とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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ヒーローと超電磁砲は…




 とある秋の休日の朝、吹寄整理は公園内でランニングを行っていた。
 最近の運動不足で体がなまっていると感じたのか、ランニングは毎日の日課となっており、今日もすでに数キロは走っただろう。

「ふぅ……ちょっと休憩しようかしら」

 吹寄は独り言をつぶやき、足を止めた。
 彼女の額には汗が光る。

「喉、渇いたわね。確かこっちの方に自動販売機が……」
 
 この自販機というのは、例のお金を飲み込む魔の自販機である。 
 そんなことを知らない吹寄は自販機に近づき、ポケットに入っていた小銭入れから100円玉を取り出す。
 今日もまた1人尊い犠牲者がでてしまった……と思いきや、吹寄は100円を自販機に入れる寸前で手が止まった。

「え……?」

 思わず出てしまった小さな声。
 おでんジュースとかいうわけのわからない飲み物を目にしたからではない、彼女の目に世にも奇妙な光景が映ったからである。
 その光景とは――――――

「お待たせ! ごめん、ちょっと準備に手間取っちゃって……えと……待った……?」
「いいや俺も今来たとこだよ。ていうかあれだな、今日の服可愛いな、超似合ってる」
「ほんとに? 嬉しいっ! 当麻大好き!!」
「うおっ!! おいおい急に飛びつくなよ。 危ないだろ? ほら手出せって、早く行こうぜ?」

 なんていう会話が終わると共に、例の不幸少年とビリビリ娘は仲良く手を繋いで公園を去って行った。
 それはまさに“ありえない”光景。
 あの鈍感な少年に彼女がいるなんて聞いた事もなければ、そんな素振りを見た事も無い。
 というか自分の記憶が正しければ、上条は昨日も土御門や青髪ピアスと共に彼女がほしいだのどうだので言い合いをしていたはずだ。

「…………気のせい、ね。さてランニングの続き続きっと……」

 吹寄は今のを自分の気のせいとして、ジュースも買わず再び公園を走り出した。



 ♢ ♢ ♢


 場面は変わってこちらは街中。
 特に事件も起こらない平和な町には、今日も多くの学生で溢れていた。
 にぎやかで騒がしい人々、その中に一際騒がしいグループがあった。

「ねー早く早くー!! ってミサカはミサカは大声であなたを催促してみたり!!」
「あーはいはい。 つかそんな急ぐ必要なンてねェだろうがよォ……」

 急かす打ち止め、杖をつきたらたらと歩く一方通行、そしてその側にもう1人。

「何? もうバテたの? もやしっ子はスタミナないなー、なさ過ぎてひくレベル」

 もうお分かりかと思うが『妹達“シスターズ”』の末妹、番外個体だ。
 彼女の相も変わらずの毒舌に一方通行は、

「うるせェよ、こちらと杖ついてンだからしょうがねェだろうが。 それにこのスピードなら別に遅かねェ」
「あ、そ。 まあそんなことどーでもいいんだけどね……って、上位個体?」
「? おい、そンなとこで止まってどうした。 なンかあったの……か…………」

 なぜか止まっていた打ち止めの動きに続いて一方通行の言葉も止まる。
 彼らの先に見えたものは、

「えへへ……当麻の手温かいわね。 ずっと繋いでたいなー」
「俺は別にかまわないぞ? それに寒いなら手だけじゃなくて上条さん全身を使って暖まってもらっていいんですけど?」
「全身………………そ、それは夜にとっとく……/////」

 超絶ラブラブっぷりを見せつけるヒーローとオリジナル、周囲の目なんざ気にもしていない様子だ。
 それ見てあっけにとられていた3人だが、2人の姿が見えなくなってから番外個体が

「……………あの2人って付き合ってたの? おねーたまは奥出だしヒーローは鈍感だし、付き合う気配なんてないと思ってたんだけど、っていうか完全にキャラ違うよね」
「いや……俺に聞くなよ……一昨日アイツに会ったけどよォ、そンな話全くしてなかったンだが……俺は夢でも見てンのか?」
「…………はっ!! MNW(ミサカネットワーク)が大変なことに!? ってミサカはミサカは妹達の反応の恐怖に震えてみたり……」



 ♢ ♢ ♢


 固法美偉は混乱していた。
 理由は簡単、友人である御坂美琴の様子がおかしいからだ。
 道を挟んで向こう側に見える美琴は、輝かんばかりの笑顔を見知らぬ少年に見せている。
 
