とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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Parallel World Trips




Prologue ノルン三姉妹の末っ子の名前はスクルド


「ねぇ、知ってる?オティヌス」

「……なんだ、ヴェルトランス=レギオンラインか」

「私には『ノルンの三姉妹のスクルド』の役目があるの。今回の大規模以降移行魔術に使われるんだけど
グレムリン的にはこの大規模移行魔術は反対?」

「私の計画の中にスクルドは必要ないな、『お兄様』とやらにご執着のお前が決めることじゃないのか」

「それもそうでした、じゃあねオティヌス」



黒い髪をなびかせて、暗くじめじめした部屋から去っていくヴァルトランス=レギオンライン。

日本人の癖に北欧神話をベースとした魔術を使ったり、オリジナルの霊装を使ったりとかなり魔術結社界でも嫌われている魔術師だ。

『職人の指先』を用いて、指の組み合わせで魔術を使ったりする辺りはグレムリンのトールと同じくらいに強く、優秀な魔術だといえる。

ヴァルトランス=レギオンラインは少し跳ねている黒髪を押さえつけて、冬だというのにじめじめと湿気が多いロンドンの街に嫌気が差した。

雨が降っていた。ヴァルトランス=レギオンラインは顔を覚えていない兄に思いを馳せながら、幻想殺しの移行準備に入る。

使う霊装は『スキッドブラドニール』。ミョルニルと一緒に創りだされた魔法の帆船で、神族を全て載せられる程大きいのだが、折りたたむと袋に入るくらいだとか。

スキッドブラドニールと『ノルン』のスクルドを使って移行魔術を行う。


「兄さん……逢いたいな」


そう呟くと、ヴァルトランス=レギオンラインは傘も刺さずに淀んだ雰囲気のロンドンの街へ歩きだした。



                     *


上条当麻は学園都市、第三位の超電磁砲である御坂美琴と目を見合わせていた。

気がつけば、知らない所に放り出された。そんな表現が一番適している。


「……ここどこ」

「さぁ」


二人は全く状況を把握できない。そんな時だった、空気を切り裂く音がして御坂は警戒して空気を切り裂いた人物へと視線を向けた。

紫色の髪の毛に、細い体。手には鉄矢が二本あって、腕には風紀委員だという事を示した腕章があった。

小柄な男の子、そんなイメージが強い少年は『風紀委員です、とっととお縄についてくれ』と言うと御坂の背後へ空間移動した。


「あ、アンタ! 私が何したってのよ!」

「不法侵入、これは重罪だぜ」


鋭い蹴りが御坂目掛けて放たれた。しかし、砂鉄の壁が少年の足を掴んで御坂は死なない程度の電気を少年にぶつけた。

じじじじじっっ!!!と電気の音がして、少年は倒れこんだ。

しかしこれだけではなかった。御坂は同系統の『電磁波』を感知して、御坂妹の存在を浮かべたが違和感は拭われない。

電磁波のレベルが違う。まるで『原子崩し』レベル……つまりレベル5級の電磁波が周囲に放たれていた。

御坂は固唾を呑んで近づいてくる電磁波を警戒している。

上条はそんな御坂の様子に怪訝な視線を向けていたが、身体中に帯電させた少年が出てきたのに気付くと右手拳を握り締めた。



「お前らか、黒をやったのは。悪いが、手加減できねぇぞ!!」


少年の右手から光速レベルの電気の槍が放たれる。しかし御坂は電気を支配できる、つまり電気の槍をも支配して軌道をそらす。

同時に少年の周りに砂鉄を張り巡らせて、一気に圧縮した。

高速運動する砂鉄の圧力で瀕死寸前かと思われたが、どうやら同系統の能力であるらしく御坂が支配していた砂鉄を少年が上から支配し返した。

少年のポケットからは一枚のコインが出てきた。それを指先で弾くと、御坂が使うレールガンの様に御坂に照射した。

音速の三倍で飛ぶコインの弾丸は上条が右手を構えるより先に、御坂が軌道をそらしていた。

それと同時に黒、と呼ばれた少年が落とした鉄矢をレールガンに模せて発射する。


「アイツも……」

「超電磁砲……」


鉄矢は少年によって防がれた。


「成程ね、ここは私達がいた世界とは全く別の世界のようね」

突然、御坂は警戒を止めて思考に入った。

少年も御坂の突然の変化に少し対応しきれず、戦闘態勢を崩して歩み寄ってくる。

「どういう事だ御坂」

「つまり、私は超電磁砲、アイツも超電磁砲。つまり別世界の私って事。それにこのガキは黒子……アンタもこの世界に居るハズ。
男か、女かは知らないけどね」

「つまり何か、お前らは別世界から来て、『ヴァイス・ログレベル』の監視衛星に引っかかって……この馬鹿が来たって訳か」


少年が口を挟む。頭の回転レベルは殆ど同じ。御坂の言っていることも荒唐無稽ではないという事か。

流石第三位、と上条は素直に感心すると少年が上条を睨んだ。



「あんた、名前は?」

「……上条当麻」

「か、上条!? あ、アイツの男版がこれか……がっかりだな」

「へぇこいつの女版が有るんだ……あれ?噂をすればなんとやらじゃないの?」

「へ? げっ……上条っ」


遠くから『御坂―』と声を挙げて走ってきている上条の高校の女子制服を着ている少女を見つけた御坂。

少年は肩を狭めて、背筋を伸ばした。顔を真っ赤にして慌てるその様は御坂にとっては同情の対象になりうるものだった。

女版上条の容姿は男上条程ツンツンしていないが、上の部分が少し跳ねていて、身長は御坂と同じくらい。胸は御坂と同じくらいで、大和撫子という言葉が似合う人物だと

思った御坂。


「ん?その人らは?」

「あなたが上条さん? 初めまして御坂美琴です」

「何で名前を知ってるのかを小一時間聴きたいところで・す・が。えっと……美琴さんは御坂の妹とか姉なの?」

「簡単に説明すると、私とここのツンツン馬鹿が違う世界から飛ばされて来たのよ」

「はい?」


女版上条は素っ頓狂な声をあげた。

まるで荒唐無稽な事を聴いたかのように唖然として、顔を紅くしている少年と御坂の顔を見回して。

「あはは……また何を」

「本当よ、ねぇ?」

「ま、まぁそういうことらしい」

「お名前を伺ってもいい?」

「こいつは上条当麻、私は御坂美琴。この男の女版であなたの男版が上条当麻」


御坂は混乱している女版上条へ説明を続けていく。

「あなたたち、名前は?」

「上条当夏(かみじょうとうか)っていうの、よろしくね」

「お、俺は御坂美咲(みさかみさき)、よく女みたいな名前って言われるが気にしないでくれ」



御坂は『みさき』と言う名前を聞いて、あの憎たらしい第五位を思い出した。

脳裏に浮き出てきた第五位を払拭するように頭をぶんぶんと振った。

上条がはぁ、と訳の分からない現実に溜息をついてベンチに腰掛けた。

同時に当夏が炭酸飲料缶のプルタブを開ける。

上条が座ったベンチは張り紙が剥がされているペンキ塗り立てで、上条のズボンには塗装されていた赤色のペンキが付いていた。

当夏の開けた炭酸飲料缶は吹き出して、体に中の炭酸がかかってしまう。

そして二人は溜息をついて言った。


「「不幸だぁぁああ!」」








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