とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part06

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匿名ユーザー

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12月24日


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朝 とある友人たちとのメール


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From:御坂美琴

Subject:Re:彼氏さん

本文:ゴメン。さっき読んだ。えっと、なんていうか、その、お付き合いしています(照)

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From:御坂美琴

Subject:Re:すみません

本文:初春さんが佐天さんを連れて行ってくれて、正直助かった。ありがとう。

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From:御坂美琴

Subject:Re:明日のご予定は?

本文:ごめんなさい。さっきメールを読みました。折角のお誘いですが、今日は予定が入っちゃってます。本当にごめんなさい。湾内さんと泡浮さんによろしく。


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From:佐天涙子

Subject:Re:Re:彼氏さん

本文:お付き合いしてるんですね!優しそうな彼氏さんで羨ましいです!あー。でも、彼氏さんの名前聞きそびれちゃったなあ。じー。(期待の眼差し)

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From:初春飾利

Subject:Re:Re:すみません

本文:佐天さん暴走してましたからね(笑)そういえば御坂さんの彼氏さんのカミジョートウマさんってどう書くのですか?

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From:婚后光子

Subject:残念ですわ

本文:正直言いますとわたくしの連絡ミスですの。御坂さんには連絡したつもりでいましたのよ。お友達たちだけで過ごす初めてのクリスマスパーティーですもの。御坂さんはわたくしにとって真っ先にお誘いするに値する方ですから。来年は予約しておいてもよろしいかしら?


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From:御坂美琴

Subject:Re:Re:Re:彼氏さん

本文:上条当麻

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From:御坂美琴

Subject:Re:Re:Re:すみません

本文:上条当麻

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From:御坂美琴

Subject:Re:残念ですわ

本文:あー、ゴメン。来年も無理だと思う(汗)


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From:佐天涙子

Subject:昨日は

本文:上条さんに何か買ってもらったりなんかしちゃったのですか?お会いしたのアクセサリーショップでしたし。

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From:初春飾利

Subject:もしよろしければ

本文:おふたりの馴れ初めなんて聞いちゃってもいいでしょうか?

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From:婚后光子

Subject:もしかして

本文:ご迷惑でした?



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From:御坂美琴

Subject:Re:昨日は

本文:ペアリングを買ってもらった(照)

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From:御坂美琴

Subject:Re:もしよろしければ

本文:えっと、わたしがスキルアウトを更正させようとしていたとき、わたしが絡まれてると思って勝手に助け出そうとしたのが彼。まあそれから色々あって、告白されました。(照)

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From:御坂美琴

Subject:そんなことない!

本文:婚后さんはわたしにとっても良いお友達です。でもね、あの、特別なイベントの日は、(他の人には内緒にして!)許婚と過ごしたいので(照)


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From:佐天涙子

Subject:Re:Re:Re:昨日は

本文:ラブラブですね御坂さん。いいなあ。うらやましいなあ。

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From:初春飾利

Subject:Re:Re:Re:もしよろしければ

本文:御坂さん。危ないことはしないでくださいって言ってるじゃないですか!そんな御坂さんを止めてくれた上条さんに感謝ですね。告白ですか?ど、どんな風に!?(ワクワク)

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From:婚后光子

Subject:許婚!?

本文:もしかしてお相手は海原さんですか?


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From:御坂美琴

Subject:恥ずかしいなあ

本文:スキルアウトの件はゴメン。えーっと、普通に『好きです、つきあってください』的な(照)

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From:御坂美琴

Subject:Re:許婚!?

本文:何でそこで海原さんが出てくるの!?違うから!!わたしの許婚の名前は、上条当麻です(照)


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From:初春飾利

Subject:Re:恥ずかしいなあ

本文:わあ。情熱的ですね。うらやましいなあ。ところで、白井さんは上条さんのことをご存知でしょうか?今日、風紀委員で一緒になるんですが、もし内緒にしているのでしたら協力します。

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From:婚后光子

Subject:失礼いたしました

本文:機会がありましたらご紹介いただけますか?御坂さんが選んだ殿方に興味がありますわ。きっと素敵な方なのでしょうね。


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From:御坂美琴

Subject:Re:Re:恥ずかしいなあ

本文:黒子にも言ってあります。えーっと、しばらく黒子が迷惑かけるかもしれないけど、よろしく。

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From:御坂美琴

Subject:Re:失礼いたしました

本文:えーっと、普通の高校生です。まあ、機会があったら紹介します。(照)


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From:初春飾利

Subject:お任せください!

本文:御坂さんと上条さんのデートの邪魔をしないように努力します!

