アイツが他の女といるとき、私には悲しみが沸いてこなかった。
どちらかというと、
どちらかというと、
『呆れ』
そんな感情が私の心を支配した。
あぁそうか。
麻琴に興味が無かったのも、他の女がいて、ややこしくするつもりがなかったからか。
まぁもともと『フラグ体質』みたいなもんで、女にはモテてたからね。
いつかは浮気するかもと思ってたわ。でもまさか結婚して4年で浮気するなんて思ってなかったけど。
麻琴に興味が無かったのも、他の女がいて、ややこしくするつもりがなかったからか。
まぁもともと『フラグ体質』みたいなもんで、女にはモテてたからね。
いつかは浮気するかもと思ってたわ。でもまさか結婚して4年で浮気するなんて思ってなかったけど。
「ママー?
どうしたのー?」
どうしたのー?」
「ううん、何でもないわよ?
それよりお腹空いたからなんか食べに行こっか。」
それよりお腹空いたからなんか食べに行こっか。」
麻琴に優しくそう言ったが、それとは裏腹に、中の心は相当冷え切っていた。
すぐに去ろうと歩き始めたとき、私はアイツをもう一度だけ見た。
すぐに去ろうと歩き始めたとき、私はアイツをもう一度だけ見た。
アイツは女にあげるプレゼントを決めたのか満足したような穏やかな表情をしていた。
お昼ご飯を食べている時、私はある決断をした。
長い人生の中でも、そうはしない決断を。
長い人生の中でも、そうはしない決断を。
「麻琴?
ママ、これからちょっとつまんないとこ行くけど、我慢してくれる?」
ママ、これからちょっとつまんないとこ行くけど、我慢してくれる?」
私は麻琴に優しく尋ねた。
麻琴は、
麻琴は、
「うん、がまんするー。」
といつも通りの可愛らしい返事をする。
その後、歩いていると事故にあいかけた。
車が私達にぶつかりかけたのだ。
間一髪で私は麻琴を掴んで車を避けたものの下手すれば大惨事だった。
車が私達にぶつかりかけたのだ。
間一髪で私は麻琴を掴んで車を避けたものの下手すれば大惨事だった。
麻琴は私の子であると同時に、アイツの子。
少し不幸体質を受け継いでしまったようだ。
少し不幸体質を受け継いでしまったようだ。
帰宅して麻琴を昨日寝た布団の中で眠らす。
そしてある書類を書いて、彼の帰りを待つ。
彼にはもう何も言うことはない。とにかく要件だけを伝える。
そう心で思ってた。
そしてある書類を書いて、彼の帰りを待つ。
彼にはもう何も言うことはない。とにかく要件だけを伝える。
そう心で思ってた。
「ただいま~」
今朝のことなど忘れたかのような上機嫌な声で彼が帰って来た。
そりゃそうか。
自分の好きな女に会って仲良くしたんだもんね。
そりゃそうか。
自分の好きな女に会って仲良くしたんだもんね。
「ただいま~美琴、ちょっと言いたーーー」
「私も言いたいことあんのよ。」
彼の言いたいことなんてあんまり大したことじゃないだろう。
それよりも私はもっと重要なことを言わなければならない。
それよりも私はもっと重要なことを言わなければならない。
「離婚、してちょうだい。」
一枚の離婚届をテーブルの上に置いて言った。
勿論、私について書くことは終わっている。
勿論、私について書くことは終わっている。
後は彼について書くことを彼が書けば終わりだ。
驚いた表情をしている彼に、冷たく言う。
「理由くらい察しなさいよ。
わからないなんて言わせないわよ?
何か言いたいことがあるなら言ってみれば?」
わからないなんて言わせないわよ?
何か言いたいことがあるなら言ってみれば?」
「……………………………………。」
長い間沈黙が場を支配する。
やがて彼はなにやら悟ったような顔をして、黙ってテーブルの上ある離婚届にいろいろ書き始めた。
長い間沈黙が場を支配する。
やがて彼はなにやら悟ったような顔をして、黙ってテーブルの上ある離婚届にいろいろ書き始めた。
書き終わってから彼がポツリとつぶやいた。
「…この部屋は俺が出て行くよ。」
私が答えた。
「好きにすれば?
