12月23日
―――――――――
佐天「ひゅふっ!?」///
美琴「なっ!?な!?何を言っちゃってるのアンタ!!」カァッ
上条「また呼び方戻ってるぞ。美琴」
美琴「う、あ、と、当麻」///
佐天「ど、ど、ど、どうしよう初春。ラブラブカップルが目の前にいる!!」
予想外の展開に慌てている少女を見て、頭に花飾りをつけた少女はすばやくその腕を掴む。
初春「じゃ、じゃあ御坂さん!私たちこれで失礼しますっ!お邪魔しました!!」
美琴「え?あ、うん」
佐天「え?初春?なに言って…てか危ないから引っ張らないで!!ねえ、うーいーはーるー…」ジタバタ
美琴「行っちゃった」(ちゃんと紹介したかったんだけどな)
上条「いやーテンション高かったなー」
美琴「あはは。佐天さん、スイッチ入っちゃうと止まらないから」
上条「まあでも、あの子のおかげで、また名前で呼んでもらえたからよしとするか」
美琴「あ、そういえば…さ」///
上条「ん?」
美琴「さっき『相思相愛』って…」///
上条「ま、まーな。ま、間違ってないだろ?」///
美琴「…うん」///
なんとも形容し難い空気が二人を包み込む。それはそれで心地いいのだが、先に雰囲気に負けたのは少年の方だった。
上条「…あー、指輪ってあっちの方か?」
美琴「うん。いこっか」
上条「ああ」
――ショーケースを覗きながらコイツ―当麻―と手を繋いで歩く。たったそれだけのことなのに、凄く楽しくて、嬉しい。
昨日までのわたしだったら、手を繋いだまま佐天さんや初春さんに声をかけようなんて夢にも思わなかっただろう。
でも、今はコイツと一緒にいるのを隠そうとは思わない。
上条「んー。結構ゴツイのが多いな」
美琴「基本的にファッションリングだからね」
上条「俺は普段着けていても邪魔にならないようなシンプルなのがいいと思っているんですけど」
美琴「え?ずっと着けているつもりなの?」
上条「ペアリングってそういうものじゃないの?」
美琴「ゴメン、常盤台ってそういうの厳しいから、普段着けるのは難しいと思う」
上条「…なあ、その、正当な理由があれば着けることは可能か?」
美琴「指輪を着ける正当な理由なんて…」
どくん。と胸が高鳴った。
上条「…婚約指輪とか」///
美琴「ア、アンタ、なに言ってるの!?」カァッ
上条「さっき言っただろ?独占欲強いって」
美琴「…まあ、正式なものならいいかもしれないけど、中学生でそんなものしてる子いないわよ」///
上条「そうか。…じゃあ、ペアネックレスとかにする?ネックレスなら隠れるだろ?」
美琴「…やだ」
上条「へ?」
美琴「ペアなら指輪がいい」
上条「でも、いつも着けてられないんだろ?」
美琴「…当麻とお揃いなら指輪がいい」
言いながら、わたしも彼に負けず劣らず独占欲が強いことを自覚した。
同時に携帯を取り出して、ある番号に電話をかける。
美琴「わたしも独占欲強いからね。…覚悟して」
上条「へ?」
コール音が途切れ、相手が電話に出る。わたしは大きく息を吸って話し始めた。
美琴「あ、ママ。ちょっといい?」
上条(なぜ美鈴さん!?)
