とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第一.五章 途中であった多大な揉め事の一つ




第23学区へと向かうバスの中、上条当麻を取り巻く空気は非常にピリピリしていた。
『槍』を破壊するため、これから大なり小なりグレムリンと一戦交えなくてはならないのだ。
緊張感が漂うのも仕方がない。

………からという訳ではない。

美 「…で? 何でアンタはバスの中でまで両手に花状態な訳…?
    言い訳があるなら言ってみなさいよ聞く気ないけど」

イ 「…とうま? いくら慈愛に満ちている私でも、我慢の限界はあるんだよ…?」

上 「そ、そう言われましてもですね………」

上条は汗をダラダラと流しながら、どう答えるべきか考えていた。
正直、「聞く気ねーのかよ!」とか「慈愛に満ちてる奴が、人の頭をザクロにしますかね!?」とか
ツッコミたい所だが、慎重に言葉を選ばないと『槍』が完成するその前に、
『上条当麻』という人間がこの世から消えてしまうかも知れない。
目の前にいる、二人の少女の手によって。

現在、上条の膝の上にはバードウェイが、隣の座席にはレッサーが座っている。
レッサーはまた眠くなったらしく、先程と同じく、そして当たり前のように上条にしだれかかり、
「着いたら起こしてください……」と一言残し、夢の世界へダイブしていた。
一方バードウェイは、何かを勝ち誇ったかのように、インデックスと美琴に対しドヤ顔をする。
それが更に二人の神経を逆撫でしていたのだった。

男女比にして1:4…+1匹。
「ハーレムとか羨ましすぎワロタwww」などと思うかも知れないが、
ハーレムというのはお互いが合意の上でなければ成り立たない。
そうじゃない場合、人はそれをこう呼ぶのだ。『 修 羅 場 』、と。
つまりこの状況を一言で表すと、『俺の同居人と友人達が修羅場すぎる』、という事である。

上 「つーかバードウェイ! ここはもうバスん中なんだから、座席は冷たくないだろ!?
    わざわざ俺の上に乗んなよ!!」

インデックスと美琴に何を言っても効果は薄そうなので、言い訳をするのではなく、
問題を解決する【バードウェイをどかせる】事で、この場をおさめようとする。

バ 「断る。私がどこに座ろうとも私の勝手だ。
    それとも何か? この国は人が腰掛けるだけでも、色々と手続きや許可が必要なのか?」

上 「俺の上に座るなら、最低でも俺の許可は取ってからにしようぜ!?」

彼女はテコでもここを動く気がないらしい。何だかんだで、上条の膝の上が気に入ったようだ。
しかし、それを快く思わない二人が、『何故か』バードウェイに対してではなく、
上条に対して威嚇行動…いや、攻撃態勢を取る。
具体的には、インデックスは口を大きく開け、美琴は頭の上でバチバチと帯電させる。
だが今の上条は防御態勢は取れない。
何しろ、逃げようにもバードウェイが重し代わりになって立ち上がれないし、
美琴の電撃だけでも幻想殺しで何とかしようと思っても、
今度はレッサーが右側をガッチリとロックしている。

ある種、『死』を覚悟した上条は、目をギュッと瞑る。
だがその時、バードウェイが思わぬ助け舟を出してきた。

バ 「……おい。いつまでも突っ立ってないで、お前らも座ったらどうだ。
    この男の『隣』に座りたいなら、もう一席空いているだろう。『前』は私の特等席だがな」

上条に一撃を食らわせようとしていたシスターとお嬢様は、ピタリと止め、お互いに顔を見合わせる。

このバスは全席前向きシートとなっており、左側は2人がけ、右側は3人がけとなっている。
上条は右側の席の真ん中に座っている。上条の右の席はレッサーが座っているが、左はフリーだ。
つまり、もう一人なら上条の隣に座れる事になるのだ。

