とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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小ネタ 学園都市より愛やら何やら色々なモノをこめて




「……結構、高いな…」

上条はフラワーショップの店先で、カーネーションの値札を睨んでいた。
本日が母の日という事もあり、シーズン真っ只中な為に普段よりも割高になっているのだ。
記憶をなくした後の上条にとっては初めての母の日であり、
せっかくなので母さんにフラワーギフトでも…と思ったのだが、
上条家の懐事情を考えると少々尻込みしてしまう。主に食費【インデックス】的な理由で。

「どーすっかなー…こんなに買えないし、だからって2~3本ってのもなぁ……
 …いや待てよ? 逆に一輪だけってのもシンプルでいいのかも?」

母の日どころか女性に花を贈るのも初めてな上条にとって、
花をどのようにしてどれくらい包めばいいのか見当もつかない。
加えて財布の中身とも相談すると、どうしても考え方が安い方へと移ってしまう。
と、そんな時だ。

「アンタ何やってんの? ずぅ~っとお花と睨めっこしてるけど」

背後から話しかけられた。
上条は振り返りながら、その者に返事をする。ついでに、ツッコミを入れながら。

「おう、美琴。いや、母の日の贈り物をどうしようかってな。
 …つーか何で俺が『ずぅ~っと』ここにいるって知ってんだよ。
 ミコっちゃん、どんだけ俺の事見てたん?」
「はっ…は、はぁーっ!? はぁーっ!?
 べ、べべ別にアンタをずっと見てた訳じゃないし!
 私はただ、何となく景色を眺めてただけだから!
 そこにたまたまアンタが視界に入ってただけだから!
 かかか勝手に勘違いしてんじゃないわよ馬鹿っ!」

軽く冗談を言っただけなのに、全力でマジレスされてしまった。不幸である。

「で、美琴もカーネーション買いにきたのか?」
「わ、私は昨日買ってもう送ったわよ。
 今日買ったんじゃ、ママの所に届くのは早くても夕方だし」
「あーなるほど…」

と納得しかけた所で再び疑問。

「…あれ? じゃあ何で美琴は花屋【ここ】にいるんだ?
 そもそも何となく景色眺めてたってのも何の為に?」
「だっ! だだだだから! たまたま通りかかったらアンタがいて!
 そしてアンタがお花を見つめてる姿に見惚れてそのままだったとか!
 そんな事は全然ないんだから勘違いすんなって言ってんでしょ!?」

誰もそんな事を聞いてはいないのだが。この場に佐天さんがいないのが悔やまれる所である。
いたら間違いなくニヤニヤしながらツッコんでいただろうに。
しかし鈍感な上条は「ふ~ん、そっか」と気付く素振りすら見せずに、
再びカーネーションと向き合った。すると。

「……ん? んんんっ!? 何だこれ、すっげー安いっ!!?」

すぐ隣に驚くべき安さのカーネーションが置いてある事に気付く。
一輪まさかの50円以下…先程まで見ていたカーネーションの、1/3にも満たない価格である。
しかし美琴は呆れ顔で、その安さのネタばらしをする。

「あのねぇ…よく見なさいよ。それ造花よ?」
「えっ!? ……あ、ホントだ」

確かにその安いカーネーションは、香りもなければ瑞々しさもない。紛れも無く造花であった。
しかしこんな安物とて腐っても学園都市製だ。
一般的な造花とは比べ物にならない程の完成度を誇っている。
上条はその造花のカーネーションを数本手に取った。

「うん。これにする」
「えっ!? いいの!?」
「これだって母の日用に売られてる物なんだし大丈夫だろ。
 それに造花は造花でいいもんだぜ? 枯れないし、世話をする必要もないし」
「そりゃそうだけど…」

美琴はまだ何か言いたげだったが、上条はとっととレジへと行ってしまった。


 ◇


「…で、結局買ってきた訳ね」
「まぁな♪」

上条は、造花が箱詰めされたギフトボックス(ラッピング済)を持ち、
顔をホクホクとさせながら店から出てきた。
おそらくこのまま郵便局にでも向かうのだろう。
せっかくだから一緒に付いて行って、このままプチデート気分を味わっちゃおうか、
とそんな事を美琴が考えていた瞬間だった。ふいに、髪に何かが挿さる感覚。
不思議に思った美琴は、その違和感があった所を手で触れてみる。すると、

「……え…? これ…さっきの…」

そこには先程上条がレジへと持って行った造花のカーネーションが一輪、
かんざしのように挿してあったのだ。

「何本か買ったから、一本だけ箱詰めしないように店員さんに頼んどいたんだよ」

上条は冗談っぽく笑っていた。対して美琴は、顔が「かあぁ…っ」と熱くなる。

「な、ななな、なん、何のつもりよコレはっ!!?」
「ん~? いや~、ミコっちゃんに似合うかな~と思いまして。
 …あっ、でもどんなに綺麗な花でも、美琴の美しさには敵わないかな?」
「んっ、なっ!!!?」

それはただの一発ネタのつもりの一言だった。
上条としては、この後美琴から「何言ってんの? バッカじゃないの?」
「その台詞、アンタに似合ってなさすぎ」 「あ~、はいはい。ありがとねー」
とでもツッコまれながら、一笑いある物だと期待していた。
しかし美琴からのリアクションは、

「そ、そそそ、そんにゃこ、と……いわ、いわれてみょ…
 じぇ…じぇんじぇんうれひく………にゃ…いんりゃかりゃ……」

とボソボソ言いながら顔を真っ赤にして俯くという、
思いのほかガチな反応が来てしまった。

本日は母の日。
上条の母・詩菜と、美琴の母・美鈴の下には、
『愛する我が子達の仲が、ちょっとだけ進展した』という最高の贈り物が送られたのだった。










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