美鈴『いきなりなーに?美琴ちゃん。ママ、昨日飲みすぎちゃって眠いんだけど』フアー
美琴「典型的な馬鹿大学生ね。…まあいいわ。あのさ、大覇星祭のときに会った人、覚えてる?」
美鈴『美琴ちゃんがいじめる。っていうか、大覇星祭のときに会った人って白い修道服の女の子かなー?』
美琴「違う、男の方」
美鈴『あー、詩菜さんの旦那様』
美琴「わざとか?わざとね!わざとなのねこのヤロー!!」
美鈴『うふふ。美琴ちゃんってからかいがいがあるから。で、上条当麻君がどうしたの?』
少女は少年に視線を向ける。
――さあ、覚悟しなさい。
美琴「彼に、プロポーズされた」
上条「んなっ!?」///
美鈴『え?美琴ちゃん?今なんて?』
美琴「だーかーらー、プロポーズされたの。それで、ママの了解を貰おうと思って」
美鈴『りょ、了解って?どういうことなの?』
美琴「婚約したい。――当麻と」///
美鈴『うっわー。ママの予想をはるかに超えていたわー。やるわね、美琴ちゃん。ママ、すっかり目が覚めちゃった♪』
美琴「茶化さないで!真剣なんだから」
美鈴『…上条君はそこにいるの?』
美琴「うん」
美鈴『代わりなさい』
美琴「…代わってって」ケイタイ サシダス
上条「わかった。…代わりました上条です」
美鈴『いやーん!!上条君!美琴ちゃんになにしたの?ナニしちゃったの?奪っちゃったの!?』
上条「まだ何もしてねええええ!!いきなりなんなんですか!そのノリは!?」
美琴「!」ビクッ
美鈴『やだなあ、婚約したいなんて美琴ちゃんが言ってるから、全部済ませちゃったのかなーって。で、で、…避妊はちゃんとしたの?』
上条「まだ何もしてませんってば!!」
美鈴『それなのに婚約って、気が早すぎない?もし相性悪かったらどうするのよ』
上条「あ、いや、その。なんて言いましょうか、その、そういうのって美琴さんとしか考えられないので、約束手形が欲しいといいますかなんといいましょうか…」
美琴(わたしとしか考えられないってなに言ってるのよ)///
美鈴『うーん。弱いわね。一時の気の迷いじゃないの』
上条「それはないです。俺は、…美琴を俺のすべてをかけて守りたい。…決して一時の気の迷いなんかではないです」
美琴「…」///
美鈴『美琴ちゃんを、愛してる?』
上条「…はい」///
美鈴『じゃあ、美琴ちゃんにわかるように言葉にして』
上条「…上条当麻は、御坂美琴を、愛しています」///
美琴「ふぇっ!!」(あ、あ、あ、あい、あい、あい、あい…)///
美鈴『…また清清しいまでに言い切ったわね。上条君。美鈴さんの負けだわ。…美琴ちゃんをよろしく。代わってくれる?』
上条「…」ケイタイ サシダス
美琴「あい、あい、あい…」ニヘラー
上条「美琴!電話」///
美琴「ひゃいっ!?も、もしもし」///
美鈴『美琴ちゃんはどうなの?上条君を、愛してる?』
美琴「…うん」///
美鈴『じゃあ、上条君にわかるように言ってみなさい』
美琴「御坂美琴は、上条当麻を、世界中の誰よりも、一番愛してる!!」///
上条「!!」///
美鈴『見事に言い切ったわねー。美琴ちゃん。いいわ。認めてあげる』
美琴「ありがとう、ママ」
美鈴『いきなり婚約なんて言って、いかにもどこかの店内から電話してくるってことは、指輪でも買ってもらうのかしら?若いっていいわねー』
美琴「へ?なんでわかったの?」
美鈴『落ち着いた音楽と喧騒が聞こえてくるし、学校で指輪をつけていても咎められない理由が欲しいんでしょ?』
美琴「う、うん」///
美鈴『じゃ、学校には連絡しておくわ。美鈴さん公認の許婚ができたってね』
美琴「…」///
美鈴『とりあえず、結婚できる歳まではエッチしちゃ駄目よー』
美琴「なっ!なに言ってるのよ!!」///
美鈴『まあ、若いふたりは耐えるのは難しいかもしれないわね。じゃあ避妊だけはしっかりすること!ゴムよりも学園都市製経口避妊薬の方が確実よ』
美琴「アンタ中学生の娘になに吹き込んどるんじゃあああ!!」///
美鈴『あはは。じゃあ、近いうちにみんなで会いましょうねー。バイバーイ』
通話を終えて携帯電話をポケットに入れる。それから辺りを見回して胸を撫で下ろした。
美琴「ママが電話で『人の喧騒が聞こえる』とか言うから焦っちゃったわ。悪目立ちしてなかったみたいね」
上条「あんまり人いなくて助かったな」
少女はもう一度辺りを見回してから、頭を少年の肩に預ける。
上条「み、美琴?」///
美琴「嬉しかった。ちゃんとママに言ってくれて」
上条「俺も、嬉しかった」
美琴「…」ギュッ
上条「…」ギュッ
美琴(なんか、幸せ…)
上条「…なあ、あれなんて、どうだ?」
そう言って少年はシンプルなメタルリングを指差した。光の加減でうっすらと青みがかって見えるプレーンリング。
