小ネタ 雛壇
カメラのシャッター音が鳴る。
「美弦!!こっち向いてくれ!! そうそう、よしっいくぞ!!」
着飾ったのは5歳くらいの可愛らしい女の子である。
そして、それを撮るのが。
「ちょろっとー、今日1日でアルバム2冊潰したバカ親、さっきから美弦があっち見たりこっち見たり忙しそうなんだけど」
バカ親と呼ばれたのは25前後の男性。
ご存知、上条当麻である。
「そんな美弦もかわいいよな」
そのバカ親は至極まじめな顔である
相方はため息をつくしかない。
が、
「でも、それの原因はオレだけじゃなくて、DVD2枚目に突入したバカ親さんも
重要だと思うんですよー」
こっちもバカ親さんだった。
皆さんご存知美琴様だが、今は上条姓である。
「そんな~、わたしのせいで美弦がかわいいなんて~」
「あ、そっちを拾っちゃう? まあ、間違ってないけども」
さらにバカップルだった。
その後、抱き合いながら娘を撮影するという器用なことをやりだす二人。
その上5歳児があきれて乾いた笑みを発していることに気づかないようだ。
「しかし、よく買ったわよね」
視線の先には、新品の雛人形があった。
「父さんやお義父さんが自分が買いたいっていってたけど、やっぱりオレが買ってあげたくてさ」
「……そんで、嫁入り道具の1つになるわけか」
「ならない、嫁にはやらん」
「アンタね」
「さーて美弦、こっち向けー」
「また無視なの?……大丈夫よ」
「なにがだ?」
「そんなにやっきになって記録に残さなくても」
「……」
「もうあんなことはないっては言えない、アンタならまた起きかねないけど」
「……美琴」
「もし、また、記憶をなくしても、何度だって、上書きできるほどいい思い出を作ればいいじゃない」
「……」
「……はいはい、甘えんぼさんね」
雛壇の1番上にいる二人が、静かに微笑んだ気がした。
「その日の夜の当麻ったら、ほんとに獣みたいにわたしを求めてきてさ~」
「なーにいってやがりますか、美琴さんがあんなに誘わなければわたくしもね~」
「おっかしいなー、単にこの雛壇買った時の話を聞いただけなんだけどなー、なんでまた親の惚気を聞いてんのかなー、だれかこの不幸なわたしに説明して!!」
雛壇の1番上の人形がなんでか知らないが雛壇の上からずり落ちた。