 佐天涙子は驚愕していた。
 理由は単純、いつもは勇ましい美琴がデレデレしているからだ。
 今目に映っている美琴は、いわゆる恋人繋ぎでツンツン頭の少年と手を繋いでいる。

 初春飾利は困惑していた。
 理由は明白、自分の情報に全く無い出来事が目の前で起きているからだ。
 これまで美琴が付き合っているという話など、聞いた事がなかった。

「初春、御坂さんが付き合ってるって知ってた?」
「……知りませんでしたけど……固法先輩はどうですか……?」
「いや……全く聞いた事ないわね……」

 そんなことを3人が話している間に、2人はどこかへ歩いて行ってしまった。
 呆然と立ち尽くす3人、あまりに驚いたせいか、追いかける気にもならなかった。

「私たち夢でも見てるのかしらね……」
「とりあえず言える事は……絶対に白井さんに見せちゃダメだね」
「そ、そうですね、もし見つかったら相手の男の人殺られちゃいますよ……」


 ♢ ♢ ♢


 休日という事もあり多くの学生で溢れる学園都市の第7学区、そんな中2人の

「う~ん!! やっぱりここのランチは別格の美味しさなのですよー!!」

 飲食店にしては異常なほどハイテンションなのはとある高校の教師、月詠小萌だ。
 見た目は小学生の彼女は、目の前のこの店特製ランチ(大盛り)をほうばっていた。
 そんな小萌と向き合って座っているのは、背丈もテンションも正反対のこの人、

「相変わらずこの店だとテンション高いじゃん。 ま、美味しいのはわかるけど」

 教師兼警備員(アンチスキル)で、、休日でもやっぱりジャージ姿の黄泉川愛穂だ。 
 食事の量も小萌ほど多くなく、適量のランチセットが黄泉川の前には置かれていた。
 小萌の食事の量に半ばあきれつつ、自分の料理に箸を伸ばした時、

「ん……あれは……」
 
 黄泉川が気づいた。
 向こう側の席に見たことのある少年が座っている。
 黄泉川の座っている位置からだと、彼の向かいの席は上手い具合に隠れて見えないが、どうも1人ではない様子だ。

「あれって……小萌のとこの生徒じゃん?」
「え? あ! 上条ちゃんなのですよ!! お~い、上条ちゃ……」

 上条の存在に気づいた小萌は、手にしていたナイフとフォークを皿の上に置き、手を挙げ呼び寄せようとした。
 が、その動作の途中で小萌は凍り付いた。

「ん? どうしたじゃん? 急に黙ったりして何かあった……」

 小萌の反応が気になり、黄泉川は身を乗り出し上条が座っている席全体を見る。
 彼女達がみた光景とは

「はい、あ~ん♪」
「ん……うん、美味いなー。 じゃあ……ほい、お返し」
「……おいしー! ……えとね、そっちのも食べさせてほしいなー、なんて……」
「はいはいお易い御用ですよ、姫様?」

 店内でも周囲を気にせず、お互いの料理を食べさせ合っており、当然のごとく注目を浴びまくっている。
 しばらく視線を外せなかった小萌と黄泉川だが、ようやく静かに元の位置に戻り

「…………あれは……多分別人ですよ、他人のそら似ってやつですねー」
「小萌……すっごい棒読みじゃんよ。 まあ気持ちはわかるけど……」



 ♢ ♢ ♢


「はぁ……俺のせっかくの休日が……」

 浜面仕上は大きくため息をついた。
 最近は何かと忙しく、今日は実に一ヶ月ぶりに得た休日、久しぶりに羽を伸ばそうと考えていたのだが、

「浜面、次これ持って。 あ、落としたら殺すから」
「ちょっと浜面、超だらだらしてないで運んでください」
「はまづら、がんばって」
「…………はい」

 と、まあ『新アイテム』のメンバーの荷物持ちをさせられているわけである。
 午前中から買い物に付き合い続け、彼の両手には大量の荷物があり不満は溜る一方だ。

(滝壺と一緒にいられるのは嬉しいけどさ、なんで麦野や絹旗までついてくるんだよ……つーかこのペースで荷物が増えたら…………無理!!)