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From:婚后光子

Subject:それでは

本文:近いうちに学舎の園の甘味処へ参りませんか?御坂さんの都合の良い日をご連絡ください。


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From:御坂美琴

Subject:Re:お任せください!

本文:ありがとう(照)

―――――――――
From:御坂美琴

Subject:Re:それでは

本文:了解。また連絡するね。



―――


10:00 セブンスミスト前

青髪の少年と巫女装束が似合いそうな黒髪の少女は、ショッピングモール前のバス亭からショッピングビルへ向かって歩いていた。

青ピ「今日もええ天気やなー。ホワイトクリスマスは望めなさそうやけど、出かけるにはちょうどええなー」

姫神「でも空気が冷たいから。雪が降っていなくても長時間外にいるのは辛い」

青ピ「じゃ、とりあえず、中に入ろか」

姫神「うん」

ビルの中に入り、あてもなくぶらぶらとファンシーショップやアクセサリーショップの店先を冷やかす。

青ピ「姫神ちゃん。今日も付き合うてくれてありがとな」

姫神「別に。暇だったから」

青ピ「せや、姫神ちゃん。何か欲しいものある?」

姫神「んー。服とかはこの前吹寄さんと見にきたし」

青ピ「ひ、姫神ちゃん。男が服を贈る意味、知ってるやろ?」アセアセ

姫神「ん?服は見に来たばかりだからいらないってことなんだけど」

青ピ「どわぁ!今言ったこと忘れてや!」(何やってんのや!)///

姫神「?」

青ピ「じゃ、じゃあ、アクセサリーとかは?」

姫神「んー。あんまりちゃらちゃらした物は着けたくないなあ」

青ピ「そ、そっか」

姫神「ピアスって。痛くない?」

青ピ「ボクはそんなに痛くなかったけど。姫神ちゃん、興味あるん?」

少女は自分の耳たぶを弄りながら首を傾げる。

姫神「やっぱりいいや」

青ピ「着けピアスってのもあるんやで?」

姫神「着けピアス?」

青ピ「粘着テープみたいので貼るやつ」

姫神「なんか。痒くなりそう」

青ピ「姫神ちゃん、肌弱いん?」

姫神「んー。どうだろ?」

青ピ「もし何か着けるとしても、無理にピアスやなくて、イヤリングで全然問題ないと思うで」

姫神「まあ。そうなんだけど」

青ピ「実はボクを見て、ピアスしてみたいとか思ってくれたとか?」

姫神「ピアス着けてるの。クラスじゃ青ピ君だけだしね。それから考えると。ちょっとは影響してるかもしれない」

青ピ「嬉しいわあ、ボク。…少しは期待してもええ?」

姫神「え?何を?」

青ピ「姫神ちゃんともっと仲良うなれるって思ってもええ?」

少年はまっすぐに少女を見る。心なしか頬が少し赤くなっているようにも見えた。

姫神「…少なくとも昨日よりは。仲良くなってると思うけど」

青ピ「え?」

姫神「そうじゃなければ。わざわざ待ち合わせまでして一緒に買い物なんて来ないし」

早口でそう言うと、少女はくるりと身を翻らせて歩き出した。

姫神「…減点かな」ボソ

青ピ「ちょ、待ってや。姫神ちゃん!?」

姫神「待たない」

青ピ「堪忍してや!姫神ちゃん!」(姫神ちゃんがボクに『減点』て、『待たない』って、なんやこれ!?)

