とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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麻琴ちゃんの憂鬱な日々




あたしの名前は上条麻琴。どこにでもいる普通な女の子!
…いや、外の世界には能力者ってあまりいないんですよね。えっと~………うん。

あたしの名前は上条麻琴。学園都市ではどこにでもいる普通の女の子!
あたしはパパやママと三人で暮らしています。
パパもママも、娘から見てもすっごく素敵なので、憧れてますし尊敬もしています。
ただちょっと問題がありましてですね……
あっ! 問題と言っても夫婦仲が悪いとか、そんなんじゃないんですよ!?
むしろ良すぎると言うか…まぁ、そこがあたしの悩みでもあるんですが……

…う~ん……口で説明するよりも、皆さんにウチの日常風景をお見せした方が早いですね。
今からご覧になって頂くのは、ある平日の一コマです。
あたしがいつも、何に対して憂鬱になるのか分かっていただけるかと思います。

では、どうぞ!


 ◇


「ほらー、麻琴ちゃーん!? 朝よー! 起きなさーい!」

あたしの朝は、いつもママの声で起こされます。
目覚まし時計もあるのですが、大体セットした時間よりも早く起こされてしまいます。
…でもその程度で文句は言いません。ママは怒らすと怖いから……

「ぅあ~い……おはよー…」
「はい、おはよう。じゃあちょっとパパ起こしてくるから、お味噌汁見てて?」
「…ふぁ~い……」

ママがパパの寝室に入っていきました。あたしはママに言われた通り、お味噌汁を見つめます。

……お味噌汁が沸騰しそうになったので火を止め、顔を洗って歯を磨く為に洗面所に向かいます。

リビングに戻ってきます。まだママはいません。
………遅いよっ!!! 軽く15分は経ってるよ!? どこまでパパを起こしに行ってんのさ!!!
仕方が無いので、あたしもパパの部屋に行ってみます。
ちなみに昔は、パパもママもあたしも全員一緒の部屋で寝ていたのですが、
一緒に寝る夫婦はその………あの…エッ……………エッチ……………しなくなって、
離婚する率も高くなるっていうのをテレビで観て、本気で心配したママが部屋を別々にしました。
ウチに限っては、そんな心配ただの杞憂だと思うんですけどね。
パパも部屋を分ける事に対して、相当ショックを受けてましたし。どんだけママと寝たいんだよ。

話が脱線しました。パパの部屋に入る途中でしたね。

あたしはパパの部屋のドアをそっと開けて、中の様子を覗きます。すると…

「あ・な・た~? もうそろそろ起きないと、遅刻するわよ~?」
「…う~…ん……もう…ちょ………」
「や~んもう! 何かむにゃむにゃ言ってる~! 可愛い~♡
 ほらほら、起きないとチューしちゃうわよ?」
「………すぴー…」
「え~? そんなにチューしたいの~? もう、しょうがないなぁ………んー♡…」

そこであたしはドアを思いっきり開けます。

「ママァッ!!! 朝っぱらから何してんの!? 早く起こしなよっ!!!」
「…ん?……ぇあっ、ま、麻琴ちゃん!!?」

ママが慌ててパパから離れました。遅いですけど。
先程あたしが起こされた時に、『その程度で文句は言いません』と言いましたが、
完っ全っにママに非がある場合は文句を言います。

「それとお味噌汁! もう、出来てるからね!?」
「あ、あらそう!? あ、ありがとうね、麻琴ちゃん! ほらパパ! 本当にもう起きなさい!」

さっきまでパパの寝顔にデレッデレだったくせに、あたしに注意されたので普通に起こすママの図です。
…何か納得いきません。

「う…~ん……ママが…チューしてくれたら……起き…くー」
「え~? どうしよっかな~♪」
「おいこら両親っ!!!」

さっきの今で再びママ達がいちゃつき始めました。さすがに腹が立ったので、あたしは電撃を放ちます。
が、ママは自分の能力であたしの放電を相殺して、パパは単純に右手で打ち消します。
寝起きなのに、その反応速度は一体何なのパパ…
ちなみにその直後、ママから「お家で能力使っちゃダメっていつも言ってるでしょ!」って怒られました。
不幸だわ…


朝ごはんです。
テーブルには3人分のご飯とお味噌汁、焼き鮭に卵焼きに味付け海苔にホウレン草のお浸し、
更に納豆とオーソドックスなメニューが並んでいます。

「今朝は和食なんだ」
「えっ? 違う方が良かったかしら?」
「? いや和食好きだし、てかママが作ってくれたモンなら何でも好きだし。
 …って、どっかで同じような会話をしたような気がするな……」