上条「あ、すみません。そこのペアリング、見せてもらってもいいですか?」
店員を呼び、ショーケース内の指輪を出してもらい、それぞれ左手の薬指に嵌めてみる。
上条「あ…」
美琴「うそ…」
その指輪は、まるであつらえたかのように、お互いの指にぴったりと納まった。
上条「ヤバイ、なんか運命的なものを感じる」
美琴「うん、凄い馴染んでる感じ」
上条「じゃあ、これください。あ、このまま着けてってもいいですか?」
店員「ええ、構いませんよ。タグの紐を切らせていただきますね」ニコッ
上条「ありがとうございます」
店員「いえいえ。彼女さんも…はい、これでいいですよ」ニコッ
美琴「あ、ありがとうございます」
店員「いえいえ。はい、じゃあ確かに頂きます。ありがとうございました」
手を繋いで店を出る。少女は自分の左手を広げて指輪を眺めながら微笑を浮かべていた。
美琴「許婚、か」ニヘラー
上条「俺も親に電話しないといけないなあ」
美琴「…今、かけちゃう?」
上条「…そうだな。じゃ、階段のところまで行こうか」
美琴「うん」
――引っ張ってくれる手に、さっきまでは無かった硬いものの感触があって、それが心地良かった。
階段のベンチに並んで腰を下ろすと、彼が携帯電話の通話ボタンを押した。
上条「もしもし」
詩菜『あら、当麻さん。珍しいわね?どうしたの?』
上条「いや、えーっと、なんといいましょうか…。母上様、驚かずに聞いていただきたいのですけれども」
詩菜『当麻さん…まさか女の子を孕ませてしまったとかじゃないでしょうね?』
上条「…アンタ自分の息子をどんな目で見てるんだコラ!」
詩菜『だって当麻さん、刀夜さんと同じでいつの間にか女の子と一緒にいることが多いんじゃないのかしら?うふふ』
上条「最後の笑い怖いよ!それにそんなことないですから!」
詩菜『自覚しないと、そのうち酷い目に会うわよ』
上条「だーかーらー、何でそういう話になってるんですか!?じゃなくって、俺は真面目な話があるんだ」
詩菜『なにかしら?』
上条「大覇星祭で会った人、覚えてる?」
詩菜『美鈴さん?』
上条「の娘さん。御坂美琴」
詩菜『ええ、覚えていますよ。彼女が何か?』
上条「事後承諾で悪いけど、…御坂美琴と婚約しました。美鈴さんには了解貰ってます」///
詩菜『え?当麻さん、もう一回言ってもらえるかしら?』
上条「御坂美鈴さんの了解を頂いて、御坂美琴と婚約しました」///
詩菜『…当麻さん。中学生を手篭めにしたの?』
上条「してねえよ!まだ指一本触れてねえよ!」///
美琴「ふぇ!?」///
詩菜『え?それで婚約って気が早くない?』
上条「なんで女親って揃いも揃って同じこと言うんだ。上条当麻は御坂美琴を愛してる!それが理由だ文句があるか!」
美琴(ま、また言ってくれた!)///
詩菜『あらあら、若いっていいわねー。ところで、美琴さんは傍にいるの?』
上条「ああ」
詩菜『代わって』
上条「…代わってくれって」ケイタイ サシダス
美琴「か、代わりました。御坂美琴です」///
詩菜『当麻さんとしちゃったの?』
美琴「ぶふぉっ!?いきなりなに言ってるのアンタ!!」///
詩菜『お母さま公認で当麻さんと婚約っていうから、てっきりそういうことかなと思ったのだけど』
美琴「そういうことしなくっても、お互い愛してるんだから約束してもいいじゃないですか!」///
上条「!!」///
詩菜『ねえ、美琴さん。当麻さんはね、疫病神、不幸の使者と呼ばれていた子ですよ?…本当にそんな子と一緒にいたいのかしら?』
美琴「そんなの!!そんなの関係ない!!アイツは、当麻はわたしにとって、かけがえの無い人だもの!!いくら親でもそんな風に当麻のこと言うのは許せない!」
上条(美琴…)///
詩菜『…ありがとう』
美琴「え?」
詩菜『当麻さんのために怒ってくれて。あの子のことお願いします』
美琴「あ、いえ、こちらこそお願いします」ペコリ
詩菜『あ、美琴さん。避妊だけはしっかりしなさいね。スキンよりも経口避妊薬の方が確実よ』
美琴「お、女親ってそれしか言えないのかあああ!!」///
詩菜『うふふ。美琴さんだって、まだ母親にはなりたくないでしょう?』
美琴「そ、それはそうですけど…でも、当麻との…なら…」ゴニョゴニョ
詩菜『まあまあ。当麻さんも幸せ者ね。こんなに可愛い彼女が傍にいてくれて』
美琴「…」///
詩菜『当麻さんと代わってくれる?』
美琴「あ、はい…」ケイタイ サシダス
上条「…変なこと吹き込まなかっただろうな?」
詩菜『当麻さんの悪口言ったら、怒ってくれたわよ。それだけで当麻さんの嫁として合格です』
上条「なっ!?」///