美 「ふっ…ついにアンタと決着をつける時がきたようね……」

イ 「む…私に勝てると本気で思っているのかな…?」



二人の間にバチバチと火花が散る。美琴の能力ではなく、比喩的表現で。
そして背後にはスタンドのようなモノまで現れる。
龍と虎…ではなく、ゲコ太とカナミンなのが大分迫力に欠けてしまうが。
両者相対し、その拳に全てを賭ける。勝負は一瞬。

美 「さい! しょは! グー!」

イ 「ジャン! ケン!」

美&イ 「「ポイ!!!」」

決着は―――

美 「っしゃああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

イ 「」

インデックスの『紙』を、美琴の『ハサミ』が切り裂いた。
美琴はその形のままで手を高々と上げ、ビクトリーした事を主張し、
インデックスはその形のままの手を床につけ、orz←のポーズをとる。
ハッキリと、勝者と敗者で明暗を分けたのだった。

そんな様子を間近に見ていた上条は、疑問に思ったので素直に聞いてみる。

上 「…お前ら、何でわざわざこんな俺の隣【せまいところ】に座りたがってんだ?
    他にも空きはあるだろ?」

素直に聞いたせいで、結局彼は噛み付かれ、感電させられ、ついでにバードウェイも足を踏んできた。
訳も分からず「不幸だー!」と叫ぶ上条だが、本当に不幸なのは、
こんな乙女心を欠片も理解していない男を好きになってしまった彼女達の方である。

ガタガタと揺られ、バスは第23学区へとひた走る。
ジャンケンに負けたインデックスとそれに抱かれたスフィンクスは上条の真後ろの席に座り、
勝った美琴は左側に座っている。
正に四方を少女に囲まれており、
前方のバードウェイ、後方のインデックス、右方のレッサー、左方の美琴という状態だ。
『神』の右席ならぬ、『上』の右席の完成である。

しかし、せっかく上条の隣の席を射止めたというのに、美琴は上条との距離を微妙に開けている。
先程はその場のノリと勢いでおかしなテンションになっていたが、
冷静に考えたら、自分は簡単に上条に抱きついたりできる性格【キャラ】じゃない事に気がついたのだ。
上条の肩を枕代わりにするレッサーや、上条の胸を背もたれ代わりにするバードウェイを横目に見て、
「羨ましい!」とは思うのだが、それを自分に置き換えて想像するだけで顔が真っ赤になる。

と、その時だ。
デカい石でも踏んだのか、それとも道路に凸凹でもあったのか。車体は大きくガクンと揺れる。
美琴は上条と距離を開ける為、若干不自然な体勢を取っており、バスが揺れると同時に、

美 「きゃっ!!?」

と前に放り出されそうになる。
次の瞬間、美琴は前の座席の後頭部に顔面をぶつけ…てはいなかった。
気がつくと、上条の左手に肩を抱かれ、美琴はそのまま上条の左肩に頭を乗せていた。

美 「なっ!! な、なななっ!!! な~~~~~っ!!!?///」

上 「ったく危ねえなぁ。変な乗り方してるからだぞ?」

早い話が、とっさに美琴を助けた訳だ。
美琴はみるみるうちに顔を上気させ、何だか急に大人しくなる。
しかし、上条の後部座席【インデックス】から何故かイヤ~なオーラが立ち込めてくる。
いい事をしたのに、何故非難されるのか、鈍感キング上条には分からない。分かる訳がない。
しかもバードウェイまで不機嫌になっている。まるで、『お兄ちゃん』を盗られた『妹』のように。

だからなのか、バードウェイは唐突に爆弾を放り投げてきた。

バ 「それにしても、レッサー【コイツ】はよく寝るなぁ!
    今朝、上条【おまえ】の布団の中であんなに寝てたのになぁ!」

天国から地獄。人は上げてから落とされると、ショックはより大きくなる。
バードウェイの爆弾は美琴にとって効果絶大だったらしく、上条に抱かれたままビシリと固まる。



上 「ちょ、バ、バードウェイさん!? 何故にこのタイミングでその話題を持ち込むのでせうか!?
    お、終わった事をイチイチ蒸し返すのは良くない事だと思います!」