少年が慌てて駆け寄ると、少女は口元を小さく綻ばせながら言った。

姫神「次はどのお店を見ようか?」ニコ



―――


10:45 第七学区 ゲームセンター ラヴリーミトンプリクラ内

美琴「じゃ、じゃあ、後ろから抱き着いてくれるかな?」///

上条「こうか?」

少女の肩に顎を乗せ、腋の下に腕を通して少女のお腹の辺りに左手を置き、右手で自分の肘を掴む。

美琴「えへ。後ろから抱きしめられちゃった」///

言いながら少女は少年の左手を自分の右手で押さえ、嬉しそうに微笑む。

上条「…ええと、美琴さん?」///

美琴「どうしたの?」

上条「なんと言いましょうか、この格好はですね、いろいろマズイと上条さんは思うのですが」///

美琴「少しの間だからいいじゃない。…イヤなの?」

上条「イヤじゃないけど…その」///

美琴「なによ?はっきりしてよ」

上条「ええと…怒らない?」(後ろから抱きついてる俺の手を、自分で胸に押し付けてるのが判らないのかあああああ!!)///

美琴「なんか変なこと考えてるんじゃないでしょうね?」

上条「上条さん的には大変嬉しいことなんですけど、…お前が右手で押さえてるもの」///

美琴「ん?アンタの手よね?」

上条「うん。で、俺の手は何を押さえてる?」///

美琴「え?」

少女の右手は、後ろから回された少年の手の甲を上から押さえていて、少年の左手は、少女の右胸を包み込むような形になっていた。

美琴「あ、あぅ…」///

上条「ほら、右手を離せ、離そう、離しましょう美琴センセー」///

美琴「…このままでいい。後ろからぎゅってされてる写真欲しいんだもん」///

上条「上条さんの理性が臨界点を超えそうですよ!美琴センセー」///

美琴「ほ、ほら、カメラ見て、笑って」

ぎゅっと少女の右手が少年の左手を握る。

上条「お、おう…」(て、掌に柔らかな感触があああああ!!)///

フラッシュが光って撮影の終わりを告げる。だが、ふたりはそのまま動かない。

上条「ほ、ほら、終わったぞ?」

美琴「うん」///

上条「離さないと、上条さん左手をにぎにぎしちゃいますよ?」

美琴「ふぇ!?」(に、にぎにぎって!?)///

上条「だあああ!!右手を離しなさい美琴センセー!ホントににぎにぎするぞ!」///

少女は慌てて手を離し、少年も速やかに戒めを解く。少女は自分を抱くように胸を隠しながら、キッと少年を睨んだ。

美琴「な、何言ってるのよアンタ!馬鹿!スケベ!」///

上条「お、俺の手を胸に持っていったのはお前だぞ!」///

美琴「だ、だって、…ぎゅってして欲しかったんだもん」ショボン



上条(そんな風に言われたら怒れないじゃないか)「…あー、ゴメン。俺が引っ張られるまま手を動かしちまったから触っちゃう形になったんだな」

美琴「え?」

上条「美琴も良く考えて行動するようにすれば、こういうことも減るだろ?」

美琴「う、うん」

上条「ってことで、この話題はこれまで。な?」

美琴「…なんか強引に纏められた気がする」

上条「あのな。折角のデートなのに喧嘩するのは嫌だろ」

美琴「まあ、そうだけど」

不満そうな少女の肩に手を置いて前に向かせると、少年は画面を指差して言った。

上条「ほら、じゃあ次のフレーム選ぼうぜ?」

美琴「…じゃあ、一番上のゲコ太とピョン子のやつ」

上条「俺が右、お前が左でいいのか?」

美琴「うん」

上条「これはどんな格好で?」

美琴「…また、ぎゅってしてくれる?」

上条「手、気をつけてな」

美琴「…別に当麻になら触られてもいいんだけど」///

上条「いきなりそういうこと言わないの!」///

美琴「なんでよ?」

上条「抑えがきかなくなるだろうが。美琴さんは自分の魅力についてもっと真剣に考えるべきだと思います!」

美琴「み、魅力?」

少女の後ろから抱きつき、手で自分の肘を押さえるようにして事故を防ぎながら、少年は囁いた。

上条「あんなこと言われたら止まれなくなるぞ。上条さん、健全な男子高校生ですから」

美琴「!?」///

上条「こんなところでなんて、美琴も嫌だろ?誰が見てるかもわからないし」

美琴「うぅ…」

上条「まー、くっつきたいのは上条さんも同じだから、お互い注意しような」

美琴「うん。注意する」

上条「素直な美琴、可愛いな」ギュッ

美琴「ふにゃ!?」///

抱きついたまま、少女の肩に顎を乗せて目を閉じる。

上条「あー、なんか安心する。ちょっとだけ、こうしててもいいか?」ギュッ

美琴「う、うん」(と、当麻がわたしに甘えてる!?)///

上条(いい匂いだなー)ポー

美琴「ね、ねえ?そのままでいいから、一枚撮っちゃっていい?」

上条「別にいいけど、いい写真にはならないんじゃないか?」

美琴「わたしから見るとすっごくいい感じなのよ」(当麻が甘えてくれるなんてこの先あるかわからないし)///

上条「じゃ、撮り終わるまでこのままにしてる」ギュッ

美琴「うん。ありがと」///

それから少なくとも五分もの間、ラヴリーミトンプリクラで撮影が行われることは無かったのであった。



―――

