とある少年の泥酔騒動 3
薄暗い通路を歩いている上条当麻はいまだに美琴を背負っており、美琴は上条に身をゆだねている。結標淡希と別れたあとちょっとした小競り合いがあったのだが、上条が美琴を先程と同じ手で黙らし、美琴は顔を真っ赤にしたまま俯いていた。
そもそも美琴は上条から離れたいわけではない。
ただ、狭い通路をすれ違う大人達の視線がとても痛い。
しかし上条は決して離そうとしない、どんなに美琴が抵抗してもだ。
これはこれで生粋のツンデレにとっては嬉しくもあり、恥ずかしくもあるのだ。
美琴は上条から逃れることを諦め、気をまぎわらせるために先ほどから抱いているちょっとした疑問を上条に聞いてみる。
「……ねえ」
「どしたのミコっちゃん?」
「よくよく考えたらなんでデパートに行くことになってんのよ」
「ん?」
「なによその今更~みたいな顔は!私はいつの間にかアンタにおおおおお持ち帰りされてたのよ!!!!」
早口で当然の疑問をまくしたてる美琴。とりあえず上条には伝わったと思って上条にしがみつく。
しかし確かに伝わったのではあるが上条には意味が分からず、?が浮かぶ。
「なにいってんの?」
「は?」
「いや、ミコっちゃんだいじょぶ?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「あ~わかった。なにも言わなくていい」
(なにをわかったのコイツ?)
顔を上げ、首を傾ける美琴。
すると上条が(美琴視点で)とんでもないことを口にする。
「ミコっちゃんの分もいるってことだな~」
「……………も?」
「うん」
美琴の表情が凍る。
も、ということは自分一人ではないということだ。それに美琴は大きなショックを受ける。
有り得ない、コイツがそんなことするはずないと否定に走るが、真実を確かめるべく上条に聞く。
「アンタ、私以外に誰かいるってことを言ってんじゃないわよね」
「いるよ?」
「なっ!!!!」
「そんな驚くことかね?」
「この……ッッ!!最低だわアンタ!!」
信じていたのに…
アンタだから受け入れたのに…
美琴は裏切られたことに大きな怒りを覚え、上条を怒鳴りつける。しかし上条には?マークが大量に浮かぶばかりだ。
「?お嬢様の口に合わないんすかね~」
「わ、私とその女でやらせるつもりなの!?」
「いや、どっちも俺が準備する」
「さささ最初だけってこと?アンタはどうすんの!」
「え、俺も食うよ?」
「く、食う……」
「そりゃそうだろ。なんで俺だけおあずけなんだよ」
上条はムッとした表情になる。
当然のように放たれてくる言葉に美琴は混乱し、思っていることを口走ってしまう。
「私は…は、初めてだからさ…普通に一人ずつがいいな…」
「え~めんどっち」
「め、面倒臭いとか言わないで!!ゴメン、我慢するから…」
「ん?おう」
めんどくさい
その言葉に過剰な反応してしまい美琴は泣きそうな顔で懇願する。一方、上条は余計な手間が減ったと鼻歌を歌って上機嫌になる。
その上条の姿でさえも美琴を苦しめる。
”惚れたら負け”
そんなことを思い出してしまう美琴だった。
ん?なにが起こったかわからないって?
まず上条はもやしを調理してインデックスと美琴と一緒に食べる、と考えている。
それに対して美琴は上条に食べられr…、さらに上条はほかの女も食べr…と考えている。挙句の果てに美琴と他の女による“そういうプレイ”もさせられる、とまで話がぶっ飛んでいる。
上条は泥酔中、美琴はこの手の会話に慣れていないため具体的なことを言わない、これらよって正しく話ができていない。
こんなことを超鈍感泥酔中の上条が気付くわけもなく、美琴は一人複雑な心境に陥ってしまう。
結果、今の状況に耐えられなくなり…
「ゴメン…やっぱ私帰る」
「なにおう!?やっぱ口に合わないのか!!」
帰ることを決めたが、上条の変なテンションに怒りを覚えてしまう。
上条自身はもやしのことを考えているため軽い?調子になるのは当たり前だ。
というよりも、もやしで重たい話なんかする奴いるだろうか?
