とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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美琴 1




蝉がミンミンとなり始める季節。
もはや梅雨の蒸し暑さは消えて無くなったが、代わりに暑い日差しが照りつけるようになった。
すでに夏休みに入っているが、開発の単位が足らない上条当麻は早々から補修を受けていた。
補修を終えた頃には太陽も沈みかけているが相変わらず蒸し暑く、彼の背中を汗で湿らせる。だがそれ以上に気になっている事が1つある。

(最近、会わねーな)

それは、彼がビリビリ中学生こと、御坂美琴である。
初めて彼女と会って一カ月が過ぎようとしている。
以前は週に3、4回は遭遇するほどのエンカウント率の高さで勝負を挑まれていたが、一週間以上、姿を現していないのだ。
当然上条としても、彼女には普通の女子中学生らしく青春を謳歌してもらいたいところだが、彼女の性格を考えても、白黒はっきりつけないまま終わりというわけにもいかないだろう。
ならば、何故会わないのだろうか?

下校時刻が合わないのか。
用事が出来たのか。
それともまさか、病気にでもなったのではないか。

うーん、と考える上条だが、結局それは聞いてみないとわからないのだ。
こうなると、気になってしまうのが上条当麻である。答えが見つかるはずがないのに、ずっと考えている。

「……あ」

いた。
栗色の短い髪。常盤台の制服。
間違えはない。美琴だ。


「おービリビリか。探してたんだぞ」

こういうとき、上条はまず行動に出る。
美琴へ駆けより声をかける。

「ビリビリ言う…な……って、私を、探してた?」
「ここ最近、勝負を挑まれてなかったからな、どうしたんだろうってな」

上条がそう聞くと、先ほどまで怒り気味に見られた美琴の表情は曇り、目を反らした。
良く見れば、目元には隈が出来ており、頬も少しやつれていた。
たとえ門限を破っても、健康的だった彼女がどうしてこうなったのだろうか。

「最近、そういう気分じゃないのよ。んじゃ、またね」

そう言って、彼女は背を向けた。
足もふらつき、今にも転びそうだ。

「あ……、おい」

とうとう見ていられず、上条は美琴を呼び止めた。
だけど美琴には聞こえていないように、彼女はふらふらと歩き続ける。

「おい、ビリビリ!」

ついにはしびれを切らして美琴の肩に手を置いた。
すると彼女の体は急に倒れ込み、上条は慌てて彼女を抱きかかえた。


カエル顔の医者の話では、ただの過労という事だ。
今彼女は、病院のベッドで安らかに眠っている。勝負勝負と突っかかって来る時はあまり気にしていなかったが、こうしていると美琴も可愛いのだ。
だが、一晩中追いかけっこをするような彼女が倒れるほとは。

(それにあの隈……何日も徹夜したみたいな)
「ん……わたし…?」

美琴が目を覚ました。
彼女は辺りを見回すと、ここが病院だと気付いてか、ベッドから起き上った。
だけども力が入らないのか、またもや倒れそうになり上条が支える。

「起きたばっかりで無理するな。今は寝てろ」
「でも…!」
「何を焦ってるんだ。悩んでる事があったら俺に言え」
「……っ、わかったわよ」

観念したのか、美琴はベッドに腰を付けた。それでも焦っていた理由だけは頑なに言おうとはしなかった。
とりあえず上条はメモ用紙に自分の携帯番号を書いて、ベッド横の机に置いた。

「夕飯の買い物もあるし、俺は帰るよ。でももし相談する気になれば言ってくれ」
「……待って」
「ん?」
「あの、今日は……ありがとう」

彼女にお礼を言われるのは初めてであった。
何だか気恥ずかしく、上条は急いで病室を後にした。




その夜の事だ。
美琴が病院から抜け出したと、カエル顔の医者から電話が来たのは。









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