はちっ! 2年前の…
これは、2年前の、春のおはなし――――……
「それじゃあ当麻くん、この子のことよろしくね」
「分かりました。美鈴さんも頑張ってください」
「はいはーい。それじゃあね!」
今日は、上条さんのおうちに1匹の子ネコがやってきました。
というより、上条さんが預かったといったほうが正しいのですが。
美鈴さんがこの春大学に通うことになり、子供の面倒を見てあげられないかもしれない…と悩んでいた時に見つけた上条さんのアドレス。
早速連絡を取ると、快く了解を出してくれました。
というより、上条さんが預かったといったほうが正しいのですが。
美鈴さんがこの春大学に通うことになり、子供の面倒を見てあげられないかもしれない…と悩んでいた時に見つけた上条さんのアドレス。
早速連絡を取ると、快く了解を出してくれました。
美鈴さんが帰ると、上条さんは腕の中でこちらを見つめる小さな子ネコに言いました。
「これからよろしくな、みこにゃん」
みこにゃんは訳が分からずに首を傾げました。
「(まま、どこに行くんだろう…?この人誰…?ここ、どこ…?)」
「まずは日用品の整理からだなー、…って結構たくさんあるな」
「(まま…)」
「よし、お前はリビングで待ってろよ。あとで昼飯用意するからな」
上条さんはみこにゃんをソファに座らせると、急いで届いた荷物を整理し始めました。
ごご 1じ
「ふぅ…終わったな。すげぇ疲れた…」
みこにゃんのベッドやら布団やら枕やらぬいぐるみやら大量のネコ用家具を運んだ上条さん。
かなりの重労働です。
かなりの重労働です。
「にゃー…」
「お腹すいたか?ちょっと待ってろ、すぐ作るからな」
「(暇だにゃ…何かにゃいのかにゃ)」
「あ、待ってる間は暇だよな。さっきこれ見つけたんだけど、遊ぶか?」
上条さんは荷物の奥の方に入っていたゲーム機を取り出しました。
よく見ると、「NYANTENDO」のロゴが入っています。
みこにゃんに渡そうとすると、ササッと奪われてしまいました。
よく見ると、「NYANTENDO」のロゴが入っています。
みこにゃんに渡そうとすると、ササッと奪われてしまいました。
「私の!」
敵を見るような目で睨まれてしまいました。
「そ、そうだよな。ごめん」
みこにゃんはすぐに電源をつけてゲームの世界に入ってしまいました。無我夢中です。
上条さんはネコもゲームをするのかと驚きましたが、じろじろ見ていると睨まれそうなので昼ご飯を作りに台所へ行きました。
上条さんはネコもゲームをするのかと驚きましたが、じろじろ見ていると睨まれそうなので昼ご飯を作りに台所へ行きました。
ごご 1じはん
「みこにゃん、できたぞ」
「にゃー」
みこにゃんはゲームの電源を消し、ソファから降りようとしました。
しかし、意外と高く、怖くなってしまい降りられません。
そこに、上条さんがやってきました。
しかし、意外と高く、怖くなってしまい降りられません。
そこに、上条さんがやってきました。
「なんで震えて…って、降りられないのか。ほら、おいで」
上条さんの元に駆け寄ると、抱き上げられました。
「まだ小さいもんな」
「…にゃ」
テーブルには、みこにゃんの好きなメニューが並んでいました。
デザートにはシュークリームもあります。
デザートにはシュークリームもあります。
「シュークリームが大好物なんだってな。美鈴さんから聞いたぞ」
「にゃーっ」
「ウインナーとポテトを合わせたやつとか…ま、いろいろあるから好きなの食べろよ」
「にゃ!」
2人で手を合わせていただきますをすると、みこにゃんは美味しい料理をお腹いっぱいになるまで食べました。
ごご 2じ
「「ごちそうさまでした」」
みこにゃんはデザートのシュークリームまで食べると、幸せそうに「にゃー」と鳴きました。
