とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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かおり




神裂火織。
イギリス清教に所属しながら、天草式十字凄教の女教皇も務める。
核兵器と同等の戦力である聖人であり、魔術大国イギリスでもトップクラスの力を持っている。
その彼女が、イギリスから、突如消えた。


所変わって学園都市。
とある一室に日が差し込む。

「……だから、ごめんね、うん、うん、また今度」

ピッ という音とともに、そのカエルの携帯はしまわれた。

「どうした?」

ツンツンパパは、洗い物を終わらせ、手を拭きながら問いかける

「婚后さんがね、遊ぼうって」

電話をしながら、器用に人形を動かしていたのはビリビリママだ
モグモグベイビーはその人形遊びにきゃっきゃと夢中である

今日も上条家は平和だった

「でも、断った、インデックスと遊びたかったしね」

ほらほらインデックス~、なんて再び赤ちゃんに構いだした美琴を見ながら、
上条は一時何か考え、意を決して声をかけようとした

「なぁ、美琴…………ん?……!!!!」

「!!!」

「あう?」

上条達はそれに気付き、動いた。
次の瞬間、窓ガラスが砕け散る。

インデックスをかばうように抱きしめていた美琴、
さらに二人を守るように抱きしめていた上条。

3人ともケガはなく、ゆっくりと開かれた上条の目に、
その人物が映った。

「……かん、ざき?」

「お久しぶりです、皆さん」




上条当麻、御坂美琴、そして神裂火織の3人はなぜかフローリングに正座していた。
上条の右隣が美琴、二人の正面に神裂が座る。ちなみにインデックスは美琴の膝の上でケロヨンとピョンコを戦わせている。
どこかからかししおどしの「カコーン」という音が聞こえた。

「久しぶり、神裂さん」

「お久しぶりです、御坂も元気そうですね」

最初は聖人だ超能力者だでいがみ合っていた二人も、上条の冒険に付き合ううちに一緒にいることが多くなり、会話が上条の愚痴になり、いつのまにか仲良くなるという、なんか、上条の周囲は大体そんな関係だったのだった。

「で、なにしに来たんだよ?」

「……はい、まずは、その子を貸してくださいませんか?」

上条と美琴は?を頭に浮かべて視線を交えた後に、
神裂に顔を向け同時にうなずくとインデックスを渡す。
しばらくインデックスを凝視する神裂に対し、インデックスも瞬きをした後に、キョトンと頭を傾けた。



もう限界だった。




「だーーーーーーーー!! かわぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!!!」

急に立ちあがりインデックスを抱きしめながら叫ぶヤマトナデシコだったもの。
なんて声をかければいいのかわからない御両親。
神裂はさらに二人を置いていく。

「なんですか? なんなんですか!!? 
ただでさえちっこくて愛くるしいお姿だったのに、
さらにちっこくなるとか、もうどうしてくれるんですか!!!!」

目を輝かせながら、インデックスをたかだかと掲げたり、頬をこすり合わせたり、抱きしめてグルグル回ったりする聖人。
上条と美琴はあっけにとられたあと、はたと気がつく。
この状況は、危険だ。
未だになにかを叫んでいる神裂を、あたふたと制止する。