11:30 セブンスミスト アクセサリーショップ

店先のショーウィンドウを覗き込み、青髪の少年は言った。

青ピ「お、この店、値段も手頃やし、デザインもええわあ」

姫神「ピアス?」

青ピ「うん。あの青い石が入ってるのなんて、いいと思わん?」

少年が銀色の台座に青いガラス球が埋め込まれているピアスを指して言う。

姫神「ピアス。髪に合わせてるの?」

青ピ「いや、別にそういうわけやないけど。シンプルでええなあと思って」

姫神「そっか。今。着けているのも青い石だから。髪に合わせているのかと思った」

青ピ「たまたまやで。まあ、確かに青は好きな色やけど」

姫神「私は。赤の方が好きかなあ」

青ピ「姫神ちゃん、赤、好きなん?」

姫神「んー。好きって言うかアクセントとしてはいいかなって」

青ピ「そっか。そっちにイヤリングあるで?」

姫神「どれどれ」

イヤリングに視線を移し、ピアスで見ていたのと同じようなシンプルなデザイン-クリップの前面が台座になっていて、そこにガラス球が埋め込まれている-のものを探す。

姫神「あ。これ良いかも」

そう言って少女が指したのは、クリップの前面に赤いガラス球が埋め込まれた金色のイヤリングだった。

青ピ「それ、気にいったん?」

姫神「うん」

青髪の少年は少女が指したイヤリングを見つめながら口を開く。

青ピ「…姫神ちゃんがよければ、それ、ボクにプレゼントさせてや」

姫神「え?」

青ピ「姫神ちゃんにクリスマスプレゼントを買うってのが、今日の目的やねん」

姫神「そうだったんだ」

青ピ「うん。その、迷惑やったらやめるさかい」

視線をイヤリングに落としたまま、少女は思案する。

今いるアクセサリーショップは学生をメインターゲットにした店のようで、値段的にも貰うのに抵抗があるというほど高価なものではない。

友達同士でアクセサリーをプレゼントし合えるような店だった。

姫神(…友達としてなら。貰ってもいいかな)「じゃあ。お言葉に甘えて」

青ピ「え?」

姫神「ありがとう」

青ピ「ホンマ!?すんませーん。このイヤリングください。あ、プレゼント包装で頼んます」

少年が店員を呼んだ後、少女は少し躊躇いがちに声をかけてくる。

姫神「青ピ君。ちょっと。席はすずね」

青ピ「あ、うん。ほな、ボク、一階の階段の前で待っとるから」

姫神「うん。じゃあ。後で」

青ピ「うん」

少女の背中を見送って、少年はひとつ大きな溜息をついた。

青ピ(とりあえず、受け取ってもらえるんやし、少しは期待してもええんかなあ?)



―――――――――


13:30 第七学区 スーパーマーケット内

ツンツン頭の少年の押すショッピングカートの籠の中に、茶髪の少女が食材を入れていく。

上条「あの、美琴センセー?」

美琴「ん。なーに?」

上条「なんか量が凄いんですけども」

美琴「シチューみたいな煮込み料理ってさ、たくさん作った方が美味しいのよ。それに、インデックスもたくさん食べるでしょ?」

上条「いやー、何か悪い気がして」

美琴「わたしが好きでやってるんだから気にしないの。それに、か、彼氏と過ごす初めてのクリスマスだし、気合入っちゃうんだから」///

上条「上条さんは幸せ者です」///

美琴「えへへ。他に何か食べたいものある?」

上条「ビーフシチューにポテトサラダにローストチキンがあれば十分だと思います。ケーキは店先で売ってたのでいいよな?」

美琴「さすがにケーキまで焼く時間ないしね」

上条「飲み物は…と、アレでいいか?ゲコ太のクリスマスオーナメント付いてるぞ」

そう言って少年が指差した場所に、サンタのコスチュームを着たゲコ太の絵が描かれたポスターが貼られているクリスマスカクテル(ノンアルコール)が置いてあった。

缶の上にプラスチックの蓋のようなものが被されていて、その中に入っているキャラクターのラベルが貼られている。

美琴「全六種か。買いね」

上条「味は三種類だから、それぞれ二本ずつ買おうぜ」

美琴「うん。…えへ。サンタピョン子可愛いなあ」

上条「…可愛いな」ボソ

美琴「ア、アンタもそう思う!?可愛いわよね!」(ついに当麻もゲコ太の良さに気付いてくれた!?)

上条「ああ。可愛いぞ。美琴」

美琴「ふにゃっ!?」///

上条「思わず笑顔に見惚れてしまいました」///

美琴「えへへ…」(可愛いって言われちゃった)///

上条「美琴…」

美琴「当麻…」

見つめ合うふたりには、周囲など見えていないのであった。



―――


14:00 第七学区 ファミリーレストラン内

青ピ「ボク飲み物入れてくるけど、姫神ちゃん、何にする?」

姫神「んー。ティーポットとダージリン。お願いしてもいい?」

青ピ「ええよ。ついでやし。砂糖とかはいる?」

姫神「いらない」

青ピ「ほな、ちょっと行ってくるわ」

姫神「うん」

青髪の少年はドリンクバーへと歩いていく。その背中に視線を送りながら黒髪の少女は小さく微笑んだ。

姫神(加点1かな)

トレイの上にソーサーとティーカップ、ダージリンのティーパックを置き、ティーポットにお湯を注ぐ。

青ピ(これって、デートと思ってもええんかな?)