 とは言え荷物持ちを放棄なんてしたら殺される。
 なんとかしてこの状況を打破できないものか、なんてことを浜面が考えていると

「う~ん。 この店可愛い服多いなぁ」

 という聞き覚えのある声。
 ひょっとして我らのヒーローではないか、と思いそちらの方向に目を移したのだが

「は?」

 浜面の口から間の抜けた声が飛び出した。
 その原因とは

「これなんか美琴に似合うんじゃない? ほら、サイズも合うしさ」
「そう? ほんとに似合うかなー……」
「もちろんさ!! 最高に似合うし可愛く見えるよ、上条さんのお墨付きだ」
「も~そんな調子のいいこと言って~♪ じゃあこれ買っちゃおうかなー♪」
「よっしゃ! じゃあ俺がプレゼントしてやるよ」

 なんてやりとりが繰り広げられた後、ツンツン頭の少年と茶髪の少女はレジの方向へと向かっていった。
 残された浜面はというと、

「…………え? 何あれ? 何? いやマジでなんなの?」

 開いた口が閉まらなかった。
 今のは本当に自分の知っている上条当麻だっただろうか、自分の目を疑い浜面が何度も目をこすっていると

「は~ま~ず~らぁ~……お前何落としてんの?」
「ッ!!」

 後ろから聞こえてきた嫌な予感のする声。

「あの……どうしましたか?」
「どうしましたか? じゃねぇよ!! てめぇの足下見てみろ」
「足下…………!!」

 浜面は麦野に言われるがまま、自分の足下に目を移してみると、先ほどまで手にしていた麦野と絹旗の買った荷物があった。
 どうやら目の前の状況に驚いた際に落としてしまっていたらしい。
 中身は主に服なので、落としても全く問題ないように思えるのだが、そんなことを言って納得する麦野ではない。

「…………」
「落としたら……殺すって言ったわよね?」
 
 この日、浜面は地獄を見たという。



 ♢ ♢ ♢


 この後も学園都市の混乱は続いた。
 何たってフラグ王子の上条と、学園都市第3位で知名度No1の美琴が街中でいちゃいちゃしているのだから、上条を好きな者や美琴のファンである者にとってはたまったもんじゃない。
 発狂寸前である。
 このまま放っておいては、今以上に大変な事態になることは避けられない。
 そこでとある人物たちが動いた。

「はァ……なんでこうなったンだ……?」
「俺に聞くなって! あいつらがおかしくなったせいで麦野に殺されかけたんだからな!!」

 その人物とは、一方通行と浜面、絹旗に番外個体。浜面は相変わらず(?)復活が早かった。
 番外個体ですらヤバいと思える状況だったので、彼らは上条と美琴を街中で見つけ、黄泉川のマンションへと連れてきた。
 途中、デートの妨害だなんだのと、かなりの抵抗を受けたが、そこは気合いで頑張った。
 ちなみに打ち止めは麦野と滝壺に預けておいてある。

 で、今どんな状況かと言うと、

「もー……せっかくのデートだったのに……」
「ほんとだよ。 一体なんだっての。 あ、美琴もっとこっち寄れって、寒いだろ?」
「うん♪」

 ぴったりとくっついて座っている2人は、顔を見合わせて『ねー』とか言っている。
 なんだか微笑ましいような光景だが、このままにしておくと元に戻った後に上条は罪悪感で、美琴は恥ずかしさで倒れそうなので、浜面が代表して

「あ、あのさ、上条」
「ん? どうした浜面? ていうかなんで俺らはここに連れてこられたんだ? さっきはここに着いたら説明するって行ってたんだから早く説明してくれよ」
「いや、あのそれはだな……もうちょっと後で説明するからさ、その、離れたらどうだ?」
「離れるって?」
「だから……」

 浜面は上条と目を合わさずに美琴を指差した。
 それを見た上条は『何言ってんの?』というような表情で

「はぁ? なんで離れないとダメなんだよ。 俺達は付き合ってるんだから離れる必要ないだろ? ていうか離れたくないし」
「そうよ! 当麻と離れるなんて嫌に決まってるじゃない」
「……さいですか…………」

 浜面は諦めた、もうこのバカップルは止められない。
 別に今だけ離れてくれればいいのだが、それも無理だ。

 浜面はその場を離れ、上条たちから見えないように、台所で開かれている作戦会議の場へと戻った。

「ごめん俺じゃ無理」
「ま、浜面最初から超期待してないですけどね」
「ひでぇ……俺にしては頑張った方なのに…………」
「それにしても…………治る気配ねェな。 そもそもなンでこンな面倒くせェことになったンだ?」

 一方通行の言葉にう~んと悩む、浜面、番外個体、絹旗。
 いの一番に口を開いたのは番外個体だった。

「さあ? 昨日までは普通だったのに今日になっていきなりだからね。 やっぱり魔術か科学が関係してるんじゃないの?」
「まァ、それしか考えられねェわな。 魔術だと土御門に聞かねェとわからねェが、科学だと考えられるのは第6位か…………科学、魔術意外で他に原因なンて……」
「そうだ!! わかった!!」

