びなさい」
電撃の槍を最大出力で放つ。
電撃の槍が男めがけて襲う。
電撃の槍は男を貫くはずだ。
電撃の槍が男めがけて襲う。
電撃の槍は男を貫くはずだ。
(……これで私もおしまいね。ばいばい。さくら、当麻……)
「……こと!おい、美琴!」
当麻の声が聞こえる。
思わず電撃を違う方向に逸らし、声のする方へ振り向く。
当麻のツンツン頭が人ごみをかき分けてやってくるのが見えた。
その瞬間、何だか無性に涙が溢れそうになった。
「もうやめろ!これ以上やると美琴もこんなクズと同類になっちまう!」
思わず電撃を違う方向に逸らし、声のする方へ振り向く。
当麻のツンツン頭が人ごみをかき分けてやってくるのが見えた。
その瞬間、何だか無性に涙が溢れそうになった。
「もうやめろ!これ以上やると美琴もこんなクズと同類になっちまう!」
そうだ。
こんな惨めな男に、私は何をしようというのか。
足下でひぃひぃ言いながら縮こまっている男を見て、怒りよりも哀れみの感情が勝ってしまった。
先ほどまで殺気立っていた電撃の槍も、気勢がそがれたのか霧消してしまった。
こんな惨めな男に、私は何をしようというのか。
足下でひぃひぃ言いながら縮こまっている男を見て、怒りよりも哀れみの感情が勝ってしまった。
先ほどまで殺気立っていた電撃の槍も、気勢がそがれたのか霧消してしまった。
「遅くなってごめん。でも、美琴もさくらも無事でよかった」
その一言で心の錘から解放された気分になった。
涙が溢れるのを止めることが出来なかった。
さくらもわんわん泣きながら、当麻に飛びついている。
涙が溢れるのを止めることが出来なかった。
さくらもわんわん泣きながら、当麻に飛びついている。
しかし。
私はもう…
涙を拭うと、当麻から一歩離れる。
当麻は急に離れた私を怪訝そうにみつめている。
当麻は急に離れた私を怪訝そうにみつめている。
言いたくない。
言ってしまうと、現実を認めてしまいそうで。
現実を認めると、もう二度とこの日常に戻れなくなってしまいそうで。
しかし、言わなくてもいつかはばれる。
いつかは限界が来るだろう。
言ってしまうと、現実を認めてしまいそうで。
現実を認めると、もう二度とこの日常に戻れなくなってしまいそうで。
しかし、言わなくてもいつかはばれる。
いつかは限界が来るだろう。
私は、当麻に告げる。
「……ごめん。私、学園都市に帰らなくちゃ」
学園都市を出る際に交わした条件。
その内の2つ。
その内の2つ。
『学園都市外で能力を使用しない』
『条件が破られた場合、学園都市へ強制送還する』
『条件が破られた場合、学園都市へ強制送還する』