とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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エンドレスイマジンブレイカー

《前提》
アニメ版偽海原編、恋人ごっこの後の話です。
アニメ版だと夏休みラストの午後が空白なので、そこを埋める?話です。


(んー、どこ行ったんだアイツ?)
偽海原と戦っている際、落ちてきた鉄骨が妙な動きをした。
御坂の力か?と思っていたのだが、だったら戦闘後、出てきてもいいはずだ。
ところが、御坂美琴はいつまでたっても現れない。

気のせいか、と思い、別れた地点のハンバーガーショップまで全力疾走で戻ったが、いない。
(アイツの連絡先も知らねえし…参ったな)
その時、携帯電話が鳴った。


御坂美琴は、上条当麻の言葉を聞いて、いつまでも硬直していた。
顔の火照りも戻らない。
上条が探している気配があるが、とても姿を現せない。
(落ち着け私!あんな言葉、深い意味なんてないっ!)
しかし、次の瞬間また顔が緩む。
そんなことを繰り返している間に、上条は消えた。


『にゃー。カミやん、まだお嬢様とラブラブデート中かにゃー』
「ラブラブじゃねー!色々あって……もう終わったと言えるかな。今から宿題やるから、土御門、お前の相手してらんない」
『ほー、そんな事言っていいのにゃー?この土御門サマが宿題を片付ける格好のネタを持ってきたというのに』
「なに!」

『俺の知り合いが、今日の3時から2時間、バイト手伝ってくれる奴を探して』
「ふざけんなテメエ!ますます宿題から遠ざかってるじゃねえか!」
上条は土御門の言葉を遮って怒鳴る。
『最後まで聞くんだにゃー、カミやん。報酬が宿題丸写し権だそうだ』
「な…に?」
『宿題は全校統一だから問題ないにゃー。丸写ししても隣のクラスの奴のを写すんだ、バレない。今まで接点ないしなー』
上条の心がグラリと傾く。
『ソイツも実は部長に丸写しさせて貰う予定らしい。4~5時間で終わるはずたそうだ。わざと間違えるテクニック付だぜい』

上条に、他の選択肢は、なかった。


(…俺には分かる。これは御坂美琴系のわがまま女タイプだ!)
「アンタが手伝いに来てくれた上条クンね?あたしは部長の鈴宮ハルカ。説明はこのキャンがしてくれるから」
「喜屋武です。土御門に無理言ったら君を紹介してもらって。来てくれてありがとう」
「上条当麻です。まあ、報酬目当てっすけど、は、はは…」
「ははは、そちらはお任せあれ。今日いきなり欠席が出たんでね、助かったよ。」
すっと喜屋武が上条に近づき、耳打ちする。
(実は、宿題の写しっこの話は部長にはまだなんですよ。機嫌が良くないとおかしくなるんで、今は内緒に)
なんだかよくわからないが、上条は頷いておいた。

他には女の子が二人いた。
「朝日奈みるくでーす。よろしく」 えらく可愛らしい女の子だ。
「…長渡ゆ→き。」 御坂妹とイメージがダブる…。

「んで、内容は?」
「デパートの屋上でぬいぐるみショーがあるんですよ。そこの着ぐるみに入って貰います」
(うへえ、この炎天下でかよ)
「といっても、思うほどにはキツくないですよ。なんせ、学園都市。素材などは最新だし、快適ですよ」

上条はカエルの着ぐるみを選んだ。他は可愛らしい系だったが、このカエルはヒゲがあった。
(これなら人気なさそうだ。ガキ共もあまり寄ってこないだろう)
素材を触ってみると、カエルのくせにフワフワだ。ラビットファーというものらしい。やたら手触りがいい。
しっとり感があるので、カエルの質感と言い張れなくもない。

実際着てみても、思ったより快適だ。何より通気性がどういった仕組みなのか、非常に良い。
衣類が密着する暑苦しさはあるが、これなら十分耐えれそうだ。しかも軽い。
視界もメッシュ状であるが良好だ。なのに外からは中は全く判別できない。
(すげえな着ぐるみの世界…学園都市がすごいのか。)

ショーが始まった。とはいえ、上条のやることは、風船くばりと、適度にコミュニケーションを取るだけだ。
一緒に写真をとったり、抱き上げたり。狙い通り、他のキャラより人気がなく、忙しさもホドホドだ。
(これで宿題が片付くとは!ついにカミジョーさんも不幸の星から脱出!)

