とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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小ネタ 戦場




担架が走る。

美琴は朦朧とする意識の中で周囲を見回す。

「しっかりして!! 美琴ちゃん!!」

近くに母の顔が見える。ならばその後ろの影は父だろうか?

それだけではない。

上条夫妻が、妹達が、佐天、白井、初春の姿が覗える。




しかし、アイツの姿は無い。










「とうま!! ここは退いて!!」

「そうだカミやん!! ここでお前に何かあったらオレは超電磁砲に合わせる顔がない!!」

戦場には数十人の味方と千人近い敵。

しかし、

「退けるわけが、ねぇだろうが!!!!!!!」

上条は退かない。










「双子で逆子なうえに早期胎盤剥離の可能性が高いです。とミサカはさすがあの人とお姉様の子の出産ですねと、内心不安に押しつぶされそうになりながらも明るく振舞おうと……」

妹の声が聞こえる。

「上条さん、しっかりして、わたしたちがついているから!!」

今は産婦人科医となった、かつてフレイヤと呼ばれていた人の声が聞こえる。

「僕は必ず君もお腹の子も救ってみせる。でも、君があきらめてしまってはそれもかなわないからね?」

あの医者の声が聞こえる。

そんな状況下で
苦痛に顔をゆがませながらも、彼女は笑って言った。

「はぁ、はぁ……あ、きらめる? そん、な、わけないじゃないですか。だって……」










「退けるわけがないだろうな」

目の前の敵が重機のハンマーでまとめて吹き飛ばされる。
もちろんそれを操るのは

「ここで退くなんて選択をしたら、一番大切なもんを失っちまう」

浜面仕上

「ここは戦場だ」

ある一帯の敵がまとめて焼かれる。
その中心に立つのは、

「一瞬の読み違いが自分だけではなく、守らなくてはならないものまで傷つけることもある」

ステイル=マグヌス

「退くなんて選択肢はない」

負けることのない攻撃が数十の敵を瞬く間に宙に飛ばす。
それが積みあがった長点にたたずむのが

「だったら、やることは一つなんだぜ」

トール

「前に進ンで、さっさと片付けるしかねェ」

敵の総大将までの残りの敵が、暴風に吹き飛ばされる。
素知らぬ顔で歩いて来るのは、

「道は確保しといてやる、あとはどうすンだ? 三下」

一方通行

「どうするって? 決まってる」

そんな中、上条当麻は不敵に笑う。

「まっすぐこの道をゴールまで駆け抜けるに決まっている!! なぜなら!!」






「わたしは、あの、幻想殺しの、嫁なんだから」

「オレは!! あの超電磁砲の旦那なんだ!!」






夜が、明ける。
どたばたと音が耳に入った。、
「まずは治療を」と叫ぶ看護師の声を無視して、その男はドアを開けた。

「わりぃ、遅くなった」

「……まったくよ、どうせアンタのことだからまーた不幸にでもあったんでしょ?」

もう慣れちゃったわよなんて彼女は笑う。

「はいはい、立ち会えなくてすみませんね」

わたくしが悪いんですよーといい、彼は彼女に近づいた。


そして、目に入った。


彼女の横ですやすやと寝息を立てる新たな二人の生命が。

「あんな危険な出産だったのに、生まれたときはわたしの容体なんか無視して元気なもんよ」

アンタに似たのかしら、と言う前に、彼女は彼の腕の中にいた。



彼は、泣いていた。


小さく、ようやく聞き取れるほどの声で、ありがとう、という言葉が耳に入る。
彼女もまた、涙を流しつつ、ボロボロになるまで戦った彼の背に、腕を回す。
そのまま、しばらく二人は泣き続けていた。


「やあ、フィアンマ」

「なんだオッレルス? 俺様になにか用か?」

戦場に残ったのは酔狂な二人だけ。
他のものはあそこに向かったのだろう。

「いや、用はないんだ。しかし、この状況はすごいな」

「魔術、科学、一般、それぞれの上条夫妻を憎むものが手を組み、たったひとつの病院を襲撃する」

「聞いたときはばかばかしかったが、実際立ち会えば、上条勢力というものは恐ろしい」

「貴様もそこに入っているつもりか?」

「いや、今回は気まぐれに手を貸しただけだよ。お前もそうなのだろう?」

紅の男は何も語らない。

朝日が彼の瞳に映すのは、全てが終わった戦場。
周囲一帯をただの荒野に変え、焼け跡、残り火が点在する。


だが、鬼気迫る上条の活躍により、



その中央に立つ病棟には、ひとつの傷もなかった。









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