ちなみに私達も別のとこ移ろうと思ってるからこの部屋は空き部屋になるわね。
当たり前じゃない。
何で私達がこんな未練あるように生活しなきゃならない訳?」
ちなみに私達も別のとこ移ろうと思ってるからこの部屋は空き部屋になるわね。
当たり前じゃない。
何で私達がこんな未練あるように生活しなきゃならない訳?」
「ん。…そうか。」
彼はそれから自分の荷物を少しまとめて、玄関に向かった。
去り際、私は彼に言った。
「今日さ、散歩してたら麻琴が車に轢かれかけたのよ。
普通じゃ絶対に轢かれない場所にいたのにね。
やっぱこれも麻琴に『幻想殺し』の効力が少し引き継がれてるからだと思うのよ。」
普通じゃ絶対に轢かれない場所にいたのにね。
やっぱこれも麻琴に『幻想殺し』の効力が少し引き継がれてるからだと思うのよ。」
「娘を不幸にするなんて、まるで疫病神ね。」
「………済まなかった。」
そんな会話とも呼べないような会話をして、彼はマンションから出て行った。
あの男が出て行って三日経った。
振り返ってみれば、それ程生活に変化は無かった。
あの男は仕事でほとんど家にいないし、私は一日中麻琴にベッタリとくっついてたから、当然のことだった。
あの男は仕事でほとんど家にいないし、私は一日中麻琴にベッタリとくっついてたから、当然のことだった。
未だに離婚届は提出していない。
まぁ別に未練がある訳じゃないが、何故か提出する気が起こらないのだ。
とにかくもう別居しているのだから、事実上離婚しているようなものだ。
離婚届は、荷物をまとめて部屋を出て行く準備が出来てからだしに行けばいい。
とにかくもう別居しているのだから、事実上離婚しているようなものだ。
離婚届は、荷物をまとめて部屋を出て行く準備が出来てからだしに行けばいい。
荷物まとめもはかどっていないのだが。
まぁ別に深い意味は無いだろう。
ここ最近でいろいろあったから体が少し疲れているんだろう。
ここ最近でいろいろあったから体が少し疲れているんだろう。
そういえば今日はあの男と私の結婚記念日だ。
そんな日の近くで別の女と会うってイカれた神経してるわね。
もう関係ないけど。
そんな日の近くで別の女と会うってイカれた神経してるわね。
もう関係ないけど。
時刻を見ると11:30。
そろそろお昼ご飯を作ろうかな、と思っていた時、
そろそろお昼ご飯を作ろうかな、と思っていた時、
ピーンポーン
と玄関のアラームが鳴った。
急いで玄関に行って扉を開けると、そこには休日あの男とアクセサリーショップにいた二重まぶたが特徴的な女と、彼の友人だと紹介されたことのある、友人の舞夏の義理の兄、土御門元春さんがいた。
元春さんが険しい表情をしていたのを見て警戒しながら
元春さんが険しい表情をしていたのを見て警戒しながら
「何か用ですか?
上条当麻のことなら、別居中なので何も知りませんが。」
上条当麻のことなら、別居中なので何も知りませんが。」
と言った。
やや生意気な言い方かもしれないが別に仲良くする必要もない。
なんせ、あの男とはもう縁を切ったのだから。
しかし、元春さんが聞いたのはあの男に関してじゃなかった。
やや生意気な言い方かもしれないが別に仲良くする必要もない。
なんせ、あの男とはもう縁を切ったのだから。
しかし、元春さんが聞いたのはあの男に関してじゃなかった。
「超電磁砲、お前に話がある。
時間は取れるか?」
時間は取れるか?」
私?
一体何のつもりだろう?
私はもうこの人達が関わっているものとは関係ない筈なのに。
まぁ時間を取れるか聞いてくるところから察すると本当にただの話のようだけど。
一体何のつもりだろう?
私はもうこの人達が関わっているものとは関係ない筈なのに。
まぁ時間を取れるか聞いてくるところから察すると本当にただの話のようだけど。
麻琴は4:00に幼稚園に迎えに行くからまだまだ時間がある。
「はい、取れます。」
そう言って、私は二人に付いて行った。
二人はタクシーで私を高級レストランへ連れて行った。
そこに着くとすぐに席に案内され、料理が運ばれて来た。
元春さんとあの女は食べるように進め、自分達も食べ始めた。
元春さんとあの女は食べるように進め、自分達も食べ始めた。
それにしてもすごいレストランだ。
出てくる料理はお嬢様中学校出身の私でも食べたことの無いくらいの絶品さだ。
周りにいる客も、どこぞのVIPらしき風格がある。
一体私にどんな話をしようというの?そんな警戒感が少し沸いてきた。
出てくる料理はお嬢様中学校出身の私でも食べたことの無いくらいの絶品さだ。
周りにいる客も、どこぞのVIPらしき風格がある。
一体私にどんな話をしようというの?そんな警戒感が少し沸いてきた。
食べ終わると元春さんが口を開いた。
「超電磁砲、いや上条美琴と呼んだほうがいいか?」
「超電磁砲、いや上条美琴と呼んだほうがいいか?」
「どう呼んでも構いませんが『上条』は止めてください。
あの男とはもう縁を切ったつもりですから。」
あの男とはもう縁を切ったつもりですから。」
すると、女が何故か悲しそうな顔をした。
何で?
何で?
「そうか。
では御坂美琴、これからお前に話すことは本当にあったことだ。
よく聞け。」
では御坂美琴、これからお前に話すことは本当にあったことだ。
よく聞け。」
「ええ、わかりました。」
一体何の話をするのか、ようやくわかる。
「『幻想殺し』、上条当麻が日本時間17:30頃、ロンドンにて殺害された。」
…………………………………………………は?
あの男が?
彼が?
アイツが?
当麻が?
…………………………………当麻が死んだ?