小ネタ どこにでもある上琴事情
「…………何か言う事は?」
「申し訳、ありませんでした」
床に正座させられてる上条と、そんな彼を上から睨みつける美琴。
この2人をよく知る人達ならば、こんな光景はもう在り来たりになってしまっているだろうが、現にこうなっているのだ。仕方がない。
「すぐ帰って来るって言ったわよね?そしたらデートするって言ったわよね?」
「……ごめん」
怒る美琴に、上条はただそれだけしか言えなかった。
事情は話したがそれでも3日間音信不通だったのだ。怒るのは無理もない。
「はぁ……、でも」
申し訳なくて頭を上げられない上条。反省の様子が見られると判断したのか、美琴はしゃがみ込んで、そんな彼の背中に手を廻す。そして、
「おかえり」
ただそれだけだった。
たった一言。だけどもその一言を聞いただけで上条の肩の力は一気に抜けた。
「ただいま」
自然と口が動いていた。
手も美琴の背中に廻し、抱きしめるようになっていた。
(美琴。ありがとう)
待っていてくれる人がいる。帰って来る場所がある。
だから彼は戦えるのだ。どれだけ命を懸けても、こうしていられるのだから。
だけど今は、それは彼の心の中に留めている。
言葉にして彼女に伝えることができるのはいつになるのか、それは誰にもわからない。
それでも、精一杯彼女に感謝を伝えようと、彼は思った。
「美琴、遅れちまったけど、約束だからな。デート、行こうぜ」
彼女が何と答えたのか、言うまでも無い。