ティーポットをトレイに載せ、コーヒーカップをドリップマシンに置き、ブレンドコーヒーのボタンを押しながら、青髪の少年は昨日の友人の姿を思い出していた。

青ピ(いやいや、カミやんみたいにラブラブなのがデートなんやろうな。ボクと姫神ちゃんはまだ、友達同士のショッピングってとこやね)

砂糖とミルク、ソーサーとスプーンをトレイに載せるのとほぼ同時に、ブレンドコーヒーが出来上がった。

青ピ(ま、カミやんは元から好かれてたっぽいしなあ)ハァ

コーヒーカップをトレイに載せ、少女のいる席へと戻るために歩き出す。

青ピ(ちょっとは、仲良うなれたと思うんやけど)

席に戻りテーブルの上にトレイを置く。

青ピ「お待たせ。…ホンマに砂糖とか要らんかった?」

姫神「うん。ありがとう」

少女がティーパックの袋を取り出して、ティーポットの中に入れると、透明のお湯がたちまち琥珀色に染まっていく。

青ピ「なんか、一瞬で色が変わると感動するわあ」

姫神「ふふ。私もそう思う」

コーヒーに砂糖とミルクを落としてかき混ぜながら、少年はティーポット越しに少女を見る。

青ピ「…綺麗やな」ボソ

姫神「青ピ君。意外と詩人?」

青ピ「そうやなあ。ボク、ロマンチストやもん」

姫神「確かに。クリスタル細工を見て綺麗って言える男子って珍しいけど」

青ピ「綺麗なもんは綺麗って言っても、別に悪くないやろ?」

姫神「うん」

少女がティーポットを持ち上げ、ティーカップに紅茶を注ぐ。少年はそんな少女の顔に視線を向けて呟いた。

青ピ「…綺麗や」

姫神「ふふ。青ピ君も紅茶にすればよかったのに」

青ピ「…姫神ちゃんが、やで」

姫神「え?」

まっすぐに少女を見て、少年は言う。

青ピ「姫神ちゃんが綺麗やって、言ったんや」///

姫神「私?」

青ピ「うん」

姫神「もしかして。からかってる?」

青ピ「ボク、本気やで」

姫神「…」



少女は胸元に右手を置き、服越しに十字架に触れる。

姫神「私は。別に綺麗じゃないと思うけど」

青ピ「それは謙遜やで。姫神ちゃん」

姫神「そうかな?」

青ピ「うん。姫神ちゃんは美人やし、魅力的な女の子や」

姫神「いきなりそんなこと言われても。困る」

視線をティーカップに落としながら、少女は言った。

青ピ「ゴメン。でも言いたかったんや」

姫神「どうして?」

青ピ「昨日と今日で姫神ちゃんとボク、少しは仲良うなれたと思ったんや。一緒にクリスマスオーナメント選んでもろうたり、プレゼント受け取ってもらえたり、食事したりして、姫神ちゃんと仲良うなれたと思ったんや」

姫神「…」

青ピ「そしたらな、ボク、馬鹿やさかい。舞い上がってしもうて、姫神ちゃんも同じ気持ちかと思うてしもうて」

姫神「…」

青ピ「今なら姫神ちゃんが綺麗やって、ずっと思ってたこと。伝えられるかなって」

姫神「青ピ君…」

青ピ「はは。なんかカッコ悪いなあボク」

姫神「…そんなこと。ないよ」

そう言うと少女は横に置いてあるバッグから何かを取り出し、掌に載せて少年へと差し出す。

姫神「これ。クリスマスプレゼント」

青ピ「…ボクに?」

姫神「うん」

青ピ「開けてもええ?」

姫神「うん」

袋を開けて小箱を取り出し、小箱の中身を見て少年は目を見開いた。

青ピ「え!?これ…」

小箱の中にあったのは赤いガラス球が嵌め込まれた金色のピアスだった。少年が少女に贈ったイヤリングと同じデザインである。

姫神「…一応。お揃い」

青ピ「そ、そやな」

姫神「それだけ?」

青ピ「いや、いきなりやったから、なんて言ってええか判らなくて」

姫神「困るでしょ?さっきの私と同じ」

そう言って少女は小さく微笑む。

青ピ「姫神ちゃん…。ボク」

少年が何か言おうとするのを、少女は自分の唇に人差し指を縦に当てる仕草で止めた。

姫神「今はまだ。友達でいた方がいいと思う」

青ピ「姫神ちゃん…」

姫神「雰囲気に流されているだけかもしれないし。お互いをもう少し知ってからの方がいいと思う」

青ピ「ボクはクリスマス前から…」

姫神「見た目だけじゃわからないし。私のこと知って欲しいし。…青ピ君のこと知りたいし」

少年が何か言おうとするのを少女は言葉で遮った。最後の方はほとんど聞こえないほど小さな声で。

姫神(そんな急になんて。切り替えられないし)

