とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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結果的に上条とインデックスは常盤台中学の学生寮や事件現場に行くまでも無く、美琴の消息を知ることになる。

途中で連絡が入った。

しかし、それは残念ながら待ち人ではない。

上条がケガをした時、いつも世話になるカエルに似た顔をした医者からの電話であった。

『君は御坂君を知ってるよね』

『勿論です』

『ならば僕の病院へ来るといい』

『御坂はそこにいるんですか無事なんですか、先生っ!?』

『……それは君の目で確かめるしかないんだね』

安否がしれる内容では無かった。

冥土返しと呼ばれる医者の腕は確か、他の医者が諦めるしかない重傷者であっても彼にかかれば命を取り留める。どんな重傷を負っていても命さえあるなら彼の元へ届けさえすれば助かると言われている

その冥土返しが曖昧なことを言う。

逆を言えば命が無い者までは彼でも救えない。

上条は冥土返しのいるとある病院へと急ぐ。病院へと走って行く途中には鉄橋があった。絶対能力進化実験を止めるため自ら死へと向かおうとする美琴を引き留めた場所。

美琴は妹達を救うために自らの命を引き替えにしようとしていた。

上条は御坂妹と彼が呼ぶ妹達を救おうとしていた。

絶望に打ちひしがれていた美琴の顔を鮮明に覚えている。

鉄橋を渡り終え上条は走る。

街路を疾走し満天の星の下を駆け抜ける。

カエル顔の医者のもとへ行けば美琴に会えると信じ、ひたすら走る。

そして走ることで不安を打ち消そうとしていた。いや、何も考えないでいたかった。

そうするうちに上条はようやく病院へと辿り着く。

インデックスも上条の全力疾走に追随したせいで息が切れていた。辿り着いた病院の前で大きな深呼吸を繰り返す。

同様に息が切れていたにも構わず上条は走ってきた勢いのまま玄関をくぐる。すると薄明かりに照らされたロビーに俯いた一人の少女がいた。

その少女は常盤台中学の制服を着ている。

「白井……」

「貴方様は……」

上条の呼ぶ声に気がついた白井が顔をあげる。

酷い顔だった。一生分の不幸が襲い掛かり途方に暮れ、悲嘆にくれた顔だった。

恐らく自分も同じ顔をしているのだろうと上条は思った。

ただ白井の目だけは怒りに悲しみに憎悪を堪えていた。

「白井……何があったんだ、御坂が爆発に巻き込まれるなんて、御坂はそれぐらいで……こんなことになる御坂じゃないだろ?」





「盾になりましたの、お姉様は」

絞り出すような声。

「盾?」

「私もその場にいた訳ではありませんので、目撃者の証言からですが……異常に気づいたお姉様が館内にいた者に退館を叫ばれたとか」

「……」

「ほどなく爆発が、一般的な爆発とは違い炎が急速に膨れ上がる、ナパーム弾が近いのでしょうか」

一瞬の閃光でなく戦争映画で見るようなあの光景、全てを焼き尽くす炎の塊だったのか。

「お姉様は館内の者が逃れるまで磁力で引っ張れる物を引っ張っり、それらでその炎を押さえ込もうとされていたそうですの、ですが最後に炎が食い尽くし……私が、私がお側におりさえすればこんなことには、お姉様!」

「まさか御坂は……炎に飲み込まれたっていうのか」

「はい……ですから速報は間違いですの、お姉様は犠牲者の一人では無く、犠牲者はお姉様ただ一人」

「御坂……犯人は能力者か」

「恐らくはですの、ただしかなりの高レベルの発火能力者になりますが遠隔でこれだけの炎を起こせるとなると、同僚が書庫を当たっておりますけど該当者がおりますかどうか」

「そうか……それで、……御坂は?」

白井の肩がビクッと震える。

それだけで余程酷い状況だったことが知れる。

この時、上条と白井の思いは同じだった。

自分がいれば

白井が居ればテレポートで最後は逃れることもできた。

上条はその炎が能力のモノであれば打ち消すこともできた。

二人のどちらかが美琴と一緒であればこんなことにはならなかったのだ。

そして直前まで上条は一緒にいたのだ。そして予定を聞かれまでしていたのだ。時間を巻き戻せないことが悔やまれる。

俯き、うなだれる上条と白井。そばで話しを聞くもその内容に二人へかける言葉がないインデックス。

で、あったが

「えっ、あれ?短髪?」

ハッと見上げる上条に白井。その見た先には

「アンタねぇ、何度ももう会ってるのに短髪はないんじゃない?私にはミサカミコトって名前があるのよ」

包帯を体中に巻かれ入院患者用の衣服を着用し車椅子に乗っている美琴がいた。

「お、お姉様?」

「ん?黒子も心配して来てくれたの?」

「そ、それは勿論でございますの。で、ですがそのお姿は?」

「ああ、これ。しくじっちゃったみたいね」

「いえ、そうではなく。それぐらいで済むような状況ではなかったと聞き及んでいたのですが」





「うーん、どうなのかな。先生の話しだとその時の事、記憶が混乱して思い出せなくなってるらしいのよね」

「そうなのですの?」

「まあ、この程度で済んでるっていうのはゲコ太先生がスゴいってことじゃない?」

「は、はあ~」

「その御坂?大丈夫なんだな?」

「まあね……暫くは入院ってことになりそうだけど」

「そうか……」

「とりあえず黒子」

「はいですの」

「入院の支度と学校、寮監への連絡をお願い……それと私は動けそうも無いから犯人を見つけて頂戴ね」

「わかりましたの、お姉様。私が必ず敵討ちをして差し上げますの」

「無理はしないでね、連絡は直ぐお願い」

「はいですの」

その言葉とともに白井は消える、美琴の無事と頼まれたことが嬉しく行動に移したのだろう。

上条はそれを見送り

「心配させんなよ御坂」

改めて美琴に言葉をかけた。上条の顔は安堵に綻びかけた。


「ごめん……妹達のこと、知ってるアンタにはまだ心配かけることになるわ、とミサカは申し上げます……ああ何だろこの口調?」

「えっ」

「はあ、困ったわね」

そう言うと美琴は車椅子から立ち上がった。

「なっ」

そして美琴は包帯さえも外し始める。

「ま、まさか御坂妹なのか?」

「えっ、短髪じゃなくてクールビューティーなの?」

「そうとも言えるし言えないともどうなのかな?でも私がクールビューティーで私が短髪って……」

「い、一体これは、どうなってんだ?」

「それは僕が説明しようか」

いつの間にかカエル顔の医者がそばまで来ていた。

「先生!」

「とりあえずついて来てくれるかな」




その頃

「なにしやがンだ、クソガキ」

「ふんふん、こうすれば言語機能以外を遮断できるんだ」

「くそったれ」

「キャハ、頭の中いじくったらこの言葉遣いも直せないかな」

「土下座させてゴメンナサイさせるのも面白いかも」

「それか人格改造とか、あはは、ナニこれ悪意ばんばん」

「あァ?オマエらイイ加減にしねェと」

「どうにもできない癖に」

「はァァァァァ、芳川ァ!」

「何?」

「どうなってんだァコイツはァ?」

「うーん?」

「専門だろがァァァッ!」

「おかしいわね?たしかに打ち止めと番外個体の人格と違ってるのよね」

そして家主の帰宅を告げる音がする。

「黄泉川先生が帰ってきたのかな」

「黄泉川……えっ先生?」








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