とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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たまにはちょっぴり攻め琴ちゃん




タクシーから降り、自分の家に帰ろうとする御坂美琴だったが、彼女は今酔っ払っていた。

大学三年になった彼女は、一足先に成人の仲間入りを果たし、
久々に会った白井や初春、佐天らと共に彼女達の「プチ成人式」の大義名分の下、
女子会【のみかい】を行ったのだ。
美琴を含め、メンバー全員がアルコール初体験だった為、
女子会は終始ぐでんぐでんのカオスな状況だった。
美琴も当然、初飲み&初酔いだ。会が終わる頃にはフラッフラであった。
しかし彼女にその自覚は無い。彼女はあくまでも、いつも通りだと思っている。
故に今のこの状態に、彼女は「?」マークを宙に泳がせているのだ。

スキルアウト達に囲まれているこの状況で、電撃の一つも出ない事に。

容姿端麗なほろ酔いなお姉さんが、一人で夜の街を歩くなど、スキルアウトの恰好の的である。
しかし彼女はそれを危険だとは思っていなかった。
彼女は仮にもレベル5の第三位であり、学園都市最強の電撃使いだ。
普段なら威嚇電撃一発で、こんな連中は裸足で逃げ出す。
だが今日に限って何故か能力が発動できない。

超能力というのは、基本的に高度な演算能力を必要とする。
(幻想殺しや第七位の能力など、一部例外は存在するが)
しかしアルコールが回っている状態で、寸分の狂いなく緻密な演算などできる訳が無い。
つまり、酔っ払った状態では能力は使えないのだ
だが今の彼女は、そんな事すら気づかない程酔っている。
「あれ~? なんれビリビリしないんらろ~」とブツブツ言いながら、フラフラクネクネしている。

スキルアウト達は「へへへ」とイヤらしい笑いをしつつ美琴を囲む。カモだと思われているのだろう。
しかもどうやら、金品を巻き上げただけでは帰してくれそうにないらしい。
こんな色っぽい(現在大学生なので、中学の時より大分成長している)女性を目の前に、
理性の外れやすいスキルアウト達が手を出さない訳がない。
というか何人かは、これを機にDTを捨てるつもりのようだ。良い子も悪い子も絶対マネしないように。

能力が使えない以上、美琴はただの酔っ払いの女子大生だ。
体術にも自信はあるが、この数相手では乗り切るのも無理だろう。
そもそも、酔った状態でまともに戦えるかどうかも分からない。酔拳じゃないんだから。
ここに来てようやく「ヤバイかな?」と思い始めた美琴だが、特に解決策が思いつく訳でもなく、
ジリジリと後ずさり、後ろの外壁にぶつかる。

だがその時だ。

「おーい! 警備員のお姉さん、こっちこっちー!」

と、誰かが大声で言っている。声質からして男のようだ。
どうやら警備員を呼び込んでいるらしく、大きく手招きしながらこちらを見ている。
こんな所を警備員に見つかったら、即ブタ箱行きだ。
スキルアウト達は「チッ!」と分かり易く舌打ちしながら、慌ててその場を逃げ出していった。

スキルアウトがいなくなったのを確認すると、警備員を呼んでいた男がこちらに歩いてきた。

「大丈夫だったか? …美琴」

そう言って手を差し伸べてきたのは、美琴のよく知る人物。上条当麻だった。
ちなみに警備員はいない。あれは上条の演技だったらしい。

美琴は、酔いとスキルアウトに囲まれて何も出来なかった恐怖。
それと上条が駆けつけてくれたという安堵から、その場でペタンと座り込んでしまった。



「お、おい美琴!?」
「あ、ははは。腰…抜けちゃった」

美琴の言葉を聞き、ホッとしたような溜息をつく上条。
もう大丈夫そうだが、このままここに置いておく訳にはいかないだろう。
またさっきのような事が起きないとも限らない。
しかも上条が警備員を呼んでいたのはスキルアウト達を追っ払う為のブラフなので、
今この場には上条と美琴の二人しかいない。
上条は「仕方ないな」と呟くと、その場で美琴に背中を向ける形で屈み込んだ。
「何してるの?」と美琴が聞くと、上条はアッサリと答える。

「ほら、負ぶされよ。美琴の家まで送ってってやっから」

上条は後ろに回した手をチョイチョイと動かし、美琴が負ぶさるのを催促する。
瞬間、美琴の顔に益々赤みが差していく。酔いのせい…というだけではなさそうだ。

「えっ!? い、いいわよ! 悪いし…それに恥ずかしいし……」
「あのなぁ…んな事言ってる場合じゃないだろ?
 てか今の美琴を放って帰れる程、上条さんは薄情じゃありませんことよ」