それを見た上条さんも一安心。
それを見た上条さんも一安心。
「昼飯の後はいつも昼寝してるって言ってたけど…寝るか?」
「にゃー…」
「その前に歯磨きしないとな。ほら、洗面所行くぞ」
みこにゃんは上条さんに抱え上げられ、洗面所へ連れられました。
見慣れない場所。しかし、いつも使っている歯ブラシとコップだけはありました。
見慣れない場所。しかし、いつも使っている歯ブラシとコップだけはありました。
「ん、口を開けろ」
「にゃー」
いつもはすずにゃんにやってもらっていたことです。
口を開けないと悪いばい菌が歯を壊してシュークリームが食べられなくなるのよー…なんて、そんな冗談を言ったり…
口を開けないと悪いばい菌が歯を壊してシュークリームが食べられなくなるのよー…なんて、そんな冗談を言ったり…
「(まま…)」
「(なんか、あんまり歯生えてない…)」
上条さんはみこにゃんの歯を(少なかったので)丁寧に磨きました。
ごご 2じ15ふん
「んじゃ、おやすみな。起きたら散歩にでも行こうな」
「…にゃ」
上条さんが布団を肩まで掛けなおしてくれました。
みこにゃんはいつもと同じベッドで、でもいつもと違う部屋で、眠りにつきました。
みこにゃんが眠った隙を狙い、上条さんはすずにゃんに電話を掛けました。
みこにゃんはいつもと同じベッドで、でもいつもと違う部屋で、眠りにつきました。
みこにゃんが眠った隙を狙い、上条さんはすずにゃんに電話を掛けました。
Prrrr Prrrrr
「もっしもーし、まだまだ元気な御坂美鈴でーすっ」
「相変わらずパワフルですね、上条です」
「あら、どうかしたの?もしかして私のことが気になるとかー?あはっ、照れちゃう」
「あ、いや…えっと、アイツ、何歳ですか?まだあんまり歯生えてないみたいなんですけど」
「んー、4歳なんだけど人間でいうとまだ2歳ぐらいかしらね?ネコは人間より体の発達が2年遅いのよ」
「なるほど…って、その年でもうゲームしてるんですか!?」
「美琴ちゃんがやってるのはかなり簡単なやつよ?テトリスを易しくしたバージョンね」
「そうなんですか…(それもだいぶ難しいんじゃ?)」
「美琴ちゃん、今なにやってるの?」
「今は昼寝中です。さっき昼飯食べ終わったところです」
「そっか。ま、可愛がってあげてちょうだいね。慣れるまでに少し時間がかかるかもしれないけど…
夜になるとままー、とか泣き出すかもしれないわね。私も今日から美琴ちゃんがいなくて寂しいわ」
夜になるとままー、とか泣き出すかもしれないわね。私も今日から美琴ちゃんがいなくて寂しいわ」
「まだ小さいですからね…」
「泣き出したら、お前が泣いたらままも泣くって言って。そしたらきっと泣き止むわ。
私もあの子が泣いてるのを想像すると辛くなるの」
私もあの子が泣いてるのを想像すると辛くなるの」
「分かりました、任せてください」
「それでこそ当麻君ね。それじゃ、またね」
「失礼します」
ごご 3じ
みこにゃんは夢を見ていました。家族でピクニックへ行き、その帰りにシュークリームを買ってもらった夢です。
とても幸せそうにシュークリームを頬張った瞬間、目覚めました。
とても幸せそうにシュークリームを頬張った瞬間、目覚めました。
「…にゃー」
見慣れない天井。隣にはままもぱぱもいません。
なんだか、悲しくなってきましした。
なんだか、悲しくなってきましした。
「えっぐ、ひっく…、まま、ぱぱ…」
涙が溢れ、布団がどんどん濡れていきます。
しかし、どんなに泣いても、ままとぱぱはきませんでした。
しかし、どんなに泣いても、ままとぱぱはきませんでした。
「うぅ…ひっく…にゃっ」
「あ、起きたのか…ってえぇ!?なんで泣いてんだ!?」
