とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part13

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 琴は鈴のように


 上条当麻と御坂美琴の半同棲半夫婦ライフ4年目。
 上条大学2年生、美琴は高校3年生になっていた。
 季節は孟夏を抜け、木々は紅く染まり、何とも過ごしやすい季節に、高校3年生の美琴は来年に迫った大学受験への勉強に励んでいた。

「ふーふふん、ふーふふん、ふんふんふーん♪」

 …ワケではなく、上条の寮にて夕飯を鼻歌交じりで準備している。
 高校3年のこの時期ともなると、世間では勉強漬けか、もしくは全てを諦めて遊び呆けているかどちらかだが、美琴は特に勉強するわけでもなく、だからと言って遊び呆けているわけでもない(彼氏の部屋にいるので遊んでいると言えば遊んでいるのだが)。
 上条も大学2年という事で次の誕生日が来れば20歳の成人になり、いよいよ2人とも大人の階段を上り始めているというわけだ。
 大学生の上条は魔の一年目を抜け、ややだらけ気味になっているが妻(予定)の美琴はそれを許さない。
 美琴も人の事は言えないんじゃないのかと思うかもしれないが、ここでようやく美琴のこの余裕っぷりを紹介しよう。
 御坂美琴の進路。
 それは進学ではない。
 美琴は高校を卒業と同時に就職する予定なのだ。
 予定、と言っても既に内定が決まっている。
 高校の出席日数も単位も完璧に近い程に取っているので、汗を流しながら頑張る受験生には、まぁ一応は羨ましい限りである。
 上で紹介したように、ほぼ完璧の成績で高校を卒業出来るのだから普通に考えれば就職ではなく進学だが、その事について美琴は、

「大学はいつでも行けるでしょ? うちの母も高卒で就職したしさ」

 と。
 美琴の母、御坂美鈴は30代半ばにして14歳の美琴がいたので、美琴は美鈴が20代前半で産んだ事になる。
 子は親のようになるのか、美琴も美鈴のように大学へは行かず、高卒して就職するに至ったようだ。
 18歳で就職。ここで上条の部屋に完璧に住み込んで通勤(内緒)。賃貸などの家賃も節約し、上条美琴ライフへの資金にする&貯める算段。
 上条が大学を卒業するのは2年後なので20歳。ここで挙式を挙げる予定。正真正銘の上条美琴の誕生予定である。
 そこから1年くらい2人で新婚生活を送った後に、新たな生命誕生へ向け退職。
 さらにそこから子供が中学生になるくらいまで専業主婦として夫と子(何故か分からないけど上条も美琴も産まれるなら娘のような気がすると言っている)に貢献し、そこから大学へ進学、卒業して再就職…というプランらしい。
 このプランは美鈴が正にその通りやったので、やってやれない事はないのだ(美鈴も現在は大学を卒業し、再就職済)。

「学生の頃はラブラブだったみたいよ? うちの父と母は」
「はぁー。あの旅掛さんと美鈴さんがねぇ。まぁ、美琴たんの母さんの美鈴さんなんだから、学生の頃はお前みたいに旅掛さん追い回してたのかもな」
「そ、その辺りは詳しくは話してくれないけど…」
「……でもそうしたら俺と旅掛さんの間に何とも言えない何かが芽生え、力量の差を見せ付けられる気がするな」
「え?」
「だって…旅掛さん、世界飛び回ってるだろー? 俺なんか目指してるのは体育教師だぜ」
「べ、別にいいじゃん。あまり家に帰れないから寂しいってよく言ってるみたいだしさ。その点地元なら家に帰れるのよ?」
「まぁ…、それはそうか」

 美鈴が上条や美琴に対し基本的に何も言わないのも、昔の自分と合わせているからなのかも、と美琴は言う。
 確かに自分達がまだ高校生、中学生の頃に年末年始に同棲させたりプロポーズさせたりとやりたい放題だったけど、そういう過去があったのならそれも何とか頷ける。美琴の祖父、つまりは美鈴の父や旅掛の父がこのプランを何て言ったのかは分からないが、美琴のプランを止めない辺り、美琴の性格からして何と言おうと勝手にやってしまうのだろうけどそれ程猛反対されたって訳でもないのかもしれない。

「当麻の所は?」
「父さんと母さんの時? あー…、どうなんだろうな。言われたかもしれないけど覚えてねぇや」
「あ。そ、そっか。ごめん…」
「いや、いいよ。最近小ネタばっかりやってたから記憶喪失の事さえ忘れてたし」
「何の事?」