分っている。
上条が誰に対しても、こんな風に当たり前の優しさを見せるのだと、美琴は分かっている。
(もっとも、その優しさの出した答えが「おんぶ」と言うのも、どこか抜けていて上条らしいのだが)
きっと自分が特別な訳ではない。
けれど美琴は、それを分かった上で、

「……じゃ、じゃあ……お願い…しよう…かな?」

甘える事にした。
普段の美琴なら、ツンツンした態度を取って拒否してしまい、家に帰って後悔する、
というパターンなのだが、今日は違う。素直に上条の提案に乗ってきた。
それもこれも、きっと酔っているせいなのだ。そういう事にしておこう。

「よっ! …と」

美琴を負ぶさり、そのまま立ち上がる上条。
女性といえど大人の体重はそれなりにあり(本人には口が裂けても言えないが)、
ちょっとした衝撃がズシリと腰に来る。
が、背中にそれ以上の衝撃があるので、あまり気にならない。

「おんぶ」というのは、当然ながら相手を背負う事だ。
つまり、背中には相手の『胸』が当たり、落ちないように後ろ手で相手の『脚』を支え、
相手も落ちないように、背負う側の首に『手』を回す。
要するに、お互い色んな部分が触れ合ってしまう訳だ。仕方ないよね。
上条はそれを計算して美琴を負ぶった訳ではないが、色々当たってからその事に気がついた。
それだけでなく、美琴の吐息がモロに首筋に当たり、一気にイケナイ気分になっていく。

(うぉあああ! これ想像以上にヤベェ!
 い、いやでもここで『やっぱ、やめよう』ってのは流石にないだろうし……
 美琴の家まですぐだし! 頑張れ俺!)

上条が己の中の何かと戦い始めたなどとは露知らず、美琴はその身を素直に委ねる。

(…当麻の背中って…大きくて…温かい…な……)

唯でさえ酒や疲れが残っているのに、そこに安心感やら心地良さやらがプラスされたもんだから、
美琴はついウトウトし始めてしまった。
そしてそのまま、愛する人の背中の上で、彼女は夢の世界へと旅立って行ったのだった。



美琴が寝ていると気づいたのは、上条が美琴の家の前に着いた時だった。
それまでずっと、彼は『何か』と戦い続けていたので、気づかなかったのである。

ちなみに、二人ともこんなピュアピュアな反応をしているが、
美琴は21歳。上条は22(上条は水瓶座なので早生まれ)歳である。
純すぎるのもどうなのだろう。



上条は美琴を背負いながら、美琴の住むお高いマンション…
ではなく、自分が住むボロアパートに来ていた。

美琴のマンションの入り口付近で美琴が寝ている事に気づいた上条だったが、
困った事にこのマンション、居住者の指紋と網膜を認証しなければ、
入る事すらできない仕様になっているらしい。本人が寝ていても指紋はどうにかできそうだが、
さすがに網膜は無理だろう。だって目を瞑っているのだから。
かと言って夜中にこんな所をウロウロしていては、今度は上条が不審者扱いになりそうだ。
で、考えた結果が、自分のアパートに連れてくるという結論だったのだ。

(い、いや、仕方ないよな!? 他に方法は無かったんだし、ホテルも高いし…
 け、決してやましい気持ちがある訳じゃありませんぞ!?)

誰に対してなのか、上条は心の中で弁解する。

去年大学を卒業した上条だが、彼の不幸体質は変わっておらず、不幸が不幸を重ね、
彼は今、就職浪人中である。現在バイトで食い繋いでいる状態であり、
その為、こんな築50年以上も経っているアパートで一人暮らしをしているのだ。
学園都市創設時から建っていると思えば、それはそれで味わい深いと思えなくも無いかも知れない。
ちなみに先程もちょろっと説明したが、今の彼は一人暮らしである。
高校生活中に魔術やら何やらの事件は全て解決しており、
元・同居人のインデックスは、イギリスで幸せに暮らしている模様だ。
もっとも別れる時、インデックス本人は泣き崩れていたが、
上条はその涙の本当の意味を知らないままである。死ねばいいのに。

そんなこんなで上条は、自分のベッドに美琴を寝かせる。二人以外、誰もいないこの空間で。
ついでに言えば、この部屋にはベッドは一つしかない。
一人暮らしなのだから当然と言えば当然だが、それでもインデックスと同居していた時は布団があった。
例の、浴槽に敷いていた時の物だ。
しかしそれもインデックスがいない今では使う事も無いので、
リサイクルショップに買い取ってもらっていた。まぁ、売値は二束三文だったが。
つまり、この部屋にはそのベッドしか寝るスペースがなく、
そこに美琴を寝かせてしまったという事は―――

(いやいやいやいや!!! さっきやましい気持ちは無いって誓ったばっかだろ上条当麻!!?)