詩菜『当麻さん。一度守ると決めたのなら、最後まで貫きなさい』
上条「…ああ。約束する」
詩菜『じゃあ、近いうちに美琴さんを連れて家にいらっしゃい。刀夜さんと一緒に嫁いじりして楽しむから』
上条「そんな危険なところには連れて行かない!」
詩菜『あらあら。可愛い嫁を連れてこないなんて親不孝者ね。当麻さん』
上条「だー!もー!!以上!連絡終わり!」
通話を終えて、少女を見る。少女が小さく微笑んでくれるだけで、少年にも自然と笑みがこぼれた。
美琴「どうしたの?」
上条「散々からかわれた。…けど認めてくれた」
美琴「そ、そっか」///
上条「ああ。美琴は上条家の嫁ってお墨付きをいただきました」
美琴「よっ、よ、よ、よ、よ、よ、よめっ!?」カァッ
上条「ま、まあアレ、ほら、許婚だからな!」///
美琴「そ、そ、そ、そうよね!!許婚だもんね!」///
上条「ははははは」///
美琴「うふふふふ」///
―――
手を繋いでバス停へと向かう途中、少年の携帯電話が鳴った。右手で携帯電話を取り出して画面を見る。
上条「小萌先生か。なんだろ?ちょっとゴメン」
美琴「うん」
上条「もしもし…」
小萌『上条ちゃんはお馬鹿さんですから、シスターちゃんは今日、先生の家にお泊りなのですよー』
上条「インデックスを預かってくださるのは助かりますが、なんなんでしょうか?その棘のある一言目は!?」
小萌『明日のクリスマスパーティーは女の子限定ですから、上条ちゃんは来ちゃ駄目なのですよー』
上条「スルー!?そして上条さんにご馳走を食べる権利が無くなった!?」
小萌『上条ちゃん?大事な人がいるのに、クリスマスに先生に世話になろうなんて思っちゃいけないのですよー?』
上条「大事な人?え?え?」
小萌『御坂美琴さん、でしたか?上条ちゃんも隅に置けませんねー』
上条「う、え…」(な、なんで知ってるんだ!?)
小萌『今もデート中なのでしょう?』
上条「ま、まあ…」///
小萌『ふふふ。壁に耳あり障子に目ありですよ。上条ちゃんと常盤台の子がデートしているって聞いたものですから』
上条「まいったな…」
小萌『ひとつだけ聞かせてください。上条ちゃんは、御坂さんを選んだのですね?』
上条「…いまいちなにを聞かれているのかがわからないのですが?」
小萌『上条ちゃんの周りにいる女の子の中で、一番大事な人は御坂さんということでいいのですよねー?』
上条「あ、えーっと…。はい」///
小萌『じゃあクリスマスは御坂さんと仲良くするのですよー。あ、でも、学生としての節度は守るのですよー』
上条「なっ!?」///
小萌『ではでは、良いクリスマスをー』
上条「ちょ、ちょっと!?小萌先生!?」
一方的に通話を切られ、少年は困惑して携帯を見る。
美琴「どうしたの?」
上条「ん?小萌先生がインデックスを今日泊めるってさ。それで、明日のパーティーは女性のみでやるから俺は来るなって。それで、クリスマスは美琴と過ごせってさ」
美琴「ア、アンタとわたしのこと、何でアンタの先生が知ってるのよ!?」///
上条「あー、青ピから連絡行ったか、誰かに見られたのかもしれない」ウーム
美琴「何でアンタそんなに冷静なのよ?」
上条「ん?だって俺たち許婚だろ?親公認だし、別に隠す必要も無いかなって」
美琴「~っ!!」カァッ
上条「自分も独占欲強いとか言っておいて、何で照れてるんでしょうね美琴さんは」
美琴「うぅ。それはそうだけども…」(やっぱり恥ずかしい)///
上条「ま、ゆっくり慣れてけばいいよな」ニコッ
美琴「…うん」
上条「さて、と。じゃあ今日の夕飯と明日の食事はどうするかなあ」
美琴「あ、そっか。あの子いないんだっけ」
上条「そうなんですよ。ま、今日は適当に作るとして、明日は…、明日もデートしようか」カァッ
美琴「デ、デート!?」///
上条「今日みたいにショッピングでもいいし、どこか遊びに行くのでもいいし」
美琴「う、うん。…あ、あのさ?」
上条「ん?どこか行きたいところとかあるか?」
美琴「そうじゃなくって、その、さ。…今日の夕飯とか、明日のご飯とか、作ってあげようか?」
上条「…ホントに?」
美琴「うん」
上条「うわ。すっげえ嬉しい」
美琴「ふふ。じゃあ、スーパー寄っていこう。何か食べたいものとかある?」
上条「美琴センセーにお任せします」
美琴「じゃ、行こっか」ニコッ
少年に向かって微笑むと少女は手を引いて歩き出す。その顔はとても楽しそうであった。
―――
寮監「御坂」
美琴「は、はい。なんでしょうか?」
スーパーで買い物をして、少年の家でカレーなどを作ってから門限ぎりぎりの時間に寮へ戻ると、寮監から声をかけられた。
寮監「ちょっと私の部屋へ来てくれ」
美琴「わかりました」(なんだろう?)