しかし不幸の星は上条を見逃しはしなかった。…御坂美琴が、じっとこちらを見つめていた。


―――時は数時間前にさかのぼる。
ようやく落ち着きを取り戻した美琴は、上条を探したが、見つからない。
(あんにゃろう…!)
しかし、連絡先もわからず、トボトボと寮に戻る。
放っておかれてしまった怒りと、あの台詞を思い出してのニヤニヤが混ざりあう変な表情をしながら。

その道すがら、『ゲコ太』の文字が視界に入る。
(なにっ!?)
掲示板のチラシのようだ。どうやら15時から駅前のデパートでぬいぐるみショーがあり、ゲコ太もいるらしい。
「……」
(ヒマになったし、見に行こうかな…)
決心すると、まず手許のハンバーガーを白井黒子におしつけようと、寮へ駆け足で戻る。

常盤台中女子寮は、あの逢い引き現場の話で持ちきりだったが、早めに美琴が帰ってきたことで、
(思ったより大した話ではない…?)という空気になったのは、美琴にとっては幸いであった。
黒子が髪を逆立てて怒っていたが、
「何あんなことで泡食ってんのよ、子供ねー。はいオミヤゲ」
と、あしらって誤魔化した。

美琴は適当に黒子の相手をしながら考えていた。
(さすがに制服で、子供に混じってショーに混ざるのは、避けたい…)
制服の下にTシャツを無理やり着て…外で制服脱いで。
スカートも脱いで、Tシャツと短パンになれば…? 制服はロッカーに放り込んでおいて。おし、これでいこう!


そうして、Tシャツに短パンの夏らしい軽装の御坂美琴が、デパートの屋上に現れた。
目当てのゲコ太は、いた。
しかし、子供たちがまわりにいて、近づけない。
(う~。やっぱ恥ずかしい…)


(あ、あれ御坂…だよな?)
遠くから、といっても5メートルほどの距離だが、こちらを見つめている少女。さっき別れた時と格好も違う。
ここにいるのも謎だし、見つめられているのも、謎だ。まさか中身は分かってないだろう。
美琴の趣味を知らない上条には、全く謎の展開だ。

(えっ?)
風船を持ったゲコ太が美琴に手招きしてきた。
上条としては、視線が気になるので、先制してみようと思ったのである。
(…行くしか!)
美琴はおずおずと近づく。
手の届く場所まで来たが、上条は(中学生に風船は無いだろう)と思い、風船を渡すことをしなかった。
代わりに、居住まいを正して、美琴に紳士的一礼をし、片手を差し出した。

(なんだなんだ?)
上条は美琴の明らかな変化に驚く。
上条の片手を触りだすと、両手でスリスリし、あまつさえ上条の手の甲を、自分の頬に擦り寄せだした!
(コ、コイツ…!なんかのマニアか!)
美琴はうっとりしている。
(中に人いるの分かってんのかコイツは…)
全てそういうことが吹き飛んだ表情をしている。


(気持ちイイ…!)
美琴はトリップ状態であった。手触りが異常に気持ちいい。
いつもの美琴ならもう少し分別があったろうが、今朝のこともあってテンションがおかしくなっていた。
ためらいはあったが、頬に擦り寄せるともう、極上気分になり、…総てが飛んだ。
(等身大ゲコ太ァ…)

美琴は、ゲコ太上条の胴に狙いを定め、むしゃぶりついた。

どぁーーーーーーーーーーーーーっ!
上条は声にならない悲鳴を上げた!
(御坂!胸!胸!ちょっとこら!お前はーーーーーーっ!)
発展途上とはいえ、Tシャツの中学生に思いっきり体をすり寄せられた高校生。
一瞬、上条の頭にエンゼルフォールでの乙姫美琴がよぎったが、破壊力はあんなものではなかった。
「ゲコ太だあ♪」
とつぶやきながら、ゲコ太上条の胸に顔を擦り寄せて、胴に手を回して胸を当ててくる。
(無理!無理!)

