とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part10

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第4章(3)


「というわけで何とか敵の魔術による術式は破壊した」

『そうか、こっちも特に負傷者がでることなく切り抜けられた。
 だがその中で幹部レベルの人間から面白い話が聞けてな』

「面白い話?」

『あくまでローマ正教内の噂でしかないらしいんだが、
 どうやら教皇を遥かに凌ぐ権力の持ち主がローマ正教の裏にいるらしい』

「…もしかしたら、その男に会っているかもしれない」

『もしかして、さっきの情報を提供してきたって男のことか?』

「ああ、ソイツはローマ教皇のことをあの程度の男って言ってた」

『…確かに怪しいな。
 まあ詳しい話は帰ってから聞こう。
 久しぶりに『執行部』全員で祝杯をあげようぜ』

「そうだな。
 これから戦いも本格化するだろうし、士気を高めるのにもいいかもな」

『…お前、そのアニェーゼ部隊っていうので悩んでるだろう?』

「まあ悩んでないと言えば嘘になるけど、そこら辺は割り切るしかないさ」

『そう言いつつも、そこを割り切れないのがお前の良いとこなんだがな。
 お前は俺達みたいになるんじゃねえぞ、御坂のためにもな…』

「…」

『じゃあ帰ってきたら祝勝会な、費用は『グループ』持ちだから』

「ちょっ、何でそうなるんだよ!?」

しかし上条の言葉を聞かずに電話は切れてしまっていた。
上条は溜息を吐くと、携帯をポケットにしまう。
すると美琴が上条のところへ駆け寄ってきた。

「垣根さん、何だって?」

「ああ、帰ったら皆で祝勝会をしようだってさ」

「そう、楽しみね」

「さて、それじゃあこっちはこっちで別れを済ませるかね」

そして上条達はかなりの大人数が待つ一角へと向かうのだった。
すると大勢のシスターの中からアニェーゼが進み出て上条と美琴に挨拶した。

「わざわざ私達を引き取るようイギリス清教に掛け合ってくださって、
 ありがとうございました」

「まあ実際に交渉したのは俺の上の人間だがな。
 ただイギリスに渡ったからといって、危険が去るわけではない。
 これからローマ正教との戦いが激化していったら
 古巣の人間とも戦わなきゃならないからな」

「…分かってます。
 でも私を慕ってくれる部隊の皆のためにも野垂れ死にだけは勘弁ですから」

「…お前達が新天地で上手くやっていけることを願ってるよ」

「そっちも色々とあるでしょうが、無事にまた会えることを願ってます」

そして上条はアニェーゼから建宮に向き直ると、握手を交わして言った。

「押し付けるような形になって悪いが、アニェーゼたちのことも頼む」

「分かってるのよな、お互い無事に生き残ったらまた宴会でもするよな」

「そうだな」

そう言って去っていく建宮やアニェーゼの後ろ姿を見送ると、
上条は最後にインデックスに向き直って笑いながら言った。

「あんまり食いすぎてステイルに迷惑を掛けるなよ」

「むっ、当麻は女性に対してあまりにもデリカシーがないかも。
 みことの前だから止めておくけど、本当は噛み付いてもいいんだからね」

「それだけは勘弁してくれ」

上条が笑いながら言うと、美琴が上条の横に並んでインデックスに言った。

「もう少し時間があったら色々なことを話したかったんだけど」

「そうだね、私もみことともっとお話したかったんだよ」

「もしこの騒動が一段落着いたら学園都市にも遊びに来てね」

「うん、みこともイギリスに遊びにくるといいんだよ。
 料理が美味しいお店を紹介するから」

美琴とインデックスはお互いに微笑み合うと互いに握手を交わす。
そしてインデックスは建宮たちに追いつくよう走り始めるのだった。



「土御門、裏で色々と働いてくれてサンキューな」

「まあそれが俺の仕事だからにゃー。
 カミやんたちも無事に『アリアドネの女王』を潰せたみたいで何よりですたい」

「一方通行も二人の護衛ご苦労だったな」

「アイツらを襲ってきた魔術師は返り討ちにしてやったがよォ、
 魔術ってェのは思ったよりも面倒だな。
 デフォで設定してる反射も出来ねェわけじゃねェが変な方向に行きやがるし、
 周りに気を遣いながら戦わなきゃなンねェのは思ったよりも厄介だしよ」

一方通行は初日から番外個体と打ち止めの二人と行動を共にしていたが、
土御門の睨んだ通り二人は美琴の親縁者として狙われることになった。
一方通行は魔術師を撃退してすぐに二人を学園都市に送り返したが、
その代わりに何でも二人の言うことを聞くという無理難題を押し付けられたのだった。

「まあ色々あったけど全員揃っての『グループ』の初仕事は成功したわけだ。
 とにかく全員無事でよかった」

そして四人は学園都市への帰路につくのだった。
バチカン、聖ピエトロ大聖堂。
ローマ正教の総本山たる世界最大の聖堂に、
その静かな空気を荒々しく引き裂くような足音が響いていく。

「チッ、結局ビアージオの馬鹿が失敗したってコトよ。
 しかも『アドリア海の女王』の核部分まで破壊されて、
 二度と再現はできないときたモンだ。
 …まったく、『刻限のロザリオ』を考案し、組み立て、
 実用にまで漕ぎつけたのは誰のおかげだと思ってんだか?
 それに学園都市とイギリス清教の動きが早すぎるのも気になるわね。
 まさか裏切り者がいるんじゃ…」

「まさか私を疑っているのではあるまいな?
 私とてローマ正教を治める身。
 あの作戦は少々早急すぎると思いはしたが、決して裏切るような真似は…」

「馬鹿ね、アンタみたいな小心者が私を裏切れるなんて思ってないわよ。
 それに仮にそうだとしたら、今頃アンタはここにいないし」

「…」

「それよりも例の書類に目を通したの?
 さっさとサインをしていただきたいんだけど…」

わざとらしく敬語を遣う女に男…ローマ教皇は眉を顰める。

「一つ目の内容は理解できるのだが、二つ目がどうもな…
 アレは一体何を意味するものなんだ?」

「…あれはテッラが勝手に付け加えたものよ。
 まあ何にしろアンタに拒否権はないんだから、さっさとサインしなさいよね」

ローマ教皇は懐から一枚の書類を取り出す。
そこにはこのように書かれていた。

『上条当麻。上記の者を主の敵と認め確実に殺害せよ。
 御坂美琴。上記の者を魔女と認め魔女裁判にかけるため速やかに捕縛し連行せよ。
      なお生存していれば状態は問わない』

先日まで上条当麻に関してはローマ教皇の上の人間…
即ち『神の右席』が対面を望んでいたはずであった。
にも拘らず掌を返したように突然、殺害する許可を出すよう命令がきた。
そして何よりも気に掛かるのは書類の二項目だった。
異教徒、それも学園都市の人間をバチカンで裁判にかけるなど前例がない異例であった。
しかしいくら怪しんでもローマ教皇に逆らうことは出来ない。
暗闇に映るシルエットはローマ正教の20億人を超える信者を
ある意味守っているとも言える男の小さな背中だけだった。






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