そこまで考えた所で、上条は自分の頭に過ぎった事を自分で否定した。
どうも先程のおんぶの一件から、妙な感じになっているようだ。

上条は頭を冷やしつつ今日一日の疲れを取ろうと、シャワーでも浴びようとする。
今日は床に寝て、座布団を枕にバスタオルをかけて眠ろうか、などと考えながら。
しかしその時だ。上条は思わぬ事態に直撃する事となる。

ベッドを離れようとして立ち上がった瞬間、上条の腕を何かが掴んだ。
いや、何かと言っても、この空間には上条と美琴の二人しかいない。つまり、

「っ! み、美琴! 起きたのか!?」

だが美琴はすーすーと気持ち良さそうな寝息を立てている。
どうやら寝相だったようで、上条はホッとする。
が、しかし美琴の『たちの悪い』寝相は、それで終わらなかった。
掴んだ腕をそのままグイッと引っ張り、そのまま上条をベッドに引きずり込む。
一瞬の事で何が起こったのか理解できなかった上条をよそに、更に美琴は上条を抱きかかえた。
腕と脚を絡ませ、あたかも上条を抱き枕代わりにするかのように。

「ちょ、ちょっと美琴さん!? ホントは起きてんじゃなかとですか!?」

慌てて問いかけるが、やはり美琴は眠っている。寝相なんだから仕方ないね。
だがこのままでは上条の理性が持ちそうにない。
若干名残惜しい気もするが、絡んだ手足をそっと解こうとする。
だが解こうとすると尚更美琴が強く抱き締めてくる。「う~ん…」と唸りながら。
…逃がしてくれそうにない。今日はこのまま寝るしかなさそうだ。不幸(?)である。



『仕方なく』美琴と一夜を共にする事となった上条だが、
やはりと言うか何と言うか、エロハプニングと格闘中であった。
本当にわざとやっているのではないかと疑いたくなるように、美琴は上条の身体を弄り、
しかも胸やら何やらを当てたまま、

「う……ぅ、ん…当麻ぁ…もっとぉ~……」
(いやー! そんな甘えた声で変な寝言言わないで!? 上条さん理性崩壊の危機ですよ!?)

と、やたらとエロい寝言を言ってくる。一体どんな夢を見ているというのか。
しかし美琴の攻撃はそれで留まらず、「んみゅ~…」と艶カワイイ猫なで寝声を出しながら、
顔を埋めてくるわ、そのままスリスリしてくるわ、耳元で何かあむあむしてくるわ、
ふにふにしてくるわ、むぎゅむぎゅしてくるわ、さわさわしてくるわ、ぺろぺろしてくるわ(!?)…
要は好き放題されていたのである。

こんな状態で眠れる訳もなく、上条は朝まで、生き地獄を味わう事となったのであった。
「抜け出せるチャンスぐらいあっただろう」、とツッコミたい所だが、
それを言うのは野暮という物だ。だってそんな事をしたら、ぺろぺろもされなかったのだから。



朝である。
目を覚ました瞬間、美琴は異常事態である事を把握する。
昨日飲みすぎたせいで記憶は曖昧だが、学園都市でも第三位の演算能力で、
目の前の現状から自分の身に何が起きたのかを推理した。

・ここは上条の部屋
・上条のベッドで横になる自分。その隣には上条本人
・上条の乱れた着衣と、目の下のクマ(おそらく一睡もしていない)
・絡み合う手足
・いきり立った上条の…ゲフンゲフン

以上の事から導き出される答えは一つしかない。
疲れ果てていて全く爽やかじゃない上条の「あ……おはよー…美琴……」という挨拶に対し、
美琴は声量全開で返事をした。

「おおおお、おはよーじゃないわよっ!!!!!
 せっ、せせ……責任っ!!! 取ってもらうからねっ!!!」
「それどっちかっつーと上条さんのセリフーーー!!!」

二十歳すぎても、二人の関係はこんな感じなのであった。









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