しかし美琴はまさに重たい話をしているため上条に強く当たる。
「うるさいわね!!なんでアンタはそんなんでいられるのよ!!!」
「へ?だって安いし…」
「っっっ!!!!!!」
「?」
当然とでも言いたいのだろうか、上条はキョトンとしている。その表情が元で美琴はついに激昂する。
「もういいわ」
「ちょお!!ミコっちゃん暴れるな!!危ないって!」
「私はそんな安い女じゃないわよこのクソ野郎!」
「な!?いくらお前がお嬢様であってもな、あいつの味だけは馬鹿にできねえぞ!」
「だからってなんで一緒に食べるのよ!!!」
「そりゃ一緒の方が楽しいだろ!!!!」
「このクズが!!!死ね!!!」
「死ね!!??反抗期にも程があるだろ!?」
ギャーギャーと騒ぐ上条と美琴。もはやつかみ合いになっており、美琴は上の位置にいるため当然上条が不利である。
「危ねええ!!」
「ちょ!うわ!!」
言葉を発する間もなく美琴が宙に放り出される。
ズドン!!
あたりに鈍い音が響く。
(…あれ?すごい落ち方したと思ったのに痛くない)
美琴が疑問に思い、まぶたを恐る恐る開けてみると
「…ミコっちゃん。可愛いのはいてんな」
「なっ!なああああ!!!!」
上条の上にうつ伏せていることがすぐわかった。しかも上条の声は自分の膝の間付近から聞こえている。つまり…上条はスカートの中を最高の位置で見ているのだッ!!!
「何見てんだエロ野郎!!!」
「ぶごッ!おい蹴るな!ってか目の前だから丸見えだっつーの!!!」
「いいいいいやあああああ!!!!!!」
シュパパパ!!とでも効果音がつきそうな早さで上条から離れ立ち上がる美琴。
と、いつも鉄壁のガードを誇っているはずのスカートの中について上条の言葉で疑問を感じてしまう。
「ん?アンタ、可愛いのって」
「でもその歳でカエルはないだろ」
「へ?まさかあああああ!!!!」
美琴がスカートの中をさわってみるとそこには
短パンが綺麗サッパリになくなっていたのだ!!!!!
「でもなんで短パン履いてないんだ?」
(あ、あのヤロウしかいないわ!!同じテレポーターなら発想も同じだとしてもおかしくない!!!!)
よくよく考え出すと結標が能力を行使したときにテレポートの音は確かに鳴っていて、何かが移動したことがわかる。
上条の“幻想殺し”があるにも関わらずだ。
(ってことはコイツにみ、見られ…)
「まあ絶景だったけどな」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
バチバチと帯電し始める美琴。同世代の男にパンツを見られた恥ずかしさに漏電してしまうが、その量は半端じゃなくあたりで煽っていた人々は顔色を変えて逃げ出すほどだ。
「み、ミコっちゃん?」
「ふ」
「はい!不幸センサービンビンに来ております!!!」
ビシ!!と敬礼する上条。逃げる間もなく、まるで戦場に向かう兵士のように目の前の爆弾に立ち向かう!
「ふにゃああ!!!!!」
「ふにゃり」
10億ボルトの雷撃を余裕でかわす上条。しかし次から次へと致死量の雷撃が上条に向かって理不尽に放たれる!
「ふにゃあ!ふにゃ!!」
「ふにゃりからのゲンコロ!!」
「にゃあ!!にゃ!!!ふにゃあ!!」
「ゲンコロゲンコロおおお!!!!」
「にゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「ゲンコロおお!!!ゲンコ」
「ふうううううにゃあああああああアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
「あ」
ズバチィィィィィィィ!!!!!!!
辺り一帯を雷撃が包み込む。
断末魔を上げる暇もなく上条は灰になった。
その胸に、あれがこうやってあんな角度で見れるなら
(俺は何度でも死ぬるッッ!!!!!!!)
その熱い想いを残して。
-To be continue-