「ま、待て!! 神裂!! キャラ崩壊どころじゃないぞ!!!」

「そろそろ元に戻って!! 読者もひいてるから!!」

後ろ向きに片足をあげ、インデックスを高い高いしながら笑いかける神裂。
手を虚空に漂わせる上条と美琴、しばらくそのまま固まっていた4人は。

「すみません、取り乱しました」

一瞬で元の位置に戻った。
しかし、過去は無かったことにはできないのだった。
インデックスが神裂の隣で遊び始める。


「こほん、……で、何しに来たんだ?」

しかし、上条は過去を無かったことにした。
上条の半分は優しさでできているのだ。

「ああ、そうでしたね」

そして、彼女は行動に移した。

「すみませんでした!!」

大和撫子の美しい土下座である。
当然2人は慌てた

「な、なんだよ急に!!」

「私があなたの家で暴れたせいで、あなたが住む家を失ったととステイルから聞きまして、この子が関わると、つい、自分を見失ってしまって……」

「あー、そういえば、そうだった」

また、借りが増えてしまった。なんていう神裂に、
あるある、とかうなずく美琴さんなのだった。

「まぁ、それはもういいよ、そんなことより窓ガラスを壊して突入するほど急いでた理由は何だ?」

「あ、それはインデックスがかわいすぎて、我慢できなかっただけです」

「全然反省してねぇじゃねえか!!!!」

うがーーーーー と立ちあがる上条を、
まぁまぁと腰にしがみついてなだめる美琴さんであった。
そのまま美琴は問いかける。

「そ、それで、神裂は何しに来たの?」

「はい、もろもろの借りを返させていただきましょう!!
上条当麻と、インデックスの面倒は、私が見ます!!!!!」

「「へ???」」

「あう?」

3人はガッツポーズしながら立ちあがる聖人を同時に見た。
少ししてようやく上条が動き始める。
美琴もおずおずと立ちあがる。

「ちょ、ちょっと待ってくれ、どういうことだ??」

「と、当麻とインデックスの面倒を、神裂が見るの?」

「はい、今日すぐにとはいきませんが、明日には新しい家を見つけようと思います」

何か言おうとしていた二人は、次の神裂の言葉で固まった。

「関係のない御坂に、これ以上迷惑はかけられませんから」

その一言に、全く悪意は無い。
だから二人は戸惑った。


本来、この状況は、いびつなのか?


「と、当麻……」

「美琴……」

上条は、迷っていた。
先ほどの電話は、
彼女の親友の1人からだったはずだ。


もし、自分達がいなければ、彼女は今ごろ楽しく友人と遊んでいたはずなのだ。


一方、美琴は、だんだん、怒りがこみ上げていた。

なぜ?

そんな時、再び電話が鳴った。湾内の文字が表示される。
美琴は、もう限界だった

「じゃあ、もう、わたしは、関わらなくていいのね。友達と遊んでくる」

上条が制止する間もなく、そのドアは閉められた。









かおり 2




「かーちゃき?」

「私ですか? かおり、と呼んでくれたらうれしいです」

「うー……かおり?」

「はい!! ……ふっ、私は一回でしたよ、ステイル」

インデックスを抱いている神裂がドヤ顔したのを、
上条は隣で眺める。
ここは、いつものスーパーからの帰り道だった。

だが、いつもとは違う、
隣に立つ人が変わるだけで、
世界が、全く違う物に見える。

「あう? う? かおり、まーま?」

「まんま? ご飯でしょうか? 帰ってからですよ、御坂へのお礼も兼ねて今日は豪勢にしましょう!!」

その単語が引っかかる。


御坂。


なぜだかわからない。
しかし、上条の足が、自然に、止まった。

「? どうされました?」

「あ、か、神裂。悪い、忘れ物したみたいだ。先に行っててくれ」

「え? はい、わかりました」

上条は家路と逆に進む。

「……ぱーぱ?」

「ぱっぱ? 早く帰りたいと? わかりました、少し早歩きになりましょうか」

少しずつ、上条と神裂の距離は離れていった。



とあるおしゃれなレストランにて、
美琴は、それはもう不機嫌な顔をしていた。

(あー腹が立つ!

なんに腹が立ってるのかわからないけど腹が立つ!

なんでわたしがインデックスや当麻と離れなくちゃいけないのよ!!

……まてまて、そもそもあの子はライバルだったはずでしょ?

情が移ったら……ってなんのライバルよ!

神裂さんは相も変わらずえろい格好だし、

なに? そんなに見せつけたいわけ??

そんなにおっきいのが好きかコラー―!!

そうよ! 当麻が全部悪いのよ!!

なによ神裂さんにでれでれしちゃって

どーせわたしがいなくてせーせーしてんでしょ

今頃当麻たちは、きっと楽しい時間をすごしてるんでしょーね!!

