とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 雨のち晴れ



「何でッ!?何でアンタはこれから…これからアンタの前から消える人間にそんなこと言うのッ!?私はそんなキザったらしい台詞なんて…うぅッ」
「違う、違うよく聞いてくれッ!!こんな時だから、じゃない、こんな時だからこそだ!何も伝えられなくて後悔なんかしなくねぇんだよ!!」
体に纏わりつくような霧雨の中、一組の男女が肩を抱き合っている。
傍から見ればただの痴話喧嘩に見えたかもしれない、ただの思春期男女の言い争いに見えたかもしれない。
ただ二人にとってこの瞬間は世界の全てを凝縮しても足りない、それほど濃密な時間だった。
黒髪の高校生が彼女の頭に自分の顎を乗せて呟く。
「後悔なんか柄じゃねぇんだよぉッ……なぁ、昔の人だって言ってんだろ…えぇっと……水が…お盆?」
目的の言葉が見つからずうろたえる彼の様子を見てくすぐったそうに彼女は涙交じりの笑いを零す。
「まぁいいや…いいか、俺は真剣だぞ?……俺はお前が好きだった。ロリコンって言われよがこの気持ちはいまさら変わらない。」
「…私の番?……私はアンタが好きだったわよ、いまさらこの気持ちは変わらない…わよ」
景色は雨模様、世界にも、お天道様にも見捨てられたような薄暗いムードの中、二人の間に幾秒かの沈黙が降りる。
沈黙を破ったのは笑い声だった。
今までと、そしてきっとこれからと同じように二人は笑った。
いつの間にか雨はやんでいた。


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