とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part09

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第4章(2)


「上条当麻、久しぶりなのよな!!」

そう言って声を掛けてきたのは天草式教皇代理の建宮斎字だった。
建宮の周りには数十人の老若男女が集まっており、上条と美琴に軽く頭を下げた。

「そうか、イギリス清教からの増援は天草式だったのか。
 知らない連中が来るよりずっといい。
 それに天草式の手強さは嫌ってくれい知ってるからな」

「お前にそう言ってもらえると嬉しいのよな。
 でもあの時の俺達と同じだと思ってもらっては困るのよな。
 あれから俺達も鍛錬を続けてきたからな」

すると建宮の後ろから一人の少女が出てきた。

「インデックス!?」

まるでティーカップのような金色の刺繍が編みこまれた白い修道服を着る少女に
上条は思わず懐かしさが込み上げてくる。

「久しぶりなんだよ、とうま」

インデックスは上条に向かって満面の笑みを浮かべている。
しかし上条はインデックスとは対照的にあまり浮かない表情へと変わっていた。

「イギリス清教での暮らしはどうだ?
 また何かふざけたことをされてないか?」

「うん、特に問題ないかも。
 ステイルもいつも傍にいてくれるしね」

「…そうか。
 でも今日はステイルは一緒じゃないのか?」

「今日はとうまの友達の手伝いをしてるはずなんだよ」

「ってことは本格的にウチとイギリス清教は手を結んだってことか?」

するとインデックスではなく建宮が上条の質問に答えた。

「そういうことになるのよな。
 これで俺達は一蓮托生、これからもよろしく頼むな」

「ああ、こちらこそよろしくな」

やがて日も沈み、辺りは夜の帳に包まれる。
そして上条たちは夕食をとりながら今後の方針について話し始めた。

「『アドリア海の女王』!?
 とうま、その男は本当にそう言ってたの!?」

「ああ、それをヴェネツィア以外の地域に向けられるようにするのが
 『刻限のロザリオ』だって言っていた」

「これは思ったよりも大事かも。
 『アドリア海の女王』があるってことは『女王艦隊』も必ずあるはずだし…」

「取り合えず私達にも『アドリア海の女王』とその『女王艦隊』っていうのが
 どんなものか具体的に教えてくれないかしら?
 まあ艦隊っていうからには『船』だってことは分かるけど…」

「『アドリア海の女王』っていうのは、その男が言っていた通りのものなんだよ。
 ソドムとゴモラに振るわれた天罰で『あらゆる物から価値を奪う』効果を持つ。
 そして『女王艦隊』は文字通り『アドリア海の女王』を守るための艦隊。
 ちょっとこの人数で攻め込むには厳しいかもしれないね」

美琴の質問にインデックスは若干顔を曇らせながら説明するように言った。
それに対して打開策がないか上条が質問を続ける。

「具体的に攻めるにはどうすればいい?」

「海上・上空は魔術による砲撃で仮に攻め込んだら一瞬にして蜂の巣かも」

「ってことは簡単には近づけないってことか…
 俺の右手だけじゃ確実に捌ききれる保障もないしな」

「いや、海上と上空が駄目ならあるいは…」

すると建宮がブツブツと呟き始め、やがて何か決意したように言った。

「天草式の術式に攻め込むのにちょうど良いものがあるのよな。
 それさえ上手く使えれば、きっと上手くいくに違いないよな」

「マジか、それじゃあ具体的な方法を教えてもらえるか?」

そして上条たちはイギリス清教から魔力の捕捉報告を受け、
建宮の案に従い暗い海へと乗り出すのだった。



天草式の『上下艦』を用いて『アドリア海の女王』へ奇襲を仕掛けた上条たちは
そのまま艦内へと雪崩れ込んでいった。
しかし意外なことに艦内にいた乗組員達は
先日戦ったばかりのアニェーゼ部隊の構成員が殆どだった。
破れたばかりで記憶が鮮明に残っているのかアニェーゼ部隊を鎮圧することは
さほど苦労はせずに成功した。
しかし厄介だったのは『アドリア海の女王』の内部に対する護衛手段ともいえる
氷で出来た巨人達だった。
身の丈3mを越す巨人たちは氷で出来た艦の上を滑るように素早く移動し、
上条たちや天草式を苦しめる。
しかしいつまでも氷の巨人に構っている暇はないので、
上条は巨人達を天草式に任せて艦内の奥へと進むのだった。

「来たな、汚らわしい異教徒共め!!
 だが、既に『刻限のロザリオ』は完成間近…」

しかしローマ正教の司教が言い終える前に美琴の電撃と上条の拳が司教を襲った。
上条は念のため司教が身に付けていた霊装と思しきものを全て右手で破壊し、
部屋の中を見渡すと見知った少女がシャボン玉の中に囚われるような形で佇んでいた。
上条がシャボン玉に右手で触れると、少女は中から解放される。

「あなた達、一体何をしに来やがったんですか!?
 私の部隊の人間はどうなったんですか!?」

「この艦に乗っていたシスター達のことか?
 今じゃ投降して捕虜になってると思うぞ。
 それよりもこの『アリアドネの女王』を破壊する方法を教えてくれないか?
 今頃、氷の巨人相手に天草式が苦戦してるはずだから、早く解放してやりたいんだ」

「ここら一帯は『アリアドネの女王』の中心区画ですから、
 適当に破壊すれば機能を停止しちまうと思いますよ」

「そうか、あと『刻限のロザリオ』っていうのも破壊しておきたいんだが…」

「それならもう問題ないですよ。
 私が『刻限のロザリオ』の要で、見ての通り解放されちまってますから」

「要って、あなたを閉じ込めて一体何をしようとしてたわけ?」

「…『刻限のロザリオ』ってえのは素質があって
 要になることが出来る人間の精神を破壊することによって特殊な魔力を経て、
 最後に要ごと凍らせて打ち砕くことによって発動するんですよ」

「それじゃあ、あなたはもしかしてローマ正教のために犠牲になるところだったの?」

アニェーゼの言葉に上条も美琴も息を呑む。
ローマ正教がまともではないことを知ってはいたが、
同胞を簡単に切り捨てるほど酷いものだとは思っていなかった。

「まあそういうことですかね。
 あなた達に敗れて今の状況に陥ったのを、あなた達に救われるなんて…
 運命っていうのは皮肉めいたもんだと思いませんか?」

「俺達に敗れた責任を取らされたってことか…すまない」

上条はただアニェーゼに頭を下げることしか出来なかった。
そんな上条の態度に驚いたのか、アニェーゼは目を丸くしていた。
そして自嘲気味に笑うと上条に向かって言った。

「謝ることなんてありませんよ、あなた達と私達は敵同士なんですから。
 ただ例え今回の件から逃れても、私達はローマ正教から逃げることは出来ない。
 信じてたものに裏切られるってえのは、案外あっけないものなんですね」

「…とにかく今はここを破壊して脱出しよう」

「…そうですね。
 生きてなきゃ出来ないこともありますから」

そして上条はその部屋にあった氷で出来た区画を右手を使って片っ端から破壊する。
やがて『アリアドネの女王』は静かに沈没を始めた。
上条たちは天草式の用意した木の船の上から
沈みゆく『アリアドネの女王と』と『女王艦隊』を眺めるのだった。








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