当麻なんか

『ようやく二人だけになれたね』

とかいって

『そうですね、寂しかったんですよ』

なーんて神裂さんも言って

『大丈夫、これからは離れないさ』

とか

『でも、御坂に悪いです』

とか言いつつも

『あんなぺったんこどうでもいいさ、俺には神裂がいる』

『うれしいです、上条当麻』

『神裂、いや……火織、見たこともないような表情だな、もっとオレだけにお前のいろいろな表情を見せてくれ』

『と、うま……』

こうして3人は中国を横断、神秘の泉で当麻のためだけの大和撫子七変化!!?」

「「……み、御坂様……」」

「……御坂さん、その、とんでもなく視線が集まっていまして、
 もう少し、音量を下げていただけたら助かりますわ」

テーブルマナーは家に忘れて来たらしい。



上条は来た道を戻る。
それは、スーパーへと続く道で、
最近、がらっと状況が変わった風景だった。

『いーじゃん、買い物にいくらつかっても。
いいもののほうが美味しいものつくれるしさー、インデックスもそう思うわよね?』

『ぶー、だっ』

『あれ? 四面楚歌??』

例えばあそこのペットショップだ

『か、かわいーーー!!』

『おーい、もう時間ないぞー』

『かわいーーー!!』

『聞けよ』

『あぶー』

『……もちろん、インデックスもかわいいよ』

『あい!!』

『なんだそりゃ?』

だいたいそこで30分くらい時間を無駄にする。
しかし障害はそれだけじゃない。

『うー暑い』

『そんなことわかってらい、いちいちいうな』

『でもさー』

『うぶー』

『ほらー、インデックスも顔がデフォルメされちゃってるわよ』

『もとからだろうが。どうしようもないんだから我慢しなさい』

『あー! あんなところに偶然にアイス屋が!!』

『あーす!!』

『いつも通る道だから、あそこにあるのは知ってるだろ、無駄遣いは許しません』

『ケチ!!』

『ちー!!』

『ダメなものはダメ!!』

結局3回に1回は寄ることになる。
そして、最近まで気づかなかったが、オモチャ屋も道中にあった。

『どれがいい? インデックス?』

『こらこらあんまり甘やかすなよ』

『だってかわいいんだもん』

『……わからなくもないが』

『わかる!!? このくまちゃんのつぶらな瞳!!!』

『そっちかよ!!』



(だいたい、特売はギリギリの時間になるんだよな……)

上条の手にはその時のくまのぬいぐるみが握られていた。

「……今日は余裕で特売に間に合ったな」

暫く、そのぬいぐるみを握っていた上条。
彼は一瞬目をつぶると、棚にもど
そうと思ったが、その隣のぬいぐるみの山を見て上条は固まった。
見覚えのある青髪の顔がぬいぐるみの山の中にある。
体はぬいぐるみで埋まっているようだ。
目があってしまった。
ほっといてもいいのだろうが、
この後に誰かが酷い目にあうのはよろしくない。
しぶしぶ声をかける。

