とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



さんっ! 季節の変わり目注意報っ!


9月16日 ごぜん11じ

チッチッチ…という時計の音。
カリカリ…という上条さんが数学の問題と格闘している音。
くしゅんっ!チ―ン…というみこにゃんがくしゃみをして鼻を噛む音。

チッチッチ…

「……、」

「へくしゅっ!」

さっきからこれが何度もリピートされています。一体どうしたのでしょうか。
みこにゃんの噛んだティッシュの数は山のように積もっています。
それでもみこにゃんはテレビアニメ「それいけ!ニャル子さん(再放送)」に夢中です。

「ずびっ…」

そんなみこにゃんの様子をうかがっていた上条さんは、とうとう我慢ができなくなりました。
シャーペンを置き、テレビに夢中のみこにゃんを抱えあげました。

「にゃ!?にゃにすんのよー!今大事なとこにゃのに!!」

「どう考えてもこっちの方が大事だろ!さっきからくしゃみしてばっかりだし」

「たまたまよ!ハウスダストよ!」

「失礼だな!一応掃除してるけどな!」

そう言いながらも叫ぶみこにゃんのおでこに手をあてます。少し熱いです。微熱でしょうか。

「ちょっと熱いな。よし、悪化したら困るから病院行くぞ」

「え!?嫌よ!まだテレビ終わってにゃい…じゃにゃくて!病院なんて行かなくても大丈夫だって!」

「ダメだ。悪化して高熱が出たら猛ダッシュで病院まで行くことになるからな」

「嫌―!痛いの嫌―!」

じたばた暴れるみこにゃんを抱えながらテレビを消すと、上条さんは戸締りを始めました。


どうじつ 11時はん

「嫌!鍵閉めないで!うにゃーっ!」

「あんまり叫ぶなって。喉痛くなるぞ」

ガチャリとしっかり鍵を閉める上条さん。いつもは肩に飛び乗りますが、今日は心配なので腕の中にいます。
耳付きの白い帽子は冷え対策です。真夏の蒸し暑さから急に冷え込む今日この頃です。

「ネコ用マスクとかあればいいんだけどな」

「うぅ…にゃー…」

あれから保険証やら財布やらを捜し、ついでにペットショップに隣接する動物病院の名刺も発見しました。
その間にみこにゃんは自分で選んだ「暖かそうな格好」に着替えていたのです。

「意外と近くて助かったぜ。近くのバス停から駅まで行って、そこから徒歩15分だって」

「早く着くってことじゃにゃいのよー!」

「だから叫ぶなって。ほら、帰ったらマシュマロあげるから」

「にゃー…」

さすがのみこにゃんもここまで言われると従うしかありません。
マシュマロが待っていると思って今日は頑張るしかないのです。


どうじつ 12じ10ぷん

「次の方、どうぞ」

ついにその時がやってきました。みこにゃんにとって、ここまでの時間は記憶にないぐらい早く感じていました。
ペットショップの隣に隣接するこの病院、評判がよいので今日も多くのネコが来ていました。

「い、嫌!やっぱり嫌―!」

「マシュマロが待ってるぞー」

上条さんに抱っこされて診察室へと連れていかれてしまいました。もう逃げられません。

「こんにちは。あら、茶毛のネコなんて初めて見ました…今日はどうされましたか?」

優しそうな感じの白衣のお姉さんがみこにゃんを見つめます。しかし、それが怖くなって上条さんに抱きついてしまいます。

「こら、ちゃんと診察してもらわなきゃダメじゃないか」

そう言ってまた向き直ります。ついでに帽子も取られてしまいました。

「くしゃみが…出るのと…微熱気味です」

「そうですか。季節の変わり目は気温の急激な変化が原因で多くのネコが風邪を引いています。
 中には高熱で何日も苦しむネコもいるそうです。人間と比べると体も小さいですし、環境の変化に耐えられないのも仕方ありません」

「そうですか…」

「今日は解熱剤とアレルギー性の炎症を抑える薬、念のための咳止めを出しておきますね。林籐さん、体温計お願いします」

「はい、どうぞ」

別の看護師から体温計を受け取ると、ボタンを押してみこにゃんの脇に入れました。

「にゃっ、くすぐったい」

「我慢だ我慢」

しばらくすると、ピピピ…と音が鳴りました。さぁ、何度でしょうか。

「37.3度、微熱の範囲ですね。でも、これから上がる可能性が高いので、十分気を付けてください。
 ご飯は消化に良いおかゆなどがおススメですよ。あと、家に帰ったら十分安静にしていてくださいね」