そこへ、上条さんがやってきました。大慌てで布団から抱き上げると、よしよしと言いながら宥めてくれました。
「まま、私のこと嫌いだから…出て行ったんだ…ひっく…だから…っ」
「おいおい、何勘違いしてんだ」
「うぅ…」
「ままはお前のことが大好きだから、俺に預けたんだよ。家で1人にさせないためにさ。
ままも言ってたぞ。私も今日から美琴ちゃんがいなくて寂しいって」
ままも言ってたぞ。私も今日から美琴ちゃんがいなくて寂しいって」
「ホント…?」
「ああ。お前が泣くと、ままも泣くってさ」
「じゃあ、もう泣かない」
「お、強い子だな。それでこそ美鈴さんの子だな。えらいえらい」
上条さんが頭を撫でてくれました。みこにゃんは涙を拭うと、毛ずくろいをしました。
「よし、そんなえらいみこにゃんには上条さんがシュークリームを買ってあげよう」
「にゃーっ」
上条さんは買い物メモと財布を持って、買い物に出かけていきました。
ごご 3じ30ぷん
「あー…品切れかぁ…不幸だ」
「にゃ…」
「ごめんな、今日は無いみたいだ。また明日、買いに行こうな」
「にゃ」
上条さんは買い物メモに書かれた食材をカゴに入れていきます。
そして、カゴがいっぱいになり、お会計に持っていこうとしたとき…
そして、カゴがいっぱいになり、お会計に持っていこうとしたとき…
「あ、これ…」
上条さんがお菓子売り場であるものを見つけました。
「にゃに、それ?」
「食べたことないのか?意外とうまいんだぞ、これ」
「ふーん…」
みこにゃんは興味深そうにパッケージを見つめました。
見たことのない白い物体が袋から見えます。
見たことのない白い物体が袋から見えます。
「シュークリームの代わりにこれ買うか」
「…にゃ」
その日のお買いものは、その会話で終了しました。
ごご 4じ30ぷん
みこにゃんはおうちに着くと、見慣れないパッケージを眺めていました。
これが本当に食べ物なのかもわかりません。
これが本当に食べ物なのかもわかりません。
「食べてみるか?」
「にゃ」
みこにゃんが頷くと、上条さんがパッケージを開けてくれました。
中を見ると、白くてふわふわしたものがたくさん入っています。
みこにゃんはそれを1つ取り出すと、口に含んでみました。
中を見ると、白くてふわふわしたものがたくさん入っています。
みこにゃんはそれを1つ取り出すと、口に含んでみました。
「はむっ」
「うまいか?」
「…にゃ~」
みこにゃんは幸せそうに鳴きました。口の中に広がる甘くてふわふわした触感がたまりません。
「よかった。これ、マシュマロって言うんだぞ」
「ましゅ?」
「マシュマロ。昔からあるお菓子で、結構人気あるんだ」
「ましゅ、美味しい」
「まだあるから、食べていいぞ」
みこにゃんはこのとき生まれて初めて、マシュマロを食べました。
それがとてもおいしかったことは上条さんがいたからでしょうか。
それは、みこにゃんにしかわかりません。
それがとてもおいしかったことは上条さんがいたからでしょうか。
それは、みこにゃんにしかわかりません。
―そのよる―
「みこにゃん、寝る時間だぞ」
「にゃー」
上条さんに連れられ、みこにゃんはベッドに入りました。
「おやすみ、また明日な」
「と、ま」
「ん?今なんて…」
「とー…ま」
「お前…俺の名前言ったのか?」
「にゃ、とーま」
なんと、みこにゃんは上条さんの名前を覚えたのです。
まだ発音ははっきりしませんが、「とうま」と言ってるのは分かります。
まだ発音ははっきりしませんが、「とうま」と言ってるのは分かります。
「おやすみ、とーま」
みこにゃんはニコリと笑うと、そのまま夢の世界へ旅立ちました。
そんな可愛いみこにゃんの頭を、上条さんはそっと撫でてあげました。
そんな可愛いみこにゃんの頭を、上条さんはそっと撫でてあげました。
―ふぃん―