―その時、心の中に黒上条が現れた。
『抱きしめちまえ』『え?』
『どうせお前だとは気づかない。やっちゃえ』『いや、中学生相手に』
『何をためらう。今だけじゃないか』『いや、硬派で売ってる自分としては』
『何より、御坂は間違いなく喜ぶ。それに勝るものはあるまい』『…』

白上条は屈し、美琴をぎゅっと抱きしめる…


『ドガン!』
爆発音が、二人を我に返させた。

「ボクのだって言ってるだろ!」
小学生低学年ぐらいの男の子が、手の上に炎を浮かせて、もう一人の男の子に怒っている。
トリップしていた美琴だが、現状を把握するのは早かった。
(パイロキネシス! LV2はありそう)
あの歳であの威力なら、実力はトップクラスだろう。プライドの高い彼に、逆撫でする何かがあったのか。
暴走しかねないため、下手には飛び込めない。

周りは誰一人、動けない。
(スタンガン程度の電撃を当てて…気絶はかわいそうだけど、しょうがないわね)
と思ったその時、ゲコ太が飛び出した。
「待っ…!」
男の子は手を振りかぶって、炎をゲコ太に当てようとした。
しかしその予備動作の合間に、一気に間合いを詰めたゲコ太がその腕をつかむと、炎は消えた。
「え?」と男の子が驚いている間に、ゲコ太は男の子の両足を抱えると、ジャイアントスイングで回し始めた!

10回ほど回され、ぐったりしたところでゲコ太は回転を止め、男の子を抱きとめる。
「なんだあのカエル!」
「すげえっ!」
周りは拍手喝采となったが、居心地悪くなったゲコ太上条は控え室に逃げ出した。
「上条クン!」
唯一着ぐるみになっていなかった鈴宮がゲコ太上条を追いかける。
男の子は、駆けつけた警備員と母親らしき人間に連れていかれ、騒ぎは収まりつつあった。


美琴はいまの一幕を見て考え込む。
(ジャイアントスイングはいい方法…演算できなくなるし、無傷で押さえやすい…でも)
その前の振りかぶった炎が何故止まったのか。
驚いて不発というのが答えだろうが、男の子の表情は「出ないことに驚いている」ような…

ん?『上条クン』…

今朝恋人ごっこをした相手の名前を、美琴は直接聞いたことが無い。
でも、病院にお見舞いにいったときの表札に、『上条当麻』とあった。
自分の電撃をことごとく潰す男の名前は、上条当麻だ。

あの男なら、炎すら恐れず止めるだろう。
あの男なら、あんなシーンでも迷わずに飛び込むだろう。
そうか。アイツか。

うん。
私は。
その男の胸に、薄いTシャツで恥らいもなく抱きついてたのね。そういや抱きしめられちゃったわ。
そうか。

御坂美琴は、控え室にずかずかと乗り込んだ。
そこには、頭部分をぬいで一息ついている上条当麻の姿があった。

上条当麻の不幸の星が一層大きく、輝いた…



上条は、バスタブの中で呆然としていた。
結局、その後御坂美琴に追いかけられた上条は、当然報酬の話にならず…
それどころか、あの部長は怒り狂って宿題の話もできなかったらしく、喜屋武にも迷惑をかけた。
なんとか逃げ切ったものの、もはや宿題はどうにもならなかった。
御坂美琴を恨むのは筋違いだ。
黒い心に負け、抱きしめてしまった。自業自得だ。

時間は23:59。
「潰してやるぜ、この宿題ができなかった現実を!」
右手を天に思いっきり突き出す!
「…なんてな」 そこで上条は意識が途切れた―――

―遠くで、『バキン!』という音が鳴っていた事に、気付かず。




(いや、ちょっと待ってくれ)
二千円札は確かに入れた。なのにどうしてこの自販機は反応しない?
「ちょろっとー。自販機の前でボケっと突っ立ってんじゃないわよ。ジュース買わないならどくどく。」

「……?何だコイツ?」


fin.


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