「なにやってんだよ?」

「……カミやん、ちょっと離れてくれへん?
今、『きゃーかわいーーー!!』って言いながらボクを手に取る女の子を待ってんねん」

「……それは悪かった、そんな青春の無駄遣い方法知らなかったから」

できるだけ早めに距離を起きたい。
そうしないと

「なにやってんのよ、あんたたち」

こうやってひとくくりにされてしまうのだ。

「一緒にすんな!!」

「せやせや、カミやんと一緒にされるとは心外にもほどがあるで!!」

なにも語らず、拳を繰り出す上条と迎え撃つ青髪。
それを  ふん!!  という声を放ち、暴力で治めたのは、声をかけた少女だった。

「いてて、なにすんだよ吹寄」

「あんたたちがお店に迷惑をかけそうだったから止めたんじゃない」

すぐ頭に血をのぼらせるのはカルシウム不足だから飲め、と押し付けられたヘンテコサプリを丁重に押し返す。

「まさか、夏休みでも吹寄から頭突きもらうとは思わんかったわ」

「まったくだ、なんでこんなとこいんだ?」

お前に全然似合わない場所だけど?
という上条の言葉にグーで答える吹寄。
きれいに顔面にはいった。

「私はたまたま合流したから着いてきただけ」

吹寄が肩越しに後ろを見る。
つられてそちらに目を向けると
そこに、見慣れた人がいた

「お、姫神」

「何故。今まで気付かれない」









かおり 3




「なんて酷いお方なんですか!!
 そのトウマとやらは!!」

「そうよね!! やっぱりそう思うわよね!!」

そろそろ隣の泡浮と湾内が苦笑しているのに気がついて欲しい。
もう、日差しが大分傾いてきていた。
4人はレストランから場所を移して、学舎の園の喫茶店、その外の席でお茶をしていたのだった。
つまり婚后と美琴の叫び声は通行人に騒音として認識されている。

「まったく信じられませんわ!!」

「そうそう!!」

「こっちが一緒にいたいという気持ちも考えず」

「まったくまったく!!」

「自分勝手に好きなことを言って!!」

「そーだそーだ!!」

間に赤面もののセリフがあったのだが、美琴は気付かない。
なんていったって嬉しいのだ
最近美琴の回りの対応が雑なのだった。
こうやって上条の愚痴を聞いてもらおうとしても、
佐天は「そうですか~」と言いながらニヤニヤしたあと、いつの間にか自分が赤面する展開になるし、
白井なんて論外だし
初春は「たいへんですね~」と言いながら、パフェに感動したりパソコンで仕事したりしている。つまりは聞き流している。因みに、白井の美琴に対する愚痴でも同じ対応なのを美琴と白井は知らない。

とにかく、美琴は一緒に怒ってくれる人が欲しかった。
しかし、少しずつ事情が変わってきたのだった。

「こんなに一緒にいたいと言っているにも関わらず……」

「あ、ごめん、わたし一緒にいたいとか、言ってないんだ」

言えたら苦労しないのだった

「……そ、それでも御坂さんの家から御坂さんを追い出すなんて!!」

「え、えーと、自分から出て来ちゃってたり」

「うっ…………か、関係ない御坂さんを無理やり巻き込み育児の苦労を押し付けて……」

「家事も育児もきれいに分担してるし、わ、わたし、自分から手伝いたいって言った気が……」

「か、カンザキとやらを呼び寄せて御坂さんを余所にイチャイチャするなんて!!」

「……えーっと、別にイチャイチャしてなかったし、そもそも神裂さんは呼ばれたんじゃなくて自分から来たような~……あれ?」

と、いうことはつまり

「そ、それではそのトウマとやらにはなにも過失がなくなってしまいますわ」

それではおかしい、では何故自分はイライラしていたのだ?
誰に対して腹をたてていたのだ?

「…………あっ」

そっか

「わたし」

すぐに、否定して欲しかったんだ

「関係ないと、言われたくなかったんだ」

しばらく、音が消えていた。
それを打ち破ったのは、あの

パンッ

という威勢のいい扇子の音

「甘いですわ!! 御坂さん!! あなたらしくもない!!」


一方、

「お、お前らが話を聞いてくれるって言ったから話したのに、ふ、不幸だ」

上条はベンチの上でボロ雑巾と化していた。
青髪、吹寄、姫神が、どうかしたのか? と聞いてきてくれた。
だから、現状を説明した。
終わった瞬間にゴッド・デコとエロサタンに殺されかけた。
上条に同情するやつはいないのだった。

「で。御坂さんと住んでることは置いといて。何を悩んでたのか教えてほしい」

上条は、何も言わず起き上がる。
口を動かしたのは、少ししてからだった。

「……美琴に、無理させてたんじゃないかって思ってさ。アイツ、この夏休みほとんど遊びに出掛けてないんだ。実家にも帰ってない。
もし、オレたちが美琴と関わらなければ、アイツはもっと夏休みを楽しめたんじゃねーかって思って……」