パパが何が既視感を覚えているようですが、まぁ、気のせいでしょう。

3人で一緒に「いただきます」をして。ご飯を食べます。
…流石に美味しいです。
ママは和食以外も得意で、その気になればお店も開けるんじゃないかって割と本気で思ってます。
あたしが娘である事を差し引いても、です。
なんですけど…

「あ~…ママの作った味噌汁、美味いなぁ~……
 これからも俺の為に、毎日この味噌汁を作ってくれないか? な~んて」
「やっだもう~! それってもしかしてプロポーズ!? 私達すでに結婚してるじゃない♪」
「……………」

もしお店を開いても、これを見せ付けられたらお客さんから苦情が来ますね。
お砂糖なんて入れてないのに、何故かお味噌汁が甘ったるく感じます。
なのであたしは、納豆のお醤油を気持ち多めに入れました。


 ◇


そろそろ登校する時間なので玄関を出ます。
ママが中々パパを起こさなかったせいでいつもより時間がズレて、若干遅刻しそうです。
ちなみにパパも出勤する時間が同じなので、あたしとパパはいつも一緒に家を出ます。

「いってきま~す」
「いってきます」
「はい、いってらっしゃい」

ママも必ず玄関先まで出てきて見送ってくれます。そして必ず…

「あっ、パパ! 忘れ物忘れ物!」
「あ、ああそうだったなママ。…んー、『ちゅっ♡』……これでいいか?」
「…うん♡」
「………パパ、遅刻するよ…? ママも、どうしてもそれ毎日やんないとダメなの?」
「? うん、ダメだけど?」
「………ああ、そう…」

お出かけ前のキスをするのです。
しかも、さも当たり前のように「毎日やらないとダメ」なのだと言い切りました。
あたしはこれを、物心ついた時から見させられています。
なので少なくとも10年…いや、きっとあたしが産まれる前からやってると思うのでそれ以上でしょうか。
雨の日も風の日も、今日みたいに遅刻しそうな日も毎日です。

「…じゃあ、今度こそ本当にいってきます……」
「はーい! 気をつけてね、麻琴ちゃん!」

あたしは今日も、げんなりしながら学校に足を運ぶのです。
あたしの心情とは反比例して、ママは超ご機嫌ですけどね。


「ただいまー」
「おう、おかえり麻琴。遅かったな」
「……うん、まぁ友達と寄り道してたから…」

学校から帰ると、すでにパパは帰宅していました。寄り道をした、とは言ってもまだ18時前です。
17時に仕事が終わって、残業が無かったとしても流石に…

「流石に早すぎじゃない? 会社にも、色々付き合いとかあるんじゃないの?」
「う、うんまぁ、そうなんだけど……」

パパは照れくさそうに頬をかきながら言いました。

「やっぱり麻琴やママのいるこの家に帰る事の方が、会社の付き合いより大切かな~って…」
「そ、そう…」

ううぅ…何だかこっちまで照れくさくなってきました。
パパはこうやって女性を喜ばせるような事を平然と言います。しかも本人は無意識です。
ある意味、たちが悪いです。
ですがそれが裏目に出る事もよくあります。

「………ねぇ、パパ…? ちょろ~っと聞きたい事があるんだけど…?」
「えっ、ど、どうしたのでせうママ? 頭がバチバチしておられますが?」

ほら来ました。顔は笑ってるけどバチバチ帯電してる時のママは、基本的に怒っています。

「えっとぉ、パパのスーツのポケットからこんな紙が出てきたんだけど?
 『私のアドレスです 連絡待ってます♡』、だって。随分と可愛い文字ねぇ…
 しかもメアドだけじゃなくて電話番号まで……どういう事なのか説明してくれる…?」
「えっ、いや…そう言われても俺にも身に覚えが……
 あ、もしかしてあの子かな?
 この前、部長のお宅でお世話になった時、部長の娘さんから何か紙を渡されて、
 そのままポケットにしまった気がするけど……
 それとも取引先の受付のお嬢さんかな? 確か名刺交換したと思うんだよな。
 いや待てよ…お昼によく行く、うどん屋の店員さんって可能性も―――って、ハッ!!?」
「ふ~~~~~ん…? 仲の良い女の子がい~~~っぱいいるのねぇ…?」
「ちっ、違うぞママッ!
 俺が異性として愛してる女性はママだけで今挙げた人たちはただのお知り合いという仲であって
 それ以上でもそれ以下でもなくと言うかなんかもう本当にすみませんでしたーーー!!!」
「そ…そんな事言っても許してあげませんからねっ!」

