後編
御坂美琴は温かい水で顔を洗っては、冷たいタオルで目を冷やす、を繰り返している。
泣きすぎて目が腫れぼったくなってしまったため、血行を良くする応急処置だ。
当然スッピン状態に戻っている。
「美琴ちゃん、どれだけ泣いたのよこれ…絞ったら水したたりそう」
「うぅ・・・」
詩菜に借りたミニタオルは見事にぐしょぐしょだ。
泣きすぎて目が腫れぼったくなってしまったため、血行を良くする応急処置だ。
当然スッピン状態に戻っている。
「美琴ちゃん、どれだけ泣いたのよこれ…絞ったら水したたりそう」
「うぅ・・・」
詩菜に借りたミニタオルは見事にぐしょぐしょだ。
「まあでもそれだけ泣いて、アタックも成功したし。完全に浄化されたわね♪」
「う、うるさい!」
未だに信じられない。
…いや、あの男は想像以上の肩透かしをしてくる。
油断はできない…けど。
(この部屋でたら、どんな顔したらいいの…アイツの前でどうしたら…!)
とりあえず考えないようにして、バシャバシャ顔を洗い続ける。
「う、うるさい!」
未だに信じられない。
…いや、あの男は想像以上の肩透かしをしてくる。
油断はできない…けど。
(この部屋でたら、どんな顔したらいいの…アイツの前でどうしたら…!)
とりあえず考えないようにして、バシャバシャ顔を洗い続ける。
他の4人は部屋に戻っている。
案内係が昼食をセットしてくれている。『懐石おせち』というものらしい。
案内係が昼食をセットしてくれている。『懐石おせち』というものらしい。
上条がもの珍しげに眺めていると、御坂旅掛が近寄ってきた。
「当麻くん、ちょっといいかな?」
「は、はい」
こ、殺される?
上条がまず思ったのはソレである。
娘があれだけ泣かされてキスまでされて、心安らかなはずがあろうか、いや、ありえない。
「当麻くん、ちょっといいかな?」
「は、はい」
こ、殺される?
上条がまず思ったのはソレである。
娘があれだけ泣かされてキスまでされて、心安らかなはずがあろうか、いや、ありえない。
自分の両親をちらっと見たが危機感はないようだ。
(とりあえず、大丈夫なの、か…?)
促されて、またベランダから外に出る。
(とりあえず、大丈夫なの、か…?)
促されて、またベランダから外に出る。
先手必勝。
「す、すみません。娘さんを泣かせてしまいまして。それに…」
「ああ、それはいい。俺は子供の世界には首を突っ込まないよ。正しいと思ったことをやればいいさ」
旅掛は事もなげに言う。
「ただ、君に聞きたいことがあってね。妻たちがいない今しか」
言うやいなや、旅掛は上条の両肩をガシッと掴む。上条は流石にビビる。
(な、なんだーー?)
「す、すみません。娘さんを泣かせてしまいまして。それに…」
「ああ、それはいい。俺は子供の世界には首を突っ込まないよ。正しいと思ったことをやればいいさ」
旅掛は事もなげに言う。
「ただ、君に聞きたいことがあってね。妻たちがいない今しか」
言うやいなや、旅掛は上条の両肩をガシッと掴む。上条は流石にビビる。
(な、なんだーー?)
「こうすれば、君の表情は読み取れるからね」
そう言って旅掛は、ゆっくりと上条に問う。
「私の娘は美琴ただ一人だ。…決して双子じゃないんだが、君はどう思う?」
言葉が浸透するのにコンマ何秒かかかったが、意味を理解すると。
(シスターズ…!)
思い浮かべてしまった。もとより、上条は感情で動く人間だ。表情を作るような器用な事はできない。
「ビンゴ、か。美琴は知っているのかな?」
上条は目をふせる。どう答えればいい?
「ふ、雄弁だな。そうか、あの子も知っているのか…分かった、ありがとう。」
そう言って旅掛は、ゆっくりと上条に問う。
「私の娘は美琴ただ一人だ。…決して双子じゃないんだが、君はどう思う?」
言葉が浸透するのにコンマ何秒かかかったが、意味を理解すると。
(シスターズ…!)
思い浮かべてしまった。もとより、上条は感情で動く人間だ。表情を作るような器用な事はできない。
「ビンゴ、か。美琴は知っているのかな?」
上条は目をふせる。どう答えればいい?
「ふ、雄弁だな。そうか、あの子も知っているのか…分かった、ありがとう。」
上条が一言も喋れず固まっている。
旅掛は手を離した。
「いつか話してくれる事を願うよ。じゃあ戻ろうか…ああ、あの子には私が勘付いた事は内緒、な」
旅掛は戻りつつ、怒りをある男に向ける。
(許さんぞアレイスター!やはり娘を巻き込んでいたか!)
旅掛は手を離した。
「いつか話してくれる事を願うよ。じゃあ戻ろうか…ああ、あの子には私が勘付いた事は内緒、な」
旅掛は戻りつつ、怒りをある男に向ける。
(許さんぞアレイスター!やはり娘を巻き込んでいたか!)
上条は呆然としていた。
一言も喋ってないのに、全部吸い上げられた。
あんな底知れぬ人が将来、義理の父親になる可能性があるというのか?