夕日が上条の表情に影を作る。
そんな上条に、静かに声がかけられた。

「……違う。上条くんの悩みはそれじゃない」

3人が驚きの表情を姫神に向ける。
しかし、上条と他の2人は驚きの中身が異なる。
青髪と吹寄もそれには気付いていた。しかし、それを口にできなかった。
彼女のことを思って。

「ど、どういうことだ? 」

「……それは。上条くんじゃなくて。御坂さんが悩むような内容。上条くんが悩むなら……」

そこまで言って、姫神は口を閉ざす。
上条には、夕日が逆光となり、姫神の表情がよく見えない。
でも、その表情は、泣いているように見えた。

「……上条くんが。悩むなら。どうやって御坂さんと一緒にいられるか。とかになる」


風が吹く

扇子が婚后の髪をなびかせた。

「直接言葉にせずに、自分の考えをわかってもらおうなんておこがましいですわ!!
いつも、まっすぐに自分の考えを行動に移していた御坂さんらしくありません!!」

夕日が姫神の髪を焼く
彼女は凛と言い切った。

「正しいとか。迷惑とかじゃなくて。上条くんがどうしたいのかだと思う。そして。ダメもとで一回。御坂さんに頼んでみたらいい」

私なら、という言葉は飲み込まれた。


上条と美琴は素直ではなかった。
今回は単にどちらからでもいい、一緒にいたいと言えばよかっただけの話。
そして、それを望むものはもう1人いる。

夕日は神裂とインデックスにも降り注ぐ
とある二人がおいかけっこをしていた土手を神裂は歩いていた。

「ぱーぱ、まーま?」

「ぱっぱまんま? 早く食事にしたいと?
……この姿でもあなたは相変わらずですね。でももう少し待ってくださいね。今日は、御坂にありがとう、またね、パーティーですよー」

草がざわめく、
何かを、インデックスは感じ取った。

「御坂には感謝しなければいけませんね」

インデックスの瞳が揺らぐ。

「楽しみですね、明日からは私と上条当麻、そしてあなたの3人での暮らしが始まるんですよ!!」

それを言った瞬間、神裂の視界がぶれた。
頭部に衝撃を受けたのに気付き、平衡感覚を取り戻すより先だって、反射的にきれいな体勢で着地したのは、さすが神裂であるというべきだろう。
神裂は戸惑う。
なぜ、こうなったのかわからない。
目の前には、何本もの空を舞う巨大な黒い刃。
それを自在に操るは

「う~~~~~~」

赤面し、目に涙を浮かべ、
宙に浮く赤ちゃん。

いや、魔道図書館だった。

「だーーー!やーーーーー!めーーー!!」

全ての刃が神裂に襲いかかる。


「!!! インデックスが、泣いてる?」

美琴は倒れる椅子に目もくれず立ち上がった。
一瞬3人は驚いたが、静かに微笑む。

「御坂さま、是非行ってあげてくださいな」

「え?」

「その赤ちゃんが泣いているのでしょう? ママがいてあげないと可哀想ですわ」

「……湾内さん、泡浮さん……」

「御坂さん、今日は、心ここにあらずというようにお見受けしました。きちんと、自分の気持ちを伝えてきてくださいな。その後、機会があれば、また遊びましょう」

「婚后さん……ありがとう」

美琴は笑って、近くの建物を使い、飛んでいった。
走っていくことすらしなかった。
一瞬あっけにとられた3人は少しして微笑む。

「素敵、ですね」

「そうですね、うらやましいですわ」

「でも、少し悔しいです、御坂さんにそこまで思われるお友達なんて」

「「………………え?」」

「え?  なんです?」

上条はふと立ち上がると、顔を姫神から反らし別の方向に視線を向ける。
多摩川の方向だ。
姫神がその横顔に、静かに語りかける。

「いろいろ複雑に考えないで。上条くんがどうしたいかで動いた方がいい。その方が上条くんらしい」

上条は驚いた表情で姫神の顔を見た。
彼は微笑むと、再び顔を多摩川の方に戻す。
そして、言った

「前、美琴にも、同じこと言われたなぁ」

姫神の表情が固まる。
上条は何かを感じ、横を向こうとした。
しかし、背中から衝撃を受け、強制的に体ごと多摩川の方を向く。
それをした犯人の青髪が無理やり上条と肩を組んだ。