部屋に入り、促されるままダイニングテーブルの椅子に座る。部屋の主はティーカップとティーポットをテーブルの上に置き、少女の対面に座る。
寮監「飲むか?」
美琴「いただきます」
寮監「砂糖はいるか?」
美琴「いえ」
寮監「そうか」
寮監は優雅に紅茶を一口飲むと、音を立てずにソーサーにカップを置き、まっすぐに少女を見た。
寮監「まずは、おめでとう。と、言っておこう」
美琴「は?」
寮監「…婚約だ」
美琴「…は、はい」///
寮監「お前を呼んだのはその件だ。常盤台は淑女を教育するための学校でもあるから、親公認で許婚ができることもまあ珍しくは無い。だが、正直に言うと、私にはお前に許婚というのは想定外だった」
美琴「…」
寮監「話が逸れたな。とりあえず、許婚がいる場合、門限や外泊に関しての規則が緩和されることになる。もっとも、届出は必要になるが。…まあ、お前の場合は研究協力なども多いから今までとあまり変わらないかもしれないが」
美琴「…」
寮監「あとは、その、親公認である場合は、薬剤が処方される。なるべくはやく薬局へ行って処方してもらってこい。これが処方箋だ」ペラ
美琴「はい。わかりました」(薬?)
処方箋に目を通した少女の顔が一瞬で紅に染まる。
美琴(こ、これ、これ、これって~~~!!)///
薬剤の備考欄には『常盤台中学校 特措×-○における対象生徒 健康管理のための処方 エストロゲン調整剤 PI:0.1 要継続摂取』と記されていた。
授業で習っているため、エストロゲン調整剤の意味を少女は知っていた。エストロゲン調整剤、簡単に言えば経口避妊薬である。
寮監「まだ早いとは思うが、なにぶん相手もあることだし、学校としては不測の事態を避けるためにもあらかじめ処方することにしている」
美琴「あ、あはは~。わたしにはまだ早いと思いますけど」///
寮監「服用は月経が終わってから、準備期間は一週間だ。それまで、性行為は慎むように」
美琴「せっ、せっ、せっ!!」アワアワ
寮監「お前がまだ早いと思っているのはわかるが、男というものは征服欲が強い。まして許婚ともなれば家単位で法律よりも慣習を優先させる傾向がある」
美琴「…」(ア、ア、ア、アイツと…)///
寮監「御坂。私はな、寮監という立場上、そういった生徒を見てきた。だから、お前が傷つかないよう服薬をすることを勧めさせてもらう。傷つくのはいつも女の方だからな」
美琴「…」
寮監「私からは、常盤台の学生として、節度ある行動を心がけるよう行動してくれとしか言えない」
美琴「…はい」
寮監「次は装飾品についてだが、婚約指輪や慣習で引き継がれる貴金属は校則で禁止されているアクセサリー類からは除外される」
美琴「…」///
婚約指輪という言葉に反応して、そっと左手に触れ、少女は頬を染める。その様子を見て、寮監は小さく首を傾げた。
寮監「…御坂は、許婚に対して恋愛感情を持っているのか?」
美琴「ふぇ!?」///
寮監「いや、すまない。家の都合で婚約するものが多いから、お前みたいに嬉しそうにしているのは珍しいから…な」
美琴「あ、えっと、はい。…好きです」///
寮監「相手もお前のことを好いていてくれるのか?」
美琴「は、はい」///
寮監「…そうか。それは良かった」
美琴「…わたし、恵まれてるんですね。好きな相手と、婚約できて」
寮監「そうだな。だが、私は、婚約とは本来そういうものであって欲しいと願っている」
美琴「…」
寮監「だから、御坂。私はお前が相思相愛で婚約したということを、常盤台の寮監としてではなく、一人の知り合いとして祝福したい。おめでとう。御坂」
美琴「あ、ありがとうございます」///
寮監「ところで、公表はするのか?」
美琴「友人以外には言わないと思います。まあ、すぐに広まるとは思いますけど」///
寮監「そうだな。学校というものはそういう話に敏感だからな」
美琴「…彼にも言われたのですけど、親公認だから、その辺は開き直ってしまおうかと思いまして」///
寮監「許婚はどんな奴だ?」
美琴「わたしよりも二つ年上で、お人よしで、おせっかいで、正義感が強くて、超能力者だろうがなんだろうが特別視しない人です」
寮監「高校生か。超能力者だろうがなんだろうが特別視しないということは、学園都市の生徒か?」
美琴「ええ、まあ」
寮監「…そういえば一時期、常盤台の超電磁砲が追い掛け回している無能力者がいるという噂があったな。お前の相手はその噂の相手なのか?」
美琴「うぇ!?」(う、噂になってたんだ)///
寮監「幼馴染か何かか?」