「分かりました」

「それでは、お大事にしてくださいね」

「「ありがとうございました」」

2人はお辞儀をしすると、診察室を出て行きました。



どうじつ 13じ15ふん

病院から家に帰ってくるまでの間で、みこにゃんの容態が少しずつ悪化していきました。
家に着くころにはぐったりとしていて、上条さんも焦っていました。

「大丈夫か、みこにゃん」

「にゃ…」

帽子を外し、上着を脱がせると、すぐにベッドへ寝かせました。

「ちょっと待ってろ。薬と冷やしたタオルとか持ってくるから」

みこにゃんは苦しくてなにも言えませんでした。熱が上がり、意識が朦朧としてきたのです。
体は熱いのに、寒気がします。鼻で息をするのも辛くなってきました。

「に…ゃぁ」

「みこにゃん!」

何かたくさんのものを持ってきた上条さんが視界に入ります。
「寝る前に薬飲まなきゃな。起き上がれるか?」

「にゃ…っ」

むく、と起き上がり、水の入ったコップと錠剤を受けとりました。いかにも不味そうですが、ここは一気に飲み干しました。

「ゲホッ、ゴホッ」

「わわ、どうした!?」

慌てて背中を撫でる上条さん。そっと、寝かせてあげました。そして、額に冷たいタオルが押し当てられました。ひんやりしていて心地よいです。

「はぁ…にゃ…」

「思った以上に高い熱が出ちまったな…みこにゃん、寝られるか?」
みこにゃんは小さく頷きました。頬も上気していて、見ているだけでも辛いです。

「おかゆ作っとくから、起きたら食べような」

タオルを直し、肩まで布団を掛けてあげました。ついでに大好きなゲコ太のぬいぐるみも隣に寝かせます。
早く治る、おまじないです。


どうじつ 15じ50ぷん

たっぷり睡眠をとったみこにゃんは、パチリと目を覚ましました。
時計を見ると、2時間以上経っています。額のタオルはまだ少し冷えています。きっと上条さんが頻繁に変えてくれたのでしょう。
しかし、少し寝たぐらいではすぐに下がらないのが熱です。体は汗をかいたせいもあり、熱いです。

「にゃー…」

力なく鳴くと、台所からスプーンとお皿を持った上条さんがやってきました。不安そうな表情でみこにゃんの顔を覗きます。

「さっきよりは少し楽になった…かもな。どうだ、これ食えるか?」

「にゃに…これ」

「野菜入りのおかゆだ。食べやすいように小さく切ったから苦味もないと思うぞ」

「…いらにゃい」

「そうか…残念だな、せっかくデザートのチョコかけマシュマロも作」

「やっぱり食べる」

「いい子だ、ほら口開けろ」

「にゃー…」

小さな口を開けるみこにゃんに、1口サイズのおかゆを食べさせます。(常温で冷やし済み)

「食べられそうか?まずかったらはっきり言えよ?」

「た、食べられるもん…」

たっぷり30分かけて食べ終えたお手製のおかゆ。その後には大好きなチョコかけマシュマロのデザートが待っていました。
大好物のものを食べると、なんだか元気が出てきました。


どうじつ 16じ40ぷん

マシュマロも食べ終わり、もう1度眠ろうとすると、上条さんが濡れタオルと着替えを持ってきました。

「汗、かいただろ。体拭いてやるから」

「か、体拭く!?」

「背中だけだぞ?前は自分でな」

いくら(タオルを巻いて)毎日一緒にお風呂に入っているとはいえ、体を直接拭いてもらうのは若干の抵抗があります。
しかし汗でびしょびしょのまま寝るのはもっと嫌なので、仕方なく拭いてもらうことにしました。
上条さんに向こうを向いてもらい、ボタンを外します。
脱ぎ終わると、背中を向けました。

「いいわよ…」

「ん、背中もちょっと熱いな」

火照った体に濡れたタオルがやたらと気持ちよく感じました。汗も拭き取ってすっきりです。
首や肩もしっかり拭いてなんだかお風呂に入った後のようです。
その後自分で前も拭き、洗濯したばかりの部屋着に着替えます。

「にゃー…」

満足そうに鳴くみこにゃん。上条さんはそんなみこにゃんの頭を優しく撫でると、こう言いました。

「早く治して、またたくさん遊ぼうな」

「にゃー」

季節の変わり目で引いてしまった風邪も、きっとすぐに治ることでしょう。

Fin.








ウィキ募集バナー