ひらりと桜が舞う頃に
3月上旬
学園都市にも桜が咲いた。
早咲きというものだ。
桜を見にたくさんの人が集まっている。
上条とインデックス、美琴の3人も桜を見に来ていた。
「きれいな桜だね!」
「ええ、本当に綺麗ね」
「桜ってほんとにきれいなんだな」
川沿いの一面、向こう岸にも桜が咲いていた。
「ね、ね、はやくはやくー!」
「久しぶりだね、上条当麻」
上条に話かけてきたのは赤髪の神父、ステイル=マグヌスだ。
「あ、ステイル!」
インデックスはステイルと会えて嬉しそうだが、
「久しぶりだな。また何か事件でもあるのか?」
上条は嬉しくなさそうだ。
無理もない。上条がステイルと会う時は、いつも事件が付き物なんだから。
「いや、今日はただの観光だよ」
上条が安心する。楽しいこの時間を邪魔されずにすんだのだから。
「インデックス、近くに団子を売っていたのだが、一緒に行かないかい?」
「え?お団子!?行きたいんだよ!」
「じゃあ、行こうか。彼女は責任をもって預かるよ」
「じゃあ行ってくるんだよ、2人とも」
「いってらっしゃい」
「また後でな。あ、そうだステイル」
上条がステイルに近寄ると小声で話しかける。
「(インデックスのやつ、すぐどっか行くからな。しっかり手、繋いでおけよ?)」
「な、何を言っているんだ君は!ほ、ほら行くよインデックス」
ステイルは顔を真っ赤にしながら歩き出す。
「あ、まってよー」
インデックスもステイルについていく。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「うん」
上条と美琴も歩き出す。
「イ、インデックス。迷子になるといけないから手、繋ごうか」
なにやらステイルの声が聞こえたが2人は聞かなかったことにした。
上条と美琴が歩いていると、反対側から白い髪に杖をついた男、一方通行が歩いてきた。
その左右には打ち止めと番外固体もいる。
「久しぶりね打ち止め、それに番外固体も」
「お姉さま久しぶりーって、ミサカはミサカは挨拶していたり」
「やっほうおねえたま、久しぶり」
「そういやァ、あの白いシスターはいねェのか?」
「ああ、さっき友達と団子食べにいったんだよ」
「ふーん、じゃあおねえたま、今日は2人っきりでデートなんだ」
番外固体がからかう様に美琴に話しかける。
「えっ、そんなデートだなんて、いや、でもその通りだし・・・・・・」
「み、美琴さーん、落ち着きましょうねー。上条さん恥ずかしいですよ」
「そ、そうよね。ごめんね当麻」
「い、いいんだよ」
照れる2人を見て、番外固体は悪魔の笑みを浮かべる。
「もぉ、そんな2人ともそんなにいちゃいちゃしちゃってさー。
ミサカ達の愛をもっと見せつけなくちゃね。ねっ?あーくん?」
そういうと、番外固体は一方通行に抱きついた。
「あー番外個体ずるーい、ミサカもー!」
反対側の打ち止めも一方通行に抱きつく。
「だァー!鬱陶しィ!抱きつくなァ!つゥかあーくンってなんだァ!!
ほら行くぞお前らァ!」
打ち止めと番外固体に抱きつかれたまま一方通行は歩き出す。
「あいつ、幸せそうだったな」
「ええ・・・・・・」
美琴のどこか悲しそうな顔をしている。
「なあ、美琴。たしかにあいつは10000人の殺しちまったけど、
自分の罪を自覚して、反省して、残りの10000人のために必死で戦ったんだよ。
それに俺はあいつが打ち止めのために命を懸けて戦ったのを知っている。
許してやってくれなんて言わない。だけど、恨まないでやってほしい」
「わかってるわよ。そんなこと」
「そうか、じゃあ、行くか。美琴」
「うん!」
2人は笑顔で再び歩き始めた。
結構歩いただろうか、桜の道も途切れていた。
「結構歩いたな。そろそろ休憩するか」
2人は土手に腰をかける。
少ししてから上条が美琴に話しかける。
「なあ美琴、俺は今幸せだ」
「え?」
「インデックスにステイル、神裂や一方通行、御坂妹や打ち止めに番外個体に浜面に滝壺。
それに何より美琴、お前がいる。こうしてお前と一緒に桜を見られるだけで俺は幸せなんだ。
命を懸けて戦って、皆が笑っていられる。それだけで俺は幸せなんだ」
上条当麻はその拳でたくさんの人を救ってきた。
「まったく、探しましたよステイル。財布を忘れるなど貴方らしくもない」
「あ、ああ。すまない」
「あ、かおり!かおりも一緒にお団子食べようよ」
ある者はは失ってしまった時間を取り戻してた。
「あ、お団子だ!ねえあなた買ってよーって、ミサカはミサカはおねだりしてみる」
「あーはいはい、買ってやるよォ」
「にしても司令塔には甘いよね、親御さん」
「誰が親御さんだァ!つーかいつまで抱きついてやがる、さっさと離れろォ!」
ある者は犯した罪を自覚しながれも、掴み取った幸せを噛み締めていた。
「超遅いですよ2人とも」
「悪い悪い」
「ごめんね、きぬはた、むぎの」
「何してんだか、今日はフレンダの墓にも行くんだから。ほら行くよ」
またある者は手に入れた日常を楽しんでいた。
皆が笑っていられる。
そのために上条当麻は戦い、平和を手に入れた。
そして自身の幸せも掴み取った。
「ねえ当麻」
「ん?なんだよ。っ!」
美琴が上条にキスをしたのだ。
「えへへ、ファーストキス、あげちゃった」
「最初は上条さんからしようと思っていたのに・・・・・・」
「だったら、次はあんたからできるようにしなさい」
「へいへい」
「あーあ、疲れちゃった」
そう言うと、美琴は上条に肩を寄せる。
「おやすみー・・・・・・」
「あーもう。しょうがない、その寝顔に免じて許してやるか」
美琴はスースーと寝息を立てている。
「あー俺も眠く・・・・・・なって・・・・・・」
上条も眠りにつく。
「とうま、みこと、起きるんだよ。まったく2人してこんなところで寝ちゃって」
上条が目を覚ましたらインデックスの姿があった。
辺りも少し暗くなり始めてる。
「ああ、すまん。ほら、美琴起きろ」
「うにゅ?とうま?」
「何寝ぼけてんだよ、ほら帰るぞ」
「ふぁーい」
「上条当麻、僕たちも帰るよ」
上条に声をかけたのはステイルだ。
「またね、ステイル、かおり」
「またね、か。ああ、またね、インデックス」
「では、また会いましょう」
ステイルと神裂は帰っていく。
「じゃ、俺たちも帰るか」
「うん」
「はーい」
3人も帰るために歩き始める。
「帰りにスーパー寄っていかなきゃね」
「今日の夕飯は何なんだ?」
「うーん、今日は唐揚げにしようかしら」
「お、美味そうだな」
「やったー!」
笑顔の3人に桜の花びらがひらりと舞い降りる。