一言も喋ってないのに、全部吸い上げられた。
あんな底知れぬ人が将来、義理の父親になる可能性があるというのか?
(あ、戻ってきたか)
上条が戻ろうとすると、化粧を直し終えたのか、美琴がベランダから庭へ降りてこようとしていた。
すれ違いに、旅掛に一言かけられ、頷いている。
上条が戻ろうとすると、化粧を直し終えたのか、美琴がベランダから庭へ降りてこようとしていた。
すれ違いに、旅掛に一言かけられ、頷いている。
まっすぐ上条に向かって歩いてきた。
目の腫れぼったさは完全回復といかなかったようだが、そこはアイシャドウとアイラインで目立たなくしている。
可愛らしさは完全復活していた。やや頬が赤いが、この寒さでは普通かもしれない。
目の腫れぼったさは完全回復といかなかったようだが、そこはアイシャドウとアイラインで目立たなくしている。
可愛らしさは完全復活していた。やや頬が赤いが、この寒さでは普通かもしれない。
美琴は、ある決意を秘めていた。
―――場面は先程の化粧室に戻る。
「さて、美琴ちゃん」
美鈴は美琴の化粧を手伝いながら、やさしく話しかける。
「な、なに?」
「当麻くんだけどね、さっきこっち戻ってくるとき、ベンチに座ってるの見たんだけど」
「うん」
「あの子、冷静になろうと努めてるように見えたのよね。」
「?」
美琴は美鈴の言いたいことが分からない。
「さて、美琴ちゃん」
美鈴は美琴の化粧を手伝いながら、やさしく話しかける。
「な、なに?」
「当麻くんだけどね、さっきこっち戻ってくるとき、ベンチに座ってるの見たんだけど」
「うん」
「あの子、冷静になろうと努めてるように見えたのよね。」
「?」
美琴は美鈴の言いたいことが分からない。
「当麻くんってさ、相当ヤバイ橋わたってきてるんじゃない?」
「うん、しょっちゅう入院するようなケガしてるみたい…」
「でしょうね。だからいざという時、誤った判断をしないように、感情のコントロールをする術が身についてるんでしょう」
美琴は気づいた。
「え、じゃ、じゃあアイツは、冷静に…つまり考え直してる…っていうの!?」
「それは行き過ぎかな。逆に考えてごらんなさい。当麻くんが色々話してくれたんじゃない?
その中に、美琴ちゃんの求愛へ応えることに対して引っかかりがあるのかもね」
「うん、しょっちゅう入院するようなケガしてるみたい…」
「でしょうね。だからいざという時、誤った判断をしないように、感情のコントロールをする術が身についてるんでしょう」
美琴は気づいた。
「え、じゃ、じゃあアイツは、冷静に…つまり考え直してる…っていうの!?」
「それは行き過ぎかな。逆に考えてごらんなさい。当麻くんが色々話してくれたんじゃない?
その中に、美琴ちゃんの求愛へ応えることに対して引っかかりがあるのかもね」
…あの子か。
『ん、心配ないよ。とうまは必ず帰ってきてくれるもの』
あの子と初めて会った日、そんなこと言ってたっけ。自分の心が衝撃を受けたのを、覚えている。
私を受け入れれば、あの子はどうなる…?
『ん、心配ないよ。とうまは必ず帰ってきてくれるもの』
あの子と初めて会った日、そんなこと言ってたっけ。自分の心が衝撃を受けたのを、覚えている。
私を受け入れれば、あの子はどうなる…?
「なんか思い当たることがあったかな?何にせよ…」
美鈴は一気に声のトーンをあげる。
「いい?美琴ちゃん。恋愛は冷静になってやるもんじゃない!一気に燃え上がらせないといけないの!
この数時間が勝負よ?きっちり踏み込んで、あの子をしっかりキャッチするの!
大丈夫、扉は開いたんだから!後のことを考えず、彼に飛び込みなさいな。」
美琴は飲まれたような表情をしていたが、やがてコクンと頷いた。
美鈴は一気に声のトーンをあげる。
「いい?美琴ちゃん。恋愛は冷静になってやるもんじゃない!一気に燃え上がらせないといけないの!
この数時間が勝負よ?きっちり踏み込んで、あの子をしっかりキャッチするの!
大丈夫、扉は開いたんだから!後のことを考えず、彼に飛び込みなさいな。」
美琴は飲まれたような表情をしていたが、やがてコクンと頷いた。
―――あの子の事はさておき、まず自分。
美琴は一気に上条の目の前まで歩を進め…そのまま上条の首に両手を巻きつけた!
あまりの至近距離に上条はたじろぎつつ、赤くなる。
あまりの至近距離に上条はたじろぎつつ、赤くなる。
「気づいてた?私、アンタのこと、苗字でも名前でも呼んだことなかった、って」
全ては、この時のため―――
「…私、当麻のこと大好きっ!」
そのままつま先立ちでしがみつき、口許を上条の耳に寄せる。
全ては、この時のため―――
「…私、当麻のこと大好きっ!」
そのままつま先立ちでしがみつき、口許を上条の耳に寄せる。
「私のこと、ゆっくりでいいから、好きになって…お願い」