「あーあーカミやん!! 楽しそうやね!! 夏休みに嫁さんと赤ちゃん作って夫婦ごっことはさすがのボクもそこまで「う、うるせぇ!! そんなんじゃねぇよ!! 耳の近くでマシンガンのように大声出すな!!」のことは妄想でもしなかったわ。とにかくカミやんをその御坂さんと赤ちゃんが待っとるんやろ? さっさと帰ってあげてーや」

後ろを見ずに全力疾走してくれへん? 後ろを見たらぶっ殺すで。
なんて理不尽に対して文句を言う前に、
よーいドーンという吹寄の声と共に青髪に背中をおもいっきり叩かれた。
いつものセリフを口にしながら上条は走る。
未だに青髪がなにか叫んでいた。



上条は振り向かないでくれた


涙は吹寄の肩が受け止めてくれた


嗚咽は青髪の声が打ち消してくれた


そして、

一人の少女の恋が終わった。





「ねぇ、これから3人でどこかいかない?」

「お、ええね。いこうや」

「コイツが奢ってくれるって」

「あれ? 姫神はともかく吹寄にも奢ることになってへん?」

「細かいことは気にしないの。姫神さん、とことん付き合うわよ」

「…………ハンバーガー。20個。やけ食い」

「……容赦ないね。ま、新学期にどうやってカミやんを懲らしめるか相談といこか」




神裂は、紙一重で攻撃をかわす。

「どうしたというのですかインデックス!!」

「だぁーーーーーーーーー!!やぁーーーーーーーーー!!」

神裂は かわすことに専念する。
下手に反撃してインデックスを傷つける訳にはいかない。
しかし、先程より少しずつ刃の数が増えていく。
このままではいつか刃が神裂に届くだろう。
思考を重ねている間にも刃は増えてゆき、ついに神裂の頬に届いた。
そして神裂を包囲する。

しかし、その時間は一瞬で終わった。

「こら!!! 何してるのインデックス!!」

雷電が刃を消し去ったからである。
神裂とインデックスの間に降り立ったのは、
超電磁砲、御坂美琴だ。
神裂は助けられたが、 その美琴を止めようとした。
先程の雷撃が危うくインデックスを傷つけるところだった。
しかし、声をかけようとした神裂の動きは止まる。
それは、

「魔術は私達が周りにいて、いいって言わないとつかったらダメだって、何度言ったらわかるの!!」

その、怒気に飲まれたからだ。
インデックスも体をびくつかせ、ふわふわと着地する。
静かにインデックスに近づく美琴。
インデックスはつい目をつぶった。
そのインデックスを美琴は