 突然、浜面が大きな声を出した。
 その声をうっとしいと思ったのか、番外個体は睨みながら
 
「わかったって原因が?」
「ああ! 簡単な話だったんだ!! あの2人は偽物なんだよ!!」
「…………はァ?」
「浜面、バカとはわかってましたが超バカですか?」
「バカバカ言うな!! ていうかさ、とりあえず見とけって!!」




 浜面の言う事を全く理解できない、そんな3人を尻目に浜面は再び上条と美琴の元へ向かった。
 そこでは……

「最近寒くなってきたわね。 風邪引かないようにしなきゃ」
「そうだなー。 まあ俺にも美琴がいるから寒くないけどな。 ほら、こうすれば温かいだろ?」
「うん……確かにこうやって後ろから抱きしめられると温かいわね……えへへ」

 座った状態で上条が後ろから美琴を抱きしめていて、2人は普段では考えられないくらいいちゃついていた。
 もはやザ・バカップルだ。
 そんなバカップルを目にし、浜面は一つ咳払いをして、2人の前に立った。  

「な、なあお前ら、ちょっといいか?」
「「ダメ」」
「…………」

 浜面、撃沈。
 予想外の返しをくらい若干怯むも、ここで引き下がるわけにはいかない。
 浜面も負けじと言い返す。

「ダメってさ、なんでダメなんだよ!!」
「今いちゃいちゃしてるからだよ。 空気読めよなー浜面」
「そうよ! せっかくの休日だってのにデートの邪魔されるし……」
「…………あのさ、そんないちゃいちゃしてる2人にお願いがあるんだ。 単刀直入に言う。 キスしてるとこ見せてくれ!! そしたら帰っていいから!!」

 あのアホは何を言っているんだ、一方通行と番外個体は浜面の斜め上を行く言動に頭を抱えた。

「……どーすんの第一位、あのアホおかしなこといい出したけど」
「…………俺はもう知らねェよ。 勝手にやらしとけ」

 呆れすぎて一方通行は全てを投げ出した。
 が、しかし、浜面にはそれなりの理由と考えがあった。

(この2人は偽物に決まってる!! でなきゃ上条がこんなことするわけねーし、第一アイツに科学も魔術も聞かねーじゃん!!)

 美琴はともかく、上条は『幻想殺し』を持っているため彼に特殊能力は聞かない。
 ということは、目の前にいる上条は偽物だ!!と考えたのだ。
 浜面にしてはかなり頭が冴えたほうだったのだが、

「ここで? いいわよ」
「へ?」
「じゃあ美琴、ん」

 浜面の目の前で、上条は何も気に留めることなく、美琴の口に優しくキスをした。  
 それはほんの一瞬の出来事だったが、確かに2人の唇はふれあってた。
 正真正銘のキスで、2人はとても幸せそうに笑顔を見せ合っている。
 その一方で浜面の顔は青くなっていく。

「…………あっれぇ~……? お、おっかすぅいなー……」
「はぁ~まず~らく~ん……ちょっとこっち来ようか」

 浜面は番外個体によって回収され、台所へと連れて行かれた。
 そこには頭を抱える絹旗と、結構怖いレベルの一方通行が立っていた。

「浜面ァ……あれどうすンだよ。マジで」
「ど、どうって何が……」
「何が? じゃねェよ!! お前のせいでしちまったじゃねェか!! 元戻った時に記憶残ってたらどうすンだ!?」
「さすがのミサカでも今のはないと思うわ。 そもそもなんで偽物と思ったのよ」
「そ、そりゃ上条の科学とか魔術が効くわけないから偽物かと……」
「全くほんとに超どうするんですか!? 半分笑ってますけどこれ超とりかえしのつかないことですからね!?」
  
 そんなかんじで4人があーだこーだ言い合っていると




「お~い、もういいだろ?」
「私たちもう帰るわねー」
「「「「ッ!!?」」」」」

 上条と美琴が帰ろうとしていて、すでに靴を履き終わっていた。
 手まで繋いでおり帰る気満々だ。
 当然、全く問題が解決していないのでまだ帰られるわけにはいかず、一方通行が慌てて引き止めに入る。