――ただのクラスメイトからいきなり恋人というのは無理がありすぎる。順番的にもまずは友達から。うん。別に変じゃない。はず。

姫神「とりあえず。連絡先交換しよう」

青ピ「ええの?」

姫神「うん」

少女はバッグから携帯を取り出し、赤外線データ受信モードに切り替える。

青ピ「ほな、送るで?」

姫神「…受信完了。じゃあ次は私が」

青ピ「っと、準備OK」

姫神「じゃあ送信」

青ピ「…姫神ちゃんのアドレスゲット。ボク、感激やわ」

姫神「それは。大げさ」

青ピ「大げさやないんやけどなあ」

姫神「そう言ってまた困らせる。…減点1」

青ピ「また減点!?てかそれって何の点数なん?」

少女は少年を見ると、自分の顎に人差し指の先を当てて小さく微笑んだ。

姫神「青ピ君の点数。かな」



―――


14:30 風紀委員第一七七支部

固法「ねえ初春さん。白井さん、どうしちゃったの?」

初春「し、白井さんがどうかしましたか?固法先輩」

固法「何か元気が無いのよね。上の空って言うかなんて言うか…」

初春「あー。たぶん御坂さんが原因です」

固法「御坂さんが?どういうことかしら?」

初春「固法先輩、白井さんが御坂さんを慕っているって知っていますよね?」

固法「ええ、まあ」

ツインテールの少女がルームメイトで同じ学校の先輩である御坂美琴のことを、様々な意味で慕っているのは知っている。

初春「昨日、私は非番だったので、佐天さんと一緒にセブンスミストへ行ったんですけど、御坂さんとお会いしたんですよ」(本当は佐天さんの案で御坂さんを探しに行ったんですけど)