そっと抱き上げた。


「どうして魔術を使ったの? 何か嫌なことがあったのかな?」

インデックスが目を開くと、
優しい、それでいて怒ってて、さらに悲しみを帯びた美琴の顔が見えた。






安心した。

「ま、むぁ~~ま~~、ピぇ~」

「ん? どうしたのかなー、よしよし」

ようやく神裂は気づく。
隣に上条が立っていることに。

「大丈夫か? 神裂?」

「え? ええ」

「悪いな、最近は魔術使うことがなかったんだけど」

「…………最近?」

「あぁ、最初は大変だったんだ。
ちょっと嫌なことがあったらすぐ魔術を使ってさ、しかもものすごいのを。
オレと美琴が全力で止めてたんだぞ」

そこで、ようやく気づく。
ここに彼女が到着したときの雷電がインデックスを傷つける訳がなかったのだった。
あの雷電は経験に則り、適切な加減で放たれたものだから。

「インデックス、なんで魔術使ったんだ?」

ふと、気づくと、上条は自分の横から彼女達の隣に移動していた。

「ぱ、ぷわぁ~~ぱ~~」

「お? どうしたどうした?」

「なんか今日は甘えん坊ね、どうしたんだろ?」

神裂はその光景に見覚えがあった。
ただ1つ違うとしたら、
あの子の表情だけだった。
だから……決めた。

「……美琴、ちょっと話したいことがあるんだ」

「……奇遇ね、わたしも話があるんだ」

少しの間お互いを見ていた上条と美琴だが、近づいてきた足音に顔を向ける。

「お二人に、話があります」



上条当麻、御坂美琴、そして神裂火織の3人はなぜかフローリングに正座していた。
上条の右隣が美琴、二人の正面に神裂が座る。ちなみにインデックスは上条と美琴の間に座り、二人のズボンとスカートをぎゅっと握りしめている。
どこかからかししおどしの「カコーン」という音が聞こえた。

「すみませんでした!!」

大和撫子の美しい土下座である。
当然2人は慌てた

「な、なんだよ!!」

「先ほど、イギリス清教より、連絡がありまして、至急戻るようにとのことでした」

「……神裂さん、許可取って無かったんだ」

「そのため、その子と上条当麻の面倒をみるということは、できそうにありません」

神裂は、美琴を見つめる。

「そこで、御坂にお願いがあります。二人の面倒を、このまま見続けてくれないでしょうか?」

「へ? え? はい、わかりました」

「即答かよ!!」

つい隣の上条がつっこみ、
それに、「だ、だって」なんて応える美琴。
そんな二人を見つめていた神裂は、微笑み、立ちあがる。
何故か口論になっていた二人はそこでようやくケンカをやめた。

「それでは、失礼します」

「へ? もう行くのか?」

「1泊くらいしていけばいいのに」

「いえ、仕事がたまっていますので」

「……神裂、仕事も置いて来たのかよ」

「それでは、また会いましょう、インデックス」

そう言って、赤ちゃんに顔を近づけた神裂の顔が驚きに染まる。

「かおり、よししー」

神裂の頭をなでなでするインデックス。

(……まったく、敵いませんね)

「ありがとう、インデックス」

そうして、彼女は窓から飛んでいった。

「……って、窓はこのまま放置かよ」

「……そういえば、当麻、話があるとか言ってなかった?」

「ん? あぁ、さっき美琴が即答した神裂のお願いと同じさ」

「なんだ、それか」

「で、美琴たんの話ってばなによ?」

「たんいうな。さっきわたしが即答した神裂さんのお願いよ」

「同じかよ」

「同じね」

真顔のまま話していた二人は、そこで笑いあった。


月光が差すビルの屋上。

「おっす、ねーちん」

暗闇の中から音もなく出てきたのは、
金髪に青いサングラス、 アロハシャツという、「胡散臭い」を体現した男だ。

「学園都市に来るんだったら前もって言って欲しかったぜい。そうしたらオレが新兵器『堕天使エロメイド防御力30%ダウン』を貸してやったんだがにゃー」

「土御門……ありがとうございました」

「……は?」

土御門は真顔になった。
彼の想定ではここで真っ赤になった神裂を拝みながら、彼女の突っ込みモーションを回避。
それが「ありがとうございました」とは不穏である。
まさか、今までありがとう、てめえのことは忘れないからさっさと地獄に行けコノヤロウってことなのか?