美琴「あー、幼馴染ではないです。でも縁があるというかなんというか…」
寮監「見知った仲ではあるということか」
美琴「まあ、そうです」///
寮監「…学園都市で知り合って、親公認の許婚か。…それは運命の相手と言えるのではないだろうか」///
どこか遠くを見るような眼差しで、寮監は言うと頬を紅く染めた。
美琴「…へ?」
寮監「幾多の困難を乗り越え、将来を誓い合うふたり。そこにあるのは真実の愛」ウットリ
美琴「りょ、寮監様?」
寮監「…羨ましい」ボソッ
美琴「あ、あはは」(あれ?寮監ってこんな人だった?)///
寮監「…んっ、ゴホン。ともかく、おめでとう」///
美琴「あ、ありがとうございます」(あ、戻った)
寮監「…報告はいつでも受け付けるからな」
美琴「ほ、報告なんてしません!!」(やっぱり戻ってない!!)///
寮監「そうか。遠慮しないで良いのだぞ」ニコッ
美琴「し、失礼します」(寮監が壊れた…)バタン
まるで年下の友人のように恋愛話を聞きたそうにしている寮監に恐れを抱いた少女は、すぐに立ち上がって部屋から出た。
美琴(寮監も乙女だってことかしら…)ブルブル
幸い寮監が追いかけてくることはなかったので、そのまま自室へと足を向ける。
美琴(そういえば黒子に文句言わないといけないわね。黒子のせいでアイツにパンツ見られちゃったし)///
軽く頭を振って恥ずかしさを振り払うと、部屋の扉を開けた。
美琴「ただいま。黒子」
黒子「……………………」ブツブツ
ルームメイトはベッドの上で体育座りをして、なにやら呟いていた。
黒子「お姉様が類人猿と間接キスをしていただなんて黒子は認めないですの。でもお姉様が類人猿の口に付いたクリームを指で掬ってペロッと舐めたのは事実。いえ、あれはきっと何かの間違いですの。黒子は疲れていた。お姉様は実験をしていた。でも、実験をしていたお姉様は類人猿の好みで短パン+ゲコ太パンツを履かずに縞パンを履いていた。つまり類人猿によって穢されていて、そんなこと、そんなこと黒子は、黒子は認めないですの」ブツブツ
美琴「アンタはなに呟いてるんじゃゴラアアアア」ビリビリ
黒子「ああ~んっ!!愛の鞭ですのぉぉぉぉぉぉ!!」ビクンビクン
美琴「てか、実験って何よ!アンタどんな妄想してるのよ!」
黒子「…ハッ、黒子はなにも見ていません!お姉様とは会っておりませんの!縞パンなんて見ておりませんの!」(実験のことは秘密でしたの!)
美琴(縞パンって、確か妹達が履いていたわよね…。妹達の一人が偶然、黒子に会って実験中とか言って誤魔化したのね、きっと)「そうよね。アンタは喫茶店でわたしの短パンずりおろしただけよねぇ…」ビリビリ
黒子「お、お姉様!?落ち着いてくださいませ。あれは、お姉様の貞操を確認したかっただけですの」
美琴「アンタねえ。デートの邪魔しておいて言いたいことはそれだけかしら?」
黒子「デ、デ、デート!?今、デートと仰いましたの!?」
美琴「ええ。アンタ、わたしのデートを邪魔したわよね」
黒子「あ、あ、あの類…殿方とお姉様がデート!?」
美琴「そうよ。わたし、当麻と付き合うことになったから」
黒子「な、な、名前呼び…」ブルブル
美琴「別に、彼氏のことを名前で呼んでもいいでしょ?」
黒子「お、お、お姉様が、お姉様が殿方のことを彼氏と…。黒子は、黒子は、少し外の風にあたってきますの…」フラフラ
ツインテールの少女は虚ろな表情で立ち上がると、そのまま部屋から出て行った。
美琴(なんか思ってたよりも静かだったわね。もっと騒がれると思っていたんだけど)
ベッドに仰向けになり、左手を上げて薬指を見る。
美琴(許婚、かあ)ニヘラー
幸せそうな微笑を浮かべて、少女はしばらくの間、指輪を眺めるのであった。
―――
――お姉様が…殿方と恋仲に…
寮の屋上へと移動したツインテールの少女は、夜空を見上げながら溜息をついた。
――わかっていたことですの。でも、お姉様から直接言われると、やはり堪えますわ。
夏頃からあのツンツン頭の少年を追い掛け回していたのは知っている。『電撃が効かないムカつく奴がいる』と、楽しそうに話していた。
秋が近づくにつれ、ツンツン頭の少年のことを話すたびに赤くなったり、挙動不審になったりすることが多くなった。
第三次世界大戦の後、しばらくの間ツンツン頭の少年のことを呼んで魘されていた。
――なにがあったのかはわかりませんが、あの時のお姉様はそれはもう酷い有様でしたわ。今にも壊れてしまいそうなくらい打ちひしがれていて…。でも、いつの間にかお元気になられて、殿方のことを呼んで微笑んだりして…。