固法「あなたたち、本当に仲がいいわね」

初春「あはは。まあ、そのときですね、御坂さんは一人じゃなかったんです」

固法「白井さんはそのとき巡回中だったから、白井さんじゃないわよね?」

初春「ええ。御坂さん、彼氏さんと一緒だったんですよ」

固法「え?」

初春「御坂さんは彼氏さんと一緒にセブンスミストに来ていたんです」

固法「か、彼氏?御坂さんに?」

初春「はい。手を繋いで名前で呼び合ってました」(ホントは佐天さんが呼ばせたんだけど)「御坂さんも彼氏って紹介してくれましたし」

固法「へえ。御坂さんやるわね。じゃあ白井さんの様子がおかしいのは、御坂さんに彼氏ができたからなのかしら?」

初春「おそらくは。と言うかそれしか考えられないですね」

固法「最近の中学生は進んでるわね」

初春「あ、御坂さんの彼氏さんは高校生ですよ」

固法「いったい、どういった経緯で知り合ったのかしらね?ちょっと興味あるわ」

初春「御坂さんがスキルアウトを更正させようとしていたときに、スキルアウトに絡まれていると思って助けに出そうとしたのが彼氏さんで、それからみたいですけど…」

固法「まったく、御坂さんてば。危険だって言ってるのに。今度会ったら釘を刺しておかないと」

初春「私も注意したんですけどねー。あ、彼氏さんから言ってもらえば良いのか。御坂さん、彼氏さんの前だとすごく可愛かったし」

固法「機会があったら御坂さんの彼氏に注意してもらいましょう。…それで、御坂さん、どんな風に可愛かったの??」

初春「もじもじして上目遣いで彼氏さんのことを呼んだりとか、嬉しそうに寄り添ってたりとか」

固法「み、見てみたい気がするわ。そんな御坂さん」

初春「あはは。そのうち街で見ることができますよ。きっと。ラブラブでしたから」

風紀委員といえども年頃の女の子。まして知人の恋愛事情となると、知らず知らずのうちに話が盛り上がってしまうのであった。



―――


15:00 とある高校男子学生寮の一室


美琴「当麻。意外と器用ね」

上条「ふっ。上条さんの料理スキルを侮ってもらっては困ります」

美琴「普通に包丁で皮を剥けるのには驚いたわ。授業でも普通はピーラー使うし」

上条「何かあれ苦手なんだよな」

美琴「慣れればピーラーも具合いいわよ」

上条「まあそうなんだろうけど」

美琴「ふふ。でもこうやって一緒に料理するなんて、考えたことなかったわ」

上条「そういえば、夕飯作ってくれた時って、台所に入れてくれなかったよな?どうしてだ?」

美琴「あ、あの時は付き合ってなかったから、一緒に料理なんてできるわけないじゃないの馬鹿!」

上条「なんでだよ?」

美琴「ここ狭いじゃない。…アンタと肩とか手なんか触れちゃったら料理なんてできないって思っちゃって…」///

真っ赤になって視線を逸らすと、少女は恥ずかしそうに身を捩った。

上条「そ、そっか。いや、なんていうか、ゴメン」

美琴「…何で謝るのよ」

上条「いや、そこまで惚れられてたのに、全然気づいてやれなくてさ」

美琴「本当よ。苦労したんだから」

上条「悪い」

美琴「…でも、今こうして当麻と一緒に居られるから、いいんだ」

上条「俺も、今こうして美琴と一緒に居られるのは嬉しい」

美琴「ホント?」

上条「ああ」

美琴「ねえ、当麻。ちょっと困ったことになっちゃったんだけど」ウワメヅカイ

上条「どうした?」

美琴「料理中なんだけどさ、ぎゅってして欲しくなっちゃった」エヘ

上条「そ、そっか。…じゃあ、とりあえず鍋に水を入れて、切った野菜をその中に入れて…と」

美琴「ちょっと、何スルーしてるのよ」

上条「…こいつをコンロにかけて…と」

美琴「…馬鹿」シュン

上条「…よし、お次は、ぎゅー…と」ウシロカラ ダキツキ

美琴「ふぇ!?」///

上条「お求めはこちらでよろしかったでしょうか?姫」ギュッ

美琴「うん。…ありがと」

上条「どういたしまして」

美琴「ね?お鍋が煮えるまで、このまま?」

上条「お望みのままに」

美琴「じゃあ、このままで」

上条「ああ。わかった」



―――


19:30 とある高校男子学生寮の一室

上条「片付け終わったぞー」

美琴「お疲れ様」

台所からリビングへと戻ると、少年はテーブルの上で何かを弄っている少女の前に座る。

上条「何してるんだ?」

美琴「ふふ。ゲコ太もピョン子もケロヨンも可愛いわ」ニヤニヤ

上条「ホント好きだな」

美琴「当麻もこの良さが判ってくれると嬉しいんだけどなー」

上条「いや、男子高校生がそういうのを前にしてニヤニヤしてたらやばいだろ。常盤台のお嬢様がニヤニヤしてるのもアレかもしれないけどな」

美琴「べ、別にいいじゃない!誰かに迷惑かけているわけじゃないんだし!」

上条「まあ、俺の部屋とか自分の部屋ならいいけど」

美琴「じゃあ問題なし」

上条「ま、そうだな」

少女は六種類のクリスマスオーナメントを弄びながら、そのうちのひとつ、クリスマスツリーの下にゲコ太とピョン子が立っているものを手に取った。

美琴(…そうだ。これをあの紐に掛ければ)

立ち上がると、頭の上にあった部屋の蛍光灯の紐に手に持っていたクリスマスオーナメントを結んで再び腰を下ろす。

美琴「えへ。一応、クリスマスツリー。机の上に立たなから結んじゃった」

上条「お。いいんじゃないか」

美琴「食べる前に気付けば良かったんだけどねー」

上条「いやいや、充分すぎるほどクリスマスしてました。ホント、美味しかった」

美琴「良かった」

そう言って小さく微笑むと、少女は真っ直ぐに少年を見て、先ほど結んだクリスマスオーナメントを指差した。

美琴「あのさ。これ、クリスマスツリーってことでいい?」

上条「ん?いいと思うぞ」

美琴「じゃあさ、ツリーの下に女の子がいるんだけど、当麻は何もしないの?」

上条「どういうこと?」

美琴「…ヤドリギなんだけど」

上条「ヤドリギ?」

美琴「もしかして知らない?」

上条「…悪い」

美琴「別に謝らなくていいんだけど。えっとね、クリスマスの日、ツリーに飾られたヤドリギの下に居る女の子には、キスをしていいことになってるのよ」///

上条「え?」

美琴「もちろん、女の子に断られたらしちゃ駄目だけどね。はい。説明終わり」

上条「ええと、…つまり、美琴さんはその…?」(キスしてもいい…のか?)