「おい、もうちょっと待て。まだ話が……」

 ガラにもなく慌てる一方通行、引き止めるために上条の右腕を掴む。

「おいおい引っ張るなって! マジで何かあったのか?」
「……あったかどうかって聞かれるとあったンだがなァ…………」
「なんだはっきり言えよ。 ていうか今日のお前らなんかおかしいぞ?」
「……あのな、おかしいのはお前らのほうなンだよ!!」

 いい加減イラっときたので、一方通行は上条の右手を掴み、強引に引き戻そうとした瞬間―――

「――――――あァ?」

 一方通行の動きが止まった。
 上条の手を握ったままピタリと、動かない。

「ど、どうした一方通行? なんかあったのか?」

 あまりに動かないため、浜面が声をかけると、一方通行がようやく上条の手を離し振り返った。
 その顔は

「おい、どうしたんだよ!!
「…………あァ……言葉で説明するよりコイツの手、触ったほうがわかりやすいってもンだ」
「は? 手? 手って……『幻想殺し』?」

 浜面は一方通行に言われるがまま、わけがわからないという表情をしている上条の右手に軽く触れた。
 その瞬間――――――

「あ…………」
「な? わかっただろ?」

 浜面は目を見開き、一方通行と目を合わせた。
 2人が今起きている全ての状況を理解した瞬間だった。
 しかし、残された番外個体と絹旗はまだ一切理解できていない。

「ちょっとどういうこと? ミサカたちにも説明してくれない?」
「そうですよ。 何2人で超わかった感じになってるんですか」

 などと不満を口にする2人に、一方通行が重い口を開く。

「…………だから、間違ってたのは俺らのほうなンだよ」
「…………は? だからどういうこと?」
「記憶が違ってたのは、俺らのほうだったってことだよ……つまり『ヒーローと超電磁砲は付き合ってる』ってことのほうが正しかったンだ」
「「え」」





 ――――実に簡単な話だった。
 『上条と美琴がラブラブ』ということは、今となってはごく普通のこと、誰でも知っているレベルだ。
 半年ほど前に付き合い始めてからバカップル一直線で、今日の光景は何もおかしなことではない、原因こそ不明だがおかしかったのは一方通行や浜面たちだった。
 彼らの記憶は半年以上遡り、『まだ上条は鈍感だし、美琴は素直になれないツンデレ』というものに変換されており、まさか自分たちの記憶がおかしくなっているなんて思いもしなかった。
 
 
 そんなこんなで番外個体と絹旗も(美琴が若干睨む中)上条の右手を触り、全てを理解した。
 しかし、肝心?の上条と美琴は全く状況を理解できていない。
 美琴に至ってはちょっと不機嫌になってしまっていて、

「あのさー……さっきから記憶が違ってたとか一体何の話してんの? 長々と時間とられるし、手触るし……」
「……いや………なんでもないです……デートの邪魔してすいませんでした…………」

 いたたまれずに謝る浜面。
 すると上条が
 
「まあ何かあったんだろうけど、その様子だとどうせくだらないことだったんだろ?」
「うお、さすがヒーロー。 ミサカもびっくりの大正解だよ☆」

 やっぱりなー、とつぶやく上条。
 こういうことに関する鋭さは天下一品だ。
 上条はさらに詳しく話を聞こうとしたのだが、

「ねぇ……そろそろ行かない? 結局大丈夫なんでしょ?」
「ん……そうだな…………じゃあお前ら、俺達はもう行くわ。 今度は邪魔すんなよ?」

 こうして上条と美琴は『いつも通り』いちゃいちゃしながら、一方通行らの元から去っていった。
 それを見届けた4人は、大きなため息をついて部屋へと戻った。
 しばらく沈黙が続いた後、

「あー……なんか俺バカみたいだな…………ただアイツらの邪魔しただけじゃん……」
「それを超言わないでくださいよ浜面。 私だって超わかってますから……」
「てかさ、さっきから言ってたことだけどなんでこんなことになったわけ? 原因は?」
「さァな……今の感じから第6位が原因って線はないだろうから、残された原因は……ン? 土御門の野郎からメールか?」

 ふいになった携帯の着信音。
 一方通行が送られてきたメールを開いてみると、

『イギリス清教の新人魔術師のミスで
 一時的に学園都市内部で記憶変化魔術か発動した。
 多分気づいているやつが多数いるはずだが、
 もう5分もすれば元に戻るから気にするな』

 という内容だった。
 読み終えた一方通行と3人は
 
「…………明らかに連絡がおせェだろうがあの野郎……1 発 ぶ ん な ぐ る 」
「「「(超)同意」」」」

 この数十分後、理由もわからずに襲撃される金髪グラサンの姿があったとかどうとか









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