秋の初め頃、研究協力の一環として外泊することがあった。その頃には常盤台のエースの名に恥じない超能力者第三位に戻っていた。
――なぜか私服を持っていかれたりしましたけど。もしかしたら学園都市の外の協力企業への出向だったのかもしれませんが。
黒子「…」ハァ
――あの殿方と一緒にいるときのお姉様を見てしまうと、黒子が入る隙は無いですの。
しばらくの間、空を見上げながら、ツインテールの少女は呟いた。
黒子「上条当麻…お姉様を泣かせたりしたら許しませんですわよ」
―――
とある男子学生寮の一室
ベッドの上の寝具を床に置いてあったものと取替えると、少年はその上に仰向けに倒れこんだ。左手を上に上げ、薬指の付け根をじっと眺める。
上条「許婚、か」
自然と、頬が緩む。
待ち合わせ場所で抱きつかれた時に、自分の中にあった想いを自覚した。
喫茶店で自分の想いを確信して、そのままの勢いで階段の踊り場で告白して、両想いだったことに幸福を感じた。
いつでも一緒のものを身に着けていたい我侭から、お互いの親に連絡をして許婚になった。
上条「…結構ぶっ飛んだことをしたよなあ」
後悔はしていない。むしろ絆が深まったことに幸せを感じている。
上条(それだけ俺は、美琴のことが好きだったんだな)
夕飯に作ってもらったカレーは、今まで食べたカレーの中で一番美味しかった。
寮の前まで送ろうと思ったのに、『抱きしめて欲しいから』と言われて、公園で抱きしめた後、姿が見えなくなるまでそこで見送った。
上条(しかし、何であんなにいい匂いがするんだろうな)///
頬を赤くしながら、天井を見上げて両手を挙げる。
上条「幸せだー」
―――
布団の中で、銀髪の少女は目を開けて天井を見た。
インデックス(とうまとみことがデートをしていた)
頬を赤く染めていた茶髪の少女の顔が思い浮かぶ。
茶髪の少女は、安全ピンで留めた修道服を『そんなの着ていると危ないから』と言って縫ってくれた。
『女の子は身嗜みも大切よ』と言って、ショッピングモールへ連れて行ってくれて、下着や部屋着、小物、生活用品を買ってくれた。
たまに部屋に来ては同居人のツンツン頭の少年に勉強を教えたり、わざわざ材料を持ってきて食事を作ってくれた。
ときどき外に連れていってくれて、一緒に遊んでくれた。
インデックス(最初はとうまを虐める酷い奴だと思っていたんだよ)
茶髪の少女は、外で会うと必ずと言っていいほど、ツンツン頭の少年に向かって雷撃をぶつけてきた。
でも、何度か見ているうちに、攻撃というよりは、話すためのきっかけを作るためにそうしているんだと気が付いた。
ツンツン頭の少年と話している時の茶髪の少女は、とても嬉しそうで、楽しそうだったから。
インデックス(やっと、とうまに想いが届いたんだね)
銀髪の少女の口元に優しい微笑が浮かぶ。そして再び目を閉じた。
インデックス(よかったね。みこと)
―――
学習机の椅子に座り、右手でシャープペンシルを弄りながら、黒髪の少女はノートに視線を落とす。
姫神(上条君。楽しそうだった)
常盤台中学の女の子と真っ赤になりながら、ケーキを食べさせあっていたツンツン頭のクラスメイトの少年。
青髪ピアスのクラスメイトの少年が乱入した時には『デートの邪魔をするな』と言って、しっかりと女の子をかばっていた。
姫神(デート…か。あれもデートになるのかな?)
青髪ピアスのクラスメイトの少年に頼まれて、一緒にクリスマスオーナメントを選んだ。そのお礼にと、クレープとココアを奢ってもらった。
姫神(私は。どうして。OKしたんだろう?)
青髪ピアスのクラスメイトの少年との約束。明日も彼のショッピングに付き合うことになっている。
姫神(別に。今日買ってもよかったと思うんだけど)
青髪ピアスの少年はどうしてわざわざ明日を指定してきたのだろう。
姫神(まあ。楽しかったから)
青髪ピアスの少年との他愛の無い話や、クリスマスオーナメント選びは思っていたよりも楽しかった。
姫神(青ピ君…か)
青髪ピアスの少年のことを思い出しながら、少女は小さく微笑んだ。
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12月23日夜、とあるふたりのメール
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:今日は
本文:ありがとう。嬉しかった。夢じゃないよね?わたし、当麻の婚約者だよね?