パパが綺麗な土下座を披露しています。
ママも「異性として愛してる女性はママだけ」という言葉で明らかに顔が緩みかかっていますが、
頑張って怒り顔をキープしています。もう、許しちゃえばいいのに。

そう言えば、詩菜おばあちゃんの話によると刀夜おじいちゃんもよく土下座をしていたらしいですね。
上条家の男性に脈々と受け継がれた、伝統芸能のような物、なのでしょうか。


 ◇


晩ごはんも食べ終わって、あたしはダラダラとテレビを観ています。
ふと、隣で一緒にテレビを観ていたパパが立ち上がり、バスタオルと着替えをタンスから出しました。
あれ? でもオカシイな…確か今って…

「パパ…今お風呂って、ママが入ってるんじゃない?」

そう、確かママが5分くらい前に「先にお風呂入るわよ?」と言っていたのです。
あたしはまだテレビが観たかったので「うん、いいよ~」と了解したのですが、
その事は当然パパも知っているはずです。一緒にテレビを観ていたのですから。
しかし、あたしが問い詰めるとパパはこう言ったのです。

「こっ、こここ、これは、その…違うぞっ!!?
 さっきママを怒らせちゃったから、ご機嫌取りにママの背中を流してあげようかとか、
 そんな事は全然考えていないのですことよ!?
 ついでに『背中以外のあんな所やこんな所まで洗っちゃおうかな~』なんて、
 これっぽっちも思っていないのでありますからして!!!
 だ、だから………そう! こ、これからトイレに行こうと思ってたんだ!
 お風呂!? なにそれおいしいの!? 的な!」

ウソ下手くそかっ!
正直もう、追求するのもアホらしいので、パパの言い訳に乗っかってあげます。

「……パパ…トイレ長引く…?」
「そ、そうだな~。今ちょっと、お腹の調子が悪いから、10分…いや20分?
 もしかしたら1時間くらいかかっちゃうかもな~」
「ああ、そう…ごゆっくりどうぞ…」
「そ、そうか。じゃあ、遠慮なく…あー、お腹痛い。痛いなー、お腹が」

お腹を押さえて、腹痛の小芝居をするパパ。
でもね、パパ……どんなに誤魔化そうとしても、トイレにバスタオルと着替えは必要ないんだよ…?


「う~…お水お水……」

深夜です。あたしは喉が渇いて起きてしまいました。ですがリビングのドアを開けた瞬間、

「………何してんの、ママ…?」

やたらとスッケスケなネグリジェを着たママがそこにいました。
しかもママは進行方向からして、どう見てもパパの寝室へと向かっている途中でした。
しかし、あたしが問い詰めるとママはこう言ったのです。

「こっ、こここ、これは、その…違うのよっ!!?
 さっきパパがお風呂でお背中流してくれたから、ベッドの中でそのお礼をしてあげようかとか、
 そんな事は全然考えてないんだからね!?
 ついでに『もう一人くらい子供欲しいから作っちゃおっかな~』なんて、
 これっぽっちも思ってないからね!!!
 だ、だから………そう! こ、これからトイレに行こうと思ってたのよ!
 パパの部屋!? そんな場所あったっけ!? 的な!」

似た者夫婦かっ!
正直眠いし追求するのもメンドイので、ママの言い訳に乗っかってあげます。

「……ママ…トイレ長引く…?」
「そ、そうね~。今ちょっと、お腹の調子が悪いから、10分…いや20分?
 もしかしたら『朝まで』かかっちゃうかもね~」
「ああ、そう…ごゆっくりどうぞ…」
「そ、そう。じゃあ、遠慮なく…あー、お腹痛い。痛いなー、お腹が」

お腹を押さえて、腹痛の小芝居をするママ。
でもね、ママ……どんなに誤魔化そうとしても、トイレはそっちじゃないんだよ…?


 ◇


如何だったでしょうか。あたしの苦労が少しは伝りましたでしょうか?
いや、確かにね? 両親の仲が良いのは、子供としては幸せな事なんだと理解してますよ。
でもね、何事も限度があるのも事実だと思うんです。

これが新婚生活ならば分かるんですよ。けどあたしが産まれて10年以上経っている訳ですよ。
パパもママも30代半ばな訳で、つまりあたしが最後に何を言いたいかというとですね……

「パパ、ママ……お願いだから、少しは自重してっ!!!」









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