 いや、マジで忘れてた。
 そういえばこの原作、バトル物じゃん。血とか程よく出るじゃん。今結構シリアスな展開じゃん。
 最近はほのぼの小ネタしか書いてないからすっかり忘れてたぜ。と言ってもこの僕にバトル物やシリアス物なんか書けませんがね。安心しながら読めるSSに限りますよ、やっぱりね。あ、いや。シリアス物も好きですよ? でもギャグやほのぼのの方が好きって事でね。

「母さんは苦労したみたいだな。父さんが…、その辺りの女の子に手当たり次第言い寄られてたみたいでさ」
「…やっぱ父子ね」
「え?」
「言っておくけど」

 そう言うと美琴は包丁を持った。
 最近は切れ味が多少落ちてきたが、いちゃいちゃ年末年始時に詩菜直伝の研磨術で切れ味は最大の真っ白だ。これなら弾かれる事はなくざっくりいける。

「浮気は」

 振り落す。
 その先はまな板だったが、その上で寝そべっていたお魚さんの頭と胴体が切断された。
 流石は切れ味白。
 一撃で部位破壊である。
 スキル『破壊王』も付いているかもしれない。

「だから」

 そして美琴は「えへ」と笑った。
 怖ぇー。笑顔が逆に怖ぇー。
 美琴のキャラがツンデレ→デレデレ→ヤンデレとか冗談にも程があった。
 上条はその笑顔にかけて、もう一度確固たる意志も持ち浮気は一生しないと誓ったらしい。
 だってあれだもんね。
 腕とかならくっ付くけど、流石に頭はまずいもんね。
 流石の冥土返しさんも頭悩ませるよね。
 つか自分が嫌だ。
 腕でさえ驚かれるだろうが、頭とかだと「俺、首から上吹っ飛んだ事あるんだぜ」とか酒の場でさえ言えないジョークだ。



「はい、出来たわよー」

 上条がガタガタと震えていると、美琴がおぼんにご飯を乗せて運んできた。
 半同棲4年目になるというのに美琴の甘えは納まる事を知らず、相変わらず上条の隣に座り「あーん」やら「おいし?」やらやってくる。
 これはとても嬉しいのだが、さっきの事もあったので正直怖かった。
 でも言わない。機嫌を損ねると駄目だ。それはここ4年で学んだ事である。
 しかしこのままだと尻に敷かれるのがオチだ! 何とか夫(予定)としての威厳を保たなければならない!
 よーし言うぞ。言ってやる。俺ぁ男だ。

「いいか美琴。よく聞くんだ」
「なによ」
「上条さんは行く行くは一家の大黒柱になりたい」
「うん」
「つまりはあれだ。上条さんとしては―――」
「あーん」
「あー…むっ。んむんむ」
「おいし?」
「うん」

 駄目でした。
 くそぉ。この笑顔から繰り出されるあーんは反則だぜ。
 旅掛さんも美鈴さんにこんな感じにやられて涙を呑んだのだろう。今度話してみよう。20歳になるし、酒でも飲みながら。凄い意気投合しそうだ。
 そしてその上自分の母である詩菜の隠れヤンデレも垣間見さしてるもんだからこっちとしては手の打ちようがねぇ。
 もう完璧に上条家の頂点は美琴だ。分かっちまった。尻に敷かれるの分かっちまった。


「そういえばさ」
「ん?」

 上条は美琴のご飯を食べながらふと思った。

「最近御坂妹見てないんだけど、何か知ってる?」
「へ? あ、あぁ…んっと」

 むっ。
 この反応。何か知ってるな。

「あ、あーん」
「んな事で誤魔化されるかぁー!」

 上条必殺ちゃぶ台返し。
 初めての出来事である。
 でも折角美琴が作ってくれた料理が勿体ないので、心の中でひっそりとやる「マインドちゃぶ台返し」だが。

「今は言えないけど、アンタが大学卒業したら教えてあげる」
「何だよ。また随分先だな」
「そういう約束だから。あの子と」
「御坂妹?」
「うん」
「ふぅん」

 つまりは自分が会ってないだけで、美琴と御坂妹は会っているという事か。
 そんな事を思っていると、美琴は「この前会った時は『ミサカは超元気です』って言ってたわよ」と言った。
 『あとあの方にもよろしくとお伝えください』とも。
 元気ならいっか。
 しかし、いきなりこんな話始めるとか伏線にも程があるだろ。
 そう! ぶっちゃけよう!
 つまりは次でこの物語は終わるのだ。
 いや、2人からして言えば始まるのだが、客観的に見れるのは次で最後だろう。
 さて。
 物語は、いきなりクライマックスのラストスパートである。


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