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:Re:今日は
本文:夢だったらどうする?俺は泣く。
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:Re:Re:今日は
本文:泣くだけなの?わたしは死んじゃうかも…
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:安心しろ
本文:御坂美琴は上条当麻の婚約者だ。冗談でも死ぬとか言うな。好きだぞ。
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:わたしも
本文:よかった。ごめんなさい。大好き。
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:明日
本文:10時に自販機前で待ち合わせでいいか?ゲーセンでも行こうぜ。
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:Re:明日
本文:了解。一緒にプリクラ撮りたいな。新作のゲコ太フレームのやつが出たんだ。
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:Re:Re:明日
本文:ゲコ太に邪魔されないツーショットが欲しいかも。
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:Re:Re:Re:明日
本文:うん。それも一緒に撮ろうね。
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:Re:Re:Re:Re:明日
本文:ゲコ太は確定かよ。まあいいけど。
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:ゲコ太
本文:イヤ?
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:Re:ゲコ太
本文:イヤじゃないぞ。好きなんだろ?
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:Re:Re:ゲコ太
本文:うん。でも、当麻の方が好きだからね。
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From:上条当麻
From:上条当麻
Subject:Re:Re:Re:ゲコ太
本文:サンキュー。俺も、好きだぞ。
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From:御坂美琴
From:御坂美琴
Subject:あのね
本文:言葉で、聞きたいな。
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常盤台中学学生寮208号室
ベッドの上に横になり、茶色い短髪の少女は携帯電話を握り締めていた。
ルームメイトであるツインテールの少女は、勉強机の前に座ってノートパソコンを開き、キーボードに何かを打ち込んでいる。
他愛の無いメールのやり取り。それはそれで楽しかったのだが、文字だけでは物足りなくなってくる。
美琴(わがままだなあ。わたし)ハァ
小さく溜息をつくと同時に、握っていた携帯電話が震えて、少女は小さく体を震わせた。
ディスプレイに表示された、『上条当麻』の文字に頬が赤くなるのを自覚しながら、少女は通話ボタンを押す。口元に幸せそうな笑みを浮かべて。
美琴「も、もしもし」///
上条『まったく、お前は甘えん坊だなあ』
美琴「わ、悪い!?」
上条『いーや、悪くないですよ美琴さん。…ホントのこと言うと、俺もお前の声、聞きたかったし』
美琴「ホ、ホント?」
上条『お前に嘘ついてどうするんだよ。あー、…好きだぞ。美琴』
美琴「わたしも、好き!」///
その言葉を聞いて、ツインテールの少女の身体が小さく震え、キーボードを打つ手が止まる。(彼女に聞こえているのはルームメイトの少女の声だけ)
黒子(まさかとは思いますが…殿方とのラブトークですの!?)ブルブル
上条『…上条さん、幸せを噛み締めてるんですけど』
美琴「ふふ。当麻♪す~き♪」
黒子「―――!!」(ギュオエエエエエエエエエッッ!!あの類人猿めえええええええっっ!!)ギリギリ
上条『あー、もー!なんでこう美琴さんは、今日一日でこんなに可愛くなっちゃったんですか!』
美琴「当麻が告白してくれたからに決まってるじゃない!わたしはずっと、当麻のことが好きだったんだから!だから、当麻が好きって言ってくれたから、わたしも素直になれたの」///
黒子(告白ですとおおおおっ!?こ、これはまずいですの。この後は延々とお姉様の惚気話が続くかもしれなくて、そのようなもの、わたくしには耐えられませんの…)ガタガタブルブル
上条『上条さんは幸せ者です。こんな素敵な彼女がいて』
美琴「わ、わたしも幸せ!当麻の彼女になれて」///
上条『美琴』
美琴「当麻」///
黒子「…!!」(酸素、酸素が足りませんわ!お姉様が電気分解でオゾンでも精製させておりますの?)ゼエゼエ
上条『やべ。これ以上話していると会いたくてたまらなくなる』
美琴「ホントに?わたしも今、同じこと考えてた」
上条『はは。似たもの同士だな』
美琴「えへへ」
上条『じゃあ、また明日。おやすみ』
美琴「…もう一回、好きって言って?」
黒子「――!!」(げ、限界ですの…)パタリ
上条『美琴。好きだ』
美琴「わたしも、好き。おやすみ。当麻」
上条『おやすみ。美琴』
少女は携帯電話を閉じると、それをそっと胸に抱いた。
美琴(おやすみ。当麻)
黒子「…」
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クリスマス狂想曲12月23日 了