顔を赤くする少年を上目遣いで見ながら、少女は小さく言った。

美琴「…当麻なら、その、断らないわよ」///

上条「そ、そうか」

ごくりと唾を飲み込んで少年は立ち上がると、少女の前へと歩いて行き、その肩に手を置く。

上条「いいんだな?美琴」

美琴「…」

返事の代わりに少女はゆっくりと瞼を閉じた。



上条「…」

美琴「…」

柔らかな感触がお互いの唇を刺激する。軽く触れるだけの優しいくちづけ。

美琴「…えへ。ファーストキス」(夢、じゃないよね?当麻、キスしてくれたんだよね?)

上条「上条さんもファーストキスですよ」(夢、じゃないよな?美琴とキスしたんだよな?)

美琴「そっか。嬉しいな」(もう一回、したいな)

上条「美琴…」(可愛いな。美琴)

美琴「お返し、するね」(いいや、わたしからしちゃえ)

上条「…んぅ!?」///

美琴「ん…」チュッ

先ほどの触れただけのものとは違い、少し唇を吸ってみる。言葉に言い表せない気持ちが少女の中を走った。

美琴(ちょっとだけ、当麻を奪ったような気がする)///

上条「…美琴」(俺も…)

美琴「んっ!?」

上条「…」チュッ

少女がしたのと同じように、軽く唇を吸う。蕩けそうな感覚が少年を襲う。

美琴(こ、これって、奪われてる感じがする)///

上条「…ヤバイな、コレ。止まらなくなりそうだ」///

美琴「…もう一回だけ」チュッ

上条「…ん」チュッ

しばらくの間、お互いに唇を吸い合う。しばらくしてから名残惜しそうに唇を離すと、少年は少女を抱きしめた。

上条「好きだ。美琴」

美琴「わたしも好き。当麻」

上条「キスでこんな気持ちになれるって、凄いよな」

美琴「うん。キスって凄いね」

上条「こんな気持ちになれるのは、美琴とだから。…美琴とだけだから」ギュッ

美琴「わたしも、当麻とだけだから。当麻じゃなきゃこんな気持ちにならないんだから」ギュッ

上条「ありがとう。美琴」

美琴「ありがとう。当麻」

お互いに素直な感謝の気持ちを伝えると、なんだか可笑しくなってきて、気が付くとふたりで顔を見合わせて笑った。

上条「なにやってんだろうな、俺達」

美琴「ホント。でも、素直に言いたいこと言いあえるのって、嬉しい」

上条「ん。そうだな」

美琴「だから…、ねえ?…もう一回、しよ?」

上条「み、み、み、美琴センセー!!その言い方はエッチすぎます」///

美琴「エ、エ、エ、エッチってどういうことよ!?」///

上条「アレのおねだりにしか聞こえません…ハイ」///

美琴「ア、ア、ア、ア、アレって何よ!?」///

上条「えーっと…、エッチの最終段階?」///

美琴「ど、ど、ど馬鹿ああああああっっ!!」///

上条「あーもー!!男子高校生の性欲舐めるなって言ってるだろうが!」///

美琴「あ…う…。と、当麻は、その、わたしのこと、そういう目で見てくれてるんだ?」///

上目遣いの少女の言葉に、少年はビクッと身体を震わせた。

上条「お前…それ、反則」(可愛すぎるんだよお前)

美琴「え?何か言っちゃいけないこと、言った?」

上条「…もう喋らないようにその口を塞ぐことにする」

美琴「え!?…んむっ!?」///

唇を重ね、舌先で相手の唇を軽く舐めながら少しづつ差し込んでいき、湿った場所に触れる。

上条(これって美琴の…)

御坂(し、し、舌!?いわゆるこれって大人のキスってやつ!?てかわたしもしないと!?)///

ぬるっとした感触がお互いの舌先に触れた瞬間、ふたりはほぼ同時に唇を離した。

上条「わ、悪い」

美琴「わ、わたし、舌出しちゃ駄目だった!?」

上条「え!?いや、その、イヤじゃなかったか?」

美琴「こ、こ、恋人のキス…でしょ?イヤじゃない、わよ?」

上条「いや、もう、でも、その…」///

美琴「今度は、わたしが塞いじゃおっと♪」

上条「んんっ!?」///

美琴(い、入れちゃっていいのかな?いいよね?)///

上条(なにこれ!?なにこれ!?舌、シタ、したぁぁぁ!?)///

美琴(あ、歯だ。この下が…舌よね?)///

上条(舐めていい、のか?やべ、ディープキスってやつかこれ?)

美琴(やだ、唾が垂れそう。…ええい吸っちゃえ)チュル

上条(やべ、吸いたい。いいか。吸っちまえ)ジュル

最初はぎこちなく、徐々に大胆にお互いの舌を絡ませながら、ふたりはその行為に没頭するのであった。


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