バ 「安心しろ! そんなに焦らなくても、私も一緒に寝ていた事はさすがに言わないさぁ!」

上 「言ってるううううぅぅぅぅぅ!!! バードウェイさん、それ言ってるよおおおぉぉぉ!!?」

バ 「あー! そう言えばレッサー【ソイツ】が『おっぱいなら服の上から触るくらいノーカウント』
    と言っていたのを思い出したなぁ! どうだ!? 触ったのか!? ん!?」

上 「だから何でこのタイミングで思い出すんでございますかねええええぇぇぇぇぇ!!!!!」

イ 「……とうま…? どういう事なのかな…? おっぱいの件【いまのはなし】は初耳なんだよ…?
    それとは全く関係ないけど、後ろの座席【このいち】からだと、
    とうまの頭がとってもかじりやすいと思うんだよ……
    もはや、かじってかじってかじってナンボ、かじってナンボの商売なんだよ……」

上 「止めろ! 止めてくれ!! お止めになってくださいませの三段活用!!!
    それ多分、全く関係なくないから!! それ、かじる気満々の台詞だから!!
    あたまかじり虫になってるから!!」

何とかインデックスをなだめようとする上条だが、
怒りゲージMAXで超必殺技がいつでも放てる状態なのはインデックスだけではない。
美琴もまた、俯きながらワナワナと震え、

美 「ア~~~・ン~~~・タ~~~・は~~~………」

しかししっかりとバチバチと帯電音を響かせる。

美 「何でそういつもいつもいっつも―――」

溜めたモノを一気に解放するべく、美琴は俯いていた顔を勢いよく上へ向ける。
だがその時だ。
デカい石でも踏んだのか、それとも道路に凸凹でもあったのか。車体は再び大きくガクンと揺れる。
美琴は上条をキッ!と睨むために顔を上げた直後だったので、バスが揺れると同時に、

美 「きゃっ!!?」

とそのまま跳ね上がる。
しかし、今回は上条は余裕がなかったせいか、押さえられる事もなかった。
つまり、上条を見上げた顔は、そのままブレーキする事なく―――

ちゅっ…♡

…という音を立てて、美琴の唇は上条の左頬に直撃する。

イ 「なっ!!?」

バ 「なっ…!」

上 「なぁ!!!?」

美 「な、なな、な……///」

それは誰がどう見ても偶然の事故だった。
しかし、誰がどう見ても口付けだった。

上 「あ…あー、まぁ…その……き、気にするなよ! 今のはホラ! 事故だから! ノーカンだか」

イ 「とぉぉぉうぅぅぅまああああぁぁぁぁぁ!!!」

上条が言い終わる前に、すでに上条の後頭部にはインデックスの歯が突き刺さっていた。

上 「痛い! 痛いよ!?
    てか、今のは俺全然悪くねーじゃん!!? この世の理不尽ここに極まれり!!?」

イ 「やかましいんだよ!! とうまはもうとうまだからこうするしかないかも!!!」

上 「意味が分からん!! せめて日本語で話してくれ!!!
    バードウェイも! 見てないで何とかしてくれ!!! 上条さんのピンチですよ!?」

とヘルプされたバードウェイだが、

バ 「それがどうした私が知るかっ!!!」

と一蹴した。何かまた不機嫌になっている。
そして事件の中心人物、美琴はといえば………

美 「……………ふ……ふにゃー///」

と漏電【いつものアレ】をした。

上 「うおおおおおぉぉぉぉい!!! これ以上面倒ごと増やすんじゃねええええぇぇぇぇぇ!!!!!」

そんな様子を見ていた三毛猫は、
『この人間共は、よくもまぁ、これだけ騒いでバスから叩き出されないものだ』、
と言わんばかりに、迷惑そうな声で「ニャー」と鳴き、
これだけの大騒ぎの中、未だに熟睡している強者レッサーは、

レ 「むにゃむにゃ………ワイヤードビキニ…スケルトンワンピ……ふへへ……」

と訳の分からない寝言をほざいていた。








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