「……どうして顔色がサングラスと同じになってるんです?」

「ま、待ってくれ、ま、まだオレにはやることが……」

「は、はぁ」

「……コホン、ありがとうってどういうことだ? 感謝されることした覚えは無いぜよ」

「……今まで、私の恩返しに付き合ってくれたことへの礼ですよ。彼への恩返しの方法がわかったんです。彼とインデックスと……御坂の平穏を、全力で助けることです」

闇が静寂を強調する。
最初は動揺していた土御門は、
少しの間、言葉を真剣に考えた。
しかし、

「……ねーちん、いいんだな?」

そんなありふれた言葉しか出ない。
月光が、神裂の瞳に浮かぶ雫を光らせた。

「はい、私は、彼に感謝しています。……彼は、始めて、私を……」

不幸(幸せ)にしてくれたのだから。

















同じく、月光が降り注ぐ研究室。

「……ついに、ついに、完成したか」

かつて幻想御手を作成した女性の瞳が暗闇の中で光る。

「フフッ、フハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」

下着姿な彼女に対し、ツッコミ役が誰もいないことを嘆きつつ、
このあたりで今回は終わりとします。









おまけ!!

「驚然、まさか、能力者だったとは」

先日、上手に焼けましたアウレオルスはそのまま一晩入院したのだった。
あの状態からすぐに復活させるカエルすごい。
クローンでもつくったんじゃあるまいか?

「介然、そんなことよりも、あの子はどこだ?」

懲りない奴である。
朝から日が傾くまで探し回り、ようやく見つけた。
っていうか、夏休みをいいことに自由にしすぎである。
教職についているのではなかったか?

「歓然!!この声はマイエンジェル!!」

しかし、声の方に顔を向けると、彼は驚き、固まってしまう。

「……色然、いつもの、御両親ではない?」

あわてて神裂の前に立ちふさがる。

「佛然、貴様なにものだ!!?」

「あう!! ゲコ!!」

「えーっと、そういうあなたはどちらさまでしょう?」

「昂然、わたしの名はアウレオルス=イザードという」

「アウレオルス=イザード!!?」

「……唖然、貴様も、あの赤髪同様私の過去を知っているな!!?」

(しまった!!)

しっかりしろ魔術結社。

「憤然、その子に危害を加えるつもりか?」

「……そ、それは昔の話です」

「……喟然、昔、傷つけたことがあるのだな?」

(私のバカヤロウ!!)

まったくである。

「……判然、貴様、その子の母親だな!!」

は?

「了然、あの赤髪とともに家庭内暴力を繰り返した貴様から、あのツンツン頭とビリビリが助け出したのだろう。同然、私はそれ以前に助けようとして返り討ちにあい、記憶を失った、違うか!!」

神裂が肩を震わす。
下を向いているため、表情が影で見えない。

「……のかよ」

「どうした?」

「……私が一児の子持ちに見えんのかよこのクソヤロウがああああああああ!!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ」

見事な蹴りあげである。
アウレオルスは星になった。
その後、神裂は体育座りでしばらく川を眺めていた。

「あ、姫神さんじゃない……どうしたの?」

「なにか。知人の叫び声が聞こえた気がする」

「空耳? 疲れてるならこの「いらない」」








さて、神裂が去った後、
今後、互いに遊びに行きたい時は我慢せず遊びに行く事を取り決めた、
第一次上琴条約が結ばれた。
美琴の、我慢していない、という意見は否決された。
美琴の、名前が恥ずかしい、という意見もなぜか否決された。

その後のことである。

「さて、飯をつくりますかね」

「よろしく」

しかし、上条は一歩進んで固まる。

「インデックスさん、わたくしのズボンをおはなしいただけませんか?」

「や!!!!」

即答だった。
私、怒ってます。
と主張する顔はもはやかわいいだけなのだが、はなしてほしい。
何度か足を引っ張ったがはなしてくれない。

「仕方ないわね、わたしがつくる」

「やーー!! や~~」

美琴に至っては立った瞬間インデックスは泣いちゃうのだった。
美琴がインデックスを抱き上げた時、上条のズボンから手をはなすと、その子は「ちゃい」とすかさず上条の背中のシャツを掴む。

「本当に今日は甘えん坊さんね」

「とはいっても、どうすっか……仕方ない、美琴、後ろに立っててくれるか?」

こうして、一家全員キッチンに立つことになった。








「キャベツの千切りがわたしより上手いのがムカつく」

「理不尽すぎません?」











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